セルビア共和国
セルビア共和国(Republic of Serbia)
基礎データ


一般事情
1 面積
77,474平方キロメートル(北海道とほぼ同じ)
2 人口
約662万人(2024年、セルビア統計局)
3 首都
ベオグラード(人口約168万人)
4 民族
セルビア人(80.64%)、ハンガリー人(3.5%)、ボシュニャク人(2.31%)等(2022年国勢調査)
5 言語
セルビア語(公用語)、ハンガリー語等
6 宗教
セルビア正教(セルビア人)、カトリック(ハンガリー人)、イスラム教(ボシュニャク人)等
7 国祭日
2月15日(国家の記念日)
8 略史
年月 | 略史 |
---|---|
6世紀~7世紀 | セルビア人等スラブ系民族がバルカン半島に定住。 |
11世紀 | セルビア王国建国、14世紀のドゥシャン王の時代に大いに栄える。 |
1389年 | オスマン・トルコに敗北し、その支配下となる。 |
1878年 | ベルリン条約によりセルビア王国の独立承認。 |
1918年 | 第一次世界大戦後、「セルビア人・クロアチア人・スロベニア人王国」(後、ユーゴスラビア王国)建国。 |
1941年 | 第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによる占領。ユーゴスラビア王国消滅。 |
1945年 | 「ユーゴスラビア連邦人民共和国(1963年に社会主義連邦共和国に国名変更)」(6共和国で構成)の1共和国となる。 |
1992年 | ユーゴ解体の中で、モンテネグロとともに「ユーゴスラビア連邦共和国」を建国。 |
1999年 | コソボ紛争により、NATO空爆を受ける。コソボが国連の暫定行政下となる。 |
2003年 | 「セルビア・モンテネグロ」に国名変更。 |
2006年 | モンテネグロの独立(6月)により、「セルビア共和国」となる。 |
2008年 | コソボがセルビアからの独立を宣言(2月)。 |
2014年 | EU加盟交渉開始(1月)。 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
アレクサンダル・ブチッチ大統領(2017年5月就任(2期目)。任期5年)
3 議会
1院制(定数250名)
会派 | 議席数 |
---|---|
セルビア進歩党 | 110 |
自由と正義の党 | 17 |
新セルビア民主党/セルビア王政復古運動 | 13 |
セルビア社会党 | 12 |
セルビア人民運動連合 | 12 |
緑=左派戦線 | 10 |
民主党 | 8 |
セルビア中道 | 8 |
我等-国民の声 | 6 |
自由市民運動/サンジャック民主行動党/民主活動党 | 6 |
統一年金者党 | 6 |
ボイボディナ・ハンガリー人同盟 | 6 |
セルビア社会民主党 | 6 |
統一セルビア | 5 |
環境蜂起 | 5 |
我等-国民の力 | 5 |
健全なるセルビア/社会主義者運動 | 5 |
その他 | 10 |
計 | 250議席 |
4 政府
セルビア進歩党連合を中心とする連立政権
- 首相:ジューロ・マツート(2025年4月就任。)
- 外相:マルコ・ジューリッチ(2025年4月再任。)
5 内政
- 2012年4月4日、タディッチ大統領(当時)が任期を10か月残して大統領職を辞任したことにより、セルビア大統領選挙がセルビア議会選挙及び地方選挙と同日の5月6日に実施された。その結果、与党民主党党首のタディッチ候補と野党セルビア進歩党党首のニコリッチ候補の上位2名による決選投票が実施されることとなり、5月20日の決選投票で、第1回投票で僅差の2位だったニコリッチ候補が逆転して、セルビア大統領に当選した。
- セルビア議会選挙については、野党勢力のセルビア進歩党連合(セルビア進歩党、新セルビア及び小規模政党で構成)が73議席を獲得し第1勢力となったものの、同連合単独では議会内過半数を制することができなかったことから、諸政党間で連立協議が行われた。その結果、7月10日に第1勢力のセルビア進歩党連合、第3勢力のセルビア社会党連合(セルビア社会党、統一年金者党、統一セルビアで構成)、及び第6勢力のセルビア地域連合(G17プラスを中心とした地域政党等の連合体)による連立合意が成立し、7月23日にダチッチ・セルビア社会党党首を首班とする、連立政権が発足した。
