ジョージア
ジョージア(Georgia)
基礎データ


一般事情
1 面積
6万9,700平方キロメートル(日本の約5分の1)
2 人口
370万人(2023年:国連人口基金)
3 首都
トビリシ
4 民族
ジョージア系(86.8%)、アゼルバイジャン系(6.2%)、アルメニア系(4.5%)、ロシア系(0.7%)、オセチア系(0.4%)
(2014年、ジョージア国勢調査)
5 言語
公用語はジョージア語(コーカサス諸語に属する)
6 宗教
主としてキリスト教(ジョージア正教)
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
前6世紀 | 西ジョージアにコルキス王国成立 |
前4世紀~3世紀 | 東ジョージアにイベリア(カルトリ)王国成立 |
4世紀 | イベリア(カルトリ)王国がキリスト教を国教化。ジョージア文字の考案 |
562年 | 西ジョージア、ビザンツ帝国により併合 |
6世紀 | 東ジョージア、サーサーン朝ペルシアにより征服 |
7世紀後半 | 東ジョージア、アラブにより征服 |
975年 | バグラト朝成立。タマラ女王(在位1184年~1213年)のもとバグラト朝最盛期、南コーカサス全域を領有 |
13世紀以降 | 数次にわたる外敵の侵入、国土の疲弊 |
16世紀以降 | オスマン朝とサファヴィー朝により東西に分割 |
1783年 | ロシア帝国、東ジョージアのカルトリ・カヘティア王国を保護国化 |
1801年 | 東ジョージア、ロシアに併合 |
19世紀前半 | 西ジョージアの諸地方、漸次ロシアに併合 |
1844年 | ロシア帝国、チフリスにカフカース総督府設置 |
1878年 | アジャリア併合によりジョージア制圧完了 |
1918年5月 | ジョージア・メンシェヴィキによりジョージア共和国独立宣言 |
1921年2月 | 赤軍チフリス入城、ジョージア・ソビエト社会主義共和国成立 |
1922年 | アルメニア、アゼルバイジャンと共にザカフカス社会主義連邦ソビエト共和国を形成、ソ連邦結成に参加。 |
1956年 | トビリシ事件(民衆集会・運動が軍により流血の弾圧) |
1989年4月 | トビリシ事件(独立回復要求集会へのソ連軍の弾圧) |
1991年4月9日 | 独立宣言 |
1991年5月 | ガムサフルディア、初代大統領に当選 |
1992年1月6日 | 反ガムサフルディア派、大統領官邸占拠。ガムサフルディア大統領、ジョージアから脱出 |
1992年2月 | 国家評議会創設。シェヴァルナゼ元ソ連外相が帰国し、国家評議会議長に就任 |
1995年11月 | シェヴァルナゼ大統領就任(2000年再選) |
2003年11月 | 野党勢力が議会を占拠、シェヴァルナゼ大統領辞任(バラ革命) |
2004年1月 | サーカシヴィリ大統領就任 |
2007年11月 | 反政府デモ隊と治安当局の衝突により多数の負傷者が出たことを受け、非常事態令発令。2008年1月に大統領選挙を繰り上げることで事態は収拾 |
2008年1月 | サーカシヴィリ大統領再選 |
2008年8月 | ジョージア軍と南オセチア軍の軍事衝突にロシアが介入。ロシアは南オセチア及びアブハジアの独立を一方的に承認 |
2012年10月 | 議会選挙にて野党「ジョージアの夢」が勝利。イヴァニシヴィリ首相率いる新政府が発足 |
2013年10月 | 大統領選挙が行われ、与党連合「ジョージアの夢」が立てたマルグヴェラシヴィリ候補が当選 |
2013年11月 | 首相と議会の権限を強化する憲法改正が発効(実権が大統領から首相に移行)。マルグヴェラシヴィリ大統領就任。ガリバシヴィリ内務大臣が首相に就任 |
2015年12月 | ガリバシヴィリ首相が辞任し、クヴィリカシヴィリ首相が就任 |
2016年10月 | 議会選挙で与党「ジョージアの夢・民主ジョージア」が圧勝し、4分の3以上の議席獲得 |
2018年6月 | クヴィリカシヴィリ首相が辞任し、バフタゼ首相就任 |
2018年11月 | 大統領選挙が行われ、独立候補(与党「ジョージアの夢」が支持)のズラビシヴィリ候補が当選。12月に就任。 |
2019年9月 | バフタゼ首相が辞任し、ガハリア首相が就任 |
2020年10月 | 議会選挙で与党「ジョージアの夢・民主ジョージア」が全議席の6割を獲得 |
2021年2月 | ガハリア首相が辞任し、ガリバシヴィリ首相が就任 |
2024年2月 | ガリバシヴィリ首相が辞任し、コバヒゼ首相が就任 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
