リベリア共和国
リベリア共和国(Republic of Liberia)
基礎データ


一般事情
1 面積
111,370平方キロメートル(日本の約3分の1)
2 人口
561万人(2024年:世銀)
3 首都
モンロビア(Monrovia)
4 民族
クペレ族、バサ族、グレボ族等
5 言語
英語(公用語)、その他各部族語
6 宗教
キリスト教85%、イスラム教12%、その他
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
19世紀以前 | 15世紀頃からヨーロッパとの貿易が始まる。 |
1822年 | 米国から解放された奴隷グループが初めてリベリアに到着。 |
1824年 | 首都がモンロビアと名付けられる(米国第5代大統領ジェームズ・モンローに由来) |
1847年7月 | リベリア共和国として独立。ロバーツ大統領が初代大統領に就任。 |
1980年4月 | ドウ曹長率いる武装集団がクーデターを起こし、第20代大統領トルバート氏を暗殺。その後、同曹長が国家元首に就任。 |
1985年10月 | 総選挙によりドウ元首が大統領に選出(民政移管) |
1989年12月 | チャールズ・テイラー率いる反政府組織「リベリア国民愛国戦線(National Patriotic Front of Liberia(NPFL))が蜂起し内戦が勃発。 |
1990年8月 | 反政府組織がドウ大統領を殺害。 ECOWAS監視団(ECOMOG)がリベリアで活動開始。 |
1990年9月 | 国民統合暫定政府(Interim Government of National Unity: IGNU)が発足。 |
1993年9月 | 国連リベリア監視団(UNOMIL)の設置 |
1995年8月 | アブジャ合意(全紛争当事者8派) |
1996年8月 | 新たな和平プロセス日程に合意。リベリア国家暫定政府(National Transitional Government of Liberia)が設立。 |
1997年8月 | 大統領・副大統領・上院・下院選挙 第3共和制発足(チャールズ・テイラー大統領就任) |
11月 | 国連リベリア平和構築支援事務所(United Nations Peacebuilding Support Office in Liberia: UNOL)が設置 |
1998年10月 | ECOMOG、和平を目途に完全撤退 |
2002年2月 | 反政府勢力、リベリア和解民主連合(LURD)が蜂起 |
2003年6月 | 反政府勢力、LURD及びリベリア民主運動(MODEL)が蜂起、首都モンロビアに進攻 17日、政府と反政府軍による停戦合意署名(於:ガーナ) |
2003年8月 | テイラー大統領、ナイジェリアへ亡命 ECOWASによるECOMIL軍の派遣 18日、包括和平合意締結 |
2003年9月 | 国連安保理決議第1509号による国連リベリア・ミッション(United Nations Mission in Liberia: UNMIL)の設置 |
2003年10月 | 移行政府発足(ブライアント移行政府議長就任) |
2005年10月 | 大統領及び上院・下院選挙 |
2005年11月 | 大統領選挙(決選投票)、サーリーフ大統領選出 |
2006年4月 | テイラー元大統領、ナイジェリアからシエラレオネ特別法廷へ移送 |
2006年6月 | テイラー元大統領、シエラレオネからオランダ・ハーグへ移送 |
2011年10月 | 大統領選挙及び上院・下院選挙 |
2011年11月 | 大統領選挙(決選投票)、サーリーフ大統領再選 |
2017年10月 | 大統領選挙及び下院選挙 |
2017年12月 | 大統領選挙(決選投票)、ウェア大統領選出 |
2023年10月 | 大統領選挙及び上院・下院選挙 |
2023年11月 | 大統領選挙(決選投票)、ボアカイ大統領選出 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
ジョセフ・ニュマ・ボアカイ(Joseph Nyumah BOAKAI)大統領(任期6年)
3 議会
二院制(上院・下院)
4 政府
- (1)首相名 (ポストなし)
- (2)外相名 サラ・ベイソロー・ニャンティ(Sara Beysolow NYANTI)
5 内政
1989年以降断続的に内戦が続き、2003年4月頃から政府と反政府勢力(リベリア和解・民主連合及びリベリア民主運動)との間で戦闘が激化し、人道被害が深刻化。同年8月1日、国連は多国籍軍の設立容認とそれに続く国連安定化軍の派遣準備の表明等を内容とする安保理決議1497号を採択した。同決議に基づき、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)リベリア・ミッション(ECOMIL)が展開し、治安状況は改善。同月18日、政府と反政府勢力間で包括和平合意が署名され、移行政府支援や合意履行支援のために国連による軍隊派遣が要請された。
