トルクメニスタン
トルクメニスタン(Turkmenistan)
基礎データ
一般事情
1 面積
48万8,000平方キロメートル(日本の約1.3倍)
2 人口
650万人(2023年:国連人口基金)
3 首都
アシガバット(Ashgabat)
4 民族
トルクメン系(85%)、ウズベク系(5%)、ロシア系(4%)、その他(6%)等(2003年推計値:CIA World Fact Book)
5 言語
公用語はトルクメン語(テュルク諸語に属し、トルコ(共和国)語やアゼルバイジャン語に近い)。ロシア語も広く通用。
6 宗教
主としてイスラム教スンニ派
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
8世紀~10世紀頃 | トルクメン民族の起源とされるオグズ族が、アラル海付近のステップ地帯を中心に中央アジア地域に展開 |
10世紀 | イスラム教に改宗したオグズ族の他称としてトルクマーンが使用されるようになる |
11世紀~12世紀頃 | テュルク系セルジューク朝の下、各地で軍事的な主力として活躍 |
14世紀~16世紀 | 現在のトルクメン諸部族の形成が進む |
16世紀~19世紀 | ヒヴァ・ハン国やブハラ・アミール国の下、現在のトルクメニスタン領オアシス地域に徐々に定着。半農半牧の生活に移行 |
1869年 | 帝政ロシアがカスピ海東岸に侵攻し、クラスノヴォツク(現トルクメンバシ)の礎を築く |
1881年 | ギョクデペの戦い(帝政ロシア軍の侵攻に対する抗戦) |
1885年 | 帝政ロシアがトルクメン諸部族のほとんどを支配下におく |
1918年 | ロシア連邦共和国の一部としてトルキスタン自治ソビエト社会主義共和国成立 |
1924年 | ソ連の民族共和国境界画定によりトルクメン・ソビエト社会主義共和国が成立 |
1990年8月22日 | 共和国主権宣言 |
1990年10月27日 | ニヤゾフ大統領就任 |
1991年10月27日 | 共和国独立宣言 |
1992年5月16日 | 共和国憲法採択 |
1995年12月 | 国連総会において「永世中立国」として承認される |
1999年12月28日 | 議会の全会一致によりニヤゾフ大統領が終身大統領となる |
2006年12月21日 | ニヤゾフ大統領死去 |
2007年2月 | 大統領選挙が実施され、グルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領代行が当選、同月14日に大統領に就任 |
2012年2月 | 大統領選挙が実施され、ベルディムハメドフ大統領が再選 |
2017年2月 | 大統領選挙が実施され、ベルディムハメドフ大統領が再選 |
2022年3月 | グルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領による権力移譲の意を受けた前倒し大統領選挙が実施され、同大統領長男のセルダル・ベルディムハメドフ副首相が当選、同月19日に大統領に就任 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
セルダル・ベルディムハメドフ大統領(2022年3月就任、任期7年)
3 議会
- 一院制
- (トルクメニスタン国会「メジリス」:定数125、任期5年、前回選挙は2018年3月)
4 政府
- (1)首相
- (憲法上、閣僚会議議長(首相)は大統領が兼任する)
- (2)外相
- ラシッド・メレドフ(副首相兼任)
5 内政
1991年10月27日共和国独立宣言。
独立前の1990年10月から大統領職にあったニヤゾフ大統領は、反対派勢力を排除して強力かつ個人崇拝的な独裁体制を確立。他方、その非民主的体制や人権問題について国際社会からの批判を受けた。
ニヤゾフ大統領は2006年12月に死去。2007年2月11日に実施された大統領選挙で、ベルディムハメドフ大統領代行(前副首相兼保健・医療工業相)が89.23%の得票率で当選し、同14日、大統領に就任した。
2008年9月に行われた憲法改正では、大統領から任命される議員から構成されていた最高意思決定機関「人民評議会(ハルク・マスラハティ)」が廃止され、選挙を通じて選出される議員から成る「議会(メジリス)」の権限が拡大された。同年12月には、同国で初めてOSCEを含む国際監視団の活動をともなう形で議会選挙が実施された。
2012年2月、大統領選挙が実施され、ベルディムハメドフ大統領が再選。
2017年2月、大統領選挙が実施され、ベルディムハメドフ大統領が三選(得票率97.69%)。
2021年1月に発効した改正憲法により二院制に移行。従来の「メジリス」を下院とし、新たに「人民評議会(ハルク・マスラハティ)」を上院として設置。同年3月の上院議員選挙にベルディムハメドフ大統領が立候補して当選し、上院議長に就任(大統領職兼務)。
2022年2月、グルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領による任期満了前の権力委譲の意向を受け、同年3月、前倒し大統領選挙が実施され、同大統領長男のセルダル・ベルディムハメドフ副首相が当選し、大統領に就任。
