ベネズエラ・ボリバル共和国
ベネズエラ・ボリバル共和国(Bolivarian Republic of Venezuela)
基礎データ


一般事情
1 面積
912,050平方キロメートル(日本の約2.4倍)
2 人口
2,795万人(2021年、IMF)
3 首都
カラカス
4 民族
不明
5 言語
スペイン語(公用語)及び先住民族の諸言語
6 宗教
国民の大多数はカトリック
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1811年 | スペインより独立 |
1819年 | 大コロンビア共和国成立 |
1830年 | 同国から分離、ベネズエラ共和国として独立 |
1958年 | 民主制復帰、以後選挙により大統領を選出 |
1999年12月 | 新憲法発効により、国名がベネズエラ・ボリバル共和国となる |
2013年3月 | 14年間大統領を務めたチャベス大統領(ベネズエラ社会主義統一党)が任期途中で死去 |
2013年4月 | マドゥーロ大統領(ベネズエラ社会主義統一党)が就任 |
2019年1月 | マドゥーロ大統領就任式 グアイド国会議長が暫定大統領就任を宣誓 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
- ニコラス・マドゥーロ・モロス大統領
- (注)2018年の大統領選挙は、国際社会からプロセスの正当性に疑義を呈されており、日本政府もベネズエラにおける自由で公正な大統領選挙を求めている。
3 議会
一院制(277議席、任期5年、連続再選可)
4 政府
- (1)首相名 首相職無し
- (2)外相名 イバン・エドゥアルド・ヒル・ピント外相
5 内政
- (1)ベネズエラでは1958年以降、二大政党による民主的な政治体制が継続してきた。しかし、これら二大政党は、国内の貧困問題に対して効果的な政策を実施してこなかったことから、低所得者層を中心に国民の不満が高まっていた。
1999年2月、低所得者層の高い支持を得てチャベス大統領が就任。チャベス大統領は、「21世紀の社会主義」建設を標榜し、新憲法の制定、低所得層支援の推進、ベネズエラ石油公社(PDVSA)の掌握を通じた経済活動の国家管理等を行い、体制を強化した。
2012年12月、チャベス大統領は、自身の癌を理由にマドゥーロ副大統領を実質的な後継者として指名した。2013年3月、同大統領の逝去が発表された。 - (2)2013年4月、大統領選挙が実施され、チャベス政権を継承するマドゥーロ与党候補が勝利を収め、マドゥ-ロ政権が発足した。同政権は、チャベス大統領の政策路線を踏襲してきたが、治安や経済情勢の悪化が進み、国民の不満が高まり、2015年12月に行われた国会議員選挙では、野党が3分の2の議席を獲得し国会の多数を占めた。
- (3)2018年5月、選挙の条件が公平性を欠くとして主要野党不参加の中、大統領選挙が実施され、全国選挙評議会(CNE)がマドゥーロ大統領の勝利を発表。同大統領選挙プロセスの正当性につきG7、中南米諸国、欧州諸国を含む国内外から疑義が呈される中、2019年1月に大統領就任式が実施された。同月、グアイド国会議長は、憲法の規定に基づき暫定大統領就任を宣誓。55か国以上が同暫定大統領を承認・支持し、政権側と野党側の間の対立は激化。その間、事態の解決のため、同年5月及び7月には、ノルウェーの仲介により与野党間交渉も実施されたが、交渉プロセスは中断し、同年9月、グアイド国会議長(暫定大統領)は、政権側が交渉継続を拒否したとして同プロセスの終了を発表。
- (4)2020年12月、選挙実施手続きに疑義があるとして主要野党が不参加の中、国会議員選挙が実施されマドゥーロ政権側政党が勝利を宣言した。 G7、中南米諸国、欧州諸国を含む国内外から選挙手続きに疑義が表明されたが、2021年1月より、マドゥーロ政権側与党が多数を占める国会が開始。2021年 8月から、事態の解決に向け、ノルウェーの仲介によってメキシコにおいて与野党間の対話が開始された。
- (5)2014年以降、政治社会情勢やインフラ悪化によりベネズエラ国民の国外流出が増加。特に、2019年の一連の情勢悪化を背景に急増し、これまでに約570万人のベネズエラ国民が近隣諸国(特にコロンビア、ペルー、チリ等)に流出。また新型コロナウイルス拡大の影響もあり避難民の生活状況は悪化してきている。
外交・国防
1 外交基本方針
