ルクセンブルク大公国
ルクセンブルク大公国(Grand Duchy of Luxembourg)
基礎データ
令和6年7月18日


一般事情
1 面積
2,586平方キロメートル
2 人口
67.2万人(2024年1月、ルクセンブルク国立統計経済研究所)
3 首都
ルクセンブルク
4 言語
ルクセンブルク語、フランス語、ドイツ語
5 宗教
人口の48%が特定の宗派に属し、うち85%がカトリック(2020-21年欧州価値調査(EVS))
6 略史
年月 | 略史 |
---|---|
963年 | ルクセンブルク領の誕生 |
1354年 | ルクセンブルク公国に昇格。その後、他国による統治 |
1815年 | 大公国として自治を回復 |
1839年 | 領土が現在のルクセンブルク大公国とベルギー領リュクサンブール州に二分され、独立(ロンドン条約) |
1867年 | 永世中立国 |
1940年 | ドイツによる侵攻(1944年解放) |
1948年 | 中立政策を放棄、オランダ、ベルギーとともにベネルクス関税同盟を発足させる。 |
1949年 | 北大西洋条約機構(NATO)加盟 |
1952年 | 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)加盟 |
1958年 | 欧州経済共同体(EEC、後の欧州連合)・欧州原子力共同体(EURATOM)加盟 |
1999年 | ユーロ導入 |
政治体制・内政
1 政体
立憲君主制
2 元首
アンリ大公(2000年10月即位)
3 議会
一院制(定数60名、任期5年)
政党名 | 議席数 | |
---|---|---|
与党 | キリスト教社会党(CSV) | 21 |
民主党(DP) | 14 | |
野党 | 社会労働党(LSAP) | 11 |
民主改革党(ADR) | 5 | |
緑の党(déi gréng) | 4 | |
海賊党(Piraten) | 3 | |
左派連合(déi Lénk) | 2 | |
計 | 60 |
4 政府
- (1)首相 リュック・フリーデン(キリスト教社会党)
- (2)外務・対外通商相 グザヴィエ・ベッテル(民主党)(副首相兼開発協力・人道問題担当相を兼務)
5 内政
- (1)1918年から2013年まで(1974~1979年を除く。)、キリスト教社会党(1944年に右派党から改称。)が単独で又は連立によって政権を担当。しかし、2013年夏、情報機関(SREL)の不祥事がユンカー首相(キリスト教社会党)の政治問題に発展してキリスト教社会党と社会労働党との連立の維持が困難となり、2013年10月に総選挙が前倒しで実施された。その結果、キリスト教社会党が第一党の座を守ったものの、第二党から第四党までに就いた民主党、社会労働党及び緑の党が三党連立を組み、ベッテル政権が発足した。ベッテル政権は政教分離や同性婚の法制化等を推進した。2018年10月の総選挙でも連立政権を構成する三党が過半数を押さえて第二次ベッテル政権が成立し、公共交通機関の無料化や新憲法の制定(国民議会の権限強化等)が行われた。
- (2)2023年10月の総選挙において緑の党が大幅に議席を失ったことで、民主党、社会労働党及び緑の党による三党連立政権の維持が困難となり、この結果、第一党のキリスト教社会党と第二党の民主党の連立によるフリーデン政権が成立した。
- (3)金融業を中心に高い経済力を誇り、高い生活水準が確保されている。現在、宇宙、ICT、物流、環境技術、バイオ・医療など、金融以外の産業多角化を優先課題としている。
外交・国防
1 外交基本方針
- (1)欧州連合(EU)の源流となる欧州石炭鉄鋼共同体の原加盟国であり、欧州統合の推進に積極的(欧州司法裁判所、欧州投資銀行等のEU関係機関が所在している上、これまでユンカー元首相等3人の欧州委員会委員長を輩出している。)。また、歴史的・地理的理由から、ベネルクス、仏、独の三極関係に配慮した立場を採っており、政治及び経済面でのべネルクス三国間の連帯の強化に積極的。
- (2)国連創設以来の加盟国であり、多国間主義を推進。ODAの対国民総所得(GNI)比1%を目標としている(2023年の実績は0.99%)。EU及びNATOによる平和協力の強化を重視。小規模ながら国際平和維持活動にも貢献している(アフガニスタンにおけるISAFへ10名派遣)。また、人権や軍縮外交にも積極的で、例年国連核軍縮決議の共同提案国になっている。2013年から2014年までの間安保理非常任理事国を務めた。
2 軍事力
- (1)防衛予算 6.96億ユーロ(2024年)
- (2)兵役 志願制
- (3)兵力 総兵力1,195人(出典:2023年、ルクセンブルク軍)
経済
1 主要産業
金融業、科学技術産業
2 GDP(2024年予測値)
886億ドル(出典:IMF(2024年4月))
3 一人当たりGDP(2024年予測値)
13.1万ドル(出典:IMF(2024年4月))
4 実質GDP成長率
