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福田康夫日本国内閣総理大臣と
ヌルスルタン・ナザルバエフ・カザフスタン共和国大統領との間の共同声明

平成20年6月23日

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 日本国政府の招待により、ヌルスルタン・ナザルバエフ・カザフスタン共和国大統領は、2008年6月18日から22日までの日程で日本国を公式訪問し、6月20日に福田康夫日本国内閣総理大臣と会談した。

 福田日本国内閣総理大臣とナザルバエフ・カザフスタン共和国大統領(以下、「双方」という。)は、

 日本国とカザフスタン共和国との間の戦略的パートナーシップが良好に発展してきたことに満足の意を表しつつ、

 カザフスタン共和国大統領の今回の訪日が、両国間の友好と全面的協力の更なる飛躍的な発展に資する重要な契機となることを確信し、

 伝統的な友好と相互理解の精神に則って行われた会談の結果を肯定的に評価して、

 以下のとおり表明する。

1.政治分野における協力

 双方は、最高レベル及び高いレベルの政治対話が、政治、経済、科学技術、文化・人文分野等における両国の協力の発展にとって大きな意義を有することを強調する。

 双方は、二国間の諸課題、国際情勢等について、外務省間政務協議等の種々のレベルの対話・協議を今後とも活発に行っていく用意があることを確認する。

 双方は、議会間協力が引き続き促進されることを期待する。

 日本側は、自由、民主主義、市場経済といった基本的価値の促進についてカザフスタン側の成果を認めつつ、実施されつつある改革が一層成功裡に進展することへの期待を表明する。

 双方は、地球環境問題、特に気候変動問題の重要性につき認識を共有し、世界全体での排出削減のためすべての主要経済国がより責任ある形で参加する2013年以降の温暖化対策の実効的な国際的枠組みの構築に向けて、緊密に協力する意向を有する。この文脈において、カザフスタン側は、国連気候変動枠組条約及び京都議定書のプロセスへの重要な政策的貢献として、2007年5月に発表された「クールアース50」及び2008年1月に発表された「クールアース推進構想」に示される日本国政府のイニシアティヴを歓迎し、支持を表明する。

 双方は、安全保障理事会の常任及び非常任双方の議席の拡大を含む、国際連合改革の早期実現のため協働して積極的に取り組んでいく決意を表明する。カザフスタン側は、日本国の安全保障理事会常任理事国入りに支持を表明し、日本側はこれに対し謝意を表明する。

 双方は、大量破壊兵器等の拡散、国際テロリズム及び麻薬取引が国際の安全と安定に対する深刻な脅威であるとみなし、これらの脅威に共同で対処するため、二国間及び多国間の協力を強化する。

 双方は、北朝鮮に対し、核計画の申告の提出を始め、2007年10月の六者会合成果文書で約束された非核化措置を完全に実施し、2005年9月の六者会合共同声明の完全実施に向けた具体的かつ効果的な措置をとることを求める。また、双方は、拉致問題の早急な解決が不可欠であるとの認識を共有する。

 双方は、アジア地域における対話の促進及び紛争予防を目的とし、国際政治における肯定的な要因であるアジア信頼醸成措置会議(CICA)の重要な役割につき見解を共有する。日本側は、CICAの更なる発展を支持するとともに、アジアにおける平和、安全、安定及び繁栄の維持に向けた共同の努力の中で、同会議への参加を一層積極化させる意向を表明する。

 日本は、欧州安全保障協力機構(OSCE)のアジア・パートナー国として、カザフスタン共和国が2010年のOSCE議長国に選出されたことに祝意を表するとともに、カザフスタン共和国がOSCE域内、なかんずく、中央アジア地域における安全及び安定の維持並びに基本的な民主主義的価値の進展に大きく寄与することへの期待を表明する。

 日本は、ASEAN地域フォーラム(ARF)参加国として、アジア地域及び世界全体における平和と安全の維持に関するカザフスタンの努力を高く評価し、ARF正式参加国となることを目指すカザフスタンの意思を歓迎する。

 双方は、「中央アジア+日本」対話が、日本国と中央アジア諸国との間の協力及び中央アジアにおける地域内協力の促進に資する有益な枠組みであることを認識する。

 双方は、2006年6月に東京で開催された「中央アジア+日本」対話第2回外相会合において採択された「行動計画」に基づき今後とも協力していく。

 双方は、中央アジア地域の持続的かつ未来志向の発展の重要性を踏まえ、「中央アジア+日本」対話を、環境、水資源の合理的利用、現代社会が抱える様々な脅威への対策、地域の貿易投資促進に向けた環境整備等の分野における実質的な内容及び現実的なプロジェクトを行うことにより充実させるよう努めていく。

2.両国経済関係の一層の進展のための協力

 双方は、カザフスタンにおける石油、ウラン、レアメタル、非鉄金属その他の天然資源の探鉱、開発分野における日本企業の積極的な参加を期待するとともに、日本の先端技術の誘致および両国にとって優先的な分野における様々なプロジェクトを実現するための直接投資の誘致に向けた今後の投資環境整備の重要性を確認する。

 これに関連し、双方は、カザフスタン共和国エネルギー鉱物資源省国家地質・地下資源利用委員会と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)との間で、タングステンに関する共同地質調査の覚書が署名されたことを歓迎する。双方は、投資環境を一層改善し両国間の投資交流を拡大するための法的基盤を整備するため、二国間投資協定の締結に向けた交渉を早期に開始する必要性につき一致した。

