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議長声明(仮訳)
第6回アジア欧州会合

平成18年9月10~11日
於:ヘルシンキ

 第6回アジア欧州会合(ASEM6)は、2006年9月10日及び11日にヘルシンキにおいて開催された。首脳会合には、アジアの13か国及び欧州の25か国の首脳と欧州委員会委員長が出席した。EU理事会議長でもあるフィンランド首相がこの歴史的な会合の議長を務めた。

 首脳は、バンコク(1996年)、ロンドン(1998年)、ソウル(2000年)、コペンハーゲン(2002年)、ハノイ(2004年)で開催されたこれまでの会合を想起し、「ASEMの10年:グローバルな課題-共同の対処」との全体テーマの下、共通の利益に係る様々な現下の問題について包括的で突っ込んだ、かつ実りある議論を行った。

 首脳は、ASEM5以降の外相会合、財務大臣会合、文化大臣会合及び労働大臣会合の積極的な成果を賞賛の意をもって留意し、これらの会合の勧告を承認した。

ASEMの10年:グローバルな課題-共同の対処

1.首脳は、過去10年間における、グローバルな政治的・経済的アクターとしてのアジアと欧州の重要性の大きな高まりを確認した。首脳は、グローバルな相互依存の進展を含む、国際環境の深い変化に対する共同の対処を発展させるという両地域共通の努力を反映させたアジア欧州関係の緊密化及びすべての主要な協力分野における相互作用の強化を歓迎した。

2.首脳は、ASEMの最初の10年間を振り返り、ASEMがその間に多面的な対話促進者としての力を得て、アジア・欧州間の政策形成の場としての役割を築いたことを強調し、平和及び安定の促進におけるASEMの全般的な成果を歓迎した。首脳は、政治的相互作用の拡大、より強い経済パートナーシップの達成、多様な文化の人々の間の一層緊密な対話、双方の地域に影響する分野横断的な問題へのよりよい認識について、満足の意をもって留意した。さらに首脳は、ASEMイニシアティブに関する概要報告に基づくイニシアティブの包括的リスト(添付(PDF)PDF)に証明されているとおり、ASEMの最初の10年間に実施された活動の豊かさと多様性を評価した。

地域情勢

3.首脳は、発足以来、欧州の平和、安定及び発展を促進してきたEUの継続的な統合プロセスについて議論した。首脳は意見を交換し、ビェンチャン行動計画にも留意しつつ、東アジアと東南アジア諸国連合(ASEAN)における共同体形成の現下のプロセスに対する支持を再確認した。また、首脳は、2005年12月にクアラルンプールにおいて開催された第1回東アジア首脳会議と、ASEANを推進力としつつ全般的に進化している地域構造にとって同会議が持つ不可欠な一員としての役割を歓迎した。さらに、首脳は、東アジア共同体の形成は、地域内外における平和、安全、繁栄及び進歩に貢献するであろうことを認識しつつ、東南アジア友好協力条約に加入するとのEUの意図に留意し、急速に進展している地域協力へのEUの参加に期待を表明した。首脳は、地域の発展と、地域的な安全保障対話と協力に関する経験、とりわけアセアン地域フォーラム(ARF)、欧州安全保障防衛政策(ESDP)並びに地域安全保障協力及び信頼醸成の範型としての欧州安全保障協力機構(OSCE)について議論し、現状を確認した。首脳はまた、アチェ監視ミッションに貢献しているEUと東南アジアの国々との協力を、平和と安全を促進する欧州アジア間の密接な協力の積極的な現れとして、歓迎した。

4.首脳は、朝鮮半島情勢について意見交換を行った。首脳は、朝鮮半島の非核化が北東アジアにおける平和と安定の維持に極めて重要であることを強調し、北朝鮮の核問題の対話を通じた平和的解決に対する支持を表明した。首脳は、2005年9月19日に北京において全会一致で採択された六者会合共同声明に対する支持を再確認した。また、首脳は、状況をさらに悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控えられるべきであることを強調し、北朝鮮に対し、直ちに無条件で六者会合に復帰すること、及び同共同声明の迅速な実施に向け作業することを要請した。首脳は、安保理決議1695への支持を再確認しつつ、地域内外の平和、安定及び安全を危うくした、先般の北朝鮮によるミサイルの発射実験に深刻な懸念を表明した。また、首脳は、人道上の懸念に対処することの重要性を強調した。
 首脳は、不信と対立を対話と協力へと成功裡に変えた欧州の経験を考慮しつつ北東アジアにおいて多国間の安全保障協力を促進することが、域内諸国間の相互理解と信頼を高め、北東アジアにおいて、より大きな平和と共栄の基礎を築くことになろうとの見解を共有した。

