キルギス共和国
キルギス共和国(Kyrgyz Republic)
基礎データ
令和7年1月29日


一般事情
1 面積
19万8,500平方キロメートル(日本の約半分)
2 人口
680万人(2024年:国連人口基金)
3 首都
ビシュケク(Bishkek)
4 民族
キルギス系(77.8%)、ウズベク系(14.2%)、ロシア系(3.8%)、ドゥンガン系(1.0%)、ウイグル系(0.5%)、タジク系(0.9%)、その他カザフ系、トルコ系、アゼルバイジャン系、タタール系など(2024年:キルギス共和国統計委員会)
5 言語
キルギス語が国語。(ロシア語は公用語)
6 宗教
主としてイスラム教スンニ派
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
17~18世紀頃までにキルギス人の民族形成が進行 | |
18世紀後半~19世紀前半 | コーカンド・ハン国による支配 |
1855年~1876年 | ロシア帝国に併合 |
1918年 | ロシア連邦共和国内の一部としてトルキスタン自治ソビエト社会主義共和国成立 |
1924年 | 中央アジアの民族・共和国境界確定により、ロシア連邦共和国内のカラ・キルギズ自治州となる |
1926年2月 | キルギス自治ソビエト社会主義共和国成立 |
1936年 | ロシア連邦共和国から分離し、ソ連邦を構成するキルギス・ソビエト社会主義共和国に昇格 |
1990年6月 | オシュ事件(キルギス系住民とウズベク系住民の衝突) |
1990年10月 | アカーエフ大統領就任 |
1990年12月15日 | 「キルギスタン共和国」に改名、国家主権宣言 |
1991年8月31日 | 国家共和国独立宣言 |
1993年5月 | 国名を「キルギス共和国」に変更 |
2005年4月 | 政変によりアカーエフ大統領辞任 |
2005年7月 | バキーエフ大統領当選 |
2009年7月 | バキーエフ大統領再選 |
2010年4月 | 政変によりバキーエフ大統領辞任 |
2010年6月 | 南部にてキルギス系とウズベク系住民の大規模衝突 |
2010年6月 | 国民投票により、憲法改正採択 |
2010年7月3日 | オトゥンバエヴァ大統領就任 |
2010年10月10日 | 議会選挙実施 |
2010年12月 | 連立与党結成・新内閣発足 |
2011年12月 | アタムバエフ大統領就任 |
2015年10月4日 | 議会選挙実施 |
2017年11月24日 | ジェエンベコフ大統領就任 |
2020年10月 | 議会選挙実施後の政変によりジェエンベコフ大統領辞任 |
2021年1月28日 | ジャパロフ大統領就任 |
2021年11月28日 | 議会選挙(2020年10月の選挙のやり直し再選挙)実施 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
サディル・ジャパロフ大統領(2021年1月28日就任)
3 議会
一院制(定数90)。2003年の憲法改正により二院制から一院制に移行。2007年10月採択の憲法改正により定数を75から90に、2010年7月の憲法改正では120に拡大。2021年5月に発効された改正憲法により、定数を90に削減。
4 政府
- (1)内閣議長(首相) アディルベク・カスィマリエフ
- (2)外相 ジェエンベク・クルバエフ
5 内政
- 1991年の独立後、アカーエフ大統領の下、いち早く民主化及び市場経済化を軸とした改革路線を打ち出す。1998年にWTO加盟(旧ソ連諸国で初)。
- しかし、資源に乏しい同国の経済は伸び悩み、国民が経済改革の成果を享受できない中で、野党勢力の反政府運動が高まった。
- 2005年2月末の議会選挙での不正をきっかけとして、野党勢力により南部で開始された反政府運動が首都に及び、同3月、アカーエフ政権は崩壊。野党勢力指導者のバキーエフ元首相が大統領代行兼首相に選出され、7月の大統領選挙で当選し、8月、大統領に就任した。
- バキーエフ政権の下でも、政治・経済改革は進まず、政情不安定が続いた。
- 2010年4月、国民の不満が高まり、大規模なデモが発生した。治安当局との衝突(犠牲者86名)の末、バキーエフ大統領は出国し、辞任。オトゥンバエヴァ元外相を議長とする「暫定政府」が発足した。同年6月10日、南部オシュにおいて、キルギス系及びウズベク系の住民の間で民族衝突が発生した(死者300名以上、難民・国内避難民約40万人)。
