イエメン共和国

基礎データ

令和6年4月23日
イエメン共和国国旗

一般事情

1 面積

55.5万平方キロメートル(日本の約1.5倍弱)

2 人口

約3,370万人(2022年/世銀)

3 首都

サヌア

4 民族

主としてアラブ人

5 言語

アラビア語

6 宗教

イスラム教(スンニ派及びザイド派(シーア派の一派))

7 略史

年月 略史
紀元前10世紀頃~ 古代イエメンの王国はインドと地中海及び東アフリカの貿易の中継地として繁栄。古代ギリシャ人、ローマ人から「アラビア・フェリックス」(幸福のアラビア)と呼ばれる。
9世紀~ ザイド派のイマーム(宗教指導者)が支配。
16世紀~ オスマン・トルコが北イエメン地域を支配。
1839年 英国がアデンを占領。以降南イエメン地域を保護領とした。
  北イエメン地域では、1918年オスマン・トルコからイマーム王国が独立。その後1962年には軍による共和制革命によりイマーム王制が廃止され、イエメン・アラブ共和国が成立(旧北イエメン)。
  南イエメン地域では、1962年に南アラビア連邦が発足したが、反英運動が激化し、1967年英国から南イエメン人民共和国として独立。1969年マルクス・レーニン主義を標榜する社会主義政権が誕生し、1970年にイエメン民主人民共和国と国名を改めた(旧南イエメン)。
  東西冷戦構造もあり、1970年代、1980年代には南北イエメン間でたびたび武力衝突が発生したが、統一への努力は継続された。
1989年11月30日 アデン合意により南北統一への途が開かれる。
1990年5月22日 南北イエメン統合により現在のイエメン共和国が成立。

政治体制・内政

1 政体

共和制

2 元首

ラシャード・ムハンマド・アル・アリーミー大統領指導評議会議長

3 議会

 国会は選挙で選出される301名の議員からなり、立法権を有する。議員任期は6年。この他に大統領任命による111名の議員からなる諮問評議会があるが、立法権はなく大統領への助言機関と位置づけられている。