5.首脳は、ミャンマー代表団代表によるミャンマーの最近の政治情勢に関する説明に留意した。首脳は、ASEANの努力、及び第39回ASEAN閣僚会合(2006年7月、クアラルンプール)の共同コミュニケにおけるミャンマーに関するステートメントを歓迎した。首脳はまた、2006年5月のイブラヒム・ガンバリ国連事務次長によるミャンマー訪問を歓迎し、国連事務総長による平和的な政治的変革をもたらすための努力に対する継続的な支持を再確認した。首脳は、ミャンマー政府に対し、ASEAN、国連、及び国際社会に建設的な関わりを持つよう促した。首脳は、国民和解プロセスにおける目に見える前進の欠如と包含性の欠如に対して深い懸念を表明し、第5回ASEM首脳会合(2004年、ハノイ)におけるミャンマーの確約に沿った、包含的なプロセスによる民主的政府への移行を求めた。首脳はまた、政党に対して課された制限の早期解除、拘束下に置かれている人々の早期解放、及びすべての関係当事者間の効果的な対話を求めた。

6.首脳は、東ティモールの最近の情勢に関して意見を交換し、東ティモールの安定、法、及び秩序の回復に向けた国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)の設立へとつながった、国連安保理決議1704の採択を歓迎した。首脳は、また、2006年5月の東ティモール政府による情勢安定化への支援要請に応えた、ASEMパートナーを含む諸国の貢献を歓迎した。首脳は、国際社会に対し、東ティモールの一体性と、国家発展プロセスへの同国のオーナーシップを尊重しつつ、東ティモールへの支援を行うよう求めた。

7.首脳は、アフガニスタン政府が国全体に統治を確立することを支援する必要性を想起し、アフガニスタン・コンパクトの枠組みにおけるアフガニスタンの安定化・復興においてアフガニスタン政府を支援する長期的なコミットメントを再確認した。首脳は、近年多くが達成されたものの、安全保障、法の支配、統治及び人権、並びに経済・社会開発の分野において大きな挑戦が依然として存在していることに留意した。首脳は、また、統治強化に向けた動きの重要性、アフガニスタン及びその周辺における、強化され、より調整された麻薬対策努力並びに非合法武装集団の解体を含む治安セクターの改革の重要性を強調した。首脳は、とりわけSAARCの枠組みにおけるアフガニスタンに関する地域協力及び対話の強化への支持を表明した。首脳は、また、ニュー・デリーにおいて行われる第2回地域経済協力に関する会議(11月18・19日)を歓迎した。

8.首脳は、イスラエルとヒズボラの間の敵対行為の中止へとつながった国連安保理決議1701の採択を、市民の死傷者を出した重大事件と双方における多くの損失に留意しつつ、歓迎した。首脳は、国連安保理決議1701は、増強された国連レバノン暫定隊(UNIFIL)によって支援されている危機の政治的解決のための原則と要素を定めることを確認した。首脳は、また、欧州連合が果たした指導的役割、及びいくつかのASEMパートナーによるUNIFILへの兵員提供の申し出を認めた。首脳は、すべての関係当事者に対し、特にレバノンの復興を可能にするために、レバノン領への人と物の自由なアクセスに対するすべての障害を除去するよう要請した。首脳は、すべての国家が国連安保理決議1701の条件に従いレバノン政府もしくはUNIFILによって認められたもの以外のあらゆる団体・個人に対する武器及び関連物資の禁輸を遵守する必要性を想起した。首脳は、また、レバノン政府の強化及び領土全体に同政府の権限を行き渡らせるためのあらゆる努力への支援の重要性を強調した。首脳は、地域のすべての当事者に対し、この決議の即時かつ完全な履行を支援する建設的な役割を果たすよう要請した。首脳は、国際社会に対し、この最近の戦争の犠牲者に対して人道支援を行うるよう求めた。