- ダチッチ政権は、EUへの統合の推進と投資誘致、雇用創出、財政赤字の削減等による景気回復を最重要課題とするとともに、コソボについては独立未承認の立場を堅持しつつ、EU仲介のコソボとの「ベオグラード・プリシュティナ間対話」におけるこれまでのすべての合意を履行し同対話を継続する方針を掲げた。
- 民主党が分裂するなど野党勢力が低迷する中、セルビア進歩党は更なる党勢の拡大を目指して議会解散・総選挙を主導し、2014年3月16日に投票が行われた。セルビア進歩党を中心とする連合は全議席の6割を超える議席を獲得して圧勝し、同年4月27日、ブチッチ同党党首を首班とするセルビア社会党連合との連立内閣が発足した。ブチッチ政権は、議会に強い基盤を有しており国民の支持率も高く、EU加盟に向けた行財政・司法改革や汚職対策、投資誘致等に取り組んだ。
- 2016年3月、ブチッチ首相は更なる改革に対して国民の支持を得るため、議会を解散して総選挙を実施することを決定し、4月24日に前倒し総選挙が行われた。この選挙の結果、セルビア進歩党が再び勝利し、セルビア進歩党とセルビア社会党の連立を中心とする第2次ブチッチ政権が発足した。
- 2017年4月、任期満了に伴う大統領選挙が行われ、現職首相のブチッチ候補が第一次投票で過半数の票を獲得し、当選した。これを受け、ブチッチ首相は首相の座を辞任し、同年5月31日、大統領に就任した(同大統領は2022年4月の大統領選挙で再選)。
- ブチッチ大統領は、自身の大統領就任により首相の座が空席になったことを受け、ブルナビッチ地方自治・行政大臣を首相候補に指名した。2017年6月29日、議会はこれを承認し、ブルナビッチ政権が発足した。
- 2020年6月21日、総選挙が行われ、セルビア進歩党が250議席中188議席を獲得し、同年10月に再びブルナビッチ首相を首班とする内閣が発足した。
- 2022年4月及び2023年12月の議会選挙でもセルビア進歩党が勝利。2023年12月の議会選挙の結果、セルビア進歩党連合が129議席を獲得し、翌24年5月に同党のブチェビッチ元国防大臣を首相とする内閣が発足した。
- 2025年1月、ブチェビッチ首相が、セルビア北部のノビ・サド駅で発生した駅舎崩落事故を発端とする学生デモ拡大の影響を受け、首相の座を辞する意向を表明。同年3月、国民議会で辞表が承認され、同年4月にマツート・ベオグラード大学医学部教授を首相とする内閣が発足した。
外交・国防
1 外交基本方針
- 2008年7月に発足した、民主党(党首:タディッチ大統領(当時))、G17プラス、及びセルビア社会党を中心とした連立政権は、EUへの加盟を最優先課題とし、2009年12月にEUに加盟を申請した。
- セルビアは、EU側が加盟プロセス進展の条件とした旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)との協力に関し、2011年6月のムラディッチ被告人及び同年7月のハジッチ被告人の逮捕・ICTYへの移送によりEU側が完全に満足のいく水準まで達成したこと、また、2011年3月から実施しているEU仲介によるコソボとの「ベオグラード・プリシュティナ間対話」において、コソボの地域フォーラムへの参加や検問所の統合管理を含む7つの合意に達したことなどが評価され、2012年3月の欧州理事会においてセルビアにEU加盟候補国の地位が付与された。
- セルビアは、2006年12月にNATOから平和のためのパートナーシップ(PfP)への参加を認められ、また、2010年9月にはブリュッセルにセルビアのNATO代表部を開設する一方で、軍事的中立政策を取っている。なお、国連には2000年11月に加盟した。
- 2008年2月のコソボによるセルビアからの独立宣言に対し、コソボ独立に反対するセルビアは、2008年10月、国連を通じて国際司法裁判所にコソボ独立問題を付託し、2010年7月、同裁判所が、コソボの独立宣言は国際法に違反しないとの勧告的意見を発表した。2010年9月、セルビアはEUとの協議を経て、EUがセルビアとコソボとの対話のプロセスを促進する用意がある旨の決議案を国連総会にEUと共同で提案し、同決議案は採択された。
