アルバニア共和国
アルバニア共和国(Republic of Albania)
基礎データ


一般事情
1 面積
約28,700平方キロメートル(四国の約1.5倍)
2 人口
約276万人(2023年、アルバニア統計局)
3 首都
ティラナ(約86万人)(2021年、ティラナ市統計)
4 民族
アルバニア人
5 言語
アルバニア語
6 宗教
イスラム57%、ローマカトリック10%、正教7%
7 国祭日
11月28日:国旗記念日
8 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1912年 | オスマントルコから独立 |
1939年 | イタリアの保護領、後に併合 |
1944年 | 共産党臨時政府樹立、全土解放 |
1961年 | ソ連と断交 |
1976年 | 中国の経済・軍事援助停止 |
1985年 | ホッジャ勤労党第1書記死去 |
1990年 | 野党設立許可、複数政党制導入、外貨導入解禁 |
1991年 | 初の自由選挙、臨時憲法制定、米、英と国交回復、ECと外交関係、IMF、世銀、欧州安全保障協力機構(OSCE)加盟 |
1992年 | 総選挙で初の非共産政権樹立、イスラム協力機構(OIC)に加盟 |
1994年 | 平和のためのパートナーシップ(PFP)包括協定、PFP個別協定調印 |
1995年 | 欧州評議会に加盟 |
1997年 | ねずみ講問題を発端とする騒乱が発生。6月の総選挙の結果、社会党を中心とする連立政権成立 |
1998年 | 新憲法制定 |
2000年 | WTO加盟 |
2003年 | EUとの間で安定化・連合協定(SAA)交渉を開始 |
2006年 | EUとの間で安定化・連合協定(SAA)に署名 |
2009年 | NATO加盟、EU加盟申請 |
2014年 | EU加盟候補国の地位を獲得 |
2022年 | EU加盟交渉開始 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
バイラム・ベガイ(Bajram BEGAJ)大統領(2022年7月就任、任期5年)
3 議会
- 1院制(140名)、任期4年
- 議会議長 リンディタ・ニコラ(Lindita Nikolla)
- (2021年9月就任)
4 政府
- (1)首相 エディ・ラマ(Edi RAMA)
- (2013年9月就任)
- (2)欧州・外務大臣 イグリ・ハサニ(Igli Hasani)
- (2023年9月就任)
5 内政
勤労党(1991年に社会党に党名変更)による一党独裁の下に共産主義鎖国体制をとってきたが、1990年より東欧改革の影響を受け、対外開放、複数政党制の導入等、民主化を始めた。1992年3月の総選挙で民主党を中心とする民主政権が成立。
1997年に入り、ねずみ講問題を発端とする騒乱が南部地域を中心に発生し、同年3月、メクシ首相が辞任。4月より8月まで人道援助物資の配給の安全確保等のためイタリアを中心とする多国籍防護軍が展開。6月の議会選挙の結果を受けてベリシャ大統領が辞任し、7月に社会党を中心とする中道左派政権が成立。その後も社会党と民主党の対立が続き、1998年9月に起った民主党議員の射殺事件を契機に騒擾事件が発生し、右事件の責任をとるかたちで首相が交代した。さらに、1999年10月の与党・社会党の党議長選挙の結果を受けて、再び首相が交代しメタ首相が就任。
2001年6、7月の総選挙で与党社会党が勝利を収め、メタ首相が続投したものの、2002年1月、社会党内の意見対立を原因として、同首相が辞任し、翌2月マイコ元首相率いる新内閣が成立。
2002年6月の大統領選挙では、与野党のコンセンサスによりモイシウ元国防相が新大統領として選出され、7月に就任。同月、マイコ首相が辞任し、社会党のナノ党首が首相に就任した。2005年7月、任期満了に伴う議会選挙が実施された結果、野党民主党が躍進、民主党ベリシャ党首(元大統領)が新首相に就任し、8年ぶりに社会党からの政権交代が行われた。
2009年6月の総選挙では、民主党、「統合のための社会主義運動(SMI)」等4つの党で構成される民主党連合が与党となるも、野党社会党は選挙結果を不服とし、議会ボイコットの継続、ハンガーストライキ、首都及び地方都市での抗議行動の実施など政府との対立姿勢を崩さなかった。2011年1月には、野党社会党の呼びかけで、首相退陣、汚職一掃、早期選挙実施を求める2万人規模の反政府デモが実施され、3名が死亡したが、社会党は2012年9月に議会へ復帰し、与野党間の政治対話が開始された。