9.首脳は、中東地域における包括的、公正かつ持続的和平を達成するための努力に対する支持を再確認した。首脳は、また、関連国連安保理決議及びロードマップに定められた諸原則を含む既存の合意に基づいた、イスラエル・パレスチナ紛争の交渉による解決への支持を再確認した。

10.首脳は、イランの核プログラムに関する国際的な懸念に対処する外交的及び平和的解決の追求へのコミットメントを強調した。首脳は、イランに対し、国連安保理決議1696(2006)及びすべてのIAEA理事会決議を履行するよう求め、イランの濃縮活動停止の不履行、及びIAEAとの協力の継続的不履行を詳述したIAEAの8月31日付報告書を懸念をもって留意した。首脳は、相互尊重及びイランの核プログラムの専ら平和的な性格に対する国際的信頼の確立に基づくイランとの包括的取り極めに向けた、中国、フランス、ドイツ、ロシア連邦、英国、米国、及び欧州連合上級代表による諸提案を歓迎した。首脳は、イランに対し、これらの提案に前向きに対応するよう求めた。

11.首脳は、イラクにおける憲法に基づき選出された政府の樹立、及び政府のプログラムにおいて国民和解と法の支配の促進が優先事項とされていることを歓迎した。首脳は、イラク政府により提出されたイラク・コンパクトに留意した。首脳は、イラク政府による国家の一体性、治安、安定、及び繁栄を確保するための努力における同政府への支援を再確認し、イラクへのさらなる国際的関与を促した。

多国間主義の強化と安全保障上の脅威への対処

12.首脳は、現代の挑戦と脅威には国境がなく、相互に結びついており、共通の解決策が必要とされることを強調した。首脳は、国連が中心的な役割を果たす公平、公正かつルールに基づいた多国間国際システムへの強い支持を再確認し、国連憲章及び国際法に従い、平和及び安全、持続可能な開発及び人権を促進するとのコミットメントを再確認した。首脳は、国連の主要機関を改革する必要性を含め、2005年国連首脳会合で合意された改革及びコミットメントの継続的実施の重要性を強調した。首脳は、平和構築委員会及び人権理事会の設置並びに国連マネジメント改革及び国連の開発、人道及び環境に関する活動のより効果的な実施を検討するために設置されたハイレベル会合の継続的進展を歓迎した。さらに、首脳はミレニアム開発目標(MDGs)と貧困の削減への継続的なコミットメントを再確認した。首脳は、また、既存の機構に立脚しつつ、国連システムにおいて、より効率的な環境活動の必要性と、より整合性のとれた組織的枠組みの可能性を探求する必要性を強調した。首脳は、最も深刻な国際犯罪の不処罰がなくなることを確保する必要性に言及し、この文脈において国際刑事裁判所(ICC)の役割について議論した。首脳はまた、ASEMの文脈で、人権に関する非公式セミナー等のイニシアティブの価値に留意した。

13.首脳は、軍縮並びに大量破壊兵器(WMD)及びその運搬手段の不拡散の強化に関する多国間の努力の重要性を強調した。首脳は、2004年の国連安保理決議1540の履行の必要性を含め、国際的な軍縮・不拡散条約の普遍化、履行及び遵守の重要性を強調した。首脳は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効の重要性とともに、2006年の生物兵器禁止条約(BWC)運用検討会議の成功裡の結果を確保するための協力の重要性について改めて表明した。さらに、首脳は、通常兵器のグローバルな取引に関する基準を設立するという現下の努力を歓迎し、非合法な小型武器の移転防止のための協力を促進するというコミットメントを再確認した。