- セルビアは、コソボの独立は認めないとの立場を堅持しつつも、EU仲介によるコソボとの「ベオグラ-ド・プリシュティナ間対話」を2011年3月から2012年2月まで合計9回実施し、住民基本台帳、移動の自由、大学等の卒業証書の受入れ、税関印、土地台帳、検問所の統合管理、コソボの地域フォーラムへの参加について合意に達した。
- 2013年6月、欧州理事会は、同4月及び5月のセルビア・コソボ間合意を評価して、セルビアとの間でEU加盟交渉を開始することを決定し、セルビアのEU加盟交渉は2014年1月に開始された。セルビアのEU加盟に当たっての要交渉項目は計35項目。セルビアはEUとの間で、2015年3月までに全項目に関するスクリーニングを終了させており、2019年8月現在、17項目で本交渉が開始されている。
- 2020年9月、米国の仲介により、コソボとの間で経済関係の正常化に関する合意が成立したほか、2023年2月にはEU仲介の下、関係正常化に向けた合意、同年3月には同合意の付属文書に合意した。
2 軍事力
兵力約25,000人、予備役2,000人(2025年、Global Firepower)
経済
1 主要産業
製造業(13.3%)、卸売・小売業(10.4%)、不動産業(5.0%)、農業等(3.8%)(2023年、セルビア統計局)
2 GDP
891億米ドル(2023年、セルビア統計局)
3 一人当たりGNI
13,536米ドル(2023年、セルビア統計局)
4 経済成長率
3.8%(2023年、セルビア統計局)
5 物価上昇率
3.9%(2024年、セルビア統計局)
6 失業率
8.6%(2024年、セルビア統計局)
7 貿易(2024年、セルビア統計局)
- 輸出:
- 約330億米ドル
- 輸入:
- 約420億米ドル
8 主要貿易品目(2024年、セルビア統計局)
- 輸出:
- 電気機械・装置・器具、発電用機械・設備、金属鉱石・金属スクラップ、ゴム製品、非鉄金属、果実・野菜、穀物・穀物製品
- 輸入:
- 電気機械・装置・器具、石油・石油製品、道路車両、一般産業用機械・設備、医薬品、金属製品、非鉄金属、鉄鋼
9 主要貿易相手国(2023年、セルビア統計局)
- 輸出:
- ドイツ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、中国、イタリア、ハンガリー
- 輸入:
- ドイツ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、中国、イタリア、ハンガリー
10 通貨
ディナール
11 経済概要
- セルビアの成長率は欧州債務危機以降緩やかな回復を見せ、2018年及び2019年は4%超の成長を達成。2020年においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、0.9%のマイナス成長となっているが、その後、2021年に7.7%の成長率を達成。2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響等を受け2.5%に落ち込んだものの、2023年は3.8%まで上昇した。国際通貨基金(IMF)からの支援を受け支出削減の努力を続けた結果、2017年に単年度で財政黒字化を達成し、現在IMFからは資金援助なしの政策協議の形での協力を受けている。今後の更なる経済成長のためには、国営企業の民営化、民間企業の成長と競争力強化などの民間セクター開発が重要な課題となっている。
- 貿易は、輸出については2020年の約195億米ドルから2023年の約330億米ドル、輸入については2020年の約420億米ドルへと増加した。セルビアは、中欧自由貿易協定(CEFTA)に加盟しているほか、EU諸国、ロシア、トルコ及び中国とも自由貿易協定を結んでいる。なお、セルビアの主な貿易相手国はEU諸国であり、輸出入の50%以上を占めている。
- 外国直接投資の誘致はセルビア政府の優先事項であり、セルビアのマクロ経済の安定は外国直接投資に依存している。近年、外国直接投資の流入は自動車関連分野及び農業・食料・飲料分野を中心に増加し続けており、2022年は44億ユーロ、2023年は45億ユーロと過去最高を更新している。2023年はEU諸国からの投資が6割以上を占めているが、中国からの投資も3割を占め、特に道路や鉄道といったインフラ建設に盛んに投資している。
