北朝鮮

基礎データ

令和4年4月21日

一般事情

1 面積

12万余平方キロメートル(朝鮮半島全体の55%)(日本の33%に相当)

2 人口

約2,578万人(2020年、国連統計部)

3 首都

平壌(ピョンヤン)

4 民族

朝鮮民族

5 言語

朝鮮語

6 宗教

仏教徒連盟、キリスト教徒連盟等の団体があるとされるが、信者数等は不明。

7 略史

  • 3世紀終わり頃に氏族国家成立
  • 三国時代(4世紀頃~7世紀後半)
  • 統一新羅(676~935)
  • 高麗(918~1392)
  • 朝鮮(1392~1897) ※1897年10月に国号を大韓帝国と改称
  • 大韓帝国(1897~1910)
  • 日本による統治(1910~1945)を経て、第2次大戦後、北緯38度以北をソ連が占領。
  • 1948年北朝鮮「政府」樹立。同時期に朝鮮半島の南半分では大韓民国が成立。

政治体制・内政

1 朝鮮労働党

 朝鮮労働党(「朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮労働党の領導の下に全ての活動を行う」とされる)
 総書記:金正恩(キム・ジョンウン)
 政治局常務委員:金正恩、崔竜海(チェ・リョンヘ)、趙甬元(チョ・ヨンウォン)、朴正天(パク・ジョンチョン)、金徳訓(キム・ドックン)
 政治局員:李日煥(リ・イルファン)など
 政治局員候補:朴泰徳(パク・テドク)など

2 主要機関

(1)国務委員会(「国家主権の最高政策的指導機関」とされる)
国務委員長:金正恩(国務委員長は、「国家を代表する朝鮮人民民主主義人民共和国の最高指導者」とされる)
第一副委員長:崔竜海
副委員長:金徳訓
国務委員:趙甬元、朴正天、金与正(キム・ヨジョン)など
(2)最高人民会議(「最高主権機関」・「立法権を行使」・「任期5年」とされる)
最高人民会議常任委員会委員長:崔竜海
(3)内閣(「国家主権の行政的執行機関」・「国家全般の管理機関」とされる)
総理:金徳訓
外相:李善権(リ・ソングォン)
(4)朝鮮人民軍
武力最高司令官:金正恩

3 近年の動向

  • (1)1994年7月、金日成(キム・イルソン)主席が死去。金正日氏は金主席の存命中から国防委員長等を兼任していたが、金主席の死後、1997年10月に労働党総書記に就任した。また、1998年9月には憲法を改訂し、主席制を廃止、政務院を内閣に改称する等、統治機構の改編等に着手した。
     2009年4月、再び憲法を改訂し、国防委員長を「国家の最高領導者」とするなどその権限を強化した(2010年4月にも憲法を一部修正)。2010年9月には、朝鮮労働党代表者会を開催。金正日国防委員長を党総書記に改めて推戴するとともに、空席が続いていた党要職の選出・補充人事を実施し、金正恩氏が党中央軍事委員会副委員長に就任した。
  • (2)2011年12月、金正日国防委員長が死去。同月、金正恩氏が朝鮮人民軍最高司令官に就任し、2012年4月には、同氏が朝鮮労働党第一書記及び国防委員会第一委員長に就任。金正恩国防委員会第一委員長を中心とした体制の下、故・金正日国防委員長が行ってきた先軍政治という軍事優先政策の継承が表明された。
  • (3)2013年3月に行われた労働党中央委員会全体会議(総会)で、経済建設と核武力建設を並進させるという新たな戦略的路線を提示。また、同総会では世界の非核化が実現するまで核武力を質・量的に拡大・強化するとした。
  • (4)2013年12月8日の労働党政治局拡大会議において、金正恩の義理の叔父で側近と言われていた張成澤(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長(党政治局員、党行政部長)が全ての職務から解任され、12日の国家安全保衛部特別軍事裁判で死刑判決が下され、即時執行された。
  • (5)2016年5月には朝鮮労働党の第7回目となる党大会が36年ぶりに開催され、経済建設と核武力建設を並進させていく「並進路線」が恒久的な戦略的路線と位置付けられるとともに、「国家経済発展5か年戦略」(2016年から2020年)が発表された。また、党規約の改正により、党委員長の役職が新設されるとともに、金正恩党第一書記が党委員長に推戴され、金正恩委員長を中心とする新たな党体制が確立された。さらに、同年6月には最高人民会議第13期第4回会議が開催され、国防委員会を国務委員会に改編し、金正恩国防委員会第一委員長が国務委員長に推戴された。
  • (6)2021年1月5日から12日までの8日間、朝鮮労働党の最高指導機関である第8回党大会が開催された。党大会では、金正恩国務委員長が、「人民大衆第一主義政治」を強調しつつ、過去5年間の成果・反省及び今後の課題に係る活動総括報告を行い、核・ミサイル開発の継続、米朝関係を始めとする対外関係、南北関係などについて言及したと報じられた。また、金正恩朝鮮労働党委員長を「朝鮮労働党総書記」に推戴するなどの人事が公表されるとともに、党大会を5年に1回招集するなどを明記した党規約の改正も発表された。