サロメ・ズラビシヴィリ大統領(任期6年、2018年12月就任)
3 議会
一院制(任期4年、定数150、前回選挙は2020年10月)
4 政府
- (1)首相 イラクリ・コバヒゼ
- (2)外相 イリア・ダルチアシヴィリ
5 内政
独立後就任したガムサフルディア初代大統領は、反政府勢力との武力衝突等により1992年1月に失脚、同年3月に新しい最高権力機関として国家評議会(約60%で構成、メンバーの大半は反共活動家)が創設された。同評議会議長にはシェヴァルナゼ元ソ連外相が就任し、10月には最高会議議長に選出された。
テロ行為などが繰り返されてしばらく国内情勢は不安定であったが、1995年11月、新憲法のもとで大統領選挙と議会選挙が同時に行われ、シェヴァルナゼ最高会議議長が圧倒的支持を得て大統領に当選(2000年4月再選)し、議会選挙でも同大統領派「ジョージア市民同盟」が第一党となった。
しかし、経済の低迷と政府の腐敗を背景として国民の不満が蓄積。2003年11月に議会選の結果を不服とする野党勢力が議会及び大統領府を占拠し、その結果、シェヴァルナゼ大統領は辞任に追い込まれた(バラ革命)。2004年1月の大統領選挙で、政変の中心人物であるサーカシヴィリ氏が圧倒的支持を得て当選。同年3月には議会比例区の再選挙で与党ブロック「国民運動・民主党」が圧勝した。サーカシヴィリ大統領は汚職根絶などの改革を積極的に推進。2007年11月、反政府デモが発生し、非常事態令が発令。サーカシヴィリ大統領は大統領選挙を2008年1月に繰り上げると発表。繰り上げ大統領選挙では、サーカシヴィリ大統領が野党候補を破り再選された。また、2008年5月に行われた議会選挙では、与党統一国民運動が150議席中119議席を獲得した。
サーカシヴィリ政権下でも国民の生活レベルは改善されず、汚職問題や政権の強権的な政策に批判が高まり、2012年10月に行われた議会選挙では、野党連合「ジョージアの夢」が与党「統一国民運動」を破り、150議席中85議席を獲得。この結果を受け、野党連合の指導者を務めていたイヴァニシヴィリが首相に就任し、新内閣が発足した(初の選挙による政権交代の実現)。
2013年10月に行われた大統領選挙では与党連合「ジョージアの夢」が立てたマルグヴェラシヴィリ候補が当選。翌11月に大統領に就任し、ガリバシヴィリ首相を首班とする新内閣が発足。また、2016年10月に行われた議会選挙においても、クヴィリカシヴィリ首相率いる与党「ジョージアの夢・民主ジョージア」が150議席中115議席を獲得し、更に盤石な基盤を確立した。
2018年6月、クヴィリカシヴィリ首相の辞任を受けて、バフタゼ首相が就任。
2018年10月には、国民による最後の直接選挙となる大統領選挙が実施され、独立候補ながら与党「ジョージアの夢」が支持するズラビシヴィリ元外相が、翌11月の決選投票で次期大統領に選出された。
2019年9月、バフタゼ首相の辞任を受けて、ガハリア首相が就任。2020年10月に行われた議会選挙において、与党「ジョージアの夢・民主ジョージア」 が150議席中90議席を獲得し、3期連続で政権を維持。2021年2月、ガハリア首相の辞任を受けて、ガリバシヴィリ首相が就任。
2024年2月、ガリバシヴィリ首相の辞任を受けて、与党党首であったコバヒゼ首相が就任。
ジョージアは国内に分離独立を主張し、ロシア軍が駐留するアブハジアと南オセチアを抱え、両地域には中央政府の実効支配が及んでいない。2008年8月、ロシアは両地域を「共和国」として独立承認したが、現時点でロシア以外に独立を承認したのは数か国のみ。
外交・国防
1 外交基本方針
ジョージアは、EU・NATO加盟を外交の優先課題としている。トルコ・アゼルバイジャンとの地域協力やGUAM内の地域協力にも積極的。
ロシアとは、アブハジア及び南オセチア問題、ジョージアのNATO加盟に向けた動き等を背景に緊張関係が続く中、2008年8月、ジョージア軍と南オセチア軍の軍事衝突にロシアが介入したことで、緊張は武力紛争に発展。EU等の仲介により停戦したものの、ロシアが南オセチア及びアブハジアの独立を一方的に承認するとジョージアはロシアとの外交関係を断絶した。
2012年10月の議会選挙後発足したイヴァニシヴィリ政権は、ロシアとの関係改善に向けて、「対露関係特別代表」のポストを新設し、同年12月からロシアとの対話を再開。2013年11月に発足したマルグヴェラシヴィリ政権はこの対話路線を維持しつつも、欧州への統合を基本的外交政策とし、ガリバシヴィリ政権下の2022年3月、ジョージアはウクライナやモルドバに続いてEU加盟申請を行い、2023年12月、欧州理事会はジョージアに対してEU加盟候補国のステータス付与を決定。現コバヒゼ政権も欧州への統合路線を最優先事項として引き継いでいる。
