アジア

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青年交流:アジア欧州ヤングリーダーズシンポジウム

平成13年3月

【第1回アジア・欧州ヤングリーダーズシンポジウム】

アジア欧州ヤングリーダーズシンポジウム

イングヴァル・カールソン前スウェーデン首相の基調講演

 ご出席のみなさん、私は、このアジア・欧州ヤングリーダーズシンポジウムにお招きをあずかり、韓昇洲博士と共に基調講演をさせていただけることを大変光栄に思っております。橋本首相が、アジアと欧州の若い知識人、学者、政治家、実業家、外交官が参加する会議のイニシアティブをとられたことは、すばらしいことであると思います。このように我々が一同に会することのできる場を準備をしてくださった日本政府に対して、我々全員が感謝しております。

 この会議の特徴とは、どのようなものでしょうか?
 まず第一に、重要な国際会議では、出席者の大部分は高齢の男性です。私もその中の一人ですから、このような状況をよく知っております。しかし、このセミナーには、30代の方々が数多く参加されています。この点において、この会議は本当に若い世代を代表しているということができます。
 第二に、この会議は、自由で、恐らく思いもよらないような意見交換の機会を提供します。私は皆さんにこの自由な意見交換の場を有効に利用されるようにお薦めしたいと思います。新しい可能性と解決方法を探してください。
 第三に、これは単独の催しではありません。会議後のフォローアップを考慮せずに会議が準備されることが往々にしてあります。それでは、その会議が終了した時点で、本当に終わりとなってしまいます。しかし、このシンポジウムでは1998年にオーストリアで第2回会議の開催が予定されています。
 これからの数日間の討議の間、アジアと欧州の若い世代の人々がその他の地域の若者たちと同様に21世紀を担っていくということを心に留めておいてください。これはあなたたちの責任なのです。

 このシンポジウムのテーマは、「21世紀の新たなアジア・欧州協力の探求」です。このテーマは、もっと広範な全体像の中でとらえる必要があります。つまり、新たに台頭しつつあるグローバル経済において、地域的な強いつながりを持つ、世界的規模の協力としてです。
 これは単にアジアと欧州だけの問題ではありません。もちろん、ちがいます。NAFTA地域に含まれる南北アメリカも関係してきます。アジア、NAFTA、欧州、これらは世界経済における最も強大な3つの中核であり、この3つのグループはその他の国々にしばしば影響を与えています。しかし、今日、そしてこのセミナーの残りの期間中にアジアと欧州の関係についての討議は、20世紀の終わりにきて、経済、政治、社会的な状況の急速な変化に全世界が影響を受けているということを承知した上で行っていただきたいと思います。
 我々は地球的な観点に立って協力活動を行なう必要があります。
 我々は新鮮な目で物事を見る必要があります。
 私は、シュリダス・ランファル卿(Shridath Ramphal)とともに、グローバル・ガバナンス委員会共同議長を務めております。我々は、世界情勢の中の新しい秩序、つまり、この惑星上での我々の関係を管理する新しいスタイル、そしてこの惑星自体の新しい道を確立する時期だと確信していました。我々は、この新しい世界で我々を国際社会へと導く価値と倫理を定義する必要性を実感しました。我々の時代とニーズに適合した原則と理想に積極的に関与することによって、我々の意見が強くなり、力が生まれるべきものと考えます。
 それらは、人生、正義と自由、誠実さと思いやりへの尊敬を含んでいます。我々は報告書の標題として「地球上の隣人」という概念を使っています。この標題は、ますますグローバルになる世界の中で、隣人であるということの権利と責任の重要性を強調しています。
 50年前、国連の創始者たちが安全保障についてかなりの注意を払い、その中心に考えていたことは、国家の安全、つまり、侵略から逃れ、国家間の対立から逃れることでした。今日、現実はどうでしょうか?イラクのクウェート侵攻から思い起こされるように、国家間の対立は消滅していません。侵略行為が永久になくなるとは考えられません。しかし、今日、世界が直面している大部分の対立は、今後数十年間にわたって継続するものであると私は予測しますが、国家内の対立であると思います。過去数年間において、常に30から40の非常に激しい対立が世界各地で起こっていました。それらの大多数は国内的な対立、内戦ですが、それは本当に悲惨なものでした。
 グローバルな安全保障の概念は、人々と地球自体の安全も含めて、国家の安全に焦点を当てた従来のものよりも広い範囲で考えられなければなりません。今日の世界においては、すべての人々が隣人です。新しい秩序に合わせていくことが難しい人々もいることでしょう。国内情勢に問題が起こり、外交関係が悪化した際に、寛大な態度で相手を思いやることが難しい政府もあるでしょう。
 今日の地球上の隣人の中で、我々が存続するためには次のような事項を前面に押し出した協力がなければなりません。

 これらは地球全体の問題です。これらの問題は、国内政策の基本事項としても、大規模な国際組織や二国間協議においても、取り組まれる問題です。
 自分たちが他の国々や国内の他のグループとは全く別で、同じ活動領域にはいないのだと自分たち自身を欺くことのできる国家も地域的なグループも存在しません。従って、我々がアジアと欧州の協力について討議を行う場合に、グローバルなバックグラウンドを忘れてはなりません。アジアと欧州の2つの地域は、世界の他の地域が大きな困難に遭遇しているのであれば、決してその目的を達成することはできません。これは例えば、大気汚染、麻薬売買、安全政策を考えてみれば簡単に分かることです。これは経済分野においても同様に真実なのです。
 そうして、私は最終日の公開シンポジウムが東京の国連本部で開催されることには大きな象徴的な意味があると申し上げることができることをうれしく思います。