対外政策・軍事

1 対外政策

 北朝鮮が現在外交関係を有している国家は159か国、1地域。北朝鮮は従来、善隣友好外交を掲げ、主に旧東側諸国及び非同盟諸国との外交活動を展開してきたが、2000年に入り、英独をはじめとして多くの西側諸国との外交関係を樹立した。2007年には外交活動を活発化させ、アラブ首長国連邦等5か国と新たに外交関係を樹立した他、1983年のラングーン事件を機に断交していたミャンマーとの外交関係も回復させた。

2 軍事

(1)基本政策
 北朝鮮は、全軍の幹部化、全軍の近代化、全人民の武装化、全土の要塞化という四大軍事路線に基づいて軍事力を増強してきた。北朝鮮の軍事力は、陸軍中心で、依然として大規模な軍事力を維持している。一方、冷戦構造の崩壊による旧ソ連圏からの軍事援助の減少や経済の不調による国防支出の限界、韓国の防衛力の急速な近代化といった要因により、韓国軍及び在韓米軍に対して通常戦力において著しく劣勢に陥っており、その装備の多くは旧式である。このため北朝鮮は、大量破壊兵器や弾道ミサイルの増強に集中的に取り組むことにより劣勢を補おうとしていると考えられる。また、情報収集や破壊工作からゲリラ戦まで各種の活動に従事する大規模な特殊部隊などを保有している。
(2)支出
 不明(注:2021年2月の最高人民会議第14期第6回会議において、2021年の「国防費」は「国家予算歳出総額」の15.9%を占める旨発表されている。)
(3)兵役
 義務兵役制
(4)兵力
 陸軍110万、海軍6万、空軍11万、戦略軍1万(ミリタリーバランス2021推定値)