14.首脳は、9月11日の米国同時多発テロ5周年記念に際し、テロリズムのすべての犠牲者を追悼し、黙祷を捧げた。首脳は、国際社会に対して未だ脅威を与えるテロとの闘いへのコミットメントを再確認し、包括的アプローチの必要性について強調した。首脳は、テロとの闘いは、国際法、特に国連憲章、人権の尊重、難民法及び国際人道法に従って実施されるべきであることを強調した。首脳は、暴力的過激主義への急進化と勧誘を防止する手段として、テロの拡散を促進する原因を特定し対処することが同様に重要であるとの点で合意し、また、テロを何らかの宗教、人種、国籍、民族グループと結びつける如何なる試みをも拒否した。首脳は、先般の国連包括テロ対策戦略に関する国連総会決議の採択を歓迎し、諸国に対し、国連のテロ防止関連のすべての条約及び議定書の締約国となり、関連国連決議を含めて、これらを完全に履行することを求めるとともに、包括テロ防止条約交渉を早期に妥結するよう求めた。さらに、首脳は、核兵器とその他大量破壊兵器によるテロを防止する決意を主張し、核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約と核物質の防護に関する改正条約の早期発効を確保する必要性を強調した。首脳は、金融活動作業部会(FATF)勧告に従ったテロの資金供与防止及び資金洗浄対策に関連する努力の重要性を認識した。首脳は、国連テロ対策委員会(UNCTC)の枠組みの中での協力を含む、進行中の実際的なASEMの協力を賞賛の意をもって留意し、ASEMテロ対策会議において策定された勧告を承認した。

15.人身取引、資金洗浄、テロ資金供与及び腐敗、薬物の密輸及び武器の不法取引などといった深刻な形態の組織犯罪への効果的な対処を確保するという共通の利益を考慮し、首脳は、多国間システム、とりわけ国際組織犯罪防止条約及び議定書の実施、並びに腐敗と違法薬物に関する国連条約の重要な役割を認識した。この文脈において、首脳は、第1回ASEM検事総長会合の積極的な結果を歓迎した。さらに、アジア・欧州間の海上交通路に対する脅威を軽減することの重要性を認識しつつ、首脳は、海上安全、国際的なエネルギー輸送路の安全を含む、海上及び航空交通を安全かつ確実なものとする条件について議論した。

16.首脳は、地球規模での健康安全を促進する必要性を強調し、HIV/エイズ、鳥インフルエンザ及び世界的に流行する可能性のある新型インフルエンザ、結核及びマラリア等の健康に対する地球規模での脅威と闘う決意を改めて表明した。首脳は、2006年のHIV/エイズに関する国連ハイレベル会合の政治宣言に留意し、2010年までの包括的な予防プログラム、治療、看護及び支援への普遍的アクセスという目標を達成に向けて、必要なあらゆる努力を追求することへのコミットメントを再確認した。首脳は、また、途上国における抗レトロウィルス治療(ARV)へのアクセスを容易にすることへのコミットメントを確認した。さらに、首脳は、様々な国際的な場における高病原性鳥インフルエンザと闘うための努力を認め、研究協力の重要性並びに草の根レベルを含めた監視体制の創設及び迅速な初動の重要性を強調した。この文脈において関連する国際プレッジング会合においてなされたコミットメントを果たすことの重要性、及び最近改訂された国際保健規則の実施を強調した。首脳は、ASEMの枠組みにおける地球規模での健康問題に関する具体的な共通行動を歓迎し、ASEMパートナーに協力を継続するよう要請した。

17.首脳は、2004年の津波と他の破壊的な自然現象が引き起こした前例のない生命の犠牲と破壊を想起し、被害を受けた人々とコミュニティーとの連帯の意を表明した。首脳は、災害に対応するために行われている努力を賞賛し、人間を中心においた地域的な早期警戒システム及び他の緊急事態対応メカニズムを通じて、回復力を構築するために行われている行動に感謝の意を表した。首脳は、関連する国際的なコミットメント及び枠組みに立脚しつつ、また、国連システムの極めて重要な調整上の役割を再確認しつつ、災害のリスクと衝撃の軽減、及び災害への効果的な軍民対応を容易にすることを含め、地球規模での災害削減活動と能力強化の必要性を強調した。この点に関し首脳は、さらに、ASEANにおける災害管理及び緊急事態対応に関する重要な作業について留意した。首脳は、また、国連中央緊急対応基金の設立を歓迎した。

グローバリゼーションと競争力

18.首脳は、グローバリゼーション、交流の加速化、並びにグローバリゼーションがアジアと欧州双方にもたらしている経済成長の機会について議論した。首脳は、グローバリゼーションの課題に取り組み、その利益をすべての人々に及ぼす必要性を認識しつつ、各国経済の急速な転換と構造変化をいかに統御するかについて意見を交換した。首脳は、市場開放の過程は、かけがえのない利益を全般的に提供し、生産性を向上させることを再確認した。首脳は、グローバリゼーションへの適応が引き起こす課題に対処し、グローバリゼーションがもたらす機会をとらえるために、構造改革とあらゆる段階における効果的政策が必要であることを強調し、同時にこれらの政策を規定するにあたって保護主義に抵抗するべきであることを強調した。