- 2010年6月27日、キルギス新憲法案の是非等(オトゥンバエヴァ移行期大統領の信任を含む)を問う国民投票が実施された(投票率70%以上、賛成票90%以上)。オトゥンバエヴァ大統領は同7月3日に就任(任期2011年末)。同年10月10日に議会選挙実施。
- 2011年10月、大統領選挙が実施され、アタムバエフ候補(当時首相)が当選、同年12月1日に大統領に就任した。
- 2017年10月に大統領選挙が実施され、ジェエンベコフ候補(前職:首相。大統領選出馬のため2017年8月に辞任)が当選、同年11月24日に大統領に就任した。
- 2020年10月の議会選挙後、その結果を不服とする野党勢力による大規模な抗議活動が起こり、同月、ジェエンベコフ大統領が辞任。ジャパロフ元議員が大統領代行兼首相に選出され、翌年1月の大統領選挙で当選し、同月、大統領に就任した。2020年の選挙結果は中央選挙管理委員会によって無効とされ、2021年11月28日に再選挙を実施。
外交・国防
1 外交
- (1)ロシアとの良好な関係維持を重視(特に安全保障面、貿易等経済面で密接な関係を有する)しつつ、中国や米国等の間でのバランス外交を標榜。
- (2)1996年3月、ロシア、ベラルーシ及びカザフスタンと関税同盟条約及び統合強化条約を締結(両条約には後にタジキスタンが参加)。同関税同盟は後にユーラシア経済共同体に発展。上海協力機構(2007年議長国、同年8月ビシュケクにおいて首脳会合開催)、集団安全保障条約機構(2008年議長国、同年10月ビシュケクにおいて首脳会合開催)等にも参加。
- (3)1998年10月、旧ソ連諸国で初のWTO加盟国となる。
- (4)2015年8月、ロシアが主導するユーラシア経済同盟に加盟。
2 軍事
- (1)総兵力10,900人(陸軍8,500人、空軍2,400人)、準兵力9,500人(ミリタリー・バランス2024)
- (2)1997年及び1998年、米軍及び中央アジア・コーカサスの一部諸国の軍隊と合同で、中央アジア合同軍事演習を実施。また、上海協力機構の枠内で実施されている対テロ共同軍事演習にも参加。
- (3)2001年12月、米軍がアフガニスタンにおける対テロ作戦実施のためキルギス・マナス空港に駐留し、2009年6月以降はマナス中継輸送センターとして実質的な継続使用を行ってきたが、2013年6月、アタムバエフ大統領の下、キルギス側は基地契約を延長しない旨決定し、2014年7月、米軍は撤退した。
- (4)2003年10月以降、集団安全保障条約機構(CSTO)の枠組みの下で、ロシア空軍が駐留(カント基地)。
経済
(カッコ内は出典)
1 主要産業
農業・畜産業、鉱業(金採掘)
2 GDP
139.9億ドル(2023年:IMF)
3 一人当たりGDP
2,019ドル(2023年:IMF推定値)
4 経済(実質GDP)成長率
6.2%(2023年:IMF)
5 物価上昇率
10.8%(2023年:IMF)
6 失業率
9.0%(2023年:IMF推計値)
7 貿易額
- (1)輸出
- 33.09億米ドル
- (2)輸入
- 123.52億米ドル
(2023年:キルギス共和国統計委員会)
8 主要貿易品目
- (1)輸出
- 金、衣料品・服飾雑貨、野菜・果物、金属くずなど
- (2)輸入
- 自動車、ガソリン、軽油、医薬品、圧延金属、灯油など
(2023年:キルギス共和国統計委員会)
9 主要貿易相手国
- (1)輸出
- スイス、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、中国
- (2)輸入
- 中国、ロシア、カザフスタン、韓国、トルコ
(2023年:キルギス共和国統計委員会)
10 通貨
ソム(Som:1993年5月10日導入)(CIS統計委員会)
11 為替レート
1ドル=87.45ソム(2025年1月25日現在:キルギス国立銀行)
12 経済概況
- (1)産業構造
主要産業は、農業及び畜産業、農畜産物を加工する食品加工業、金採掘を中心とする鉱業。水資源が豊富。 - (2)経済改革及び経済成長