3 核・ミサイル問題

  • (1)北朝鮮の核問題をめぐり、北朝鮮は2005年9月に行われた六者会合における共同声明において、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄することを約束。しかし、北朝鮮は2006年7月に弾道ミサイル発射を強行し、10月には核実験実施を発表。これに対して国連安保理は、それぞれ決議第1695号及び第1718号を採択した。2007年2月の六者会合において、「共同声明の実施のための初期段階の措置」が採択されて以降、北朝鮮は寧辺の核施設の活動停止及び封印に着手し、同年9月の六者会合で採択された「共同声明の実施のための第二段階の措置」に基づき、すべての核施設の無能力化及びすべての核計画の完全かつ正確な申告を約束した。しかし、北朝鮮は無能力化作業に着手し、申告を行ったものの、検証の具体的枠組みの構築に関して前向きな姿勢を示さず、第二段階の措置は完了に至らなかった。その後、2008年12月に六者会合に関する首席代表者会合が開催されたが、以来、六者会合は開催されていない。
  • (2)2009年4月、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、これを非難した国連安保理議長声明に反発し、軽水炉の自力建設への着手、使用済み核燃料棒の再処理、核実験及び長距離弾道ミサイル発射実験を行う旨表明。5月には核実験を実施し、それに対して採択された安保理決議第1874号に反発し、プルトニウムの兵器化、ウラン濃縮への着手を発表した。また、7月には複数発の弾道ミサイルを発射し、11月には、8、000本の使用済み核燃料棒の再処理を8月末までに成功裏に終えた旨発表した。
  • (3)2010年に入り、北朝鮮は、六者会合への復帰のためには国連安保理決議に基づく対北朝鮮制裁の解除が必要とし、非核化措置の前に朝鮮戦争終結のための平和協定締結の協議を求めるとの立場を表明。その後、北朝鮮は韓国哨戒艦沈没事件(3月)や延坪島砲撃事件(11月)といった挑発行為を繰り返すとともに、同年11月には、訪朝した米国人科学者にウラン濃縮施設や「軽水炉」の建設現場を案内するなどしてウラン濃縮計画等を公表した。
  • (4)2010年12月にワシントンで開催された日米韓外相会合において、日米韓は、六者会合の再開のためには、南北対話の進展と非核化を始めとする自らの約束を真剣に実施する意思を示す北朝鮮側の具体的行動が必要との立場で一致。その後、2011年7月から10月にかけて、非核化に関する南北対話及び米朝対話がそれぞれ2回にわたり実施された。
  • (5)2012年2月に北京において三回目の米朝対話が実施され、米朝双方がそれぞれ長距離ミサイル発射、核実験、ウラン濃縮活動を含む寧辺での核関連活動のモラトリアムの実施を含む合意内容を発表した。しかし、4月、北朝鮮は「人工衛星」と称する弾道ミサイルを発射し、これを受け、国連安保理は発射を非難する議長声明を発出した。さらに、2012年12月、北朝鮮は「人工衛星」と称する弾道ミサイルを発射し、これを受け、発射を非難し制裁を強化する国連安保理決議第2087号が採択された。その後の2013年2月に、北朝鮮は3回目の核実験を強行した。これを受け、3月に国連安保理は決議第2094号を採択し、核実験を安保理決議違反として非難し、制裁を追加・強化する措置を決定した。
  • (6)2016年1月、北朝鮮は4回目となる核実験を実施し、2月には、「人工衛星」と称する弾道ミサイルの発射を強行した。これらを受け、同月、日本は、独自の対北朝鮮措置の実施を決定した。また、3月、国連安保理は、制裁を大幅に強化する決議第2270号を全会一致で採択した。しかし、その後も北朝鮮は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を含め、弾道ミサイル発射を相次いで強行した。6月に発射された弾道ミサイルは、弾道ミサイルとして一定程度の機能を示したほか、8月に発射された弾道ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。また、9月には3発の弾道ミサイルを同時に発射し、3発とも日本のEEZに落下した。さらに、同月、5回目となる核実験を、前回実験から僅か8か月というこれまでになく短期間のうちに実施し、その後も弾道ミサイル発射を繰り返した。このような北朝鮮の核・ミサイル開発に対して、11月、国連安保理は、決議第2270号を強化し、北朝鮮への人、物資、資金の流れ等を更に厳しく規制する決議第2321号を全会一致で採択した。日本は、国連安保理理事国として、関係国と緊密に連携しながら、国連安保理の議論を主導した。
