平成24年6月20日,21日
平成24年6月20日(水曜日)九州国際大学(北九州市),6月21日(木曜日)福岡大学(福岡市)において,外務省吉井国際緊急援助官による国際情勢講演会が開催されました。
国際緊急援助官は,海外で災害があった時に緊急に対応する仕事で,例えば昨年のニュージーランドの地震の際に緊急人道援助隊の団長として参加した。
これまで,世界で大規模な自然災害が起こると,日本は緊急援助隊の派遣や物資・資金の供与など援助をする側であったが,東日本大震災の時は支援を受ける側になった。地震の規模,被害の大きさ等から世界中から援助が寄せられた。163の国と地域,43の国際機関から支援の申し出に対し,ニーズとオファーのマッチングの結果,29の国,地域,国際機関からの人的支援を受け入れ,126の国,地域,国際機関からの物資,寄付金を受領した。在日米軍による「トモダチ作戦」では,人員2万人以上,艦船20隻,航空機160機,空母が投入され,捜索,救助,輸送活動,原発支援が行われた。
海外からの支援受け入れの課題としては,支援受け入れの要否の判断,人的支援で救助隊への自己完結要請については,要請内容の明確化,物的支援はニーズの変更に対応するシステムを考える必要がある。
援助する側の国際緊急・人道支援の目的や意義には,人道的な観点からの善意による支援,国際社会の相互扶助という観点からは,国際社会において困っている時にお互いに助け合うことで,東日本大震災の場合は,これまで日本がやってきた緊急援助へのお返しという面もある。国益という観点は被災国を援助することで日本のイメージを良くし,二国間関係を強固にする。(中国の四川地震,米軍のトモダチ作戦)。 緊急支援は,人道という面から誰にも反対されず,二国間関係促進の強力なツールで,グローバルイメージもアップし,テレビでも取り上げられ費用対効果も大きい。
日本の国際緊急援助の対象となる災害は,被災国では対応できない大規模災害。その中で,自然災害と人為的災害(原油の流出や原子力発電所爆発等)は日本の「国際緊急援助隊の派遣に関する法」がカバーし,紛争起因災害(イラク,アフガンなど紛争起因の災害)については1992年に制定された「国際平和協力法」で対応することになっている。
これまでは,ほとんどが開発途上国に対する援助を想定していたが,最近の災害では日本やニュージーランドという先進国も援助を要請した。グローバリゼーションの進展で,国際間の連携,協力関係が強まってきており,今後は先進国にも緊急援助隊を派遣する傾向が世界的に拡がると見られている。
Q1.日本の自然災害の多さから,その経験をプラスにとらえ,世界の災害において即座に対応できるようなシステムを国是としておく政策,災害援助の専門家として世界の未来に貢献するために国としてどの程度サポートできるのか。
A1.国際緊急援助隊は,救助,医療,専門家,自衛隊の4つのチームで対応している。専門家チームは14の省庁と協力関係にあり,タイの洪水では国交省から排水車と専門家を送った。また文民ではできない部分は自衛隊部隊を派遣する。
Q2.今回の米軍支援のように艦船,航空機,人員の指揮系統はどこでやったのでしょうか?
A2.米軍の調整は,防衛庁と現地に日米調整所をつくり,具体的な支援活動について調整を行った。