ロシア連邦
日露経済関係概観
日露経済の経緯と現状
ロシア経済は、1998年のロシア金融危機を底に、ルーブル切り下げによる国内産業の復調と原油価格の高騰を主な原動力として回復に転じ、1999年以降は10年連続でプラス成長を実現した。これを追うように日露間の貿易高は2003年以降飛躍的に増加し、2008年には2003年比約5倍の約300億ドルに達した。進出企業数も増加し(2003年231社、2008年373社、2021年416社)、これまで伝統的であったエネルギーや貿易に加え、製造業の分野でも大きく増加した。日本からロシアへの直接投資も2004年以降増加し、2009年には2004年比約7倍に達した。
2009年には、国際金融危機の影響を受け、ロシアの成長率はマイナス7.8%となり、ロシア国内需要の冷え込み・自動車関税引き上げ措置等により日露間の貿易額は前年比半分以下に落ち込み、単年の直接投資額も100億円近く減少した。
その後ロシア経済は回復軌道に乗ったが、2015年に再びマイナス成長に転じ、日露間の貿易及び直接投資も減少傾向となったが、2016年からは増加傾向であった。
しかし、2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による需要減の影響を受け、日露間の貿易総額は減少した。また、そこから回復した後の2022年2月にロシアによるウクライナ侵略が開始し、日本の対露制裁措置により日本からロシアへの輸出額が減少した一方、世界的な資源価格の高騰や円安の影響などによりロシアから日本への輸入額は増加した。
8項目の「協力プラン」の具体化を含む日露経済関係の進展
2016年5月、ロシア・ソチでの日露首脳会談において、安倍総理から8項目の「協力プラン」(注)を提示し、両首脳は、製造業、農業、エネルギーなどの分野における最近の協力プロジェクトの進捗を確認しつつ、互恵的な協力を進めていくことで一致した。
(注)(1)健康寿命の伸長、(2)快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市作り、(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大、(4)エネルギー、(5)ロシアの産業多様化・生産性向上、(6)極東の産業振興・輸出基地化、(7)先端技術協力、(8)人的交流の抜本的拡大
2019年9月の東方経済フォーラムの際の日露首脳会談では、両首脳は、8項目の「協力プラン」の具体的成果について確認した。特に、北極LNG2の最終投資決定や、トヨタによるサンクトペテルブルクでの特別投資契約の締結を歓迎した。
2019年12月の貿易経済に関する日露政府間委員会では、茂木外務大臣とオレシュキン経済発展大臣は、日露経済関係を包括的に議論し、茂木大臣からは、エネルギー、非エネルギー分野を合わせて貿易関係全体を底上げする取組を進めたい旨述べた。特に、「極東」については、その可能性を開花させるために、関係省庁と連携しながら、農林水産業を始めとする生産力強化、シベリア鉄道の利用促進、カムチャツカでのLNG積替基地建設等の具体的な取組を促進し、それらの案件とも有機的に連携しつつ、極東と日本の北海道・日本海側の連結性を強化し、全体を一つの経済圏として開発する可能性について提起し、双方で協力を進めていくことで一致した。また、8項目の「協力プラン」をはじめ、日露双方の関係省庁を交えて、エネルギー、運輸、医療・保健、都市環境、観光、先端技術等の幅広い分野に関して協力の現状や課題、更なる協力の進展に向けた方策について議論を行った。
2020年12月には、茂木外務大臣とレシェトニコフ経済発展大臣との間での貿易経済に関する日露政府間委員会共同議長間会合が行われ、両大臣は、引き続き8項目の「協力プラン」の下で両国の貿易・経済分野の協力を発展させていくことで一致した。
しかし、2022年2月にロシアがウクライナへの侵略を開始し、経済分野を含め二国間関係を従来どおりとすることは困難な状況となったため、8項目の「協力プラン」を含む、ロシアとの経済協力に関する政府事業は、当面見合わせることを基本としている。