  • (7)北朝鮮は2017年2月から5月までに合計9回12発の弾道ミサイルを発射し、うち4発は日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。これを受けて、国連安保理は6月、決議第2356号を採択した。しかしながら、北朝鮮は、7月には、大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイルを2回連続で発射し、2回とも日本のEEZに着弾させた。北朝鮮による挑発行動等を受けて、日本政府は7月及び8月に更なる対北朝鮮措置を実施し、資産凍結措置の対象となる団体を追加指定した。また、国連安保理でも北朝鮮からの石炭輸入の全面禁止等の措置を含む決議第2371号が採択された。北朝鮮は8月29日及び9月15日にも、日本上空を通過する弾道ミサイルを2回連続で発射するとともに、9月には、2016年9月以来となる、過去最大出力と推定される規模の6回目の核実験を実施した。同月、国連安保理は、北朝鮮に対する石油分野における供給規制や北朝鮮籍労働者に対する新規労働許可の発給停止等の措置を含む決議第2375号を採択した。さらに、北朝鮮は、11月にもICBM級の弾道ミサイルを発射し、日本のEEZに着弾させ、前回発射からの75日間、核・ミサイル開発を継続してきたことを明らかにした。これに対し、日本は11月及び12月にも更なる対北朝鮮措置を実施したほか、12月には国連安保理において決議第2397号が採択された。
  • (8)金正恩国務委員長は2018年1月の「新年の辞」において、南北対話の必要性に言及する一方、核弾頭と弾道ミサイルを大量生産し、実戦配備に拍車をかけていくことを表明した。
      4月20日に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第3回全員会議において、北朝鮮は、核実験及び大陸間弾道ミサイル(ICBM)試験発射の中止、核実験場の廃棄等を発表し、同月27日の南北首脳会談で発出された「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言文」においては、南北として、完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した。5月24日、北朝鮮は、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破し、また、5月26日の南北首脳会談において、韓国側の発表によれば、金正恩国務委員長は、改めて朝鮮半島の完全な非核化の意志を明らかにした。
     6月12日の史上初となる米朝首脳会談では、米朝首脳共同声明が発出され、金正恩国務委員長がトランプ大統領に対して、朝鮮半島の「完全な非核化」について、自ら署名した文書の形で直接約束した。これは、4月の日米首脳会談で安倍総理大臣からトランプ大統領に対して、米朝首脳同士の合意を署名文書で残すことを提起したことを踏まえたものであった。
  • (9)2019年2月27日及び28日には、ハノイ(ベトナム)で第2回米朝首脳会談が開催されたものの、米朝間の合意には至らなかった。トランプ大統領は、同首脳会談について、金正恩国務委員長と建設的な時間を過ごしたとしつつ、北朝鮮側は米国が望んでいた非核化の大部分を行う用意があったが、そのために完全な制裁解除に応じることはできなかった旨述べた。
  • (10)2019年10月にはストックホルム(スウェーデン)において米朝実務者協議が行われた。しかし、2020年及び2021年は、米朝間の対話に具体的な進展は見られなかった。
  • (11)バイデン大統領は、2021年5月に対北朝鮮政策レビューを完了。同レビューを通じ、米国は、朝鮮半島の完全な非核化が引き続き目標であることや、我が国を含む同盟国の安全確保のための取組を強化する旨明らかにしている。5月21日に行われた米韓首脳会談後の共同記者会見では、バイデン大統領は、金正恩国務委員長が何らかのコミットメントをすれば、自分は同委員長に会うだろうと述べた。また、米国は、様々な機会において米国は北朝鮮に対して敵対的な意図を抱いておらず、北朝鮮側と前提条件なしに会う用意がある旨発信してきている。
     一方、金正恩国務委員長は、2021年9月の最高人民会議第14期第5回会議において行った演説の中で、我が方に対する米国の軍事的威嚇と敵視政策には少しも変ったことがなく、米国は「外交的関与」と「前提条件のない対話」を主張しているが、国際社会を欺瞞して自らの敵対行為を覆い隠すためのベールにすぎないと述べた旨報じられた。
  • (12)米国は、2022年1月、弾道ミサイル発射を含め、北朝鮮によるここ数か月の一連の挑発行為への対応として、大量破壊兵器の開発・拡散に関与したなどとして、以下の1団体及び7個人を米国独自の制裁措置(資産凍結措置)の対象に追加指定。北朝鮮はこれに強く反発した。
     さらに同月、朝鮮労働党第8期第6回政治局会議が招集され、金正恩委員長が参席し、「シンガポール朝米首脳会談以降、われわれが朝鮮半島情勢の緩和の大局面を維持するために傾けた誠意ある努力にもかかわらず、米国の敵視政策と軍事的脅威がもはや黙過することのできない危険ラインに至ったと評価し、われわれの物理的力をさらに頼もしく確実に固める実際的な行動へと移るべきだとの結論を下し、米国の対朝鮮敵対行為を確固として制圧することのできる、より強力な物理的手段を遅滞なく強化して発展させるための国防政策課題を再任務配分し、われわれが先決的、主動的に講じた信頼構築措置を全面的に再考した上で、暫定的に中止していた全ての活動を再稼働する問題を迅速に検討」するように指示したと報じられた。
  • 詳細は「北朝鮮の核・ミサイル問題」参照