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|---|---|
実質GDP成長率(%) | -0.9 | 7.2 | 1.4 | -1.1 | 1.3 |
(出典:IMF(2024年4月))2024年分は予測値
5 物価上昇率
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|---|---|
物価上昇率(%) | 0 | 3.5 | 8.2 | 2.9 | 2.5 |
(出典:IMF(2024年4月))2024年分は予測値
6 失業率
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|---|---|
失業率(%) | 6.4 | 5.7 | 4.8 | 5.2 | 6 |
(出典:IMF(2024年4月))2024年分は予測値
7 総貿易額(2022年)
- 輸出 163億ユーロ
- 輸入 252億ユーロ
- (出典:ルクセンブルク国立統計経済研究所)
8 主要貿易品目(2022年)
- (1)輸出 一次原材料製造品(23%)、機械(18%)、他の製造品(16%)等
- (2)輸入 機械(15%)、化石燃料(14%)、車両(13%)等
(出典:ルクセンブルク国立統計経済研究所)
9 主要貿易相手国(2022年)
- (1)輸出 ベルギー、ドイツ、フランス、オランダ、イタリア
- (2)輸入 ベルギー、ドイツ、フランス、オランダ、イタリア
(出典:ルクセンブルク国立統計経済研究所)
10 通貨
ユーロ
11 経済概要
- (1)ルクセンブルクは、1970年代初頭の石油危機以降それまで経済成長を支えてきた鉄鋼業中心の産業構造から、金融サービス業中心の産業構造への転換に成功し、今日の欧州の金融センターとしての地位を確立した。
- (2)近年、同国は金融機関への過度な依存を脱するため、宇宙、情報通信技術(ICT)、電子商取引、ロジスティックス、自動車部品、医療技術、環境技術などの新しい産業の支援にも力を入れ、多くの企業が同国に進出している。
- (3)堅調に成長してきたルクセンブルク経済は、世界経済危機の影響により2009年はマイナス成長に転じた。その後持ち直したものの、ユーロ圏債務危機の影響を受け2012年はマイナス成長となった。新型コロナの影響により2020年にもマイナス成長を記録したが、経済対策を講じ、2021年には回復。2022年以降はウクライナ情勢を受けたインフレやエネルギー価格の高騰が懸念事項。
- (4)金融分野では、従来強みのある投資ファンド(投資ファンド資産残高が米国に次いで世界第2位。)、プライベート・バンキングといった分野に加え、最近ではグリーン・ファイナンスといった分野への積極的な取組を推進している。また、金融とICTの融合分野であるフィンテックにも力を入れてきている。
- (5)宇宙分野では、小惑星等の地球近傍天体での資源の採掘を計画しており、関連民間企業の誘致、研究開発プロジェクトへの投資や、採掘した鉱物資源に係る所有権についての国内法の整備を行うなど、官民を挙げて積極的に取り組んでいる。
二国間関係
1 政治関係・要人往来
(肩書はいずれも当時のもの。)
- (1)日・ルクセンブルク関係は、我が国皇室とルクセンブルク大公家との緊密な関係を礎に、全般的に良好。
- (2)我が国は、1996年1月に在ルクセンブルク日本大使館を設置(ルクセンブルクは、1987年3月に在京大使館を設置。)。
年月 | 往 |
---|---|
1997年5月 | 天皇皇后両陛下 |
2005年1月 | 秋篠宮同妃両殿下(前大公妃殿下国葬) 小野寺外務大臣政務官(日・EU市民交流年) |
2005年5月 | 小泉総理大臣(日・EU定期首脳協議) |
2009年7月 | 西村外務大臣政務官 |
2012年10月 | 皇太子殿下(ギヨーム皇太子婚礼式典) |
2014年7月 | 牧野外務大臣政務官 |
2015年11月 | 岸田外務大臣(第12回ASEM外相会合) |
2015年12月 | 安倍総理大臣 |
2016年9月 | 林日本・ルクセンブルク友好議員連盟会長 |
2017年7月 | 憲仁親王妃久子殿下 |
年月 | 来 |
---|---|
1997年3月~4月 | ユンカー首相(橋本総理大臣と会談、ゲベルス経済相が同行) |
1998年2月 | ジャン大公殿下、アンリ皇太子同妃両殿下(長野オリンピック) |
1999年4月 | ジャン大公同妃両殿下(国賓) |
2001年12月 | ヤコブス家族・社会連帯・青少年相 |
2002年1月 | ベルジュ環境長官 |
2003年3月 | ベルジュ環境長官 |
2003年9月 | アンリ大公殿下(ポルファー外相同行) |
2005年1月 | ハルスドルフ内務・国土整備相(国連防災世界会議) |
2005年4月 | クレッケ経産相 |
2005年5月 | アセルボーン副首相兼外務・移民相 |