チャベス前大統領は、豊富な石油資源を活用して多極的な外交を展開し、中南米地域においては、中南米独自の統合構想として、米州ボリバル代替統合構想(ALBA)(現在の名称は米州ボリバル同盟)を創設し、キューバ、ボリビア、ニカラグア等が参加している。また、優遇条件で石油を提供する地域メカニズムとしてペトロカリベを創設し、多くの中米カリブ諸国が参加している。2012年7月31日に行われたメルコスール首脳会合において、ベネズエラは、メルコスールへ正式に加盟したが、メルコスール原加盟国との間で軋轢が生じ、2016年12月のメルコスール臨時外相会合においてベネズエラの資格停止が確認された。また、2017年8月のメルコスール外相会合において、民主主義条項の適用により加盟資格停止が決定。2017年5月、ベネズエラは米州機構(OAS)におけるベネズエラ情勢に関する外相協議会の決定を受け、OASからの脱退を表明。2019年4月、OASは、グアイド国会議長(暫定大統領)側が任命したグスタボ・タレ氏をOASベネズエラ常駐代表として受け入れる決議案を採択。同年9月、米州相互援助条約(TIAR)外相会合が開催され、ベネズエラの危機への対応について議論。同年12月、TIAR外相会合において、マドゥーロ政権関係者に対する査証制限・口座凍結等の制裁措置を承認。
米国との関係については、チャベス政権以前の親米路線から一転して、チャベス政権及びそれを引き継いだマドゥーロ政権は、反米の急先鋒として度々米国批判を展開してきた。一方、米国は、2017年以降、対ベネズエラ経済制裁を実施。マドゥーロ大統領含めベネズエラ政府関係者等に対する個人制裁の他、2019年1月には、PDVSAと米国民との金融取引等又は米国内での金融取引等を禁止したほか、8月には、ベネズエラ政府と米国民との金融取引等又は米国内での金融取引等を禁止し、制裁を一層強化。なお、2019年2月、マドゥーロ政権は、米国との外交関係の断絶を発表、同年3月、在ベネズエラ米国大使館閉鎖。
域外国とは、イラン、ロシア等との関係を強化した他、近年は特に、経済・金融を中心に中国・トルコとの関係を強化している。2019年8月、北朝鮮にベネズエラ大使館を開設。
2 軍事力
- (1)国防支出 不明
- (2)兵役 なし
- (3)兵力 123,000人(陸軍63,000人、海軍25,500人、空軍11,500人、国家警備軍23,000人)
(The Military Balance 2021年)
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
通信業、不動産業、石油事業、製造業(食料、プラスチック等)
2 GDP
473億ドル(2020年:IMF推定値)
3 一人当たりGDP
1,691ドル(2020年:IMF推定値)
4 GDP成長率
-30.0.%(2020年:IMF推定値)
5 物価上昇率
2,355.0%(2020年:IMF推定値)
6 失業率
不明
7 総貿易額
- (1)輸出 345億ドル(2018年:ベネズエラ中銀)
- (2)輸入 128億ドル(2018年:ベネズエラ中銀)
8 主要貿易品目
- (1)輸出 石油を含む鉱物、金属類、化学品、農産物(2018年暫定値、ベネズエラ国立統計院)
- (2)輸入 農畜産品、食料・飲料、機械・電子機器、化学品、金属類(2018年暫定値、ベネズエラ国立統計院)
9 主要貿易相手国
- (1)輸出 アラブ首長国連邦、トルコ、ブラジル、米国、コロンビア(2018年暫定値、ベネズエラ国立統計院)
- (2)輸入 米国、中国、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン(2017年暫定値 ベネズエラ国立統計院)
10 通貨
ボリバル
11 為替レート
1米ドル=4.1755ボリバル(2021年10月5日時点)(注)入札式の変動相場制により毎週入札にて決定。
12 経済概況
(1)資源
べネズエラは、世界有数の石油産出国であり、同国経済は、石油収入に大きく依存している。原油の確認埋蔵量は、オリノコ川北岸の超重質油(オリノコタール)も含め、3,038億バレル(2020年、BP統計(2021))と世界第1位を誇る。
天然ガスの確認埋蔵量は6.3兆立方メートル(2020年、BP統計(2021))と世界第7位で、この他にも、鉄鉱石、ボーキサイト、金、ダイヤモンド等を豊富に産出する。
(2)チャベス政権成立以降の動き
チャベス大統領は、2001年11月以降、炭化水素法、土地及び農村開発法など、国家経済の根幹に関わる49の法律を制定して改革を推し進めた。これに対し、民間部門は強硬に反対し、大規模ゼネスト等が相次いで発生。その結果、2002年の経済実績は大幅に悪化した。その後は、石油価格の高騰に後押しされる形で、経済成長を遂げたものの、2008年後半からは、国際原油価格の急落や国際経済危機の影響を受けた。2014年に再び原油価格が急落し、経済が苦境に陥った。
2006年以降、チャベス大統領は、ベネズエラ国営石油公社(PDVSA)、セメント産業、鉄鋼会社等の国有化を推し進めた。
2017年11月以降、ハイパーインフレーションが継続。GDPは2014年以降マイナス成長となり、マドゥーロ政権発足後、GDPは約80%減少し、2020年もマイナス成長になる見通し。
不安定な経済運営もあり、南米で最も高いインフレ率や物資不足等の問題を抱えている。また、2020年も各地で停電、断水、ガソリン不足が相次ぐなど、社会インフラの悪化が問題となっている。