統一・南北関係に関する近年の動向

  • (1)2000年6月、金大中(キム・デジュン)大統領(当時)が訪朝し、平壌にて金正日国防委員長との間で初の南北首脳会談が行われた。両首脳は「南北共同宣言」に署名し、これを契機に、南北の交流、協力が拡大した。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領(当時)も、基本的に金大中政権の政策を継承し、2007年10月に訪朝、金正日国防委員長との間で第2回南北首脳会談が行われた。この一連の過程を通じて、開城工業団地開発事業、金剛山観光事業、鉄道・道路連結事業を始めとする各種経済協力事業が活発に行われた。
  • (2)李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)は、2008年2月に大統領に就任し、「非核・開放・3000構想」(注)を掲げ、政権の対北朝鮮政策として、北朝鮮による核の放棄と対北朝鮮支援を比較的明確に関連付ける政策をとった。同年7月に北朝鮮兵士による金剛山韓国人観光客射殺事件が発生し、南北関係は困難な状況を迎えた。
     2010年3月、韓国海軍の哨戒艦「天安」号が黄海・白翎(ペンニョン)島近海で沈没。同年5月、各国専門家を含む軍民合同調査団は、「天安」号は北朝鮮の小型潜水艇から発射された魚雷攻撃により沈没したとの調査結果を発表し、韓国政府は北朝鮮に対し、謝罪及び事件関係者の即時処罰等を要求した。また同年11月に北朝鮮が延坪島(ヨン・ピョンド)を砲撃すると、南北関係は再び緊張した。このような中で、2011年7月と9月の2度にわたり非核化に関する南北対話が行われたが、実質的な進展はなかった。
  • (注)「北朝鮮が核を放棄し、改革・開放に乗り出すならば、北朝鮮の1人当たり所得が10年以内に3,000ドルに達するよう積極的に支援する」という構想。
  • (3)2013年2月に就任した朴槿恵(パク・クネ)大統領は、確実な抑止力を土台に、南北の間に信頼を積み上げていく「朝鮮半島信頼プロセス」を進めていく考えを表明。(5)しかし、2014年3月、北朝鮮は黄海の北方限界線(NLL)にて、海上射撃訓練を実施し、一部が、NLL以南の韓国側海上に落下したことから、韓国側は対応射撃を行った。さらに韓国政府は、2014年に入り、北朝鮮から飛来した無人機が数回韓国国内で墜落したと発表。北朝鮮側は、韓国側が事件を捏造していると批判し、南北の共同調査を通じて事実を解明すべきと主張した。
  • (4)朴槿恵大統領は2014年3月28日のドイツのドレスデン訪問時に南北関係について演説を行い、人道支援、インフラ支援、交流拡大を柱とする構想を発表するとともに、北朝鮮の核放棄を求めた。一方の北朝鮮側は、2014年6月、国防委員会の「南朝鮮当局に送る特別提案」を通じ、韓国に対し、南北関係改善のため、お互いに誹謗・中傷や軍事的敵対行為(含む米韓合同軍事演習)を中止すること等を提案。韓国統一部は同提案を拒否すると発表した。
  • (5)2015年8月のDMZにおける砲撃事件を受けて発表された南北共同発表文に基づき、同年10月には金剛山にて朴槿恵(パククネ)政権にて2度目となる離散家族再会事業が実施され、12月には開城(ケソン)工業団地で次官級の南北当局者会談が開催されたが、特段の合意事項の発表なく終了した。