同年9月19日、安保理は全会一致で決議1509号を採択し、国連リベリア・ミッション(UNMIL)の設立を決定した。
2005年10月及び11月の選挙を経て、2006年1月にサーリーフ女史がアフリカ初の民選女性大統領に就任。同政権の下、「暫定貧困削減戦略(2006~2008年)」及び「貧困削減戦略(2008~2011年)」等が策定され、貧困削減、インフラ整備、治安の強化、ガバナンス強化等を柱とした復興への取組が進められた。
2011年には、内戦終結後初めてリベリア選挙管理委員会が実施する総選挙が平和裡に実施され、サーリーフ大統領が再選。同大統領は、リベリアの平和構築、社会・経済開発の促進、女性の地位向上への貢献が認められ、2011年にノーベル平和賞を受賞(リベリア人平和運動家のレイマ・ボウィ女史、イエメン人活動家のタクワル・カルマン氏との共同受賞)。
2012年12月、同政権は2030年までに中所得国入りすることを目指した長期開発計画「Liberia for Rising: Vision 2030」及び5か年計画「Agenda for Transformation」(2012~2017年)を策定した。
2014年6月以降、隣国ギニアからエボラ出血熱の流行が拡大し、リベリアも甚大な社会的・経済的被害を受けた。2015年4月、リベリア政府はエボラ出血熱からの復興策に関する「経済安定化及び復興計画(Economic Stabilization and Recovery Plan: ESRP)」を発表。同計画は、上記長期計画及び5か年計画における目標を達成すべく、経済を再度成長軌道に乗せることを目指すものであり、「復興と成長(農民・中小企業向け支援、インフラ等)」、「レジリエンスの強化及び脆弱性の軽減(保健、教育、水と衛生等)」「公共財政の強化及びサービス提供の確保」の3つの柱からなる。
WHOは2015年5月9日にリベリアにおけるエボラ出血熱終息を宣言(その後も小規模な感染発生が繰り返され、2016年2月28日までに計10,675名が感染し、4,809名が死亡)(出典:WHO同日付Ebola Situation Report)。
2017年10月10日、大統領選挙が実施され、12月26日に行われた決選投票の結果、元プロサッカー選手で野党民主変革同盟のウェア候補が現職副大統領のボアカイ候補を破り、勝利した。翌年1月に就任したウェア大統領(当時)は、プロ・プアー政策を掲げ、インフラ、教育、保健等を優先分野とし、国内の貧困の減少に取り組んだ。
UNMIL撤退計画は、エボラ出血熱により実施を延期したが、2018年3月30日に撤退した。
2023年10月10日、大統領選挙の第一回目の投票が実施された。その後、11月14日に行われた決選投票の結果、サーリーフ元大統領の政権で副大統領を2期務めたボアカイ候補が現職のウェア大統領(当時)を接戦の上で破り当選した。UNMIL撤退後初の大統領選挙であったが、概ね平和裡に実施された。また、決選投票後、ウェア大統領(当時)が敗北宣言を行うなど、民主的かつ平和裡に政権交代が行われ、欧米や他のアフリカの諸国からも評価された。
ボアカイ政権発足後、議会内で混乱が続いたが、2025年5月に新下院議長が選出され事態は収拾に向かった。2025年1月、ボアカイ政権は5か年計画「ARREST Agenda for Inclusive Development」(2025-2029年)を策定し、農業、道路整備、教育、法の支配、観光、保健等の課題に取り組んでいる。
外交・国防
1 外交基本方針
基本的には非同盟中立の穏健な外交路線をとり、近隣諸外国との関係を強化してきたが、シエラレオネの内戦時には、同国原産のダイヤモンドと引き替えに武器を供与しているとして、安保理制裁が発動される等、国際社会から圧力が高まった。2003年の移行政府発足後、善隣友好外交を通じて近隣各国との関係を改善し、現在ではマノ河同盟(MRU)、ECOWAS、アフリカ連合(AU)などの地域機構を通じて地域統合に貢献している。また、2025年6月に国連安全保障理事会非常任理事国(任期:2026-2027年)に選出された。
2 軍事力(ミリタリーバランス2024年版)
兵力:約2,010人、予算:1,640万ドル(2023年)
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
- 鉱業 (鉄鉱石、金、ダイヤモンド)
- 農林業 (天然ゴム、木材)
2 GDP
47.5億米ドル(2024年:世銀)
3 一人当たりGNI
760米ドル(2024年:世銀)
4 経済成長率
4.8%(2024年:世銀)
5 物価上昇率
3.3%(2024年:世銀)
6 失業率
2.9%(2024年:ILO基準(推定値)世銀)
7 総貿易額(2024年:ITC)
- (1)輸出 23.9億ドル
- (2)輸入 292億ドル
8 主要貿易品目(2024年:ITC)
- (1)輸出 貴石・貴金属、船舶、鉄鉱石
- (2)輸入 船舶、鉱物燃料・鉱物、原子炉関連機械・装置
9 主要貿易相手国(2024年:ITC)
- (1)輸出 スイス、ドイツ、マレーシア、中国