2013年6月23日に実施された議会選挙では、野党社会党率いる「欧州アルバニアのための同盟」が与党民主党を大きくリードして勝利、8年ぶりに政権交代が行われ、首相にはラマ社会党党首が就任した。2017年6月及び2021年4月の議会選挙でも、社会党が過半数を獲得して勝利。ラマ政権が継続し、引き続きEU加盟を最優先課題に掲げて国内改革に取り組んでいる。
2022年の大統領選挙では、与党社会党が擁立したベガイ軍参謀長官が大統領に選出され、7月に就任した。
外交・国防
1 外交基本方針
長年、鎖国的な社会主義体制をとってきたアルバニアは、東西冷戦の終結、東欧諸国の民主化、国内の経済情勢の悪化等の背景から、対外開放政策に転じ、1990年以降、先進諸国・国際機関との関係強化及び安全保障の確保を基本的な外交方針としている。
EU加盟を最優先課題とし、2006年にEUとの間でEU加盟の前段階となる安定化・連合協定を締結したほか、2010年12月にシェンゲン領域への査免が開始、2014年6月にはEU加盟候補国の地位を得て、2020年3月には加盟に向けた正式交渉が開始されることが決定、2022年7月に加盟交渉が開始された。NATOには2009年4月に加盟した。
欧州内では、特にイタリアと強い経済的結びつきがある。米国に対しては、政府、国民とも強い親近感を有している。また、コソボ独立承認国を増やすべく働きかけを積極的に継続し、コソボの国造りを全面的に支援している。
2 軍事力
- (1)予算 2億8,600万ドル(ミリタリーバランス2023年)
- (2)兵役 徴兵制なし
- (3)兵力 7,500人(ミリタリーバランス2023年)
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
農業、建設業、販売業、製造業(アルバニア統計局2019年)
2 GDP
188.8億米ドル(世銀2022年)
3 一人当たりGNI
6,770米ドル(世銀2022年)
4 経済成長率
4.8%(世銀2022年)
5 物価上昇率
6.7%(世銀2022年)
6 失業率
11.8%(世銀2022年)
7 主要貿易品目
- (1)輸出 繊維・靴、鉱物・燃料・電力、建設資材・金属類、食料品・飲料品・タバコ
- (2)輸入 機械類・部品、鉱物・燃料、食料品・飲料品・タバコ、建設資材・金属類、化学薬品・プラスチック製品
(アルバニア統計局2022年)
8 主要貿易相手国
- (1)輸出 イタリア、コソボ、ドイツ、ギリシャ、スペイン
- (2)輸入 イタリア、トルコ、中国、ギリシャ、ドイツ
(アルバニア統計局2022年)
9 通貨
レク(Lek)
10 為替レート
1ドル=約98レク(2023年11月現在、アルバニア中央銀行)
11 経済概況
アルバニア経済は、世界経済への統合の程度が高くないため、世界経済危機の影響は限定的で、2009年から2011年は3%台の経済成長を維持した。2012年、2013年はアルバニアの伝統的な貿易相手国であるイタリア、ギリシャにおける不況の影響を受け、成長のペースは鈍化し、GDP成長率は1%台にとどまったものの、2014年のGDP成長率は2.1%に回復し、緩やかな成長を遂げた。その後も、労働市場の改善や国内消費の伸びにより、GDP成長率は上昇を続けていたが、2019年11月に大きな地震に見舞われた影響、2020年には新型コロナの影響を受け、一次的に停滞したものの、現在は再び成長傾向にある。アルバニア経済はユーロ圏への輸出及び出稼ぎに出た自国民のユーロ圏からの送金に大きく依拠していることから、引き続きユーロ圏の経済動向に左右される構造は変化していない。
経済協力(単位 億円)
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力 180.92億円
- (2)無償資金協力 56.76億円
- (3)技術協力実績 43.26億円
(2021年度までの累計)
2 主要援助国
- (1)ドイツ
- (2)スイス
- (3)トルコ
- (4)クウェート
- (5)米国
(2021年実績)
二国間関係
1 政治関係