2 軍事力
総兵力20,650人(陸軍19,050人、国家警備隊1,600人)準兵力5,400人
(ミリタリー・バランス2023)
経済
1 主要産業
農業、食品加工業、鉱業
2 GDP
300.2億米ドル(2023年:IMF推計値)
3 一人当たりGDP
8,165ドル(2023年:IMF推計値)
4 経済(実質GDP)成長率
6.2%(2023年:IMF推計値)
5 物価上昇率
2.4%(2023年:IMF推計値)
6 失業率
18.4%(2023年:IMF推計値)
7 貿易額
- (1)輸出 60.91億ドル
- (2)輸入 154.38億ドル
(2023年:ジョージア国家統計局)
8 主要貿易品目
- (1)輸出 自動車、銅鉱、ワイン、合金鉄、鉱物性または化学肥料、窒素肥料
- (2)輸入 自動車、石油、医薬品、電話機、銅鉱
(2023年:ジョージア国家統計局)
9 主要貿易相手国
- (1)輸出 EU諸国、アゼルバイジャン、アルメニア、カザフスタン、キルギス
- (2)輸入 EU諸国、トルコ、米国、ロシア、中国
(2023年:ジョージア国家統計局推計値)
10 通貨
ラリ(Lari:1995年9月25日導入)(CIS統計委員会)
11 為替レート
1ドル=2.64ラリ(2023年6月2日現在:ジョージア国立銀行)
12 経済概況
主要産業は、茶、柑橘類、果物、たばこ、ブドウ栽培を中心とする農業及び畜産業、紅茶・ワインを中心とする食品加工業、マンガンなどの鉱業。
旧ソ連解体後、経済は一時混乱したが、2004年に政権についたサーカシヴィリ大統領は、汚職撲滅、金融・財政制度改革、市場経済化などの改革を推進。アゼルバイジャン産の石油・ガス輸送のためのパイプライン建設等に加え、海外直接投資の増大などにより、2005年には9.3%のGDP成長率を記録。
2006年3月に主要貿易国であるロシアがジョージアの主要輸出品であるミネラルウォーター及びワインの禁輸措置を取ったことで、関連産業が深刻な打撃を受けたが、その後、徐々に販路開拓に成功したこともあり、2007年には12.4%のGDP成長率を達成。
2008年8月のロシアとの武力衝突及びその後の世界的経済危機は、ジョージア経済に深刻な影響を及ぼし、2009年はGDP成長率がマイナスとなったが、2010年には6.4%の成長率を達成した。
その後、国際石油価格の下落等に伴う近隣諸国の不況といった外的影響から、2015~16年の経済成長率は2%台後半に低迷していたが、2017~19年は4%台以上を維持。しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響により、主要産業の一つである観光収入の減少を始め、内外の需要が低迷し、経済成長率は-6.8%に転落。しかし、コロナ後の2021年及び2022年は観光収入や内外の需要が回復し、10%台の成長を記録した。
2019年に世銀が発表した報告書「ビジネス環境の現状2020(Doing Business 2020)」において、ジョージアはビジネスのしやすい国第7位となった。
経済協力
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力 661.99億円 (2021年度までの累計)
- (2)無償資金協力 121.83億円 (2021年度までの累計/文化・草の根無償等を含む)
- (3)技術協力実績 27.65億円 (2021年度までの累計)
((1)~(2)は、何れも交換公文ベース)
2 主要援助国
ドイツ、フランス、米国、スウェーデン、日本、スイス
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2016年 | 米国 83.72 | ドイツ 45.73 | 日本 18.05 | スウェーデン 12.20 | スイス 11.71 | 205.73 |
2017年 | 米国 96.55 | ドイツ 48.71 | 日本 16.63 | スウェーデン 14.37 | オーストリア 8.67 | 224.02 |
2018年 | ドイツ 110.41 | フランス 104.43 | 米国 100.94 | スウェーデン 14.81 | デンマーク 12.28 | 390.73 |
2019年 | フランス 15.026 | ドイツ 113.80 | 米国 95.87 | スペイン 16.87 | スウェーデン 14.83 | 431.58 |
2020年 | ドイツ 356.92 | フランス 221.27 | 米国 71.79 | スウェーデン 16.18 | スイス 8.93 | 719.67 |