2006年10月 | フリーデン国庫・予算相 |
2007年10月 | シルツ防衛相 |
2008年2月 | ユンカー首相 |
2010年5月 | ユンカー首相 |
2011年4月 | アセルボーン副首相兼外相 |
2011年5月 | ギヨーム皇太子殿下、クレッケ経産相 |
2012年7月 | アセルボーン外相(アフガニスタン東京会合) |
2012年10月 | ユンカー首相、フリーデン財相(IMF・世銀年次総会)、ビルツェン通信メディア相 |
2012年12月 | シュナイダー経産相 |
2013年11月 | フェリックス王子同妃両殿下 |
2014年10月 | ギヨーム皇太子同妃両殿下、シュナイダー副首相兼経済相、バウシュ公共事業相 |
2015年1月 | グラメーニャ財相 |
2015年3月 | ケルシュ内務相(第3回国連防災世界会議) |
2015年7月 | ベッテル首相、グラメーニャ財相 |
2016年1月 | グラメーニャ財相 |
2017年1月 | グラメーニャ財相 |
2017年4月 | シュナイダー副首相兼経済相 |
2017年5月 | アセルボーン外相 |
2017年10月 | ムッチュ保健相 |
2017年11月 | アンリ大公殿下(国賓)、シュナイダー副首相兼経済相、アセルボーン外相、グラメーニャ財相 |
2018年1月 | グラメーニャ財相 |
2019年1月 | グラメーニャ財相 |
2019年10月 | アセルボーン外相 |
2019年10月 | アンリ大公殿下(即位の礼) |
2021年7月 | アンリ大公殿下(東京オリンピック) |
2022年9月 | ベッテル首相(安倍元総理国葬儀) |
2022年10月 | ベッテル首相、バッケス財相 |
2022年11月 | ファイヨ経済相 |
2024年1月 | ベッテル副首相兼外相 |
2024年6月 | ギヨーム皇太子殿下、ベッテル副首相兼外相、デレス経済相 |
2 経済関係
- (1)日・ルクセンブルク貿易(単位:億円、出典:財務省貿易統計)
-
(ア)貿易額 年号 輸出 日本からルクセンブルクへ 輸入 ルクセンブルクから日本へ 収支 貿易額 (前年比増減) 貿易額 (前年比増減) 2014年 213 51.0% 85 30.7% 128 2015年 542 154.4% 87 2.3% 455 2016年 392 -27.6% 79 -9.1% 313 2017年 657 67.6% 82 3.7% 575 2018年 623 -5.0% 90 9.7% 534 2019年 511 -17.9% 97 7.8% 414 2020年 404 -20.9% 88 -10.2% 316 2021年 640 58% 112 27% 528 2022年 865 35% 110 -2% 755 2023年 808 -7% 103 -6% 706 -
(イ)主要品目 輸出(日本からルクセンブルクへ) 輸入(ルクセンブルクから日本へ) 品目 金額 シェア 品目 金額 シェア 機械類及び輸送用機器 710.0 87.8% 原料別製品 65.8 64.0% 特殊取扱品 61.3 7.6% 機械類及び輸送用機器 16.3 15.8% 原料別製品 13.4 1.7% 化学製品 8.3 8.1% - (2)直接投資残高(出典:日銀「国際収支統計」 単位:億円)
-
年 対外直接投資(日本からルクセンブルクへ) 対内直接投資(ルクセンブルクから日本へ) 2014年末 8,566 4,596 2015年末 10,681 4,273 2016年末 10,616 5,139 2017年末 16,824 8,513 2018年末 14,022 7,402 2019年末 17,387 9,727 2020年末 40,823 7,424 2021年末 32,088 6,393 2022年末 41,627 6,444 2023年末 38,440 7,679 - (3)進出企業数
- 金融分野、製造分野等を中心に、我が国からルクセンブルクに47社が進出(邦人職員のいない現地事務所を含む。)。ルクセンブルクから我が国には航空貨物輸送等で15社が進出。
- 日本からルクセンブルクへ 47社 (2023年)
- ルクセンブルクから日本へ 16社 (2024年、東洋経済新報社「外資系企業総覧」)
3 在留邦人数
751人(2023年10月、在ルクセンブルク大使館在留届)
4 在日当該国人数
57人(2023年12月、法務省統計)
5 二国間条約・取極
- 1960年 ベネルクス通商協定、査証免除取極
- 1990年 国際運輸業に係わる所得税等の相互免除取極
- 1992年 租税条約
- 2010年 租税条約改正議定書署名(2011年発効)
- 2014年 社会保障協定署名(2017年発効)
- 2024年 航空協定署名、ワーキング・ホリデー制度導入(6月)
6 外交使節
- (1)駐ルクセンブルク日本国大使 松原正浩特命全権大使
- (2)駐日ルクセンブルク大使 ミシェル・レーシュ特命全権大使