2023年1月に行われた憲法改正により、現行の二院制議会を一院制のトルクメニスタン国会(メジリス)に改組するとともに、人民権力の最高代表機関としての「人民評議会(ハルク・マスラハティ)」を議会とは別に創設。グルバングルィ・ベルディムハメドフ上院議長が「人民評議会」議長に就任。
外交・国防
1 外交基本方針
独立以降、自ら「積極的中立」政策(等距離・全方位外交・実利重視)と呼ぶ独自の外交方針を標榜。1992年5月、独立国家共同体(CIS)の集団安全保障条約(CSTO)に署名せず、また、2005年のCIS首脳会合においてCIS正加盟国から「準加盟国」となった。1995年12月の国連総会では、同国の「永世中立国」としての地位が認められた。
他方、第2代大統領として2007年に就任したグルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領は、中立政策を維持しつつもより開放的な外交姿勢を採用しており、2007年8月の上海協力機構首脳会合に「ゲスト」として初参加、その後も5回に亘り同首脳会合にゲスト参加し、また、2012年と2019年には準加盟国ながらCISの議長国を務め、2017年の「中央アジア+日本」対話・外相会合でも議長国を務めるなど、国際社会との関係強化の動きを示した。2007年12月には、首都アシガバットに国連中央アジア予防外交センター(UNRCCA)が開所された。
グルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領(当時)は外遊にも前向きであり、日本には2009年12月にトルクメニスタン元首として初めて訪問し、2013年9月に2度目の訪問、その後、2015年3月に第3回国連防災世界会議(於:仙台市)出席のため、2019年10月に即位礼正殿の儀参列のため、大統領退任後の2022年9月には人民評議会議長として安倍元総理の国葬儀に参列するため訪日している。第3代のセルダル・ベルディムハメドフ大統領も、こうした前大統領の外交政策を維持している。
2 軍事力
- 総兵力36,500人(陸軍33,000人、海軍500人、空軍3,000人)、準兵力20,000人
- (ミリタリー・バランス2023)
(注)トルクメニスタンは永世中立国であるが、自衛のための軍隊を保持している。
経済
((注)かっこ内は出典)
1 主要産業
鉱業(天然ガス・石油など)、農業(綿花)、牧畜
2 GDP
780.0億ドル(2022年:IMF推計値)
3 一人当たりGDP
12,500ドル(2022年:IMF推計値)
4 経済(実質GDP)成長率
1.8%(2022年:IMF推計値)
5 物価上昇率
11.5%(2022年:IMF推計値)
6 失業率
5.0%(2022年:ILO推計値)
7 貿易額
- (1)輸出
- 102.82億ドル
- (2)輸入
- 62.50億ドル
(2021年:トルクメニスタン国家統計委員会)
8 主要貿易品目
- (1)輸出
- 天然ガス、石油、石油製品
- (2)輸入
- 機械設備・装置、化学製品・化学産業製品、ベースメタル及びその製品
(2021年:トルクメニスタン国家統計委員会)
9 主要貿易相手国
- (1)輸出
- 中国、イタリア、ロシア、トルコ、ウズベキスタン
- (2)輸入
- トルコ、UAE、ロシア、中国、ドイツ
(2021年:トルクメニスタン国家統計委員会)
10 通貨
マナト(Manat:1993年11月1日導入)(CIS統計委員会)
11 為替レート
1ドル=3.5マナト(2023年6月現在(固定レート):トルクメニスタン中央銀行)
12 経済概況
トルクメニスタンは、埋蔵量世界第4位の豊富な天然ガスを有し(BP統計によると2020年末時点での天然ガス確認埋蔵量は13.6兆立方メートルで、世界の7.2%)、主にその輸出を基盤に2010年代初頭まで高い経済成長率を実現。
2021年は天然ガス輸出量の75%が中国向けだった一方、天然ガス輸出先の多角化を目指しており、2019年に停止していたロシア向け輸出を再開させたほか、2022年にも停止していたイランへの輸出(アゼルバイジャンとのスワップ取引)を再開している。また、TAPI(トルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタン、インド)パイプライン建設計画に積極的姿勢を見せている。
農業部門は、隣国ウズベキスタンやタジキスタンと同様に、大規模な灌漑による綿花生産が中心となっている。
経済協力
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力 45.05億円(2021年度までの累計)
- (2)無償資金協力 9.51億円(2021年度までの累計/文化・草の根無償等を含む)
- (3)技術協力実績 13.61億円(2021年度までの累計)
- ((1)~(2)はいずれも交換公文ベース)
2 主要援助国
米国、ドイツ、韓国、日本、英国
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2016年 | 米国 4.32 | ドイツ 1.26 | 日本 0.50 | フランス 0.18 | 韓国 0.14 | 6.70 |
2017年 | 米国 2.99 | 日本 1.93 | ドイツ 1.26 | 韓国 0.41 | 英国 0.29 | 7.39 |
2018年 | 米国 3.11 | ドイツ 1.60 | 韓国 1.32 | フランス 0.70 | 日本 0.55 | 8.01 |
