外務大臣談話

令和4年8月27日
  1. 8月1日からニューヨークで開催されていた第10回NPT運用検討会議は、本日(現地時間26日)閉会しました。
  2. 2015年の前回会議以降、NPTを取り巻く環境は一層厳しさを増しており、今回の会議についても、その取り巻く環境は非常に厳しく、成果文書採択の見通しは決して明るいものではありませんでした。
  3. 我が国は、NPTは国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であり、また、そのようなNPTを維持・強化することが「核兵器のない世界」に向けた唯一の現実的な道であるとの強い信念を持って取り組んできました。まず、会議初日に岸田総理が出席して一般討論演説を行い、「ヒロシマ・アクション・プラン」を提唱し、その後も、今回の会議が意義ある成果を収めるべく、スラウビネン議長や各国代表団に働きかけを行い、コンセンサス文書の採択に向けて、出来る限りの努力を続けてきました。その結果、「ヒロシマ・アクション・プラン」をはじめ、我が国の主張には多くの国から支持・評価が得られ、我が国が提出した軍縮・不拡散教育共同ステートメントに過去最大となる88か国が賛同し、また、核兵器の不使用の継続の重要性やグローバルな核兵器数の減少傾向の維持の重要性など、我が国の考えや提案が最終成果文書案の中に多く盛り込まれました。このことは、我が国として大きな成果であり、今後、国際社会が核軍縮に向けた現実的な議論を進めていく上での土台の一つとなるものと考えます。
  4. にもかかわらず、最終的にウクライナをめぐる問題を理由にロシアが反対し、成果文書のコンセンサス採択に至らなかったことは極めて遺憾です。他方、締約国間の真剣な議論を経て、ロシア以外の国はコンセンサス採択に反対しなかった最終成果文書案が作成されたことは、意義のあることと考えます。また、次回の運用検討会議の会期やそれに向けた会議プロセス、さらには、我が国が軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)を通じて従来から主張してきた運用プロセス強化のための作業部会の設置が合意されたのは、各国のNPTの維持・強化に向けた意思の表れであり、評価します。
  5. 核軍縮をめぐる国際社会の分断が深まる中において、核兵器国と非核兵器国の双方が参加するNPTを維持・強化していくことこそが重要です。これこそが、核軍縮に向けた唯一の現実的な取組であるとの信念を持ち、「ヒロシマ・アクション・プラン」に沿って、来年の日本主催のG7広島サミットでの議論などを通じて「核兵器のない世界」の実現に向けた国際社会の機運を一層高め、現実的かつ実践的な取組を一歩ずつ、粘り強く着実に進めていきます。

[参考1]核兵器不拡散条約(NPT)について
 1968年に署名開放され、1970年に発効(25年間の時限条約)。我が国は1970年に署名、1976年に批准しており、1995年には同条約の無期限延長に合意。締約国は191か国・地域。同条約の3つの柱は「核軍縮」「核不拡散」「原子力の平和的利用」。

[参考2]核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議について
 5年に1度開催。運用検討会議に先立つ3年間、毎年1回の準備委員会が開催され、NPT3本柱に関する議論を行い、運用検討会議に勧告を行うことを目指す。各々の準備委員会では議論を取りまとめた議長サマリー等が発出される。
 今回は、2020年4~5月にニューヨークで開催予定だったものが、新型コロナウイルスの影響で延期となり、2022年8月1日~26日で開催されることになったもの。


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