4 政府

首相
アフマド・アワド・ビン・ムバーラク
外相
シャーエア・ムフシン・ジンダーニー

5 内政

(1)最近の主な動き
主な動き
2011年 2月~ 若者を中心にサーレハ大統領退陣を要求するデモが首都サヌア等各地で頻発。
3月 サヌアにてデモ参加者50人以上が狙撃され死亡する事件が発生。
4月 湾岸協力理事会(GCC)が、サーレハ大統領はハーディ副大統領に大統領権限を移譲する代わりに訴追を免除されるとするGCCイニシアティブを提案。
5月 サヌアにて大統領派国軍部隊と大統領から離反した部族の間で大規模な武力衝突が発生。
6月 大統領宮殿内で大統領暗殺未遂事件が発生。負傷した大統領は治療のためサウジアラビアに出国。
9月 サーレハ大統領が突然帰国。対立が再燃し、衝突が再発。
10月 GCCイニシアティブへの署名を大統領に促す安保理決議が全会一致で採択。
11月 サーレハ大統領がGCCイニシアティブに署名し、退陣に同意。同時に同イニシアティブ実施メカニズム(政権移行プロセスの実施工程表)に与野党代表が署名した。
12月 2011年野党推薦のバシンドワ元外相を首相とする挙国一致内閣が発足。
2012年 1月 サーレハ大統領らに対する訴追免除法が成立。
2月 大統領選挙が概ね平和裡に実施され、与野党統一候補であるハーディ副大統領が新大統領に選出。
2013年 3月 国民各層からの幅広い参加(反政府勢力であるホーシー派や南部運動(ヒラーク)の一部も参加)を得て新憲法の骨格を協議する国民対話が開始。
2014年 1月 国民対話終了。中央集権制から連邦制への移行等が合意された。
2月 全土を6州(北部4州と南部2州)に再編することを決定。
3月 新憲法案を起草する憲法起草委員会が発足(2015年3月までに新憲法国民投票を予定。)
8月 シーア派系勢力ホーシー派の呼びかけに応じ、燃料補助金廃止の撤廃及び内閣総辞職を求める反政府デモが発生。
9月 イエメン政府軍・治安部隊とホーシー派がサヌア市で衝突。ホーシー派がサヌア市の政府機関・国軍関連施設を一時占拠。諸政党は、「平和・国民パートナーシップ合意」に署名し、停戦及び新内閣発足等に合意した。
11月 新内閣が発足。
2015年 1月 憲法起草委員会が新憲法草案をハーディ大統領に提出。ホーシー派と大統領警護隊が衝突。ハーディ大統領及びバハーハ内閣が辞表を提出。
2月 ホーシー派が現憲法を一部無効化し、革命最高評議会が実権を握るとする「憲法宣言」を発表。国連事務総長特使の仲介により政治勢力間の協議開始。ハーディ大統領がサヌアからアデンに移動。
3月以降 3月、ハーディ大統領が、アデンを暫定首都にすることを宣言。ホーシー派が、タイズ、アデン等に進出。サウジアラビア軍他による「決意の嵐作戦」と称する軍事作戦が3月26日~4月21日に実施され、7月、イエメン政府軍はアデンを奪還。9月、イエメン政府はアデンでの業務を再開。12月、ジュネーブにおいて2回目の和平協議が開催された。
2016年 4~8月 クウェートで和平協議が開催。
2018年 6月 サウジ主導のアラブ連合軍がホデイダ奪還作戦(「黄金の勝利」)を開始。
9月 グリフィス国連事務総長特使が、ジュネーブでの和平協議を呼びかけるも、ホーシー派代表団が出席せず不成立。
12月 2年4か月ぶりに紛争当事者間協議(於スウェーデン)が国連仲介の下で開催され、両当事者がホデイダ停戦、同市・港などからの撤退、被拘束者交換等に合意(ストックホルム合意)。
2019年 11月 イエメン政府と南部移行評議会が、サウジアラビア政府の仲介により、リヤド合意に署名。
2020年 12月 リヤド合意に基づき新内閣が成立。
2022年 4月 国連の仲介により、紛争当事者が2か月間の停戦に合意(6年ぶりにイエメン全土での停戦が実現)。 大統領指導評議会の設立を含む政府の改革実施(ハーディ大統領は、アリ・ムフシン副大統領の解任、8名から成る大統領指導評議会の新設、同評議会への全ての大統領権限の移譲等に関する大統領令を発表)。
6月 国連の仲介により、紛争当事者が2か月間の停戦延長に合意。
8月 国連の仲介により、紛争当事者が2か月間の停戦延長に合意。
10月 停戦合意失効するも、その後も事実上の停戦が継続。
(2)治安状況
 イエメン全土で、イエメン政府と反政府勢力(ホーシー派)との衝突やイスラム過激派組織などによるテロ・誘拐事件が発生している。在イエメン大使館は、治安悪化のため2015年2月をもって一時閉館中。

外交・国防

1 外交基本方針

  • (1)サウジアラビアを中心としたGCC諸国との関係が外交の基軸。
  • (2)主要ドナー諸国(日、米、英、独、EU等)との関係を重視。

2 軍事力

(1)予算
非公表
(2)兵力
約40,000人(2023年ミリタリーバランス推定)

経済

1 主要産業

石油・天然ガス産業(原油生産量:約53,000バレル/日、天然ガス生産量約1億立方メートル/日(2022年Energy Institute統計))、農業、漁業

2 一人当たりGDP

650ドル(2022年/世銀)

3 経常収支

24.19億ドルの赤字(2016年/世銀)

4 実質GDP成長率

0.8%(2018年/世銀)

5 予算(2019年度)

(1)歳入
約2.2兆イエメン・リアル(イエメン財務省)
(2)歳出
約3.1兆イエメン・リアル(イエメン財務省)

6 金・外貨準備高

12.5億ドル(2022年/世銀)

