通常兵器の軍縮及び過剰な蓄積禁止に関する我が国の取組

令和6年7月4日

1 概要

  • (1)6月18日から6月28日まで、ニューヨークの国連本部において、国連小型武器行動計画(以下、「PoA」)の第4回履行検討会議が開催され、約100か国(信任状提出ベース)の国連加盟国が代表団を派遣したほか、国際機関及びNGO等が参加しました。
  • (2)今次会議は、コスタリカ国連常駐代表のバルベルデ大使を議長として開催されました。
  • (3)同会議では、2001年に策定されたPoA及び、2005年に策定されたPoAの関連文書である国際トレーシング文書(以下、「ITI」)の各国による履行状況を検討するとともに、その結果を踏まえて、第5回履行検討会議(2030年)までのこの先6年間の行動指針及び重点項目等が議論されました。
  • (4)成果文書は、「2024年宣言」、「PoAの履行」、「ITIの履行」、「小型武器の製造、技術及びデザインに関する進展」、「国際協力・支援の促進」、「第4回履行検討会議後のフォローアップ」の6分野に分けて議論が行われました。
  • (5)会議では、一般討論演説に引き続いて上記(4)に則して事項別討論が行われた結果、会議最終日(6月28日)に成果文書がコンセンサスにより採択されました。
  • (6)成果文書において、PoA及びITIの履行に関する各国のコミットメントが改めて確認されたほか、以下を含む多岐にわたる項目が盛り込まれました。
    • 小型武器の製造、技術及びデザインに関する進展への対処に関し議論するオープン・エンド技術専門家グループの設置を決定
    • 国際支援の要請国・提供国間のマッチングの強化
    • PoA及びITI履行支援のための新たな資金供与メカニズムの設立
    • 全課程を通じた小型武器の非合法取引の流用防止
    • 小型武器対策に関する政策決定等への女性の参画促進
    • 今後6年間にわたる関連会議の開催日程等を決定

2 我が国の貢献

  • (1)我が国は、国連日本政府次席常駐代表の志野光子大使を団長、軍縮会議日本政府次席常駐代表の梅津茂公使参事官を団長代行とする代表団を派遣し、我が国による小型武器分野へのこれまでの貢献を踏まえ、積極的かつ建設的に議論に参加しました。
  • (2)志野大使による一般討論ステートメントにおいては、毎年の国連小型武器非合法取引決議案の提出、国連の「人命を救う軍縮」(SALIENT)基金を通じた小型武器対策への支援について紹介するとともに、今次会議を通じ、小型武器に関連する技術の進展への対処に関する共通認識を形成することの重要性を訴えました。

3 評価

 小型武器は、引き続き世界各地において紛争の長期化や激化、治安回復や復興開発の阻害などの一因となっているところ、今次会議において各国の立場の相違を乗り越えて成果文書がコンセンサスにより採択されたことは、小型武器問題が国際社会において一致して取り組むべき重要な課題であるとの認識の共有を示していると評価されます。今後、成果文書に盛り込まれた新たな措置を含め、PoA及びITI履行のための国際社会による引き続きの取組が重要となります。

【参考1】国連小型武器行動計画(PoA)の概要

  • (1)紛争や犯罪で主な武器として使用され、実際に人を殺傷しているのは小型武器であり、このため小型武器は「事実上の大量破壊兵器」と呼ばれる(国連事務総長による安保理報告(2002年9月、S/2002/1053のII.4.))。小型武器は、紛争を長期化、激化させるだけではなく、紛争終了後、国連などによる人道援助活動や復興開発を阻害し、紛争の再発、犯罪の増加等を助長する原因となっている。
  • (2)PoAは、2001年7月の国連小型武器会議において採択された(A/CONF.192/15)。同行動計画は、小型武器の非合法取引規制に関する具体的措置を規定しており、その後の国際社会における取組の指針となっている。
    • ア 非合法取引規制に関する具体的措置
      • 小型武器非合法取引を規制するための法制度整備
      • 小型武器非合法取引に対するトレーシングのための措置(刻印、製造・移譲等に関する記録保持)
      • 実効的な輸出入許認可制度の確立・維持
      • 小型武器の非合法ブローカー取引の規制
      • 小型武器の回収・破壊等を含むDDR(武装解除・動員解除・社会復帰)の実施
      • 各国の法執行機関・国境管理機関・税関による情報共有
    • イ 履行及び国際協力・支援
      • 被害国における法制度整備、法執行等の分野における能力構築への支援
      • 税関・警察・軍備管理担当機関の間の協力・経験の共有
      • DDRへの支援

【参考2】「人命を救う軍縮」基金(Saving Lives Entity (SALIENT) fund
 2018年5月に発表されたグテーレス国連事務総長の軍縮アジェンダにおいて設置が約束され、2019年に国連内に設けられた任意信託基金。小型武器対策を平和構築や開発支援の文脈の中で行い、紛争予防及び平和の持続の一層効果的な取組を目指す。我が国は、平成30年度補正予算で、同基金に2.2億円(200万米ドル)を拠出した。


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