コソボ共和国
コソボ共和国(Republic of Kosovo)
基礎データ


一般事情
1 面積
10,908平方キロメートル(岐阜県に相当)
2 人口
179.4万人(2019年、世銀)
3 首都
プリシュティナ(人口60万人、推定)
4 民族
アルバニア人(92%)、セルビア人(5%)、トルコ人等諸民族(3%)
5 言語
アルバニア語(アルバニア人)、セルビア語(セルビア人)等
6 宗教
イスラム教(主にアルバニア人)、セルビア正教(セルビア人)等
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
13世紀~14世紀 | 中世セルビア王国及びセルビア正教会の中心地となる。多数のセルビア正教の教会、修道院が建立される。 |
1389年 | コソボの戦いでセルビアがオスマン・トルコに敗退。以後、イスラム教に改宗したアルバニア人がコソボに入植開始。 |
1913年 | バルカン戦争でトルコに勝利したセルビアがコソボを奪回。 |
1918年 | ユーゴスラビア王国の一部となる。 |
1941年 | 第二次世界大戦中、ドイツ、イタリア、ブルガリアに分割占領される。 |
1945年 | ユーゴスラビア社会主義連邦共和国(6共和国で構成)が建国。セルビア共和国の一部として「コソボ・メトヒヤ自治区」が設立。1963年、「コソボ自治州」に改称。 |
1974年 | ユーゴ憲法改正により、コソボは共和国に準じた大幅な自治権(独自の憲法、議会、政府、裁判所)を獲得。 |
1981年 | コソボ自治州の共和国昇格を求めるアルバニア系住民による暴動発生。ユーゴ政府は治安部隊の投入により暴動を抑える一方、コソボ向けの開発援助資金を増大。 |
1989年 | アルバニア系住民とセルビア系住民の対立が深まる中、セルビアはコソボの自治権を大幅に縮小。 |
1990年 | アルバニア系住民が「コソボ共和国」の樹立とセルビアからの独立を宣言。これに対し、セルビアは自治州議会及び政府の機能を停止し、直接統治を開始。アルバニア系住民は武装組織「コソボ解放軍」(KLA)を組織化し、武力闘争開始。 |
1998年 | セルビアがKLA掃討作戦を展開し、コソボの治安情勢と住民の人道状況が急速に悪化。OSCEがコソボ検証ミッションを派遣。 |
1999年3月 | 1999年2月、ランブイエ(仏)にて国際社会の仲介で和平交渉が開始されたが、セルビアがNATO軍のコソボ展開を受け入れず決裂。同年3月末、NATOは、コソボにおける人道的危機が深まったとしてコソボを含むセルビア全域の軍事目標及び経済インフラに対し空爆による攻撃開始。これに対し、セルビアがKLA掃討作戦を強化し、数十万のアルバニア系住民がコソボから流出し難民化(コソボ紛争)。 |
1999年6月 | セルビア治安部隊のコソボ撤収によりNATO空爆終了。国連安保理決議1244号が採択され、国連(UNMIK)による暫定行政が開始され、また、NATO主体の国際安全保障部隊(KFOR)が展開。アルバニア系難民が帰還する一方、約26万人のセルビア人等非アルバニア系住民がコソボからセルビアに避難。 |
2002年4月 | 国連(UNMIK)による「地位の前に水準」政策開始。コソボの地位確定交渉を開始する前提として、コソボによる8つの達成目標(統治機関の構築、法の支配、避難民帰還、地方分権化等)を設定。 |
2005年11月 | 2004年春のアルバニア系住民による暴動発生を契機に、地位確定交渉開始の気運高まる。2005年11月、国連はアハティサーリ元フィンランド大統領を地位交渉仲介特使に任命し、コソボ、セルビア間の仲介交渉に当たらせる。 |
2007年3月 | アハティサーリ国連特使が、国際社会の監督下によるコソボの独立案を国連に勧告。同案を承認する安保理決議案は採択されず。 |
2007年8月 | 米、露、EUの三者(トロイカ)の仲介によるコソボ、セルビア間の地位交渉が再開されたが、同年12月、不調に終わる。 |
2008年2月 | 17日、コソボ議会が「コソボ共和国」の独立を宣言。 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
ヴィヨサ・オスマニ-サドリウ大統領代行(2020年11月5日就任)
3 議会
1院制(定数120名)。任期4年。
4 政府
- 首相:アヴドゥラー・ホティ(2020年6月就任)
- 外相:メリザ・ハラディナイ・ストゥブラ(2020年6月就任)
5 内政
