【序文】
1.我々、FEALAC(アジア中南米協力フォーラム)加盟国の外相は、地域間の連携を深め協力分野を拡充するため、2010年1月16日及び17日、東京に集い会合を行った。我々は、今次会合においてモンゴルの新規加盟を歓迎した。
2.我々は、過去3回の外相会合における成果を踏まえ、東京宣言を全会一致で採択した。
【FEALACの10年と未来】
3.FEALACが発足して10年が経過した。我々は、アジアと中南米の関係は大きく深化したことを認識した。我々は特に、両地域間の貿易が、世界の他地域間の貿易の増加を遙かに上回り4倍に拡大したことに注目した。かつてミッシング・リンクといわれた両地域及び国民の間の関係は、広がりと深みを増している。
4.我々は、FEALACがこの数年間で幼少期から青年期へと成長し、両地域間の緊密な交流と対話を促進するための効果的な枠組みとして定着していることを確認した。我々は、FEALACが、両地域間におけるベストプラクティスの相互学習の促進、地域間の協力及び交流による相互利益の増進、国際社会における共通の地球規模課題解決のための協力において重要な役割を果たすユニークなフォーラムであることを再確認した。世界人口の40%、世界経済の26%、世界貿易の40%以上を占めるFEALACを通じた協力は、世界的な重要性を有している。
5.この宣言において、我々は、アジア中南米両地域間の協力の大きなポテンシャルを最大限活用し、また、今日および将来に世界が直面する大きな課題に共に取り組むことを約束した。
【FEALAC加盟国が直面する主要課題】
金融・経済危機
6.我々は、世界経済は危機の最悪の段階から脱し、回復期へ移行しつつあるが、引き続き慎重であるべきことを認識した。我々は、G20が世界経済・金融危機を克服するために重要な役割を有していることを認識した。我々は、過去の危機の経験や今回の危機に対する迅速な財政・金融政策が、今回の困難な挑戦に立ち向かい、今回の危機がもたらしたであろう経済活動の著しい停滞に歯止めをかけるうえで重要な役割を果たしたことを評価した。
7.我々は、今回の危機の影響が、回復へ向けた我々の取り組みを阻害し、特に最も脆弱な国々を弱体させるといった負の影響を、両地域に依然として与え続けているといった認識を共有した。我々は、回復力・持続力のある世界経済を構築するための賢明な財政政策及び金融政策運営と、特に貧困層のため、今回の危機における影響を軽減し将来の危機の芽を摘むための戦略を策定することの重要性を再認識した。これらには、あらゆる保護主義との闘い、また、開発側面についての目標を含むマンデートと整合的でモダリティーに関するものも含むこれまでの進展を基礎とした2010年中のWTOドーハ開発ラウンドの野心的でバランスのとれた妥結を通じた貿易・投資の促進を含む。この観点から、我々は、2009年にイスタンブールで行われたIMF・世銀年次会合において採択されたIMF及び世銀のガバナンス改革の数値目標を達成することの重要性とともに、国際金融機関の再編成及びあまねく広がる持続可能な調和のとれた成長を実現するため必要な行動を取ることの重要性を強調する。この観点から、2009年9月のピッツバーグ・サミットで立ち上げられた「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」を歓迎する。我々は、このような世界規模の危機への対処には、国連の重要な役割とともに、各国が公平で成長しうる解決を求め、包括的で民主的な枠組みに参加することが必要であると認識する。よって我々は、両地域が過去の危機を乗り切りながら得た経験、知識及びベストプラクティスを共有しつつ経済回復を加速させるため引き続き行動を共にする意志を強固にする。我々は、FEALACが、両地域の国々の間におけるそのような協力のための機会を提供する適切な国際枠組であると信じる。
8.我々は、食料安全保障、持続可能な農業及び農村開発への国際協力及び投資を通じた飢餓、栄養不良、食料不安を軽減する国際的、地域的努力を支持した。これは、特に持続可能な方法で、農業システムにおける能率及び生産性を改善するとともに、気候変動によってもたらされる負の影響への適応を支援するような農業分野の技術、実践、工程の研究及び開発(またその移転を含む)を促進し協力することを含む。方法で、農業分野において、特に農業システムにおける能率及び生産性を改善するための技術、実践、加工の技術移転を含めた研究及び開発を促進し連携することが含まれる。