独立後、1992年の価格自由化をはじめ、IMFの緊縮財政勧告に従って市場改革路線を推進した。ソ連崩壊の混乱の中で経済不振が続いたが、1996年、独立後初めてGDPがプラスに転じた。1998年、ロシア金融危機の影響を受け、財政が逼迫するなど危機もあったが、近年は概ねプラス成長が続いている(但し、2002年、2005年、2010年及び2012年はクムトール金鉱の金生産の減少の影響でマイナス成長)。経済は、ロシアへの出稼ぎ労働者からの送金に大きく依存。 - (3)対外累積債務問題
多額の累積債務あり。対外公的債務は約42億米ドル。(対外公的債務は2023年のGDP比で約3割。)(出典:世界銀行国際債務統計(2023年)、IMF)
経済協力
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力
- 375.80億円(2022年度までの累計)
- (2)無償資金協力
- 367.91億円(2022年度までの累計)
- (3)技術協力
- 226.99億円(2022年度までの累計)
2 主要援助国
米国、ドイツ、日本、スイス、韓国
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2017年 | 米国 52.50 | ドイツ 35.08 | 日本 28.95 | スイス 26.17 | 韓国 12.02 | 163.33 |
2018年 | 米国 47.10 | ドイツ 36.68 | 日本 26.34 | スイス 20.18 | 韓国 5.83 | 145.41 |
2019年 | 米国 48.10 | ドイツ 32.63 | 日本 27.91 | スイス 22.54 | 韓国 9.37 | 152.11 |
2020年 | 米国 45.08 | ドイツ 24.66 | スイス 24.09 | 日本 22.72 | 韓国 12.56 | 141.62 |
2021年 | 米国 48.70 | ドイツ 41.44 | スイス 27.36 | 日本 17.44 | 韓国 10.83 | 160.35 |
(出典:OECD/DAC)
二国間関係
1 政治関係
- (1)国家承認日 1991年12月28日
- (2)外交関係開設日 1992年1月26日
- (3)日本大使館開館 2003年1月27日
- (4)在日キルギス大使館開設 2004年4月
1991年12月の独立以降、積極的なODA供与も背景に両国関係は進展。
1995年5月、日本は市場経済化促進のための人材育成を目的とする「キルギス日本人材開発センター」を首都ビシュケクに開設。
1999年8月、南部バトケン州にて国境を越えて侵入してきた武装勢力による邦人誘拐事件が発生。10月に無事解放。
2 経済関係
日本の対キルギス貿易(2023年:財務省貿易統計)
- 輸出
- 37.67億円(原動機、建設用・鉱山用機械、ゴムタイヤ及びチューブ、自動車部品等)
- 輸入
- 2.9億円(電気機器、金属鉱及びくず、はちみつ等)
3 文化関係
(両国間には旧ソ連との間で締結、その後キルギスとの間で承継した文化協定あり。)
一般文化無償資金協力 5件 計2.57億円(2023年度まで)
草の根文化無償資金協力 9件 計0.7億円(2023年度まで)
計:3.27億円(2023年度まで)
最近の事例
- 草の根文化無償資金協力(供与限度額)
- 2018年度 カラ・バルタ市サッカー競技場人工芝設置計画(992万円)
- 2018年度 国立フィルハーモニー音響照明機材整備計画(997万円)
- 2021年度 国立青少年センター音響照明機材整備計画(719万円)
4 在留邦人数
122人(2023年10月現在:外務省)
5 在日当該国人数
891人(2024年6月:法務省)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1992年4月 | 渡辺美智雄外務大臣 |
1997年7月 | 対ロシア・中央アジア対話ミッション(団長:小渕恵三衆議院議員) |
1997年9月 | 麻生太郎経済企画庁長官 |
1999年8月 | 武見敬三外務政務次官 |
2002年4月 | 杉浦正健外務副大臣 |
2002年7月 | 杉浦正健外務副大臣 |
2003年1月 | 土屋品子外務大臣政務官 |
2004年8月 | 川口順子外務大臣 |
2005年7月 | 福島啓史郎外務大臣政務官 |
2005年8月 | 川口順子総理大臣補佐官 |
2005年11月 | 衆議院外務委員会公式派遣議員団(団長:原田義昭外務委員長) |
2006年8月 | 海部俊樹元総理大臣 |