(出典:OECD/DAC)
二国間関係
1 政治関係
- (1)国家承認日 1992年4月3日
(参考)1921年1月に日本は「ジヨルジア」を国家承認した経緯あり。 - (2)外交関係開設日 1992年8月3日
- (3)在ジョージア日本大使館開設 2009年1月1日
- (4)在日ジョージア大使館開設 2007年2月
- (5)日本における国名呼称を「グルジア」から「ジョージア」へ変更 2015年4月22日
2 経済関係
- 日本の対ジョージア貿易(2023年:財務省貿易統計)
- 輸出 590.5億円(自動車、ゴムタイヤ及びチューブ、自動車の部分品、原動機)
- 輸入 27.4億円(アルミニウム及び同合金、非鉄卑金属くず、衣類、ワイン)
3 文化関係
- 一般文化無償資金協力 2件 計6,840万円 (2022年度まで)
- 草の根文化無償資金協力 7件 計5,440万円 (2022年度まで)
- 計:1.23億円 (2022年度まで)
最近の事例
- 草の根文化無償資金協力(供与限度額)
- 2016年度 トビリシ自由大学日本語教育機材整備計画(887万円)
- 2019年度 イリア大学日本センター機材整備計画(120万円)
- 2022年度 国立科学図書館デジタル化計画(833万円)
4 在留邦人数
149人(2023年10月現在:外務省)
5 在日当該国人数
92人(2023年6月:法務省)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1997年8月 | 中山太郎衆議院議員 |
1999年10月 | コーカサス友好親善ミッション(中山太郎衆議院議員団長) |
2006年7月 | 山中燁子外務大臣政務官 |
2006年8月 | 逢沢一郎衆議院議員 |
2007年5月 | 関口昌一外務大臣政務官 |
2009年5月 | 西村康稔外務大臣政務官 |
2013年11月 | 牧野たかお外務大臣政務官 |
2014年7月 | 逢沢一郎衆議院議員 |
2015年5月 | 薗浦健太郎外務大臣政務官 |
2015年5月 | 菅原一秀財務副大臣(EBRD総会) |
2017年1月 | 田中良生国土交通副大臣 |
2017年6月 | 滝沢求外務大臣政務官 |
2018年9月 | 河野太郎外務大臣 |
2022年5月 | 本田太郎外務大臣政務官 |
2023年5月 | 吉川ゆうみ外務大臣政務官 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1992年10月 | チクヴァイゼ外相(旧ソ連邦支援東京会議) |
1997年12月 | レキシビリ国務相(民間招待) |
1999年3月 | シェヴァルナゼ大統領(公式実務訪問) |
2001年6月 | メナガリシヴィリ外相(コーカサス三か国展) |
2005年9月 | チョゴバッゼ経済開発相(博覧会賓客) |
2007年3月 | サーカシヴィリ大統領(実務訪問賓客) |
2009年3月 | ヴァシャッゼ外相(外務省賓客) |
2010年3月 | ヴァシャッゼ外相 |
2010年9月 | コヴァリア経済開発相(日ジョージア経済委員会会員企業との懇談) |
2012年6月 | ギラウリ首相 |
2012年7月 | ヴァシャッゼ外相 |
2013年5月 | パンジキゼ外相 |
2014年10月 | パプアシヴィリ憲法裁判所長官 |
2014年10月 | マルグヴェラシヴィリ大統領(実務訪問賓客) |
2015年11月 | ヒダシェリ国防相 |
2016年2月 | ウスパシヴィリ国会議長 |
2016年5月 | サニキゼ教育科学相 |
2016年6月 | ハドュリ財務相 |
2016年11月 | エロシヴィリ・エネルギー相 |
2017年5月 | クムシシヴィリ第一副首相兼財相(ADB総会) |
2017年6月 | ジャネリゼ外相 |
2017年9月 | カヒシヴィリ矯正相 |
2019年3月 | バフタゼ首相、コブリア経済・持続的発展相、ダヴィタシヴィリ環境保護・農業相 |
2019年10月 | ズラビシヴィリ大統領(即位の礼) |
2019年11月 | チヘンケリ教育科学相 |
2022年11月 | パプアシヴィリ議会議長 |
2022年12月 | ダルチアシヴィリ外相(外務省賓客) |
7 主な二国間条約・取極
- 1994年4月 旧ソ連邦との間で結んだ条約の承継を確認
- 日・グルジア技術協力協定(2007年3月署名、7月発効)
- 日・ジョージア租税条約(2021年1月署名、7月発効)
- 日・ジョージア投資協定(2021年1月署名、7月発効)