社会的包摂
9.我々は、経済成長が、加盟国の積極的な政策及び措置のほか、更なる国際協力を通じて、社会的包摂を伴うものとならなければならないと信じる。我々は、世界的な金融・経済危機が特に貧困層及び不利な状況下にある人々に影響を及ぼしていることを敏感に認識している。我々は、所得水準の向上と社会のセーフティネットの確立を通じた持続可能な態様の下、個人及び集団の厚生を向上するための各国の努力を支える国際的な協力の重要性を強調する。また、我々は、貧困及び不利な状況の下で生活する人々の技能を強化し、新たな雇用の機会を創出して、そうした人々が各国で生産的かつ競争的な労働力を維持できるにふさわしい仕事を提供する包摂的な発展を推進することの重要性を再確認した。我々はまた、移民労働者の重要性も確認した。我々は、経済・社会作業部会が集中的にこの論点を議論に加えるよう勧告する。我々は、2010年にメキシコで開催される第4回人の移動と開発に関するグローバル・フォーラムが建設的で有益な結論を得ることを歓迎する。さらに、我々はミレニアム開発目標を達成するとともに、特に貧困削減と食料安全保障の分野で人類の進歩と開発を促進するために一層協力し、そのようにして、我々の地域に豊かで公平な社会を実現する必要性を強調した。我々は、FEALACが今後数年間で焦点を当てるべき主要な議題及び分野の一つとして、社会的包摂や社会政策に関する協力及び対話について考慮する必要があることに同意した。
環境・持続可能な発展
10.我々は、気候変動を含む環境問題が、全ての人類、特に発展途上国において、より脆弱な人々に対し影響を及ぼしており、国際社会によるより大規模で協調・調整された取組が求められていることを認識する。FEALACは、こうした課題に取り組む上で、加盟国が経験共有、意見交換、協力推進を図る上で有益なフォーラムである。我々は、経験と技術、キャパシティ・ビルディング、知識と教訓の共有、特に環境に優しい技術の開発と移転を通じて、協力と相互学習を行うことは有益であり、今後更に拡充されるべきとの点で見方が一致した。
11.我々は、気候変動に取り組むことの重要性、また、この問題に対して、共通に有しているが差異のある責任と各国の能力の原則に基づき、国際的な協力を通じて解決を図るために取り組んでいくことへの決意を再確認した。この観点から、コペンハーゲンにおける気候変動に関する国連の下での会議の結果を踏まえ、我々は、気候変動枠組の強化を図るため多くの作業がなされなければならないと認識した。また、我々は、2010年にメキシコで開催予定の国連気候変動枠組条約第16回締約国会議及び第6回京都議定書締約国会議を成功裡に終えるために、建設的に取り組んでいくことを再確認した。
12.我々は、環境保護のための取組が経済的及び社会的発展と両立することを確保するための手段と方法を見出す必要性を強調した。この点において、我々は、国際的に協調して行動することによって、オーガニック製品、省エネ製品、クリーンエネルギー輸送、太陽光発電、クリーンエネルギー産業等といった環境物品及びサービスを含め、環境技術の移転、特に発展途上国への移転を図る更なる機会とインセンティブを生み出すものであると認識した。我々は、多くの国が環境関連投資を経済刺激策に盛り込んでいることを歓迎する一方、発展途上国における環境関連投資を阻害する財政的・資金的制約、また、発展途上国と先進国のクリーン・テクノロジーの格差が存在することを認識した。この点において、我々は、発展途上国が環境物品及びサービスの貿易によって更なる利益が得られ、環境に関する国際的な合意に掲げられた目的を達成するためのグローバルな取組に対して貢献しやすくなるような状況に置かれるよう、発展途上国における環境産業の発展にとって有利な条件を確保する重要性につき強調した。こうした取組が全体として環境に資するものとなり、保護貿易の口実とならないようにすることが重要である。我々は、また、WTOドーハ開発ラウンド交渉において、環境物品及びサービスに対する関税・非関税障壁の引き下げ、及び要すれば撤廃に向けた交渉に積極的に参加していくことの重要性を強調した。