7 対外債務残高

73.51億ドル(2022年世銀)

8 総貿易額

(1)輸出
9.03億ドル(2022年/WTO推計)
(2)輸入
53.12億ドル(2022年/WTO推計)

9 主要貿易品目

(1)輸出
原油、食料品(コーヒー豆、魚介類等)
(2)輸入
食料品(小麦等)、石油、機械類

10 主要貿易相手国(2019年/WTO)

(1)輸出
エジプト、トルコ、オマーン、スーダン、エリトリア
(2)輸入
アラブ首長国連邦、中国、サウジアラビア、オマーン、トルコ

11 通貨

イエメン・リアル(YR)

12 経済概況

(1)アラブの最貧国の一つ。2015年以降、紛争激化で石油・ガス収入が激減。また、ホーシー派の首都占拠で財政が著しく悪化し、公務員や医療関係者の給与未払いが続いている。

(2)紛争の長期化や行政サービスの弱体化により人道状況は極めて劣悪。人口の半数以上が何らかの人道支援を必要としており、国連はイエメンを「世界最悪の人道危機」の一つに位置付けている。

経済協力

1 日本の援助実績(2021年度まで)

  • (1)無償資金協力(交換公文ベース) 825.28億円
  • (2)技術協力実績(予算年度の経費実績ベース) 111.34億円
  • (3)有償資金協力(借款契約ベース) 493.19億円(除く債務繰延・債務免除)

(注)我が国は主要ドナー国として、紛争が激化した2015年以降、国際機関経由で総額約4.3億ドルの人道支援を実施。

2 主要援助国等(2023年/OCHA統計)

  • (1)米国
  • (2)サウジアラビア
  • (3)欧州委員会(EU)
  • (4)ドイツ
  • (5)英国

二国間関係

1 政治関係

  • (1)1990年5月22日のイエメン共和国成立に伴い、同23日、国家承認。同25日、外交関係開設。(なお、新国家成立以前には、旧南北イエメンそれぞれを国家承認し、外交関係を有していた。)
  • (2)1990年7月、アデン出張駐在官事務所を開設したが、1997年12月に閉鎖。
  • (3)2011年の混乱に伴う治安情勢悪化により、同年3月、日本大使館を一時閉鎖(館員はアラブ首長国連邦のアブダビでイエメン関係業務を継続)。同年12月、日本大使館を再開。
  • (4)2015年2月、在イエメン日本大使館を一時閉館(現在、サウジアラビアのリヤドで業務を継続。なお、我が国は、暫定首都アデン(イエメン南部)に拠点を置くイエメン正統政府と外交関係を維持している。)。
  • (5)2017年9月、日アラブ政治対話において、4年ぶりとなる日イエメン外相会談を開催。また同月、ニューヨークにおけるイエメン人道状況会合で日本がイエメンの停戦や復興に向けて継続的に関与していくことを表明。
  • (6)2022年5月、緊急の人道ニーズに対応するとともに停戦合意を支えるため、イエメンに対するWFPを通じた1,000万ドルの緊急人道支援の供与を決定。小田原副大臣(当時)は、ニューヨークにおいて、ビン・ムバーラク外相(当時)と会談し、今後も、国連や関係国と連携しつつ、イエメンにおける平和と安定の実現に積極的に取り組んでいく旨表明。
  • (7)2022年12月、武井副大臣(当時)は、ローマにおいてビン・ムバーラク外相(当時)と会談し、10月に失効した停戦合意の延長に向けたイエメン正統政府の努力を評価するとともに、日本は、イエメン正統政府と引き続き連携しながら、イエメンにおける恒久的和平の実現に向けた取組を継続していく旨表明。
  • (8)2023年5月、グランドバーグ国連事務総長イエメン担当特使が訪日。髙木大臣政務官(当時)が同特使と会談し、イエメンにおける平和と安定の実現に向け、日本と国連がより一層緊密に連携していくことを確認。