経済協力(単位 億円)
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力(2018年度まで) 実績なし
- (2)無償資金協力(2018年度まで、ENベース) 14.21億円
- (3)技術協力実績(2018年度まで、JICAベース) 107.65億円
- (注)日本は、2017年以降、ベネズエラ避難民への支援として、ベネズエラ国内及びコロンビア、ペルー、エクアドル、ブラジル等の周辺国に対して、計4,400万ドル以上の関連支援を実施(2021年9月時点)。
2 主要援助国(2017年、DAC)
- (1)スペイン
- (2)米国
- (3)ドイツ
- (4)フランス
- (5)英国
二国間関係
1 外交関係
- 1938年8月19日
- 外交関係開始
- 1941年
- 外交関係中断
- 1952年
- 外交関係再開
2 経済関係
- 対日貿易
-
- 貿易額(2020年)及び主要品目(出典:財務省貿易統計)
- 対日輸出 40億円(原油、カカオ、アルミニウム、化学製品)
- 対日輸入 19億円(大部分が自動車を含む機械及び輸送用機器)
3 文化関係
毎年1~2月にかけ、日本文化週間を実施。
4 在留邦人数
203人(2020年10月現在)
5 在日ベネズエラ人数
537人(2020年12月現在)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1984年2月 | 森下特派大使(大統領就任式) |
1986年1月 | 桜内衆議院議員、稲葉衆議院議員 |
1987年9月 | 倉成外務大臣 |
1989年2月 | 山下特派大使(大統領就任式) |
1990年7月 | 土屋参議院議長 |
1992年7月 | 皇太子殿下 |
1992年9月 | 小渕衆議院議員 |
1993年4月 | 武藤外務大臣 |
1994年1月 | 山下衆議院議員(日本・ベネズエラ友好議連会長) |
1997年7月 | 逢沢衆議院外務委員長 |
1999年2月 | 平沼特派大使(大統領就任式) |
2008年6月 | 西村衆議院議員、山際衆議院議員、近藤衆議院議員 |
2008年11月 | 西村外務大臣政務官 |
2009年10月 | 内藤総務副大臣(総理大臣特使) |
2010年4月 | 武正外務副大臣 |
2011年2月 | 松下経済産業副大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1985年 | ペレス元大統領 |
1987年5月 | アスプルア蔵相 |
1987年11月 | ウルタード投資基金総裁 |
1988年4月 | ルシンチ大統領訪日(国賓)(国交樹立50周年にあたる) |
1989年2月 | テヘラ・パリス外相(大喪の礼) |
1990年11月 | モラレス・ベージョ国会議長(即位の礼) |
1991年4月 | ロドリゲス経企相 シスネロス勧業相 トーレス投資基金総裁 |
1991年10月 | シスネロス勧業相 |
1991年12月 | スクレ・ガイアナ開発公社総裁 |
1992年10月 | パラ・エネルギー鉱山相 |
1993年10月 | オチョア外相(外賓) |
1995年10月 | マトス・アソカル蔵相 |
1996年8月 | ポレト投資基金総裁 イナティ・ガイアナ開発公社総裁 |
1997年2月 | ブレリ・リバス外相(外賓) |
1997年10月 | ペトコフ経企相 ロハス・パラ通産相 |
1997年12月 | アリエッタ・エネルギー鉱山相 マルティネス環境天然資源相 |
1999年10月 | チャベス大統領(非公式) |
2001年3月 | ガルシア・ベネズエラ日本友好議連会長一行 |
2002年9月 | ラミーレス・エネルギー鉱山相 |
2003年8月 | ロドリゲス・ベネズエラ石油公社(PDVSA)総裁 |
2004年5月 | ロハス・ベネズエラ石油公社(PDVSA)副総裁 |
2005年6月 | ファリア環境・天然資源相(博覧会賓客) |
2009年3月 | ラミーレス・エネルギー石油相 |
2009年4月 | チャベス大統領、ラミーレス・エネルギー石油相他 |
2009年5月 | ラミーレス・エネルギー石油相 |
2009年7月 | チャコン科学技術・中工業相 |
2009年9月 | モレホン観光相 |
2010年2月 | ラミーレス・エネルギー石油相 |
2011年12月 | ラミーレス石油鉱業相 |
2012年4月 | ラミーレス石油鉱業相 |
2013年6月 | ラミーレス石油鉱業相 |
2021年7月 | マルドナド・青年スポーツ相(東京2020オリンピック競技大会) |
2021年8月 | マルドナド・青年スポーツ相兼社会主義的社会・領土開発担当副大統領(東京2020パラリンピック競技大会) |
7 二国間条約・取極
- 1988年4月 技術協力協定
- 2000年10月 青年協力隊派遣取極