アジア

最近のインドネシア情勢と日・インドネシア関係

平成29年4月27日

1 インドネシアの特徴

(1)国土

 面積約189.08万平方キロメートル(日本の約5倍)。約13,500の島々からなる世界最大の島嶼国家。東西約5,110キロメートル(米国の東西両海岸間の距離に匹敵)、南北約1,888キロメートル(赤道を挟む)に及ぶ。

(2)人口、種族

 約2.55億人(2015年)。中国、インド、米国に次いで世界第4位の人口。大半がマレー系(ジャワ、スンダ等約300種族に大別される)。総人口の約6割が、全国土面積の約7%に過ぎないジャワ島に集中している。

(3)宗教

 イスラム教約87.2%、キリスト教約9.8%、ヒンズー教1.6%ほか(宗教省(2013年))。世界最大のイスラム人口を有するが、イスラム教は国教ではない。公的に認められた6つの宗教(イスラム教,キリスト教(カトリック・プロテスタント),ヒンズー教,仏教,儒教)いずれかへの信仰が必要。

(4)国家政体

 共和制の下、34州から構成。国家元首は大統領(大統領は、国家元首であると共に行政府の長でもある)。現大統領は、ジョコ・ウィドド大統領(2014年~2019年)。

 議会は、国会(DPR)(立法機能、国家予算作成機能、政府に対する監視機能)、及び地方代表議会(DPD)(地方自治等に関する法案の提言、審議への参加)がある。また、国会議員(560人)と地方代表議会議員(132人)で構成される国民協議会(憲法の制定及び改正、大統領・副大統領の任期中の解任)がある。

2 最近の内政・社会動向

 ジョコ大統領は、2014年10月20日に大統領に就任し,インフラ整備,社会保障拡充,格差是正等の経済・社会政策を優先し,「国民目線」からの改革を志向。
 また,国民に分かりやすく方針を示し,迅速かつ目に見える成果を求める新しいスタイルを確立した。
 国政での経験がなく,かつ少数与党という厳しい状況での政権立ち上げであったが,徐々に体制を強化。国会の3分の2以上が与党勢力となるとともに,2度の内閣改造を経て政治基盤は安定化。

3 最近の経済動向

  • (1)インドネシア経済は、世界金融・経済危機の影響を受けた2009年も比較的高い4.6%の伸び率を達成し、その後も一貫して5~6%の堅調な経済成長を維持。しかし、世界経済の成長鈍化や米国の金融緩和縮小等の影響を受け、2013年の成長率は5.8%と減速し、2009年以来4年ぶりに6%を下回り,さらに2015年の成長率は4.8%と減速したものの,2016年は5.02%と5%台を回復。
  • (2)失業率は、2006年には10%を超えていたが、2016年2月には、5.5%まで低下(中央統計局統計)。ただし、毎年250万人が新規に労働市場に参入すると試算されており、それを吸収する雇用を創出するためには年率6%以上の経済成長が必要との指摘もある。
  • (3)2016年の外国直接投資(実現ベース)は前年比8.4%増の396.6兆ルピアに達した。国内投資も前年比20.5%増の216.2兆ルピアに達し,ともに過去最高を記録。

4 治安情勢

1 概況

  • (1)インドネシアでは、2009年7月に発生したジャカルタ市内米国系ホテル同時爆弾爆発事件以来、多数の民間人が死傷する大規模テロは発生していなかったが、2016年1月にジャカルタ中心部においてテロ事件が発生し、外国人1人を含む4人が死亡し(犯人4人も死亡)、警察官5人や外国人4人を含む26人が負傷した。本件1月のテロ事件については、「ISILインドネシア」の組織名で犯行声明が発出されたほか,イスラム過激派組織ISIL(イラクとレバントのイスラム国)の機関誌においてISILによる「戦果」として紹介された。
  • (2)近年、テロリストの主たる攻撃目標は警察官及び警察関連施設であり、外国権益を目標としたと見られるテロは発生していなかったが、2016年1月のジャカルタにおけるテロ事件は犯行声明からみて、外国人を標的としていた可能性がある。
  • (3)また、イラクやシリアに渡航し、ISIL等のイスラム過激派組織に参加しているインドネシア人が相当数に上ると指摘されている。今後、イラクやシリアで戦闘技術等を身に付けた者がインドネシアに帰国することで、治安上の脅威となることも懸念されている。
  • (4)中部スラウェシ州ポソ及びパプア州中央部山岳地帯
     2012年以降、中部スラウェシ州ポソにおいては,小規模なテロが発生しており,警察部隊等に対する襲撃が散発。ポソを拠点とするテロリストに対する警察当局の取締りも実施されている。また、パプア州中央部の山岳地帯においては、パプアの分離独立を標榜する組織とみられる武装集団による警察・国軍への襲撃が散発している。

5 地方情勢(分離・独立の動きと政府の対応)