13.我々は、FEALAC各国が各国の国民にとって利益となる持続的成長を実現しつつ環境にも優しい施策を実施するために、各国の豊かな天然資源を効果的に活用すべきである点で一致している。我々は、自国の天然資源を管理・統制していく上での国家主権の原則を認識した。この観点から、我々は、FEALAC加盟国が全世界の森林の3分の1以上を擁することを踏まえ、アグロフォレストリー、持続的な森林管理、エコツーリズム等の分野における協調を促進するよう加盟国に対し慫慂する。また、我々は、特に豊かな動植物系を擁するアジア及び中南米において、あらゆる人類の活動の基礎となる生物多様性から得られる利益を保護し、持続可能な方法で活用し、適正かつ公平に共有することの重要性を強調した。それ故に、我々は、2010年以降の行動志向的なグローバル目標の設定に向けて相互に建設的に協力し、名古屋における第10回生物多様性条約締約国会議においてアクセスおよび利益共有に関する国際レジームに関する交渉をまとめることを決意した。
【その他の地球規模課題】
核軍縮・不拡散
14.我々は、核軍縮・不拡散及び原子力の平和的利用に関する分野において取組を強化する必要性を共有した。我々は、2010年における核不拡散条約当事国再検討会議の成果を確保し、条約のレジーム強化を図るべく協力していく。
15.我々は、六者会合の早期再開を通じて2005年9月の共同声明を完全に実施することの重要性につき認識した。
国連改革
16.我々は、国連を中心に据えた多国間主義に対する強い信頼と国連憲章の諸原則を維持するとのコミットメントを再確認した。我々は、それ故に、国連をより効果的かつ民主的で、説明責任を有する、効率的かつ透明性のあるものとするため、安全保障理事会を含む包括的な国連改革の必要性を再認識した。我々は、2005年10月の国連総会で採択された決議(A/RES/60/1-2005年国連首脳会合成果文書)へのコミットメントを再確認した。
人権
17.我々は、関連国際人権規約等の批准及び実施を含め、人権の促進及び保護に対するコミットメントを再確認した。
国際組織犯罪
18.我々は国際組織犯罪がすべての国及び国民の安寧と発展に対して及ぼす脅威に対し深い懸念を表明するとともに、国際組織犯罪防止条約及びその補足議定書の普遍性及び完全な履行を確保するため、国連の枠組みにおいて努力を倍加することへの決意を表明する。我々は、国際組織犯罪への闘いを強化するための知見や経験を提供していく意図を表明する。
災害の危険性の減少と管理
19.我々は、災害が依然としてアジアと中南米の経済、社会及び人々の福祉に対して大きな影響を及ぼしていることを認識した。それゆえ、更なる二国間協力の強化、技術支援と協力のネットワークの拡大、FEALACメンバーと国際的及び地域的機関の間での情報と専門的知見の共有の重要性を再確認した。
インフルエンザ流行への対応
20.我々は、国際的及び地域的レベルでの適時の情報共有と相互協力が現在流行しているインフルエンザ(H1N1)への対処に際して重要な役割を果たしたことを認識した。また、我々は、将来起こり得る伝染病への備えを強化することを目的として、アジアと中南米の間で経験から学んだ教訓を共有することの必要性を強調した。
【FEALACの活動の展望】
21.我々は、ブラジリア閣僚宣言で中核的なプログラムとして特定された分野において、FEALACの3つの作業部会の協力の下に実現した進捗を高く評価した。また、我々は、3つの作業部会により作成された報告書に記載されているように、各メンバー国による幅広いナショナル・プロジェクトが両地域間の相互理解及び協力を深めることに貢献したことを歓迎した。
22.我々は、FEALACの活動がより重点を絞り、更なる調整と効果的な運営がなされるよう機能的なものとなるべきことを認識した。こうして我々は、現在進行しているプロジェクトの徹底した現状分析を行い、それらを関連する作業部会に適切に分類し、東アジアと中南米の共通の利益を反映した協力分野を積極的に特定する必要性を再確認した。
23.それゆえに我々は、喫緊の課題との認識を持って、世界的な金融・経済危機、環境保護と気候変動を含む持続可能な成長、社会的包摂等の重大な課題に対し、3つの作業部会の活動を通じて取り組むことを決定した。そうして、我々は3つの作業部会それぞれに対し、次回の外相会合までに次の優先分野に取り組むよう指示を出した。