 双方は、2008年5月19日に東京において開催された日本・カザフスタン及びカザフスタン・日本両経済委員会の第9回合同会議の成果を高く評価し、カザフスタンと日本の経済的協力関係の発展に関する「行動計画」の早期の採択が、同合同会議の活動の具体的な成果となるであろうとの認識を共有する。

 双方は、二国間経済関係の重要な調整メカニズムである両委員会の枠組みにおける協力に大きなポテンシャルがあるとの認識を共有する。この関連で、双方は、貿易投資環境の整備をはじめとする協力の効率性の向上のため、両国の官民の代表の関与を得て、既存のメカニズムをより充実させる意向を表明する。

 双方は、貿易投資拡大のための協力に関する日本国経済産業省とカザフスタン共和国産業貿易省との覚書の署名を歓迎する。

 双方は、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約」につき、今般、基本合意に至ったことに、満足の意を表明し、同条約の締結が、両国間経済関係の一層の強化にとって重要な意義を有するとの確信を共有するとともに、早期の署名・発効に向けてそれぞれの国内手続を行うことを確認する。

 双方は、両国実業界間の関係拡大と文化・人的交流の活発化に資するカザフスタンの航空会社「エア・アスタナ」による日本への乗入れの意向を歓迎する。

 カザフスタン側は、ウラリスクにおける熱電併給所省エネルギー化モデル事業の成功裏の実施につき、日本側に謝意を表する。

 カザフスタン側は、温室効果ガスの排出量削減のため、省エネ、再生可能エネルギーの利用、小規模水力発電、炭鉱メタンガス及び石油随伴ガスの活用といった分野において広範な互恵的協力プロセスを日本企業と共同で開始する意向を有する。

 双方は、地震防災分野における協力の重要性を確認する。

3.原子力の平和的利用の分野における協力

 双方は、原子力の平和的利用の分野における協力が、両国間の戦略的・互恵的パートナーシップの強化にとって重要な意義を有し、日本の原子力産業界へのウラン資源の安定供給に資すると同時に、産業高度化に向けたカザフスタン共和国の戦略的方針の実現にも貢献するとの認識を共有する。

 双方は、小泉純一郎日本国内閣総理大臣(当時)のカザフスタン共和国訪問に際し2006年8月28日に署名された「原子力の平和的利用の分野における協力の促進に関する日本国政府とカザフスタン共和国政府との間の覚書」に基づく日・カザフスタン原子力協定の早期締結に期待を表明する。

 また、双方は、2007年4月に甘利日本国経済産業大臣とマシモフ・カザフスタン共和国首相により署名された「原子力の平和的利用の分野における戦略的パートナーシップ強化に関する共同声明」に基づき、日本企業とカズアトムプロム社によるウエスト・ムインクドュック・ウラン鉱山開発プロジェクトにおけるウラン生産開始及び近々予定されているハラサン鉱山開発プロジェクトにおけるウラン生産開始、日本企業によるウルバ冶金工場の活用に関する基本合意、東芝とカズアトムプロム社との提携関係の強化など、両国原子力産業界の互恵的な協力が進展していることを歓迎する。また、双方は、引き続き、円滑にこのような協力を進展できるよう両政府がその環境整備に取り組むことを確認する。

 カザフスタン側は、日本国政府に対し、「カザフスタン共和国において削減される核兵器の廃棄に係る協力のための委員会」を通じたカザフスタン共和国の核セキュリティ向上のためのプロジェクトへの協力に謝意を表する。

 双方は、日本原子力研究開発機構(JAEA)とカザフスタン国立原子力センター(NNC)との間での、原子力分野及び核融合エネルギー分野における、高温ガス炉及びその応用技術に関する研究、照射試験炉で用いられた使用済みベリリウムのリサイクルに関する研究、核融合プラズマ研究等の先進的な研究開発協力の進展を歓迎する。また、日本原子力研究開発機構(JAEA)とカザフスタン原子力委員会(KAEC)が、高温ガス炉の安全研究に向けた協力について、覚書を作成したことを歓迎する。

4.政府開発援助(ODA)による協力

 カザフスタン側は、日本国政府がカザフスタンにODAを供与してきたことに対し謝意を表明する。

 双方は、ODAを通じた二国間協力の経験をふまえ、カザフスタンの持続的経済・社会開発のためのODAによる協力を継続する重要性を確認する。

 カザフスタン側は、日本人材開発センター事業が様々な分野でカザフスタンの人材育成に貢献していることを高く評価するとともに、「技術協力に関する日本国政府とカザフスタン共和国との間の協定」に基づく日本政府による技術協力の更なる円滑な実施のために適切な措置をとることを確認する。

5.文化・人文交流の促進

 双方は、両国間の相互理解の増進並びに相互信頼及び友好の強化に向けて、両国間の文化・人文交流を一層促進することが重要であるとの認識を共有し、文化、教育・科学、観光、保健、社会保障、スポーツ、情報、社会政策その他の分野における交流の拡大を促進していく。

2008年6月20日、東京

日本国内閣総理大臣
福田 康夫
カザフスタン共和国大統領
ヌルスルタン・ナザルバエフ
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