2008年7月 | 山本香苗経済産業大臣政務官 |
2012年1月 | 浜田和幸外務大臣政務官 |
2014年7月 | 岸田文雄外務大臣(「中央アジア+日本」対話・第5回外相会合) |
2015年4月 | 薗浦健太郎外務大臣政務官 |
2015年10月 | 安倍晋三総理大臣 |
2016年4月 | 山田美樹外務大臣政務官 |
2018年9月 | 中谷元衆議院議員 |
2018年12月 | 山田賢司外務大臣政務官 |
2022年6月 | 本田太郎外務大臣政務官 |
2023年7月 | 遠藤利明衆議院議員(日本キルギス友好議員連盟副会長)、加藤鮎子衆議院議員、本田太郎衆議院議員 |
2023年8月 | 吉川ゆうみ外務大臣政務官 |
2024年6月 | 辻󠄀清人外務副大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1992年10月 | チングイシェフ首相(旧ソ連支援東京会議) |
1993年4月 | アカーエフ大統領(公式実務訪問) |
1994年11月 | ジュマグーロフ首相(第1回日本・キルギス経済合同会議) |
1996年10月 | ジュマグーロフ首相(キルギス支援国会合) |
1996年11月 | ジュマグーロフ首相(第3回日本・キルギス経済合同会議) |
1997年5月 | コイチュマノフ経済相訪日(アジア開発銀行年次総会(福岡)) |
1998年8月 | アブドゥラザコフ国務相(アカーエフ大統領訪日先遣隊) |
1998年10月 | アカーエフ大統領(非公式) |
2000年2月 | ムラリエフ首相(第5回日本・キルギス経済合同会議) |
2001年6月 | バキーエフ首相(EBRD主催「中央アジア諸国への投資促進会議」) |
2001年11月 | イマナリエフ外相(外務省賓客) |
2002年1月 | イマナリエフ外相 |
2003年11月 | オトルバエフ副首相(UNCTAD第4回投資諮問評議会) |
2004年1月 | アイトマートフ外相(外務省賓客) |
2004年4月 | アカーエフ大統領(実務訪問賓客) |
2005年6月 | ボルジュロヴァ副首相代行 ムラリエフ経済産業貿易相(万博賓客) |
2006年6月 | ジェクシェンクロフ外相(「中央アジア+日本」対話・第2回外相会合) |
2006年9月 | ルステンベコフ非常事態相(防災能力向上研修) |
2007年11月 | バキーエフ大統領(実務訪問賓客) |
2007年12月 | ヌル・ウル・ドスボル副首相(第1回アジア・太平洋水サミット) |
2008年11月 | アブドゥラザコフ元国務長官(秋の外国人叙勲) |
2009年5月 | スラマイノフ運輸通信相(無償資金協力関係) |
2010年12月 | イサコフ運輸通信相(無償資金協力関係) |
2011年8月 | ババノフ第一副首相(Asia 2050 Launch Seminar) |
2011年10月 | マムベトジャノフ財務相(IMF・JICA合同セミナー) |
2012年7月 | ボロノフ非常事態相(世界防災閣僚会議 in 東北) |
2012年10月 | オトルバエフ第一副首相(IMF・世銀総会) オリガ・ラヴロヴァ財務相(IMF・世銀総会) |
2012年11月 | アブディルダエフ外相(「中央アジア+日本」対話・第4回外相会合) |
2013年2月 | アタムバエフ大統領(実務訪問賓客)(アブディルダエフ外相同行) |
2013年5月 | タリエヴァ副首相 |
2013年10月 | サディコフ教育科学相 |
2013年11月 | ナリムバエフ大統領府長官 |
2014年11月 | ジェエンベコフ共和国議会議長 |
2017年3月 | アブディルダエフ外相 |
2019年6月 | ボロノフ第一副首相 |
2019年10月 | ジェエンベコフ大統領(即位の礼)(アイダルベコフ外相同行) |
2022年12月 | ジャパロフ内閣議長兼大統領府長官(中央アジア投資フォーラム) |
2022年12月 | クルバエフ外相(「中央アジア+日本」対話・第9回外相会合) |
2023年11月 | ジャパロフ大統領(公式実務訪問賓客)(クルバエフ外相同行) |
2024年9月 | イブラエフ・エネルギー相 |
7 二国間条約・取極
- 1993年4月
- 日ソ間で結んだ条約の承継を確認。
- 2004年10月
- 日・キルギス技術協力協定署名。