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討議の記録

 2006年4月17日、麻生太郎外務大臣とJ・トーマス・シーファー駐日米国大使は、2008年に予定される米空母キティホークと米海軍が保有する9隻のニミッツ級空母のうちの1隻である空母ジョージ・ワシントンとの交替について討議を行った。これに関連し、両者は以下を記録にとどめることを希望した。

1.シーファー大使より以下のとおり述べた。

(1)米国政府が2005年10月に空母キティホークの後継艦はニミッツ級空母とするとの決定を発表した際に明らかにしたとおり、米国政府は日本の防衛と地域の平和と安定の維持にコミットしている。空母キティホークを空母ジョージ・ワシントンと交替させることは、米国が、日本の防衛に貢献し、また、地域において米国及びその同盟国の安全保障上の利益を確保する能力を大いに向上させるものである。ニミッツ級空母は、平時においては信頼できる、独立の前方展開のプレゼンスと抑止力を提供するとともに、様々な作戦や戦闘の状況においては強力かつ持続的な戦力を提供することとなる。米国政府は、このような向上した防衛能力の提供のために2008年に横須賀に到着する空母ジョージ・ワシントンを西太平洋地域に前方展開させる決定に対する日本国政府の支持を評価する。

(2)2005年10月に米国政府が説明したとおり、通常型空母を空母キティホークの後継艦とするよう求める地元の要請について米国政府は真剣に考慮したが、現存する通常型空母は2008年以降前方展開の任務につくことはできないとの結論に至ったものである。米国の2006会計年度の予算は、空母ジョージ・ワシントンが空母キティホークの後継艦となるために西太平洋地域に前方展開する準備のための1400万ドルを含んでいる。さらに、2008年に退役する空母キティホークを除いて現存する唯一の通常型空母である空母JFKについては、アレスティング・ギア(緊急停止装置)、カタパルト(射出機)、ボイラーなど空母にとって基幹的な機能を担う部分の損傷が激しく、そのような損傷のため、米海軍による艦載機のオペレーションが禁止されている。そのような中で、米海軍を含む米政府は空母JFKの2007年中の退役の方針を明らかにしており、また、米議会においても2007年に空母JFKが退役することを可能とするための法案が提出されている。これらはすべて、米国政府の国防関係幹部が日本国政府にこれまでに明確に述べてきているように、空母JFKが空母キティホークの後継艦となるために前方展開する可能性は皆無であるとの結論を導くものである。

(3)同時に、米国政府は、米原子力軍艦の安全性に関し、日本国民、特に地元から表明されている懸念をよく承知している。米国政府は、これらの懸念に応えるべく日本国政府と協力していくことにコミットしている。

(4)このため、3月23日の蒲谷亮一横須賀市長の麻生外務大臣に対する要請も踏まえて、米国政府としては、米原子力軍艦の際立った運用の記録と安全性についてより良く理解して頂くべく、安全性に関する情報についてのペーパーを作成した。

2.これに対して、麻生外務大臣より以下のとおり述べた。

(1)日本国政府としては、米国政府の日本の防衛と地域の平和と安定の維持へのコミットメントを評価しており、日本国民、特に地元の懸念に応えるための米国政府の努力を評価する。

(2)日本国政府としても、米原子力軍艦の安全性に関するファクト・シートは、地元の理解を促進していく上で極めて有効であると考えている。日本国政府は、引き続き米国政府の協力を求めたい。日本国政府としては、従来より、一貫して、米原子力軍艦の寄港時の安全性について確信しており、このファクト・シートは、かかる判断をより一層裏付けるものと信ずる。

(3)日本国政府は、西太平洋地域に前方展開する米国の空母として、空母ジョージ・ワシントンを空母キティホークの後継艦とするという米国政府の決定を支持している。なお、日本国政府としては、空母を含む米海軍のプレゼンスが日本の安全に寄与していると評価しており、米海軍の前方展開する空母に求められる運用上の即応性と能力の基準を満たさない軍艦が空母キティホークと交替することによって、我が国の安全保障がいかなる意味においても損なわれるようなことがあってはならないと考えている。

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