(1)アチェ問題

  • (ア)アチェにおいては、1976年以降約30年間にわたりインドネシアからの分離独立を目指す「独立アチェ運動(GAM)」と治安当局との間で衝突が続き、1998年のスハルト政権崩壊後、分離運動が活発化。
  • (イ)ユドヨノ政権になって、スマトラ沖大地震・津波からの復興という共通の目標に向け、GAMと政府の間で和平の機運が高まり、2005年1月、フィンランドのアーティサリ元大統領の仲介によりGAMとインドネシア政府との間で和平協議を実施し、8月15日には合意内容をまとめた覚書(ヘルシンキ和平合意)に署名が行われ、2005年末までにGAM部隊の動員解除、武器供出、インドネシア側増派部隊の撤退が完了した。
  • (ウ)アチェにおける特別自治のベースとなるアチェ統治法は、2006年7月に国会で可決され、2007年に第1回目のアチェ州地方首長選挙、第2回目の地方首長選挙が2012年4月に実施され、ザイニ・アブドゥラ元GAM代表が新知事に就任した。
  • (エ)2017年2月に実施された首長選挙では,のイルワンディ・ユスフ前州知事(任期2007―2012年,元GAM幹部)候補が最多得票で当選。選挙時に懸念されていた大きな混乱や事件は起こっておらず,治安は落ち着いている。

(2)パプア問題

  • (ア)インドネシア独立(1945年)後も、西イリアンの帰属をめぐってオランダとインドネシアの間で対立が続く。現地では、インドネシアへの帰属を拒否し、独立を目指す住民が「自由パプア組織(OPM)」を結成し、60年代~70年代にかけて独立運動を展開。
  • (イ)1962年に国連での米国主導の調停を経て、西イリアンの行政権はオランダからインドネシアに移譲され、1969年の「住民代表」による投票の結果、同11月、インドネシアへの帰属が確定。1973年、西イリアンは、イリアン・ジャヤ州へ改称。
  • (ウ)1999年10月、イリアン・ジャヤ州を3分割する「パプア分割法」が成立。その後、イリアン・ジャヤ州議会をはじめ反対意見が強まり、政府(ワヒッド政権)は同法の施行を無期延期とした。
  • (エ)2002年1月、パプア州特別自治法が施行される。州名が「イリアン・ジャヤ州」から「パプア州」に変更。上記(ハ)のパプア分割法との関係を巡って混乱が生じた。
  • (オ)2003年1月、メガワティ大統領(当時)は、無期延期とされていた「パプア分割法」の実施促進を指示する大統領令を発出。パプア州分割の有効性に関する議論が再燃。同年2月、「西イリアン・ジャヤ州」の発足式が平穏に開催された一方で、8月、「中部イリアン・ジャヤ州」の発足に際し、分割賛成派及び反対派の住民の衝突が発生し、政府はパプア分割法の実施を延期。
  • (カ)2004年4月5日、西イリアン・ジャヤ州とパプア州(未分割の中部イリアン・ジャヤ州を含む)において総選挙が実施され、両州の州議会議員及び4名ずつの地方代表議会(DPD)議員が選出された。同年11月、パプア州政府が憲法裁判所に訴えていた西イリアン・ジャヤ州の合法性につき、同裁判所はパプア分割法を違憲とする一方、既に州政府等の統治体制が整っていることから、西イリアン・ジャヤ州についてはその存在を認めるという判決を下した。2007年4月、西イリアン・ジャヤ州の名称が「西パプア州」に変更。
  • (キ)パプア州及び西パプア州における分離独立を求める声は依然として続いており、プンチャック・ジャヤ県及びミミカ県周辺ではOPM(パプア分離独立運動グループ)と見られる武装集団が治安当局等を襲撃する事案が散発的に発生している。特にミミカ県においては、米国系鉱山企業フリーポート社との労使争議も続いており、独立派住民が関与しているとも言われる衝突等が治安当局との間で散発的に発生。2011年10月にはジャヤプラで「パプア・コングレス」が数千人の参加を得て開催され、「西パプア連邦」の独立を宣言し、独自の国旗を掲揚したため、治安当局に強制排除され、死傷者が発生した。
  • (ク)2013年1月にパプア州知事選が行われ、同4月、元民主党パプア支部長のルカス・エネンベ氏が知事に、元パプア州ミミカ県知事のクレメン・ティナル氏が副知事にそれぞれ就任した。州内では、依然として、パプア州プンチャック・ジャヤ県やミミカ県を中心に銃撃事件が発生している。
  • (ケ)2014年12月に,西パプアの独立を目指す西パプア統一自由運動(ULMNP)が結成。メラネシア先鋒グループ(MSG)への正式加盟と,西パプア独立を目指した運動が引き続き行われている。