- (1)政治・文化・教育・スポーツ作業部会
- -学問的、文化的及び知的交流
- -議員、政策担当者及びジャーナリストの交流
- -環境への意識の普及
- -社会的包摂の手段としてのスポーツ
- (2)経済・社会作業部会
- -環境及び持続可能な発展
- -貧困削減及び社会的包摂
- -貿易投資促進
- -情報通信技術(ICT)の活用
- -中小企業(SMEs)の振興
- -観光
- -国際的移住
- -インフラ及び統合
- (3)科学技術作業部会
- -新エネルギー及び再生可能エネルギー
- -温室効果ガス削減技術
- -災害の可能性の減少と管理
- -競争力強化のための技術革新
- -感染症の予防及び管理
24.この点につき我々は、メンバー国に作業部会にて紹介されている又は、新たに提示されたプロジェクトやイニシアティブを歓迎し、FEALACのプロセスを通じて協力及び交流を深め更に促進するためのそれらの価値ある貢献についてメンバー国を賞賛した。
25.我々は3つの作業部会の会合を一つの場所で同時に開催することを通じて、作業部会をより経費の面から効率的で持続可能なものとするための開催方法の改革を行うことを決定した。
26.我々はまた、外相及びSOMによる意志決定をフォローアップするためのメカニズムを構築するとともに、3つの作業部会の間での調整を促進することにより、FEALACの活動をより効果的で一貫したものとするため、コーディネイティング・ボードを設立することを決定した。
27.我々は、フォーラムのより良い運営と広報のため、将来的には事務局を設立することを期しつつ、現在のFEALAC公式ウェブサイトを更に発展させ、サイバー事務局を創設することを決定した。我々は、サイバー事務局を管理し、メンバー間の情報交換と調整が促進されるよう現在のウェブサイトに必要な変更を加えるとの韓国の意思を評価した。我々はまた、それぞれの実務者に対し、この目的を達成するため韓国に協力するよう更に努力するよう指示した。
28.我々はまた、各作業部会に対し、協力の提案と要望と同時に、各部会で議論されている分野又は主題についてのメンバー国の必要性と能力について考慮し評価するよう指示した。そのため、メンバー国の優先分野や開発政策を尊重しつつ、両地域の協力の資源を最大限に活用するため、技術協力を議論する時間を各作業部会に設ける。
29.我々は、今回の会合がFEALACを確固たるものとし強化するための時宜に適った機会を提供したと認識した。我々はSOMに対し、フォーラムの進展、成果、メンバーシップに関する問題及びフォーラムの将来の方向性について、現状を確認するよう求めた。
【アウトリーチ】
30.我々は、アジア開発銀行(ADB)及び米州開発銀行(IDB)が、それぞれの担当する地域において、主要な課題の解決のため貢献していることを認識した。我々は、また、ECLACおよびESCAPの両地域間関係促進のための努力を評価した。我々は、これらの組織がFEALACプロセスにおける貢献を増大させることを期待。この点に関し、我々は、各ワーキンググループに対し、FEALACプロジェクトを遂行するために、これらの組織及びその他の各機関との、財政的、技術的な協力の方法について探索することを指示した。
31.我々は、第4回FEALAC外相会合に臨席したADB、IDB及び世界銀行の代表者との有益で建設的な議論を歓迎するとともに、このような国際金融機関とFEALACとの間で同様の議論を継続することの重要性を認識した。
32.我々はFEALAC参加国内外へのFEALACの広報を促進することの必要性を強調するとともに、参加国の民間セクターやその他のステークホルダーへの適切な働きかけが、FEALACの活動にとって重要であるとの考えを示した。
【結語】
33.次期外相会合の時期と場所はコンセンサスにより決定される。
34.我々は、今次会合の調整国であったアルゼンチンと日本に感謝の意を表するとともに、新たな調整国であるアルゼンチンとインドネシアを歓迎した。
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