- (2)輸入 中国、シンガポール、韓国、日本
10 通貨
リベリア・ドル
11 為替レート
1米ドル 174.96リベリア・ドル(2023年、世銀)
12 経済概況
戦乱により約27万人の死者、約79万人の難民・避難民が出たと言われ、世銀の報告によれば、1989年末に11億ドルであったGDPは一時2.5億ドルまで激減するなど、国家経済は著しく疲弊した。その後ドナーによる復興支援や難民帰還による経済活動の活性化、国内情勢の安定に伴う投資の増加、農業分野の復興、主要輸出品であるゴムの国際市場価格の上昇等に加え、大規模な鉄鉱採掘の再開、木材の禁輸解除、ダイヤモンドの制裁解除(2007年5月)が大きなプラス要因となり、実質GDP成長率は2007年以降10%前後で推移してきた。しかし、2014年以降のエボラ出血熱の流行により、再び国家経済は疲弊し、同年の経済成長率は0.5%にまで低下。その後、2016年にエボラ出血熱の流行が収束した後は、一旦経済成長率も回復したものの、新型コロナ感染拡大の影響により、再度経済は低迷し、2020年の経済成長率はマイナスとなった。
その後、ロシアによるウクラナ侵略や世界的なインフレ等による影響があるにもかかわらず、鉱業と農業の好調さに牽引され、は経済成長率は4~5%に回復した。その後も非効率な支出の削減や税収増加に取り組み財政収支が改善、また、主要な輸出品である、金の価格上昇に支えられて経常収支も改善している。
経済協力(単位 億円)
1 日本の援助実績(単位:億円)(2023年までの累計)
- (1)円借款(交換公文ベース) 40.00
- (2)無償資金協力(交換公文ベース) 389.18
- (3)技術協力(JICA経費実績ベース) 75.50
2 主要援助国(OECD/DAC統計:2022年、百万ドル)
- (1)米国(121.06)
- (2)スウェーデン(32.92)
- (3)ドイツ(25.45)
- (4)ノルウェー(8.28)
- (5)アイルランド(6.90)
二国間関係
1 政治関係
- 1961年に外交関係樹立。1969年にはリベリア大使館が東京に開設された。日本は1973年にリベリアに大使館を開設したが、内戦が激化した1990年に全館員が国外退避し、2004年に閉鎖した。現在は、在ガーナ大使館が兼轄している。
2 経済関係
(1)対日貿易
- ア 貿易額(2024年)(日本財務省貿易統計)
- 対日輸出 80億6,050万円
- 対日輸入 2,524億1,856万円
- イ 主要品目
- 対日輸出 再輸入品、銅くず
- 対日輸入 船舶類、ゴム製品
(2)進出日系企業
2社(2024年10月現在)
3 在留邦人数
5人(2024年10月現在)
4 在日リベリア人数
96人(2024年10月現在)
5 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1972年1月 | 吉田重延特派大使 |
1981年7月 | 愛知外務政務次官 |
2006年1月 | 伊藤外務大臣政務官(総理大臣特使) |
2006年7月 | 日・AU議連西部アフリカ訪問団(小此木団長) |
2013年8月 | 日・AU議連(逢沢一郎、牧島かれん議員) |
2018年1月 | 佐藤外務副大臣(総理大臣特使) |
2024年1月 | 深澤外務大臣政務官(総理大臣特使) |
年月 | 要人名 |
---|---|
1970年7月 | トルバート副大統領 |
1973年3月 | ニール経済計画相 |
1980年3月 | サーリーフ財務相(当時) |
1983年11月 | イーストマン外相(立寄り) |
1987年3月 | タブマン財務相 |
1989年2月 | モニバ副大統領(大喪の礼) |
1998年10月 | カプタン外相(TICAD II) |
2007年3月 | サーリーフ大統領、ワレス外相、サイェ財務相、ジョンソン=モリス法務相 |
2008年5月 | サーリーフ大統領(TICAD IV) |
2012年10月 | サーリーフ大統領(IMF世銀東京総会) |
2012年12月 | センドロ土地鉱業エネルギー相(閣僚級招へい) |
2013年5月 | サーリーフ大統領、ガフアン外相(TICAD V) |
2013年12月 | ウィークス公共事業相 |
2015年8月 | サーリーフ大統領(WAW! 2015) |
2015年11月 | アディ通商産業相(閣僚級招へい) |
2018年10月 | フィンドリー外相(TICAD閣僚会合) |
2019年6月 | ハワード=テイラー副大統領(WPLサミット) |
2019年8月 | ウェア大統領(TICAD7) |
2024年8月 | ニャンティ外相(TICAD閣僚会合) |
2025年8月 | ボアカイ大統領、ガファン財務・開発計画相、ジャラ教育相、ヌエタ農業相、ピア情報・文化・観光相、ペイエ鉱業・エネルギー相、ホラス・コリージェンダー・子供・社会保護相(以上、TICAD 9) ニャンティ外相、ドゴセ通商産業相(以上、TICAD 9及び大阪・関西万博) |
6 二国間条約・取極
- 1978年8月 青年海外協力隊派遣取極