6 日・インドネシア関係

(1)政治

  • (ア)2006年11月、ユドヨノ大統領訪日時、「平和で繁栄する未来へ向けての戦略的パートナーシップ」に安倍総理(当時)と署名。地域及び世界の平和と安定のために協力することで一致した。
  • (イ)2014年11月、APEC首脳会議が行われた中国・北京において、安倍総理とジョコ大統領との間で初の首脳会談を行い、ジョコ新政権下でも両国間の関係を一層強化していくことで一致した。
  • (ウ)2015年3月、安倍総理は、大統領として初めて訪日したジョコ大統領と会談を行い、会談終了後,共同記者発表において、「日本・インドネシア共同声明 -海洋と民主主義に支えられた戦略的パートナーシップの更なる強化に向けて-」を発出した。
  • (エ)2015年4月、アジア・アフリカ会議60周年記念首脳会議出席のためにインドネシアを訪問した安倍総理は、ジョコ大統領と会談し、3月のジョコ大統領の訪日成果を着実にフォローアップしていくことで一致した。
  • (オ)2015年11月、安倍総理は、ASEAN関連首脳会議出席のために訪問中のマレーシア・クアラルンプールにおいて、ジョコ・ウィドド・インドネシア共和国大統領との間で会談を行い、両国は長い友好関係を有する戦略的パートナーであり、インドネシアの発展は地域の繁栄のためにも重要であり、交通、港湾、電力等の質の高いインフラ整備に協力する考えであることを述べた。
  • (カ)ジョコ政権発足後、岸田外務大臣は、2014年11月及び2015年12月の2度、インドネシアのルトノ外務大臣と外相会談を実施した。2014年11月に行われたルトノ外務大臣との初の外相会談では、外相戦略対話の継続を含め、戦略的パートナーシップを一層強化すること、海洋分野で協力していくことなどにつき一致した。
  • (キ)2015年12月、岸田外務大臣及び中谷防衛大臣は、訪日中のルトノ外務大臣及びリャミザルド国防大臣との間で、日本とインドネシア及び日本とASEAN加盟国との間で初となる外務・防衛閣僚会合を開催し、海洋安全保障分野における協力やテロ対策等について議論し,両国の安全保障・防衛協力の強化及び地域の平和と安全へ貢献していくことで一致した。
  • (ク)2016年5月,安倍総理は,G7アウトリーチ会合出席のため訪日中のジョコ大統領と懇談を行い,ジャカルタ東部のパティンバン新港整備につき両国で協力して実施することを確認する等,二国間関係の強化に向けた意見交換を行った。
  • (ケ)2016年12月,岸田外務大臣と訪日中のルフット海洋担当調整大臣との間で,海洋フォーラム立ち上げのための覚書への署名が行われ,海洋分野において両国の協力を推進していくことで一致した。
  • (コ)2017年1月,安倍総理はインドネシアを訪問し,ジョコ大統領と首脳会談を行い,戦略的パートナーシップの強化に関する日本・インドネシア共同声明を発出した。

(2)経済

 2015年3月、安倍総理とジョコ大統領は、ビジネス・投資環境整備の推進、産業人材育成の強化、官民による経済対話・協力の強化、二国間・多国間での経済連携及び地域経済統合の推進からなる「PROMOSI:日インドネシア投資・輸出促進イニシアティブ」を立ち上げることで一致した。

(ア)貿易

  • (a)非石油・ガス部門だけでも、インドネシアにとって日本は輸出入の両面で最大の貿易国の一つであり、経済連携協定(EPA)も発効済み(下記(ハ)参照)。2016年のインドネシアの対日輸出は1兆9,799億円で国別輸出総額第3位、対日輸入は1兆2,302億円(財務省貿易統計)で第3位であり,日本の大幅な輸入超。
  • (b)日本のインドネシアからの主な輸入品は、金属鉱及びくず、天然ガス及び製造ガス、石炭・コークス及びれん炭、石油及び同製品、電気機器、衣類及び同付属品、木製品及びコルク製品(除家具)。他方、日本からインドネシアへの主な輸出品は、一般機械、輸送用機器、電気機器、プラスチック、化学製品、鉄鋼。
  • (c)インドネシアは日本にとって重要なエネルギー供給国。
    (注)日本のエネルギー輸入に占めるインドネシアの割合(2015年財務省貿易統計)
    石炭:14.9%(第2位)、液化天然ガス:7.2%(第5位)
  • (d)インドネシアは、中東の石油、豪州の食料品などの産品を日本に運ぶ重要なルートに位置しており、日本の輸入石油の約9割がマラッカ海峡を通過している。

(イ)投資

  • (a)日本からインドネシアへの民間直接投資については、2015年は実現ベースで54億ドルで、第2位であった。(投資調整庁)
  • (b)インドネシアにおける日系企業は約1,800社近くに上る。

(ウ)日インドネシア経済連携協定(EPA)

 日インドネシアEPAについては、2005年6月のユドヨノ大統領訪日の際に正式交渉立上げを決定。2007年8月の安倍総理(当時)のインドネシア訪問時に首脳間で署名、2008年7月1日に発効。これまでに鉄鋼及び自動車等の貿易額増に寄与している。また、本EPAにより、2017年までに130名の看護師候補生と330名の介護福祉士候補者が日本の国家試験に合格。日本の病院や介護施設等に勤務している。

(3)経済協力

 日本は長年に亘りインドネシアに対する最大の政府開発援助(ODA)供与国。2015年の援助実績は、無償資金協力2.68億円(以上、交換公文ベース)、技術協力59.70億円(JICA経費実績ベース)。(参照:在インドネシア日本国大使館ホームページ他のサイトヘ

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