19.首脳は、WTO交渉の現状について議論した。首脳は、ドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉の中断に深い遺憾の意を表し、多角的貿易体制の一体性と信頼性を維持すること、及びDDAの開発の約束を実現することの重要性を強調した。首脳はすべての交渉当事者に対して、状況が許し次第交渉を再開するために必要な政治的意志と柔軟性を示すよう求めた。首脳は、開発途上国及び後発開発途上国のニーズと利益を考慮しつつ、新しい商業上の機会と既存のグローバルな貿易ルールの改善をもたらすような意欲的かつバランスのとれた結果を達成することの重要性を強調した。首脳は、そのような合意とともに、グローバルな貿易に開発途上国及び後発開発途上国をさらに統合することを目的とした適切な措置をとることの重要性を強調した。首脳は、すべてのWTOメンバーに、相違を埋め、DDAの成功裡の妥結を達成するためさらに努力するよう奨励した。開発途上国及び後発開発途上国に与えられるより大きな柔軟性の必要性を考慮しつつ、首脳は、2006年11月までのベトナムのWTO加盟及びラオスのWTO早期加盟に対する強い支持を表明した。

20.首脳は地域貿易協定(RTA)の増加に留意し、これらの協定が多角的貿易体制の目的を支持し、促進すべきであると強調した。首脳はすべてのRTAが、そのスコープにおいて意欲的かつ包括的であり、RTA締約国の異なる開発レベルを考慮しつつ、WTOルールを完全に遵守することを確保すること、及び長期的に開発途上国を世界経済に組み込んでいくものであることを確保することの重要性について合意した。首脳は、そのような考慮は、WTO交渉の最近の中断に鑑みれば、従来にも増して重要であると強調した。首脳は、すべてのASEMパートナーと企業にとって公平な競争の場を維持するために、地域的又は二国間貿易を向上させるステップと並行して、市場アクセスを多国間ベースで改善する必要性を強調した。同様に、首脳は、DDA交渉が再開された場合には、WTOにおけるRTAに関するルールを改善し明確化する必要があることを認識し、この観点から、RTAのための新しい透明性メカニズム提案を通じて既に確保された進展を歓迎した。

21.首脳は、建設的な政策対話と行動指向のプログラムを通じ、両地域間で経済協力を深化することへのコミットメントを確言した。この点に関し、首脳は、経済閣僚に対し、早期に会合し、より緊密な経済パートナーシップ(CEP)に関するハノイ宣言のこれまでの遂行及び実施状況を検討するよう求めた。首脳は貿易円滑化行動計画(TFAP)及び投資促進行動計画(IPAP)の枠内で、特に、直接的なビジネスの関心分野にさらに焦点を当てて、更なる措置をレビューし検討する必要性に留意した。この文脈において、首脳はASEM関税局長・長官会合と税関分野における進展に留意した。首脳は、世界的に効果的な知的財産保護の促進と実施へのコミットメントを強調し、サプライ・チェーンの安全保障に関する国際協力とキャパシティ・ビルディングの重要性を強調しつつ、知的財産権侵害及び模倣行為と闘うことへのコミットメントを強調した。首脳はまた、地理的表示の分野を含む、知的財産関連事項に関する対話に留意した。さらに、首脳は、アジア欧州ビジネス・フォーラム(AEBF)の政策提言に満足の意をもって留意し、ASEMプロセスにおける積極的なステークホルダーとしての民間部門の更なる関与の重要性を強調し、ASEM貿易・投資博覧会を歓迎した。首脳はさらに、経済発展と雇用の促進における中小企業の重要な役割を強調し、2007年に中小企業に関する第1回閣僚会合を主催するとの中国の申し出を歓迎した。