  • (6)2016年2月、韓国政府は1月の核実験及び2月の弾道ミサイル発射への対応として開城工業団地を全面的に中断する措置を発表するとともに韓国政府の努力は北朝鮮の核兵器と長距離ミサイルの高度化に悪用された結果となったと説明した。これを受け、北朝鮮は同工業団地にいる韓国国民を追放し、同工業団地を軍事統制区域とする旨宣言した。2016年5月、北朝鮮は南北軍事当局会談に向けた実務協議を呼びかけたが、韓国政府はまず北朝鮮側の非核化に向けた行動が必要であるとして、北朝鮮の提案を受け入れなかった。その後、9月の核実験や累次の弾道ミサイル発射を受け、韓国は、12月に日米とも連携しつつ、新たな独自の対北朝鮮措置を発表した。
  • (7)2017年5月に発足した韓国の文在寅政権は、同年7月に発表した「ベルリン構想」等を通じ、北朝鮮に南北対話の再開を提案したものの、北朝鮮がこれに応じない状況が続いていた。しかし、金正恩国務委員長が2018年の「新年の辞」で南北対話の必要性に言及したことが契機となり、同年、南北関係は大幅に進展した。
     北朝鮮は、平昌冬季オリンピック競技大会の開会式に選手団と共に、金永南最高人民会議常任委員長、金与正(キムヨジョン)朝鮮労働党中央委員会第一副部長らを代表団として派遣した。2月10日、文在寅大統領と同代表団が会談し、金与正第一副部長は金正恩国務委員長の南北関係改善に向けた意欲を込めた親書を手交し、「文在寅大統領と早期に会う用意がある。都合の良い時期に北を訪問いただくことを要請する」との金正恩国務委員長の招請の意思を口頭で伝達した。これに対し、文大統領は「今後、条件を整えて成功させよう」という意向を明らかにした。
     2018年には、3回の南北首脳会談が開催された。同年1回目の南北首脳会談は、4月27日、板門店の韓国側地域「平和の家」で開催され、南北首脳間の合意文書として「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言文」が採択された。2回目の首脳会談は、5月26日、板門店の北朝鮮側地域「統一閣」で開催された。同会談で金正恩国務委員長は米朝首脳会談実現への意志を示したとされている。3回目の首脳会談は、文在寅大統領が9月18日から20日まで北朝鮮を訪問した際に行われ、首脳間の合意文書として「9月平壌共同宣言」が採択された。
  • (8)2021年1月の朝鮮労働党第8回党大会において行った報告の中で、金正恩国務委員長は「南北関係は(2018年4月の南北首脳会談で署名された)板門店宣言以前の時期に後戻りした。」としつつも、韓国の「態度次第で、近いうちに平和と繁栄の新たな出発点へと戻ることもあり得る。」と述べたと報じられた。文在寅大統領は、党大会の6日後に行われた新年記者会見で、「南北関係の発展に役立つのであれば、いつでも、どこでも(南北首脳会談は)可能である。」と述べるとともに、人道協力を始めとする南北協力に前向きな姿勢を示した。文在寅大統領は、9月の国連総会一般討論演説において、2021年が南北の国連同時加盟から30年となる年であることに触れつつ、「朝鮮半島の『終戦宣言』のために国際社会が力を合わせることを改めて促し、南北米の三者または南北米中の四者が集まり、朝鮮半島での戦争が終結したことを共に宣言することを提案する」と述べた。これに対し、金正恩国務委員長は、9月30日の最高人民会議における施政演説において、「終戦宣言に先立ち、互いへの尊重が保障され、他方に対する偏見的な見方と不公正で二重的な態度、敵視の観点と政策からまず撤回されるべきだというのが、わが方の不変の要求」と述べたと報じられた。また、同演説において金正恩国務委員長は、8月から途絶していた南北通信連絡線を再開させる意思を表明し、10月4日から南北通信連絡線が復旧した。