1981年3月に外交関係を再開。1990年11月にマリレ外相が即位の礼に参列のため閣僚として初来日。1994年5月にはセレチ外相を外務省賓客として初めて公式に訪日招待。1998年11月には非公式ながらもミロ外相が訪日。2004年4月にイスラミ外相が「西バルカン・平和定着経済発展閣僚会合」出席のために訪日。2006年5月にムスタファイ外相が外務省賓客として訪日。同年12月にはルリ経済相及びバシャ公共事業・運輸・通信相が訪日した。2008年2月には、ベリシャ首相がアルバニア首相としてはじめて訪日した。2008年11月、ティラナにおいて、第一回日・アルバニア政務協議が実施された。2009年5月、西村外務大臣政務官がアルバニアを訪問し、ベリシャ首相を表敬した。2011年2月、アルバニアで初めて日本文化紹介イベント(和楽器公演及び日本映画祭)を実施し、ベリシャ首相をはじめとする要人が鑑賞する等、大盛況をおさめた。同3月の東日本大震災を受け、アルバニア政府要人から弔意表明がなされたほか、翌4月、アルバニア政府から義援金約10万米ドルが日本赤十字社に提供された。その後、同年11月にハジナスト副首相兼外相が、2012年4月にトパリ国会議長が訪日。2013年4月には、城内外務大臣政務官がアルバニアを訪問し、ベリシャ首相と会談を行ったほか、2014年2月に牧野外務大臣政務官が、同年8月に伊吹衆議院議長がアルバニアを訪問し、ニシャニ大統領やブシャティ外相等と会談を行った。また、2015年4月にブシャティ外相が訪日し、日・アルバニア外相会談が行われた。2017年7月には、在アルバニア日本国大使館の開館式に際し、岸外務副大臣がアルバニアを訪問し、ニシャニ大統領やブシャティ外相等と会談を行った。2018年2月のミュンヘン安全保障会議の機会に、河野大臣とブシャティ外相との間で日・アルバニア外相会談が実施された。2019年10月の即位の礼にはメタ大統領が出席し、首脳会談も実施された。また、同年10月にはルチ国会議長が、2021年7月にはクシ教育・スポーツ・青年大臣が訪日する等、特に近年、要人往来が活性化している。2022年9月の国連総会ハイレベル・ウィークの機会に、林外務大臣とジャチカ欧州・外務大臣との間で日・アルバニア外相会談が実施された。2023年2月にはラマ首相が実務訪問賓客として来日し、岸田総理大臣と首脳会談を実施した。
2 経済関係
日本の対アルバニア貿易(財務省貿易統計2022年)
- (ア)貿易額
- 輸出 2.71億円
- 輸入 78.7億円
- (イ)主要品目
- 輸出 機械類、化学製品
- 輸入 鉄鋼、衣類、はき物、魚介類(まぐろなど)、原材料(金属鉱など)
3 文化関係
1989年より文部科学省国費留学生を受け入れ
4 在留邦人数
33名(2022年10月)
5 在日アルバニア人数
86名(2022年12月)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1988年8月 | 浜田外務省政務次官 |
2009年5月 | 西村外務大臣政務官 |
2013年4月 | 城内外務大臣政務官 |
2014年2月 | 牧野外務大臣政務官 |
2014年8月 | 伊吹衆議院議長 |
2017年7月 | 岸外務副大臣 |
2018年7月 | 馳日アルバニア友好議連会長、城内同事務局長 |
2019年7月 | 城内環境副大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1990年11月 | マリレ外相 |
1994年5月 | セレチ外相 |
1998年11月 | ミロ外相 |
2002年11月 | ハイダラーガ外務副大臣 |
2004年4月 | イスラミ外相、チコ経済副大臣 |
2006年5月 | ムスタファイ外相 |
2006年12月 | ルリ経済相 バシャ公共事業・運輸・通信相 |
2008年2月 | ベリシャ首相 |
2008年8月 | ボズド経済副大臣 |
2008年10月 | ベジャ教育科学相 |
2011年11月 | ハジナスト副首相兼外相 |
2012年4月 | トパリ国会議長 |
2015年4月 | ブシャティ外相 |
2018年6月 | ブシャティ欧州・外務相 |
2019年5月 | ジャファイ外務副大臣 |
2019年10月 | メタ大統領 |
2019年10月 | ルチ国会議長 |
2021年7月 | クシ教育・スポーツ・青年相 |
2023年2月 | ラマ・アルバニア首相及び同夫人 デリナ・イブラヒマイ財務・経済相 フリダ・クリフツァ農業・地方開発相 ミレラ・クンバロ観光・環境相 |
7 二国間条約・取極
- 1988年 貿易支払協定
- 2007年 技術協力協定
8 外交使節
- (1)アルバニア共和国駐箚日本国大使 加藤喜久子特命全権大使。2017年1月に在アルバニア日本国大使館を開設。
- (2)日本国駐箚アルバニア共和国大使 ジェルジ・テネチェジウ特命全権大使。アルバニアは2005年11月東京に大使館を開設。