22.首脳はASEM財務協力の強化の必要性を再確認し、2006年ウィーンにおいて開催されたASEM財務大臣会合における、均衡のとれた持続的な経済的拡大を確実にするための適切な政策対応に関する結論を歓迎した。この目的のため、首脳は、より緊密な経済・金融協力に関する天津イニシアティブ、とりわけ経済・金融問題に対するASEM臨時対話メカニズムの実施の進展を歓迎した。首脳はASEM信託基金Ⅱの積極的な結果を歓迎し、新しい分野における協力の進展に期待した。この点に関し、首脳は、新しい手段を確立する可能性を含めて、政策対話とキャパシティ・ビルディングにおける努力を支援する方途を模索する財務大臣の作業に留意した。首脳はまたアジアにおいて国又は地域レベルの債権市場を発展させるとの提案を確認した。首脳はIMFのガバナンスの改革のための提案を支持することにより、グローバルなガバナンスの構造を強化する意志に留意した。首脳は、新興国及び途上国に対して客観的な基準に基づき、より高い影響力と責任のシェアを与え、また他の機関における同時並行的な改革につながりうる出資額の見直しについて合意し、速やかに実施するためのIMF年次総会の重要性を強調した。首脳は、2008年に次回の財務大臣会合を主催するとの韓国の申し出を満足の意をもって歓迎した。

23.変化するグローバルな経済は構造調整を伴うこと、及び産業と人々はそうした調整に取り組む用意が必要であることを想起し、首脳は、積極的な労働市場政策の必要性を強調した。この文脈において、首脳は2006年ドイツにおいて開催された第1回ASEM労働・雇用大臣会合とその結果の重要性、及びこの分野における、社会的パートナーとの対話と協力を含む実質的なASEMの対話と協力を維持する必要性を強調した。首脳はまた、生産的雇用、相応の仕事、すべての労働者の権利保護及び社会的結束は、持続可能な社会経済的発展のために必須であることを強調しつつ、グローバリゼーションの社会的側面の強化の必要性を認識した。首脳は、2008年に第2回閣僚会合を主催するとのインドネシアの申し出を歓迎した。さらに、首脳は、国家は秩序ある管理された国際移民プロセスから利益を得られるであろうことを強調し、ASEM移民管理局長級会合等を通じて、アジアと欧州間の移民に関する協力を積極的に前進させることに同意した。

24.首脳は、有能な人的資源は経済・社会発展の鍵となる要素をなしていることを強調した。首脳は、グローバリゼーションは、あらゆる教育と訓練の分野に影響しつつ、人的資源開発に対する挑戦を提起していることを確認し、及びアジアと欧州は共に財政管理や万人のための良質の教育と訓練を確保する等の共通の問題に直面していることを認識した。首脳はまた、基礎教育、職業訓練、生涯学習の人への投資としての重要性を強調した。これを考慮しつつ、首脳は、継続的対話及び教育訓練の問題に関する最良の慣行の交換の重要性を強調し、2008年に第1回ASEM教育大臣会合を主催するとのドイツの申し出を歓迎した。首脳はまた、教育の分野で交流を促進するASEM DUOフェローシップ・プログラムの役割を認識した。

25.首脳は、異なる政策分野間での建設的な相互作用の必要性を強調しつつ、ノウハウと知識基盤への投資は、学術の発展、競争力、社会の福利厚生の促進において鍵となる役割を担っていることを認識した。この目的のため、首脳は、すべてのASEMパートナー間の技術革新、科学、技術の分野での協力を強化する方途を議論し、EU研究枠組計画の重要性を強調した。とりわけ、首脳は、2006年12月ベトナムにおいて開催予定のICT閣僚会合への支持を表明し、第1回科学技術大臣会合のフォローアップの可能性につき検討することに合意した。さらに、首脳は、研究と教育の分野におけるアジアと欧州の間の相互通信能力の拡張における、ユーラシア大陸横断情報ネットワーク(TEIN2)の重要な役割を認識し、そのより広い地域への適用を支持した。

環境及びエネルギー安全保障を含む持続可能な開発

26.首脳は、経済的発展、社会的発展及び環境保護は、持続可能な開発の相互依存的かつ相互に補強し合う要素であることを改めて述べた。首脳は、持続可能な開発委員会(CSD)第14会期の結果を支持し、2007年のCSD-15の成功裡かつ行動指向の結果への支援を表明した。さらに、首脳は貧困撲滅、MDGsの時宜を得た完全な実現の確保、及びグローバルな繁栄の促進へのコミットメントを再確認した。このため、首脳は、国内資金、政府開発援助及びその他の資源を含むあらゆる方面からの資源の実質的な増加、並びに持続可能な開発を促進し、開発途上国、とりわけ後発開発途上国を支援する効果的な技術協力及びキャパシティ・ビルディングの必要性を強調した。