経済

1 経済規模(名目GNI)(過去5年間の推移)(韓国銀行推計)

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
36.4 36.6 35.9 35.6 35.0

(兆韓国ウォン)

2 一人当たりGNI(過去5年間の推移)(韓国銀行推計)

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
146.1 146.4 142.8 140.8 137.9

(万韓国ウォン)

3 経済成長率(過去5年間の推移)(韓国銀行推計)

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
3.9 -3.5 -4.1 0.4 -4.5

(%)

4 貿易額

(1)輸出入額(KOTRA,韓国統一部推計)
  2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
北朝鮮の輸出 28.2 17.7 2.4 2.8 0.9
北朝鮮の輸入 37.1 37.8 26.0 29.7 7.7

(億ドル)

(2)主要貿易相手国(2020年)(KOTRA、推計)
中国(7.6億ドル)、ロシア(0.4億ドル)、ベトナム(0.2億ドル)

5 通貨

北朝鮮ウォン

6 為替レート

1米ドル=109.0北朝鮮ウォン(2020年)(韓国銀行推計)

7 経済政策

  • 北朝鮮の対外貿易においては、中国が最大の貿易額を占めるが、2020年以降、新型コロナの感染拡大を受けた往来の制限などの影響で、中朝貿易の規模は大幅に減少した。2021年1月の第8回党大会において、金正恩国務委員長は、制裁、自然災害、世界的な保健危機により第7回党大会で示した「国家経済発展5か年戦略」で掲げた目標を達成できなかった旨述べ、自力更生及び自給自足を核心とした新たな「国家経済発展 5か年計画」(2021年から2025年)を提示したと報じられた。その後も北朝鮮の状況について、金正恩国務委員長は、「一層厳しい苦難の行軍を行うことを決心」(4月の細胞書記大会)、「史上かつてない難関が折り重なった」(10月の朝鮮労働党創建76周年記念講演会)などと言及したと報じられた。