2019年 | 米国 4.41 | 韓国 3.97 | ドイツ 1.58 | 日本 1.52 | 英国 0.79 | 13.55 |
2020年 | 米国 3.68 | ドイツ 1.75 | 韓国 1.45 | 英国 0.70 | ハンガリー 0.41 | 9.09 |
(出典:OECD/DAC)
二国間関係
1 政治関係
- (1)国家承認日 1991年12月28日
- (2)外交関係開設日 1992年4月22日
- (3)日本大使館開館 2005年1月1日
- (4)在日トルクメニスタン大使館開設 2013年5月
2 経済関係
- 日本の対トルクメニスタン貿易(2023年:財務省貿易統計)
-
- 輸出
- 226.6億円(自動車、鋼管、建設用・鉱山用機械)
- 輸入
- 1,442万円(美術品・収集品及びこっとう、無機化合物、敷物類)
3 文化関係
一般文化無償資金協力 計2件 計6,560万円(2022年度まで)
草の根文化無償資金協力 計1件 計975万円(2022年度まで)
計:7,535万円(2022年度まで)
- 最近の事例 (実施額)
- 2021年度 アザディ記念世界言語大学日本語教育機材整備計画(975万円)
4 在留邦人数
14人(2023年10月現在:外務省)
5 在日当該国人数
63人(2023年6月現在:法務省)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1997年7月 | 対ロシア・中央アジア対話ミッション(団長:小渕恵三衆議院議員) |
2002年7月 | シルクロード・エネルギー・ミッション(団長:杉浦正健外務副大臣) |
2005年1月 | 逢沢一郎外務副大臣 |
2010年11月 | 伴野豊外務副大臣(第9回日本トルクメニスタン経済合同会議) |
2014年4月 | 牧野たかお外務大臣政務官 |
2015年6月 | 山際大志郎経済産業副大臣 |
2015年8月 | 薗浦健太郎外務大臣政務官 |
2015年10月 | 安倍晋三総理大臣 |
2015年12月 | 世耕弘成内閣官房副長官 |
2016年9月 | 滝沢求外務大臣政務官 |
2017年5月 | 岸田文雄外務大臣(「中央アジア+日本」対話・第6回外相会合) |
2017年9月 | 堀井学外務大臣政務官 |
2017年11月 | 堀井学外務大臣政務官 |
2019年6月 | 磯﨑仁彦経済産業副大臣 |
2021年9月 | 江島潔経済産業副大臣 |
2023年7月 | 吉川ゆうみ外務大臣政務官 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1992年10月 | バザロフ副首相(旧ソ連支援東京会議) |
1994年10月 | クリエフ対外経済関係相(第1回日本トルクメニスタン経済合同会議) |
1996年9月 | サパロフ副首相(第3回日本トルクメニスタン経済合同会議) |
1999年8月 | ハリコフ副首相 |
2000年3月 | グルバンムラドフ副首相 |
2001年6月 | ガンディモフ副首相(中央アジア諸国への投資促進会議) |
2003年11月 | グルバンムラドフ副首相 |
2005年12月 | アイドグディエフ副首相(第6回日本トルクメニスタン経済合同会議) |
2009年12月 | ベルディムハメドフ大統領(公式実務賓客)(メレドフ副首相兼外相、 ホジャムハメドフ副首相を含む副首相6名、大臣10名同行) |
2012年7月 | ホジャムハメドフ副首相(第10回日本トルクメニスタン経済合同会議) |
2012年11月 | メレドフ副首相兼外相(「中央アジア+日本」対話・第4回外相会合) |
2012年11月 | エリャソフ保健・医療工業相 |
2013年9月 | ベルディムハメドフ大統領(公式実務賓客)(メレドフ副首相兼外相、ホジャムハメドフ副首相を含む副首相7名、大臣3名同行) |
2013年11月 | アルトィコフ・エネルギー相(閣僚級招へい) |
2015年2月 | グルバノフ公共事業相(閣僚級招へい) |
2015年3月 | ベルディムハメドフ大統領(第3回国連防災世界会議)(メレドフ副首相兼外相、ホジャムハメドフ副首相を含む副首相6名、大臣2名同行) |
2015年7月 | ホジャムハメドフ副首相 |
2015年12月 | アンナメレドフ鉄道運輸相 |
2016年4月 | ヌルベルディエヴァ国会議長 |
2017年6月 | メレドフ副首相兼外相(第12回日本トルクメニスタン経済合同会議) |
2018年10月 | メレドフ副首相兼外相 |
2019年10月 | ベルディムハメドフ大統領(即位の礼)(メレドフ副首相兼外相、オヴェゾフ副首相、セリモフ建設・建築相同行) |
2021年7月 | セルダル・ベルディムハメドフ副首相(東京オリンピック開会式) |
2022年9月 | グルバングルィ・ベルディムハメドフ人民評議会議長(安倍元総理国葬儀) |
2022年12月 | セルダロフ財務・経済相(中央アジア投資フォーラム) |
2022年12月 | メレドフ副首相兼外相(第14回日本トルクメニスタン経済合同会議、「中央アジア+日本」対話・第9回外相会合) |
2024年1月 | メレドフ副首相兼外相 |
7 二国間条約・取極
- 1995年1月11日 日ソ間で結んだ条約の承継を確認