経済協力
1 日本の二国間援助実績
- 2022年度までの累計総額:約581.17億円
-
- 円借款:約282.52億円
- 無償資金協力:約232.37億円
- 技術協力:約66.28億円
2 セルビアに対する主要援助国・援助額(2021年、単位:百万米ドル)
- (1)ドイツ(126.13)
- (2)フランス(71.71)
- (3)日本(62.81)
二国間関係
1 政治関係
日本は2006年6月16日、セルビアがセルビア・モンテネグロを承継することを確認した。なお、両国民間の友好関係の起算年は、明治天皇と1878年にセルビアの独立が承認された後の初代君主であるミラン・オブレノビッチ王との間で書簡が交換された、1882年となっている。
2 経済関係
- (1)日本の対セルビア貿易額・品目(2023年財務省貿易統計)
-
- 輸出:約69.3億円/ゴム製品、医薬品、織物用糸
- 輸入:約535.2億円/たばこ、衣類、果実・野菜
- (2)日系企業による直接投資:
- 7件(日本たばこインターナショナル、矢崎総業、ハイレックス、関西ペイント、前川製作所、TOYO TIRE、日本電産)
3 文化関係
日本の文化無償資金協力により、セルビアの文化・芸術団体に対して楽器、視聴覚機材、音響・照明機材等を供与。また、草の根文化無償資金協力により、セルビアの世界遺産の修復・保全のための機材、日本語教育施設のLL教室機材等を供与。
4 在留邦人数
255名(2024年10月現在)
5 在日当該国人数
260人(2024年6月現在:法務省統計)
6 要人往来(外交関係開設以降)
年月 | 要人名 |
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2001年7月 | 田中外務大臣公式訪問 |
2005年4月 | 小野寺外務大臣政務官 |
2005年5月 | 田野瀬財務副大臣(EBRD総会出席) |
2006年5月 | 山中外務大臣政務官 |
2009年5月 | 西村外務大臣政務官 |
2012年9月 | 山根外務副大臣 |
2013年12月 | 岸外務副大臣 |
2014年7月 | 西村内閣府副大臣 |
2015年12月 | 武藤外務副大臣 |
2017年9月 | 中根外務副大臣 |
2018年1月 | 安倍総理大臣 |
2018年10月 | 山田外務大臣政務官 |
2019年4月 | 薗浦総理大臣補佐官 |
2019年7月 | 城内環境副大臣 |
2019年8月 | 河野外務大臣 |
2024年4月 | 穂坂外務大臣政務官 |
2024年7月 | 上川外務大臣 |
年月 | 要人名 |
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2001年2月 | スビラノビッチ外相(外務省賓客) |
2003年5月 | スビラノビッチ外相 |
2004年4月 | スビラノビッチ外相、ルコバッツ対外経済関係相 |
2007年11月 | ポポビッチ・エネルギー・鉱業相 |
2009年4月 | ジェーリッチ副首相兼科学技術開発相 |
2009年10月 | イェレミッチ外相(外務省賓客) |
2010年12月 | ダチッチ副首相兼内務相 |
2011年3月 | タディッチ大統領(公式実務訪問賓客)、ジェーリッチ副首相兼科学技術開発相、イェレミッチ外相 |
2011年11月 | ジューキッチ・デヤノビッチ議会議長(衆議院議長招待) |
2012年10月 | ディンキッチ財務・経済相(IMF・世銀総会出席) |
2019年10月 | ブルナビッチ首相(即位礼正殿の儀参列) |
2020年1月 | シャルチェビッチ教育科学技術相(第1回日セルビア科学技術協力合同委員会出席) |
2024年6月 | モミロビッチ通商相、ベゴビッチ科学・技術開発・イノベーション相、メサロビッチ経済相 |
2025年2月 | コバチェビッチ行政・地方自治相 |
2025年6月 | マーリ第一副首相兼財務相、ラザレビッチ通商相 |
7 二国間条約・取極
通商航海条約、文化協力協定、科学技術協定(旧ユーゴより承継)、技術協力協定、租税協定
8 外交使節
- (1)日本:今村 朗 特命全権大使
- (2)セルビア:アレクサンドラ・コヴァチュ駐日大使