日朝関係

1 政治関係

  • (1)外交関係なし。1991年1月より国交正常化交渉本会談を開始。1992年11月に第8回本会談で中断。1999年12月の村山訪朝団後、国交正常化交渉の再開・開催(2000年4月、8月、10月、2002年10月)。日朝赤十字会談開催(1999年12月、2000年3月、2002年4月、8月)。
  • (2)日朝首脳会談(2002年9月)にて日朝平壌宣言署名、翌10月に拉致被害者5名が帰国。2回目の日朝首脳会談(2004年5月)を経て、拉致被害者御家族5名が帰国。日朝ハイレベル協議(2004年2月、5月)、日朝実務者協議(2004年8月、9月、11月)、日朝政府間協議(2005年11月、12月)、日朝包括並行協議(2006年2月)、日朝国交正常化のための作業部会(2007年3月、9月)、日朝実務者協議(2008年6月、8月)を開催。2008年6月及び8月の日朝実務者協議では、拉致問題に関する全面的な調査の実施及びその具体的態様等について合意し、日本も北朝鮮が調査を開始するのと同時に日本による北朝鮮に対する措置の一部(人的往来及びチャーター便に関する措置)を解除することに合意したが、同年9月、北朝鮮より調査開始は見合わせることとした旨の連絡があった。
  • (3)2012年8月9~10日に日朝赤十字会談が開催され、同29~31日には日朝政府間協議のための予備協議が開催された。これらを踏まえ、11月15~16日に日朝政府間協議が開催され、拉致問題については、これまでの経緯やそれぞれの考え方についての議論を踏まえた上で、更なる検討のため、今後も協議を継続していくことで一致した。
  • (4)その後の日朝政府間協議は12月1日の北朝鮮によるミサイル発射予告後、諸般の事情を勘案し、延期されていたが、2014年3月に2回の赤十字会談を経て、3月末に1年4ヶ月ぶりに日朝政府間協議が開催された。5月26~28日のストックホルムでの日朝政府間協議では、北朝鮮側が拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を実施すること、日本側は北朝鮮が特別調査委員会を立ち上げ、調査を開始する時点で、我が国が北朝鮮に対してとっている措置の一部を解除することに合意した。その後、7月1日の北京における日朝政府間協議を経て、同月4日、北朝鮮が特別調査委員会の立ち上げ及び調査の開始を発表し、日本側は人的往来の規制や人道目的の北朝鮮籍の船舶の入港禁止を含む日本側が独自に行う対北朝鮮措置の一部解除を発表した。9月29日の日朝外交当局間会合において、北朝鮮側から、調査は初期段階であり、具体的な調査結果を通報できる段階にはないとの説明があったことを踏まえ、10月末には政府担当者を平壌に派遣し、28日~29日に特別調査委員会から調査の現状について詳細を聴取。日本側からは、拉致問題が最重要課題であることを繰り返し強調するとともに、迅速な調査と速やかな回答を強く求めた。2015年8月6日、マレーシアにおけるASEAN関連外相会議の機会に岸田外務大臣は李洙墉(リ・スヨン)北朝鮮外相と会談し、2014年5月の日朝合意の履行を求めつつ、日本国内の懸念を伝え、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を強く求めた。
  • (5)2018年2月9日、平昌冬季オリンピック競技大会開会式の際の文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領主催レセプション会場において、安倍総理大臣から金永南(キム・ヨンナム)北朝鮮最高人民会議常任委員長に対して、拉致問題、核・ミサイル問題を取り上げ、日本側の考えを伝えた。特に、全ての拉致被害者の帰国を含め、拉致問題の解決を強く申し入れた。また、9月、河野外務大臣は国連本部において、李容浩(リ・ヨンホ)北朝鮮外相と会談を行った。
  • (6)日本は、北朝鮮によるミサイル発射及び核実験に対して採択された国連安保理決議第1695号、第1718号、第1874号、第2087号、第2094号、第2270号、第2321号、第2356号、第2371号、第2375号及び第2397号に基づく措置(武器等の輸出入の禁止、資産凍結等)を実施している。また、国連安保理決議に基づく措置に加え、北朝鮮籍船舶の入港禁止措置(人道目的のものを除く)、北朝鮮との間の全ての品目の輸出入禁止等の独自の措置を実施している。

2 在日朝鮮人数

454,122名(外国人登録者のうち「韓国・朝鮮」の登録者数(2020年6月末現在・法務省)

3 要人往来(肩書は当時のもの)

(1)往
年月 要人名
1990年9月 金丸元副総理大臣(自民)、田辺副委員長(社会)
1995年3月 渡辺元副総理大臣(自民)、久保書記長(社会)、鳩山代表幹事(さきがけ)
1997年11月 森総務会長(自民)、伊藤幹事長(社民)、堂本座長(さきがけ)
1999年12月 村山元総理大臣(社民)、野中幹事長代理(自民)、園田議員(無所属)
2002年9月 小泉総理大臣
2004年5月 小泉総理大臣
(2)来
年月 要人名
1991年2月 金容淳労働党書記
2001年2月 楊亨燮最高人民会議常任委員会副委員長
2006年4月 金桂冠外務副相
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