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ASEMの将来に関するヘルシンキ宣言(仮訳)

2006年9月10~11日

我々、アジア13か国及び欧州25か国の首脳並びに欧州委員会委員長は、2006年9月10日及び11日に第6回アジア欧州会合のためにヘルシンキに集い、

-グローバル経済におけるアジアと欧州の増大しつつある重要性及び両地域間の経済的相互依存の増大、並びにASEMの設立以来、あらゆる分野でアジア・欧州関係が劇的に進捗していることを認識し、

-1996年にバンコクで開催された画期的な設立会合を想起し、

-我々のパートナーシップの最初の10年間は、政治対話の拡大、経済関係の強化、文化交流の深化をもたらし、100以上の共同イニシアティブを生み出したことを認識し、

-ASEMの10周年に際し、このプロセスを前進させる決意を再確認し、

-ASEMプロセスの開かれた、漸進的な性質を賞賛し、また、パートナーシップの拡大及び深化がこのプロセスを大幅に強化し、強固にし、グローバルな知名度を増すことを強調し、

-2004年のハノイにおける第5回ASEM首脳会合において強調されたように、ASEMの使命は、21世紀におけるアジアと欧州の包括的なパートナーシップを促進させるための枠組みであることに留意し、

ASEMを次の10年間へと成功裡に導くための以下の指針となる原則にコミットする。

パートナーシップの深化-将来の課題に直面して

  1. 我々は、欧州とアジアとの間の主要な収斂点として機能する、対話と協力の枠 組みとしてASEMが引き続き有する重要な役割を強調する。我々は、アジア欧州協力枠組み(AECF)2000に従い、ASEMを通じた平和と安定の維持及び強化、並びに持続可能な経済・社会発展に資する条件の促進に対するコミットメントを改めて述べる。
  2. 我々は、多国間主義及び強力な国連を核とする公平、公正かつルールに基づいた国際秩序にコミットした平等な国々の間のパートナーシップとしてのASEMの任務を再確認する。最適な結果を達成することを目指す上で、ASEMが効果的な多国間主義を促進するためにアジアと欧州を合わせた重みを反映すること、及びASEMの枠組みが他の多国間枠組みにおいて進行中のプロセスに価値を付加できる問題に集中することが重要である。ASEMはパートナーに対し、多国間協力を強化するための共通基盤を形成し続ける独自の機会を提供する。ASEMは、アジアと欧州がグローバリゼーションの利益を享受し、深まりつつあるグローバルな相互依存により引き起こされる挑戦に取り組み、現在及び将来の世代の福利に貢献することを可能とする。この点において、我々は、国連ミレニアム開発目標の実現を含む、2005年の国連首脳会合における決定を実施することの重要性を認識する。
  3. 我々は、地域・小地域・二国間レベルでの他の関連する協力と歩調を合わせた行動志向のイニシアティブを実施する手段として、より広い文脈でのEU・アジア関係における触媒としてのASEMの役割を改めて明言する。協力と地域統合は平和、安全保障及び福祉に対して大きな貢献をするものであり、我々は、地域アイデンティティと共同体形成プロセスの強化へのASEMの潜在力を強調する。

幅広い展望の定義-行動の重点分野の特定

  1. 我々は、ASEMがその長所と成果、とりわけ、政治、経済及び社会、文化、教育問題に関する多面的な対話と協力を踏まえていくことを強調する。ASEMは、多国間主義の強化、共通の懸念事項であるグローバルな脅威への対処、グローバリゼーション、競争力とグローバルな経済における労働問題を含む構造変化、教育と人的資源育成、健康、情報通信技術(ICT)を含む科学技術、特にMDGs、気候変動、環境、エネルギーに焦点を当てた持続可能な開発、相互理解を促進する手段としての文化間及び異なる信仰間の対話等、鍵となる政策分野に焦点を当てて次の10年を開始するべきことに合意した。更に、我々は、建設的な政策対話及び行動志向のプログラムを通じた両地域間の経済・金融協力の深化へのコミットメントを再確認する。
  2. 我々は、ASEMが非公式、ネットワーク形成、柔軟という性格に忠実であり続けつつ、上記の政策分野に対処して行くことを強調する。ASEMは、グローバルな挑戦への共同の対処を策定するため、国際的な政策課題に従い、かつそれを形成しつつ、優先度の高い時事問題についての首脳レベルでの非公式対話の機会を引き続き提供する。我々は、ASEMがこのような政策対話と関連する焦点を絞った協力イニシアティブを一層推進し、首脳会合から次の首脳会合へのモメンタムを維持することを強調する。