27.首脳は、地球の天然資源の限界を尊重すること、及び海洋環境を含む環境の質の高いレベルの保護と改善を確保することの重要性を強調した。このため、首脳は、森林資源の保全及び持続可能な管理、砂漠化と違法伐採との闘い、及び海洋における国際協力の強化の必要性を強調した。首脳はまた、2010年までに生物多様性の喪失率を大幅に削減することの重要性を改めて述べた。さらに、首脳は、「3R」(廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用)イニシアティブや持続可能な開発のための教育プログラムなど、持続可能な生産と消費を促進するための活動を加速する重要性を強調した。首脳は、環境問題に関するASEMの対話を続ける必要性を強調し、2007年の次回環境大臣会合を主催するとのデンマークの申し出を歓迎した。この点に関し、首脳はまた、ASEM海洋イニシアティブやアジア欧州環境フォーラムを含む、関連活動の重要な役割に留意した。

28.首脳は、気候変動が持続可能な開発と地球の将来にとって深刻な脅威であることを認識した。気候変動のグローバルな性質は、気候変動枠組条約の原則に従った、実効的かつ適切な国際的対応への可能な限り幅広い協力と参加を必要とすることを認めつつ、首脳は、気候変動枠組条約の究極的な目的を達成することを目指して、国際協力を通じて、共通だが差異のある責任及び各々の能力との原則に基づいて、気候変動に対応する決意を表明した。このため、首脳は「気候変動に関するASEM6宣言(別添)」を採択した。

29.首脳は、エネルギー安全保障の促進と環境問題への対処との間の相乗作用を強調した。首脳は、幾つかの国が原子力を選択肢の一つとして選んだことにも留意しつつ、エネルギー効率の向上と再生可能及び代替エネルギー資源の利用促進は、持続可能で、信頼でき、手ごろな価格の現代的エネルギー・サービスへのアクセスを向上することを確認した。さらに、首脳は、貧困層にエネルギーへのアクセスを提供することは、MDGsにおいて要請されている[外務省1]、開発途上国における貧困の撲滅に資すると強調した。

30.首脳は、安定的、効果的及び透明性のあるグローバルなエネルギー市場を促進するための多国間の措置を求める従来からの立場を繰り返しつつ、エネルギー安全保障に関する問題について徹底的に議論し、これらの課題に取り組むために、関連する国際場裡において協力することに合意した。この文脈において、首脳はエネルギー憲章条約の重要性に留意した。首脳はまた、上流部門・下流部門双方のインフラへの新たな投資に資する、相互に利益のある、開放的で安定した法的環境を強化することの重要性を強調した。さらに、首脳は、エネルギー安全保障は、エネルギー源及び地理的供給源の多様化、エネルギー需要に影響する適切な政策、並びに、再生可能及び代替エネルギー源の研究開発における協力により、向上し得ることを確認した。首脳はまた、最終使用における効率の改善、的を絞った投資及び研究プログラム等の措置を強調しつつ、経済における石油への依存を減らすことに共通の利益を有することを認識した。

31.首脳は、技術の開発、移転及び展開を通じた持続可能なエネルギー資源及びエネルギー効率の向上を目指し、また、十分に多様化され、気候に優しい技術ミックスが、各国それぞれの事情に合わせて実現されることを予見しつつ、政府及び民間関係者に対し、技術革新を一層推進するよう奨励した。首脳は、政府を含む多層的なステークホルダーの関与、市場によるインセンティブ及び融資の提供に支えられた、技術とベスト・プラクティスの伝播等のエネルギー効率に関する措置が、直ちに相互利益をもたらすことを認識した。首脳はまた、費用対効果が高いエネルギー効率関連措置の組織的な特定を強化するエネルギー監査や評価[外務省2]等、キャパシティ・ビルディングへの投資の必要性を強調した。

