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ラヴロフ・ロシア連邦外務大臣の訪日(結果概要)

平成19日10月23日

 10月23日、高村正彦外務大臣は、午後6時より約1時間30分、訪日中のラヴロフ・ロシア連邦外務大臣と二国間問題について会談を行い、続いて約1時間、夕食会において国際情勢について意見交換を行ったところ、概要以下のとおり。

【要旨】

1.日露関係総論

(1)冒頭、高村外務大臣より、我が国は、重要な隣国であるロシアとの関係を重視しており、「日露行動計画」を基礎として幅広い分野で協力を進めていきたい、最大の懸案である領土問題の最終的な解決に向けて進展が得られるようラヴロフ大臣と共に努力したい旨述べた。

(2)ラヴロフ大臣は、まず、国後島で重度の火傷を負ったニキータ君の迅速な移送について謝意を表明した。また、全体として日露間の協力が進展していることに満足している旨述べ、訪日直前にプーチン大統領から日露関係を停滞させることなく発展させるよう指示を受けたことに言及した。

2.政治対話

(1)11月5日、6日にナルィシュキン副首相が訪日すること、12月6日にモスクワにおいて谷内外務事務次官とデニソフ外務第一次官との間で第3回戦略対話を実施することにつき一致した。

(2)また、次回の外相会談及び貿易経済日露政府間委員会の会合を来年の双方の都合のつく可能な限り早い時期に実施できるよう調整を開始することで一致した。

3.北方領土問題

(1)両大臣は、シドニーにおける日露首脳会談において、平和条約交渉について具体的な進展が得られるよう両首脳が指示を出すことで一致したことを受け、約1時間に亘り、真剣な交渉を行った。

(2)高村大臣より、単に交渉を続けるのではなく、平和条約締結に向けて実際に進展が得られるように交渉を強化しなければならない点を強調した。ラヴロフ大臣は、自分の訪日直前にプーチン大統領より、「福田総理との電話会談で日露関係の作業で如何なる停滞もないようにすることで合意した。ロシア側においても、いかなる停滞もしないようにしなければならない」旨の指示を受けたことを引用しつつ、この問題を凍結するつもりは全くない、問題の簡単で早期の解決はあり得ず、忍耐強く現実を考慮して作業を進めなければならないが、この問題の解決策を探求する姿勢を崩すことなく、歴史的なしこりを残さない形で、双方に受入可能な解決策を見出すべく努力することを確約する旨述べた。

(3)その上で、両大臣は、日露関係をより高い次元に引き上げるための努力を行うとともに、領土問題の最終的解決に向け、これまでの諸合意及び諸文書に基づき、双方に受入可能な解決策を真剣に検討していくことを確認した。

(4)また、四島交流等の改善策として、双方の立場を害さないことを前提に、北方四島と北海道本島の間の冬季における航空機の利用の可能性を含め検討していくことにつき一致した。

(5)高村大臣より、北方四島に第三国の労働者を入れて開発が進められていることが日本で報じられているが、このようなことが行われることは、日本側の対露感情に良い影響を与えないので、領土交渉に悪影響を及ぼすようなことは避けてほしい旨述べた。これに対し、ラヴロフ大臣は、生態系の保全、四島交流における航空機の利用の問題と同様、この問題についても、柔軟性を発揮して双方に受入可能なやり方で日本側と協力する用意がある旨述べた。高村大臣より、北方四島での協力については、双方の立場が害されない形で知恵を出していくことが重要である旨指摘した。

4.日露の隣接地域における協力

 両大臣は、平和条約締結交渉進展のための環境整備にも資するものとして、また、北西太平洋地域における日露の重要な協力として、北方四島を含む日露の隣接地域、特にオホーツク海沿岸において生態系の保全等の分野において日露間で協力を進めることを確認し、できるだけ早期に専門家会合を開催することで一致した。特に、環境問題が主たるテーマとなる来年の北海道洞爺湖サミットまでに具体的な協力プログラムを作成できるよう、今後、作業していくことで一致した。

5.極東・東シベリアにおける協力

(1)「極東・東シベリアにおける日露間協力強化に関するイニシアティブ」のフォローアップを開始する場として、10月26日にウラジオストクにおいて開催される貿易経済日露政府間委員会地域間交流分科会が重要であるとの点で一致した。なお、地域間交流分科会には、日本側より、政府、日本経済団体連合会を含む民間企業関係者、地方自治体から成るハイレベルの代表団が出席する予定である。

(2)また、「イニシアティブ」の実施状況を監督し、その後のフォローアップにおいて生じる課題を特定し、解決策を議論するための新たな政府間のメカニズムについて両国間で検討していくことで一致した。

6.実務分野

(1)漁業(含む密漁・密輸出対策)

(イ)両大臣は、漁業分野における日露間の既存の枠組みを堅持し、互恵的な形で協力を発展させていくことを確認した。

(ロ)また、9月に東京で開催された水産物の密漁・密輸出対策に関する日露関係省庁会議を肯定的に評価し、引き続き双方の検討作業を促進していくことで一致した。

(2)原子力協力協定

 両国の互恵的な協力分野である原子力協力の発展のため、平和利用の確保に配慮しつつ、原子力協力協定の早期締結に向け、交渉を加速することで一致した。この関連で、第3回交渉が11月9日、10日に東京で開催される予定である。

(3)国際交流基金モスクワ事務所の開設

 両大臣は、日露両国において文化交流のためのセンターを開設することについて協議を行うことで一致した。高村大臣より、早期に、国際交流基金モスクワ事務所を暫定的に開設するとの希望を表明した。

(4)刑事共助条約、査証簡素化協定、青年交流協定

 刑事共助条約及び査証簡素化協定の早期締結並びに青年交流協定の改正に向け、交渉を促進していくことで一致した。

7.国際情勢

(1)北朝鮮問題に関し、高村大臣より、拉致、核及びミサイルの問題を包括的に解決し、日朝国交正常化を目指している、これら全ての分野でロシアも影響力を行使してもらいたい旨述べた。これに対し、ラヴロフ大臣は、これらはすべてロシアの問題でもある、拉致問題についても日朝間の接触を支持しており、日本側の立場を理解している、ロシアとしても北朝鮮に対してシグナルを送っているが、北朝鮮側は拉致問題を早期に解決しなければならないとの認識を深めつつあるとの印象を得ている旨述べた。

(2)イランの核問題については、ラヴロフ外務大臣より、先般行われたプーチン大統領のイラン訪問の印象について説明があった。

(3)テロとの闘いについては、高村大臣より、国会におけるテロ対策特措法の審議状況を説明するとともに、海上自衛隊による補給支援活動の重要性について理解を求めた。ラヴロフ外務大臣からは、国連安保理決議第1776号の採択の際にロシア側が棄権したことに関し、本質的に反対したものではなく時間的制約に因るものであった、今後、日本側の立場を考慮する用意がある、緊密に連絡していこうとの説明があった。

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