- (1)独立後、憲法の制定、国家機関の創設、法体系の整備などを通じ民主的な国造りに努めている。大統領は議会によって選出されることとなっており、2016年2月、ヤヒヤーガ大統領の任期満了に伴い、サチ大統領(独立宣言時の首相)が選出され、4月に就任した。
- (2)議会選挙は、独立後、2010年、14年、17年、19年に実施されている。2017年6月に行われた総選挙では、コソボ民主党連合(コソボ民主党(PDK)、コソボ将来同盟(AAK)、コソボ・イニシアティブ(NISMA)による連立)が比較第一党となり、ハラディナイ・コソボ将来同盟党首を首相とする政権が発足。2019年7月、コソボ特別法廷に召喚されたことを受けて、ハラディナイ首相は辞任を表明。同年10月の議会選挙を受け、2020年2月に自己決定運動(LVV、クルティ党首)及びコソボ民主同盟(LDK)を中心とする連立政権が発足し、クルティ首相が就任するも、大統領と首相の対立を背景として、3月にクルティ内閣不信任案決議が議会で可決され、同年6月にはLDKを中心とするホティ首相の新政権が誕生した。
- (3)内政の課題は、法の支配の確立とコソボ独立に反対するセルビア系住民との融和。法の支配については、2008年2月末からコソボに派遣されているEUによる法の支配ミッション(EULEX)による支援を受けて汚職・組織犯罪等の対策に取り組んでいる。
- (4)一方、コソボ北部のセルビア系住民は、セルビアから行政サービスを受け、コソボへの統合に反対してきたが、2013年4月及び5月のコソボ・セルビア間合意を受け、同年11月に実施されたコソボの統一地方選挙に紛争後初めて参加した。なお、1999年のコソボ紛争時にセルビアに避難した26万人の非アルバニア系住民(内、セルビア系は23万人)の帰還はほとんど進展しておらず、難民の帰還及び少数民族の保護が課題となっている。
- (5)2020年11月5日、コソボ紛争時における戦争犯罪を裁くコソボ特別法廷(オランダ・ハーグ)による起訴(人道に対する罪及び戦争犯罪)の確定を受け、サチ大統領が大統領を辞任。
外交・国防
1 外交基本方針
- (1)コソボ独立の承認国(2020年9月現在、約100か国)を増やし、国連等国際機関への加盟を達成することが当面の外交目標。また、将来のEU加盟等、欧州・大西洋統合を目標とする。なお、世銀及びIMFには2009年に加盟している。
- (2)2010年7月、国際司法裁判所が、コソボの独立宣言は国際法に違反しないとの勧告的意見を発表し、また、同年9月、国連総会が、EUにコソボ・セルビア間の対話プロセスを促進する用意があることを歓迎する旨の決議を採択しており、2011年3月からコソボはEU仲介の下、セルビアとの事務レベル対話を開始した。
- (3)2012年10月からは、EUの仲介の下、コソボ・セルビア間の首相級対話が開始され、2013年4月、コソボにおけるセルビア系自治体コミュニティ創設等を含む合意が成立、同5月にはその履行計画に関する合意に達した(ブリュッセル合意)。また、同9月には電力・テレコム分野での合意が成立し、同11月にはセルビア系自治体を含むコソボ全土での統一地方選挙が紛争後初めて実施された。2015年、セルビア・コソボ間の関係正常化に向けた更なる合意が成立。合意の履行及び新たな合意に向けた二国間対話が進められ、2018年11月、コソボがセルビアからの輸入品に100%の関税を課したことから中断するも、2020年7月に再開。
- (4)2012年1月からEUと査証自由化対話を開始し、同年6月にEUより査証自由化に向けたロードマップが提示された。2018年3月に、コソボがモンテネグロとの国境画定協定を締結したことにより、ロードマップの諸条件は全て達成されたとして、欧州委員会及び欧州議会はコソボへの査証自由化を提案したものの、欧州理事会による最終的な意思決定が行われていない。
- (5)EUは、2012年3月から安定化・連合協定のフイージビリティ・スタディを実施し、2013年6月には、同4月及び5月のコソボ・セルビア間合意を評価して、EU・コソボ間での安定化・連合協定の交渉開始を決定した。交渉は同年10月に開始され、2015年10月には安定化・連合協定が署名された。2016年4月、EUとの安定化・連合協定が発効した。
- (6)2020年9月、米国の仲介により、鉄道・高速道路やエネルギー等のインフラ分野における両国の連結性強化等を含むコソボ・セルビア間の経済関係正常化に関する合意が署名された。
2 軍事力
- (1)1999年以来、NATO主体のコソボ国際安全保障部隊(KFOR)が駐留している。