文化と文明間の対話

32.首脳は、アジアと欧州の人々の間の相互作用の更なる促進に対するコミットメントを改めて述べつつ、文化と文明間の対話は、無知と偏見を妨げ、克服し、相互の理解と寛容を促進する極めて重要な手段であることを強調した。首脳は、文化の多様性とすべての文化の平等な尊厳を尊重し、保護し、促進する決意を再確認し、ユネスコの文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約の実施を奨励した。首脳は、2005年のパリにおける第2回ASEM文化大臣会合において採択された文化行動計画を承認し、閣僚に対して、文化担当高級実務者による準備作業の助力を得て、今後、定期的に会合を開催するよう奨励し、2007年に第3回ASEM文化大臣会合を主催するとのマレーシアの申し出を歓迎した。さらに、首脳は、アジアと欧州双方の各国における文化フェスティバル及び文化年の豊かさと多様性を評価し、2008年の文化間の対話に関する欧州年と並行し協力しながら、アジアにおいて文化間の対話の分野で実施される活動への支持を表明した。

33.首脳は、国際社会において調和と理解を構築することに資する環境の創造と強化に貢献する、ASEM異なる信仰間の対話の重要性を強調した。この文脈において、首脳はまた、国連の文明間の同盟や、国連の平和のための異なる信仰間の協力のための3者フォーラム等のイニシアティブの価値に留意した。首脳は、宗教に基づく如何なる偏見も非難し、平和の文化を育み、相互の尊重を促進し、あらゆる信仰を持つ人々の間に信頼を築くというグローバルな努力において団結する決意を改めて述べ、宗教に名を借りた暴力を断固として非難した。さらに、首脳は、バリ宣言に説明されている、平和、思いやり及び寛容という共有されている価値を実際の行動に移す重要性を強調しつつ、異なる信仰間の対話の結果を歓迎した。これを念頭に置き、首脳はラルナカ行動計画の実施への支持を表明した。

アジア欧州財団

34.首脳は、とりわけ若者を関与させ、市民社会に働きかけることの重要性を強調しつつ、知的、文化的、人的交流を通じ、アジアと欧州の人々の間の対話と協力を促進するアジア欧州財団(ASEF)の役割への支持を再確認した。首脳は、ASEFの活動をASEMの優先事項と一層連携させる上でのASEFの中心的なプログラムの重要性を強調し、ASEFがこの方針を追求することを奨励した。さらに、首脳は、目に見えるASEMのビジビリティを強化するため、ASEFの能力を最適化することの必要性を強調した。首脳は、ASEMの高級実務者によって用意されたASEFの長期的な財政の持続可能性を確保する解決策を歓迎し、承認した。

ASEMの将来

35.首脳は、3つの柱からなる枠組みの下でのプロセスを継続しつつ、ASEMは、多国間主義の強化、共通の懸念事項であるグローバルな脅威への対処、グローバリゼーション、競争力と金融、労働問題、教育と人的資源育成を含むグローバルな経済における構造変化、健康、情報通信技術(ICT)を含む科学技術、特にMDGs、気候変動、環境、エネルギーに焦点を当てた持続可能な開発、相互理解を促進する手段としての文化間及び異なる信仰間の対話等、鍵となる政策分野に焦点を当てて次の10年を開始するべきことに合意した。首脳は、包括的なアジア欧州関係の更なる発展におけるASEMの重要な役割を反映した2006-2008年のASEM作業計画(別添(PDF)PDF)を採択した。

36.首脳は、欧州側からEUに加盟するブルガリア及びルーマニア、並びにアジア側からインド、モンゴル、パキスタン及びASEAN事務局を、欧州及びアジア側でのそれぞれの内部手続が完了次第、ASEMプロセスに参加することを心より歓迎した。首脳は、2007年のドイツにおける次回外相会合にこれらの欧州及びアジア側の内部手続について報告するよう指示し、中国での2008年ASEM首脳会合で新規加盟国を正式に祝福することを期待した。

37.首脳は、「ASEMの将来に関するヘルシンキ宣言」及び作業方法と機構体系に関する附属書(別添)を採択した。首脳は、高級実務者に対して、政策議論を継続し、アジア欧州協力枠組み(AECF)2000を、ASEMの次の10年の要請及びプロセスにおける新たな進展に適応させることの要否を熟考するよう指示した。

38.首脳はASEM7を主催するとの中国の申し出を感謝の意をもって受け入れ、2008年10月24日及び25日に再び会合することを期待した。

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