欧州連合とアジア

 1年前、私はスウェーデン首相の職を離れました。私とスウェーデン政府が参画した最大の決定の一つは、今から2年前の1995年1月1日に行われた欧州連合への加盟でした。
 スウェーデンは、欧州の協力体制に完全に参加したいと考え、そしてそれは我々自身の役に立つと同時に欧州連合の利益にも役立つと感じたため、欧州連合に加盟しました。しかし、多くのスウェーデン人は懐疑的でした。1994年に行われた国民投票で反対票を投じた人々の多くが挙げた理由の中には、欧州連合は保護貿易論者の計画であるからというものがありました。スウェーデンは伝統的に自由貿易を支持しています。
 全体として、欧州連合は、それ自体が自由貿易の計画であると言うことができます。欧州連合とその貿易政策は自由貿易の拡大を目指しており、これを制限しようとはしていません。そしてスウェーデンは、我々が欧州連合に参加したときにこの傾向がますます強くなり、促進されたことを誇りに思っています。
 「要塞都市ヨーロッパ」のイメージは他のものに取って代わられ、修正されなければなりません。我々にとって、強さ、繁栄、安定、そして安全を持ち合わせた欧州は、開かれた欧州を定義することによって実現するもので、自由貿易は我々の外交政策の基礎であり続けます。
 しかし、正直に言えば、欧州連合が欧州以外の諸国や地域との関係を無視しているとは言えなくとも、欧州で劇的な政治的変化が起こっているために、欧州内の情勢に通常よりも注意を払うことになっているのは真実かもしれません。
 これらの政治的変化は本当に重大であり、過去の出来事ではありません。欧州連合が中央及び東ヨーロッパの旧共産党国家へと拡大していくプロセス、そして、東欧のロシアとその他の多くの国々における民主化と市場経済構築の継続的なプロセス、これらのプロセスはこれから何年にもわたって我々が関わっていくものです。それらは欧州を形成します。そして、残りの国々ともにヨーロッパの関係を形成します。さらに明言すれば、これらは積極的な発展です。
 私は、欧州がこれらの変化を最初から最後まで見届けるために十分な関心と力を持っており、そして同時に世界の他の地域との協力をより広範なものにしていると確信しています。すべての人が、国内問題だけを見つめることが実行可能な解決策ではないことを実感しています。
 これが欧州側の基調講演者としてこの会議に対する私の最も重要なメッセージです。

 欧州連合は、その協力の輪をアジアにも広げようと懸命になっています。アジアは1990年代の起動力となっています。アジア市場の強力な需要が、様々な点において西ヨーロッパと北米の先進諸国が長期にわたる不況から抜け出す手助けをしました。欧州とアジアの間の貿易の流れは、大西洋を横断する貿易の流れよりも大きいものです。
 1995年に、シンガポールは欧州連合のメンバー国とアジア10ヶ国の首脳会談の開催のイニシアティブを取りました。この会合、すなわちASEM、「アジア欧州会合」は昨年3月にバンコックで開催されたもので、その会合は非常に重要で、成功裡に終了しました。疑いなくこれによって、この会合に参加した国々の政治的及び経済的接触をより緊密なものにするプロセスが始まりました。
 ASEMは、アジアと欧州、さらにはその他の地域に対する、アジア・欧州間パートナーシップという目に見える信号です。この協力は次のことを助長するべきです。

 しかし、私がここで皆さんに思い出していただきたいことは、欧州連合は基本的に平和のプロジェクトであるということです。仏・独の国境で2つの世界大戦が始まりました。欧州連合の創始者たちは、このようなことが2度と起こらないように欧州の人々の関係を非常に密接なものにしたいと願っていました。その戦略はとても単純です。人々が仲の良い隣人となることです。
 私はこれらの基本的な要素がアジアと欧州の今後の協力関係の中でどのようになっていくかを見守ってきたいと思います。日常生活においても仲良くしようではありませんか。文化、スポーツ、観光、大学における我々の関係を拡大しましょう。我々の社会の中で急速に増加している老人の問題について話し合いましょう。しかしながら、私が最も重要であると思うのは、アジアと欧州の若い人々が顔を合わせ、共に学び、共に働き、共に楽しむことのできる、より良い機会を数多く作ることです。
 そして私は、経済発展が単に持続するだけでなく、我々が今日予想しているよりも遥かに拡大すると確信しています。私はASEMは新しい時代の始まりであり、欧州とアジアの間の成長し続ける絆であると考えています。この点では、これは自然な歴史的発展です。これらの2つの大陸の強力なつながりが、グローバル経済にとっても、一般的に国際協力にとっても、戦略的重要性を帯びるという確信を深めております。私はこの発展が我々全員に利益をもたらすものと確信しています。

 これは真の「全員勝利」の状況です。
 アジアのために
 欧州のために
 地球上の隣人のために
 ご静聴ありがとうございました。

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