- (2)2009年1月、軽武装のコソボ治安部隊(KSF)が創設され、災害対策及び警察以外の治安を担当。2019年の法改正により、KSFに国防の任務が追加され、国防省が設立された。
経済
1 主要産業
サービス業、農業、工業
2 GDP
79億米ドル(2019年、世銀)
3 国民一人当たりGDP
4,417米ドル(2019年、世銀)
4 経済成長率
4.2%(2019年、世銀)
5 物価上昇率
2.7%(2019年、世銀)
6 失業率
29.6%(2018年、コソボ統計局)
7 貿易額
- 輸出:
- 3.67億ユーロ
- 輸入:
- 33.47億ユーロ
(2018年、コソボ統計局)
8 主要貿易品目
- 輸出:
- 卑金属製品、鉱物製品、プラスチック・ゴム製品、食料品・飲料・たばこ
- 輸入:
- 鉱物製品、機械類・電気機器、食料品・飲料・たばこ、卑金属製品、化学製品
(2018年、コソボ統計局)
9 主要貿易相手国
- 輸出:
- アルバニア、マケドニア、インド、セルビア、スイス、ドイツ
- 輸入:
- ドイツ、セルビア、トルコ、中国、アルバニア、イタリア
(2018年、コソボ統計局)
10 通貨
ユーロ(1999年に独自に導入)
11 経済概要
コソボは、旧ユーゴで最も開発が遅れた地域であり、旧ユーゴ及びセルビアからの援助に依存していたため、自立的な経済構造を有していない。主要産業の農業は小規模な家族経営が大半。褐炭、亜鉛等の鉱物資源を有しているが、近年、設備投資がほとんど行われていない。現在、恒常的な貿易赤字と税収の不備、電力不足、若年層を中心とする大量の失業など課題が山積している。住民の多くは海外移民からの送金、外国援助に依存している。
なお、コソボのアルバニア系住民は欧州一高い出生率を有し、過去50年間で人口が約4倍に急増(1948年の46万人から1998年には183万人へ)しており、旧ユーゴ地域では最も人口密度の多い国(1平方キロ当たり197人)となっている。
経済協力
1 日本の二国間援助実績
- 2018年度までの累計総額:約34.57億円
- 無償資金協力:約13.34億円
- 技術協力:約21.23億円
2 主要援助国・援助額(単位:百万ドル)(2017年、OECD)
- (1)ドイツ(50.93)
- (2)米国(50.28)
- (3)スイス(24.07)
二国間関係
1 政治関係
- (1)日本は2008年3月18日、コソボを国家として承認し、2009年2月25日付で外交関係を開設。
- (2)日本は在オーストリア大使館がコソボを管轄してきたが、2020年1月、コソボに兼勤駐在官事務所を開設。
- (3)コソボは2010年7月、東京に大使館を開設。
2 経済関係
- (1)日本の対コソボ貿易額・品目(2019年、財務省貿易統計)
- 輸出:1.75億円(自動車部品)
- 輸入:0.33億円(化学製品)
- (2)日本の直接投資:
- 2社(キノコ生産企業、タバコ)
3 文化関係
2012年9月にコソボフィルハーモニー交響楽団に対する楽器の供与に関する一般文化無償資金協力の交換公文の署名が行われ、2014年3月に同案件の引渡式が行われた。
4 在留邦人数
7名(2020年6月現在)
5 要人往来
(往) | |
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年月 | 要人名 |
2012年9月 | 浜田外務大臣政務官 |
2018年2月 | 堀井外務大臣政務官 |
2019年2月 | 阿部外務副大臣 |
(来) | |
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年月 | 要人名 |
2011年12月 | ホジャイ外相、ガシ環境・空間計画相 |
2012年6月 | サチ首相、ホジャイ外相 |
2012年10月 | ブヤ教育・科学技術相(国際科学技術関係大臣会合出席)、 ハムザ財務相(IMF・世銀総会出席) |
2013年9月 | ニカイ貿易・産業副大臣 |
2013年10月 | ブヤ教育・科学技術相(国際科学技術関係大臣会合出席) |
2014年4月 | サチ首相、ベチャイ財務相、ニカイ貿易・産業相 |
2018年3月 | パツォーリ第一副首相兼外相 |
2019年3月 | ヴェセリ議会議長 |
2019年9月 | サチ大統領 |
2019年10月 | サチ大統領(即位の礼出席) |
6 外交使節
- (1)日本:水谷 章 特命全権大使
- (2)コソボ:エニス・ジェマイリ 臨時代理大使