中東

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日本・アラブ会議
A New Dawn: Arabs Looking East (新しい夜明け:東方に目を向けるアラブ)(概要)

平成19年11月21日

 11月20(火曜日)及び21日(水曜日)、エジプト、アレキサンドリアにて、日本・アラブ会議が開催されたところ、概要以下のとおり。

1.日本・アラブ会議とは

(1)「日本・アラブ会議」は、今年5月の安倍総理(当時)とムバラク・エジプト大統領との首脳会談(於:カイロ)での合意を踏まえ、日本とアラブ諸国が相互理解を深め、対話を促進するという目的で開催された。

(2)アラブ諸国から約150名、日本から100名を超える参加者を得て、「A New Dawn: Arabs looking East(新しい夜明け:東方に目を向けるアラブ)」というテーマの下、政治外交、経済財政、文化社会、科学技術、環境など幅広い分野において議論が行われた。

(3)この会議は、日本の近代化に学ぶというアラブ側のイニシアティブにより開催されることになったもので、日本及びアラブ連盟加盟国から17カ国が参加して行われた。このような大きな規模で日本とアラブ諸国の対話に関する国際会議が開かれたのは初めて。

2.開会セッション

 日・アラブ関係は、歴史的に負の遺産がなく、エネルギーを中心とした経済分野で着実に発展してきているが、今後、経済のみならず、政治、文化、科学技術等あらゆる分野で、日本とアラブの間のより一層のパートナーシップを強化していくべきとすることで共通の認識に達した。本会議をこのパートナーシップ強化のための「新しい夜明け」としての絶好の対話の機会とし、積極的な議論が交わされることに期待が表明された。なお、日本側からは、中山元外務大臣がスピーチを行い、アラブ側からは、ゴサイビ・サウジ経済企画大臣等がスピーチを行った他、当初出席予定であったナズィーフ・エジプト首相、アブルゲイト・エジプト外相、ムーサ・アラブ連盟事務総長のメッセージ代読があった。

3.全体セッション

 分科会での議論に先立ち、日本・アラブ関係に関する一般的かつ普遍的な議論として、時代が求める価値の的確な認識、明確なビジョンに基づいた開発、人材育成及び教育の重要性、科学技術の持つ可能性等につき議論がなされた。なお、日本側より、尾身元財務大臣(STSフォーラム座長)等がスピーチを行った。

4.分科会

 政治、経済財政、文化社会、科学技術環境の4分科会に分かれ、それぞれ3つのセッションが行われたところ、その概要以下のとおり。

(1)政治分科会

(イ)第1セッション: 「日本とアラブの関係」
 アラブ側より、中東地域の抱える諸問題に対し、アメリカ、イスラエル等とも良好な関係を有する日本が経済的な支援だけでなく政治的役割も更に強めることへの期待が表明された。また、イランの核問題、テロリズムについても議論が行われた。

(ロ)第2セッション: 「中東和平」
 アラブ側より、日本の「平和と繁栄の回廊」構想などの中東和平実現に向けた取組を評価する旨の発言があり、また、今月米国アナポリスにて開催される国際会議の展望について議論が行われた。

(ハ)第3セッション: 「アラブ地域の改革と近代化」
 アラブ側より、近代化に向けたアラブ諸国の改革努力について紹介があり、日本への支援について強い期待が表明された。また、西洋化無しの近代化、アラブ諸国のアイデンティティに関する議論も行われた。なお、日本側からは、小池百合子元防衛大臣が出席しスピーチを行った。

(2)経済財政分科会

(イ)第1セッション: 「日本とアラブの経済関係」
 これまで日本とアラブ諸国の関係はエネルギー分野中心であったが、石油資源は有限であることから、アラブ諸国は、天然資源の乏しい日本が省エネ技術を始めとする幅広い技術を獲得しながら経済発展を成し遂げた経験から学ぶ必要がある点につき議論がなされた。

(ロ)第2セッション: 「石油を超えた新しい経済関係に向けて」
 石油分野以外の多様な分野に対する投資の必要性が双方で確認された。加えて、日本・アラブ間の学術交流の重要性が強調され、その障壁となる言語問題の克服につき、問題意識が提起された。また、日本とアラブが直接対面する機会の増加(Look EastからTouch East)の機会を増やしていく必要性につき見解が一致した。

(ハ)第3セッション「日本の成功から学ぶ教訓」
 アラブ側より、アラブ諸国の潜在能力を育てる必要があり、そのためには日本の現場の経験や訓練プログラムに着目する必要がある点につき議論がなされた。また、キャパシティ・ビルディングのためには人的インフラへの投資が必要である点につき共通の認識に達した。

(3)文化社会分科会

(イ)第1セッション: 「グローバル化が文化社会に与える影響」
 グローバル化の進展により、伝統的な文化が分断される脅威につき議論が交わされ、アラブ側より、固有の文化・文明を有しつつ、外国からの文化を選択的に吸収して融合の文化を創り出した日本からは学ぶべき点が多い旨が表明された。また、文化交流における言語の障壁についても議論が行われた。

(ロ)第2セッション: 「歴史の波との葛藤:アラブと日本の映画に描かれる個人」
 歴史を通じて、絵・映像が人間生活をどのように描いてきたかにつき議論が行われ、日本側パネリストの山田洋次映画監督より、映画を通じた日本社会が紹介された。また、アラブ側より、更なる文化交流のため、日本・アラブ双方の映画、ドラマ等がそれぞれの地域で普及することに対する期待が表明され、商業ベースでの交流やマスメディアを通じた交流の重要性が確認された。

(ハ)第3セッション: 「平和構築に向けた文化交流」
 平和構築に向けた文化交流には、継続性が重要であり、子供を対象とした取組を推進する重要性につき議論された。また、NHKやアル・ジャジーラ等の国際的な発信力を強め、文化相互理解をより一層促進する必要性が確認された。

(4)科学技術・環境分科会

(イ)第1セッション: 「科学技術、イノベーション」
 アラブ側より科学技術を活用した水資源開発に対する高い関心が寄せられ、右に関する我が国の科学技術が紹介された。また、日・アラブ間おける科学技術の共同研究を促進するためにODA等のツールの活用が提唱された。なお、日本側より、尾身元財務大臣がスピーカーとして参加し、来年10月に京都にて行われる予定のSTSフォーラムにアラブ諸国からの広範な参加を呼びかけた。

(ロ)第2セッション: 「環境、気候変動」
 気候変動問題は、今現実に起きている問題であり、早急な対策が必要であることが確認された。また、エネルギー問題、特に再生可能エネルギーの活用に関して議論の焦点があてられ、我が国の環境技術の紹介も行われた。

(ハ)第3セッション: 「医療協力」
 エジプトと日本の緊密な医療協力、パレスチナへの日本の医療支援等の事例が紹介されるとともに、アラブ側より、バイオ・テクノロジーの活用、医療保険制度の普及等医療分野における共同研究・ノウハウ提供の可能性につき、期待が表明された。

5.閉会セッション

 複雑となった世界における深刻な諸課題に対処するために、日本とアラブ諸国の協力を強化することの重要性を確認し、アレキサンドリア宣言を採択した。また、本件会議のフォローアップの必要性が唱えられ、今後、参加者を含め関係者の間でフォローアップの方途が探られることになった。

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