2 経済関係

(1)貿易額(2023年/財務省貿易統計)
対日輸出 8.19億円
対日輸入 345.9億円
(2)主要品目
対日輸出 動物性油脂、コーヒー豆、魚介類(えび等)
対日輸入 機械類、自動車

3 文化関係

 2007年~2011年までサヌアにて「日本文化週間」を開催し(2009年についてはイエメン第二の都市であるアデンでも開催)、好評を博した。

4 要人往来

(1)往訪(1974年以降)
年月 要人名
1974年1月 小坂善太郎特使
1975年8月 羽田野忠文外務政務次官
1983年7月 石川要三外務政務次官
1985年7月 左藤恵郵政大臣
1987年9月 江藤隆美特使(革命25周年記念)
2000年5月 小沢辰夫特使(統一10周年記念)
2000年9月 福田康夫日・イエメン友好協会会長(当時)
2001年8月 丸谷佳織外務大臣政務官
2002年9月 杉浦正健外務副大臣
2005年3月 河井克行外務大臣政務官
2006年7月 伊藤信太郎外務大臣政務官
2008年6月 宇野治外務大臣政務官
2009年12月 尾辻秀久元厚生労働大臣
2014年1月 牧野たかお外務大臣政務官
(2)来訪(1987年以降、主要なもののみ)
年月 要人名
1987年10月 イリヤーニ副首相兼外相(外務省賓客)
1990年11月 アブドルガニー大統領評議会メンバー(即位の礼)
1993年11月 イリヤーニ計画・開発相(外務省賓客)
1996年12月 イリヤーニ副首相兼外相(外務省賓客)
1997年11月 シュアイビー教育相(世銀招聘)
1998年2月 フセイン水産資源相
1998年5月 ワジーフ石油鉱物資源相
1999年3月 サーレハ大統領(公式実務訪問)
1999年8月 ワジーフ石油鉱物資源相
2001年11月 アハマディー漁業資源相
2002年1月 スーファーン計画開発相
2002年3月 カルビー外相(外務省賓客)
2004年3月 イリヤーニ水・環境相
2005年2月 アルシャリーフ最高選挙委員長(外務省招聘)
2005年11月 サーレハ大統領(実務訪問賓客)
2007年8月 ウバード青年・スポーツ相
2008年3月 バハーハ石油鉱物資源相
2008年4月 アルハビー副首相(経済担当)兼計画・国際協力相
2008年6月 アクワ外務次官補(外務省招待)
2009年2月 アッタール投資庁長官(外務省招待)
2009年11月 ラーシウ沿岸警備隊長官(外務省招待)
2009年12月 ムタワッキル産業・貿易相(日・アラブ経済フォーラム出席)
2010年10月 ムジャッワル首相(COP10出席)
2010年10月 イリヤーニ水・環境相(COP10出席)
2010年11月 カルビー外相(外務省賓客)
2010年12月 ハイド内務省作戦局長(外務省招待)
2012年10月 アッ・サアディ計画・国際協力相(外務省閣僚級招へい)
2012年10月 ワジーフ財務相(IMF・世銀総会出席)
2013年9月 サッラーム観光相(旅博出席)
2013年10月 ハーリド水・環境相(水銀に関する水俣条約外交会議出席)
2013年12月 カルビー外相(外務省賓客)
2013年12月 ムフセン投資庁長官(日アラブ経済フォーラム出席)
2014年9月 カルマン「束縛のない女性ジャーナリスト」代表(女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム出席)
2015年8月 サッカーフ情報相(女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム出席)
2020年2月 ムハンマド・タービト公共事業・道路副大臣(JICAによる招聘)
2023年2月 バースハイブ計画国際協力副大臣(JICA本邦研修への参加)

5 二国間条約・取極

  • 1989年9月9日  青年海外協力隊派遣取極締結
  • 1993年7月29日 青年海外協力隊派遣取極の改定
  • 1993年11月9日 技術協力協定の締結

6 外交使節

  • (1)日本 東 和広 臨時代理大使
  • (2)イエメン アーデル・アリ・アハマド・アル・スナイニー 特命全権大使
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