機構体系の強化-より強力なパートナーシップの形成

  1. 我々は、アジア欧州協力枠組みの原則の有効性を再確認しつつ、プロセスの深化と拡大に伴い、また、行動志向のイニシアティブを通じて結果を達成する努力を強化するため、ASEMの対話と協力イニシアティブの手段を強化する必要を認識する。ASEMヴァーチャル事務局は、パートナー間の更なる相互作用を確保し、現状把握と情報共有を拡大するものであり、こうした目的のための鍵となる手段となる。
  2. 我々は、次の10年間へとプロセスを導くための作業方法及び機構体系の改善に向けた別添の勧告を承認する。これらの勧告は、ハノイ首脳会合において開始され、京都における第7回外相会合によって前進した道筋に基づき、ASEMプロセスの実質化を目指すものである。更に、フィンランド政府及び日本政府により委託された「ASEMの10年に関する評価報告書」、及び韓国によりまとめられた「ASEMイニシアティブに関する概観報告書」は貴重な貢献を提供した。
  3. 我々は、ヘルシンキ首脳会合におけるASEM拡大に関する決定を歓迎する。この決定は、プロセスの包含的な性格、及びASEMが国際枠組みの中で果たす重要な役割を強調する。我々は、ASEM拡大がより大きなダイナミズムを生み、対話と協力を強化し、アジア・欧州間のパートナーシップを現在と将来のグローバルな課題に対処するためにより適したものとすることを強調する。

「ASEMの将来に関するヘルシンキ宣言」別添
-ASEMの作業方法及び機構体系-
(仮訳)

 アジア欧州会合の10周年は、過去の成果について評価し、プロセスを前進させ、内部の作業方法を強化する優れた機会である。ASEMの10年の遺産を考慮し、また、AECF2000並びにハノイにおける第5回首脳会合(2004年)、マドリッド(2002年)、キルデア(2004年)、及び京都における外相会合(2005年)において作成されたASEMの作業方法及び将来の道筋に関するこれまでの勧告を踏まえ、以下の指針は首脳及び欧州委員会委員長によって合意された原則を実施し、より円滑な全般的運営を確保し、プロセスの継続性を増し、イニシアティブの効率的かつ効果的な運営を強化するために策定された。

I.アジア・欧州協力の分野

1.集合的課題・イニシアティブへの対処、及び政治的指針の提供

 ASEMは、三本柱の構造を維持しつつ、グローバリゼーションと増大するグローバルな相互依存が提起する挑戦に効果的に対処するため、政治、経済、社会・文化問題の間の分野横断的連関に対処すべきである。これらの関連する課題及びプロジェクトの集合は、ASEM首脳会合の際に首脳によって定められ、また、2年間の作業計画に反映される実質的協力の中核的分野における全般的優先事項を支持すべきである。次の首脳会合に向けた協力の三本柱に基づき、重要な優先課題群を特定するには、政治的な指針が不可欠である。ASEM首脳会合及び外相会合は、国際場裡における変化に応じてその課題群が意味あるものであるよう方向性を決定し、レビューし、改訂すべきである。

2.課題に基づくリーダーシップの認定

 ASEMが平等なパートナーのフォーラムであり、意思決定はコンセンサスによることに鑑み、リーダーシップは課題に基づくべきである。調整国の役割を損なうことなく、各国は、特別の関心や専門知識を有する分野や課題において主導することができる。既存の協力の形態に基づき、特定の政策分野におけるプロジェクトやイニシアティブを推進する意思のある多くの共同提案国を中心としたメカニズムは、全ての国々のための目に見える成果を生むことができる。ASEMヴァーチャル事務局、電子メール・ネットワーク、及び高級実務者会合(SOM)のマージンにおける準備会合は、調整の手段として機能し得る。SOMは、達成された進展をレビューし、必要に応じて指針を与える。

 ASEMの進展する優先事項に関する明確な方向性及び中長期的展望に基づくイニシアティブの実施、並びに、特定の課題におけるリーダーシップに基づく体系的かつ効率的なイニシアティブのモニタリングは、首脳会合から次の首脳会合へのモメンタムを維持するために重要である。この目的は、ASEMのチャネルを通じて、特に政策対話及びキャパシティ・ビルディングに関係する新たな手段の創設の可能性を探るべきという第7回財務大臣会合の提案を受けた「分野及びテーマ別対話ファシリティー」の発展によって前進し得る。そのような対話ファシリティーは、対話を前進させ、必要な継続性とフォローアップを確保するためのモニタリング・見直し及び報告に関する責務を実行するための専門知識と支援を提供する。既に財務大臣会合により合意され、「より緊密なASEM経済・金融協力に関する天津イニシアティブ」の一部をなす「緊急経済・金融問題のためのASEM緊急対話メカニズム」の設置は、ASEMのキャパシティ・ビルディング強化を目指す具体的なイニシアティブの一例である。

II.プロセスの運営と調整

 課題に基づくリーダーシップはプロセスを前進させる主要な手段として奨励される一方、円滑な全般的運営・調整・管理メカニズムは引き続き必要である。

1.全般的調整

 首脳会合は、政治的指針を与える場、及びASEMプロセスにおいて達成された進展のベンチマークとしての中心的役割を果たし、外相会合はプロセスの運営について、ASEM・SOMは全般的調整について責任を有する。パートナーは、ASEMプロセスにとっての閣僚会合の重要性を認識し、その実効性及び効率性を高めるよう継続的に努力すべきである。

 両地域間の貿易・投資促進の分野においては、SOMTIが既にASEMの基盤及び確固とした調整メカニズムとして機能している。金融協力の分野においては、財務大臣代理会合が同様の機能を果たしている。文化、環境、エネルギー、健康、科学技術、情報通信技術(ICT)、及び労働・雇用のような分野における新たな協力イニシアティブに鑑み、これらの分野に関する追加的な分野別SOMの設置が、必要に応じて考慮され得る。

2.ASEM調整国と次期首脳会合・外相会合開催国の役割

 現在の調整メカニズムは、各地域から指名されたASEM調整国からなる。欧州委員会とEU議長国が欧州側の調整国であり、アジア側では、調整国は、ASEANの1か国と、非ASEANの1か国からなり、2年ごとに交代する。調整国は、ASEMコンタクト・ポイントの支援を受けて、プロセスの全般的調整を促進し、各地域における連絡チャネルとして活動する。

 地域調整を深化させるため、調整国の役割は、定期会合計画を確立し、SOMの役割を補完するために、閣僚会合に先立つ会合開催を標準化することにより強化されるべきである。更に、閣僚レベルの調整国会合も政策の方向性の発展を強化するために、必要に応じ検討されうる。

 プロセスの深化と拡大に鑑み、調整国グループの地理的バランスが維持されるよう確保しつつ、次期首脳会合・外相会合主催国の中心的役割が認識されるべきである。次期主催国の機能を強化することは、調整に継続性を付加し、調整国グループの主導的役割を促進し補完することができる。

3.ASEMヴァーチャル事務局(AVS)

 ASEMヴァーチャル事務局は、ASEMの調整及び情報共有手段として機能し、調整国に技術的支援を提供する。AVSは、議題及び作業計画の管理(例えば、改訂版の配布、ASEMイニシアティブに関する情報収集・通知、及び結果の周知)を促進し、組織的記憶を強化する。AVSはASEM調整国の役割を支援し、非公開のイントラネット・システムとして作動し、電子メール、文書・連絡事項の投稿、意見交換のための電子掲示板(BBS)、及び文書保存機能を併せ持つ。

4.ASEM大使館間の定期的コンタクト

 ASEMパートナー間の調整を強化するため、例えばEU本部所在地であるブラッセル及びASEAN事務局所在地であるジャカルタ、もしくは次回首脳会合主催国の北京において、大使館・代表部間の定期的コンタクトを行うことは、現地での連絡・情報共有を強化し、調整国の職務を円滑化し得る。

III.知名度、世論の認識、関係者との連携

 ASEMプロセスをより目に見えるものにし、世論の認識を促進するために、ASEM首脳会合、その他の会合、及びイニシアティブの結果を発信する広報戦略が優先課題として策定され、実施されるべきである。

 ASEM関連情報への容易なアクセスを確保するため、ASEMパートナーの外務省は、それぞれのウェブサイトに、アジア欧州財団(ASEF)、ASEM情報ボードその他の関連サイトへのリンクを含むASEMページを作成するよう招請される。

 アジア欧州ビジネス・フォーラム(AEBF)は、協議を通じて議題を形成しビジネス・セクターとの相互作用を高める上で重要である。更に、議会、学界、広義の市民社会のより緊密な関与は、広範な一般市民の間におけるオーナーシップ感を強めることに大いに資するとともにこれら市民の間におけるASEMの知名度及び認識を高めることになる。アジア欧州議員会議(ASEP)、アジア欧州ビジネス・フォーラム(AEBF)、及び市民社会の様々な関係者はアウトリーチを強化する上で重要な役割を果たす。

 ASEFは、アジア欧州協力と様々な市民社会のアクターとの間の連携を一層発展させる上で引き続き重要な役割を果たす。ASEFをASEMプロセスに引き続き連携させつつ、パートナーは、ASEFとの共催によるセミナーから生まれた勧告を検討するよう奨励される。更に、ASEMプロセスに対する一般の関心及び支持を維持・強化するため、ASEFはASEMのイニシアティブに効果的に一般の関心を惹きつけ、メディアの関心を確保するための新たな方途を探求し続けるべきである。

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