「外務省を知りたい」

平成23年度(2011年度)国際情勢講演会 開催報告

平成24年3月8日

―主催:国際交流まくはり―

  • (写真)平成23年度(2011年度)国際情勢講演会 千葉県千葉市(平成24年3月8日)

 平成24年3月8日(木曜日)幕張公民館(千葉市)において、千葉経済大学非常勤講師(元駐ザンビア・ウルグアイ大使)中村義博氏による国際情勢講演会が開催されました。

演題:「原子力問題を考える~国際政治の観点から」

【講演要旨】

 原子力発電は核の平和的利用であるが、軍事利用にもつながり得るため原子力協定を結び、査察の関係でIAEAと保障措置協定を結び、また使用済み核燃料の処理の問題もあるので、普通のビジネスと違い、国やIAEAの関与がどうしても必要になる。

 日本は原発の管理も行き届き、査察のトラブルもなく、NPTを批准し、日米同盟で米国の核の傘の下にあり、国際的に信頼され、核燃料サイクルが認められているが未完成である。

 核拡散防止条約によって米国、英国、ロシア、フランス、中国の5か国のみに核兵器の保有が認められている。1998年のインドの再度の核実験に対し、アメリカは制裁処置をとってきたが、2001年からのテロとの闘いでインド・パキスタンへの制裁を解除した。その後対中国戦略からインドの要請に応え、米印原子力協定に踏み切った。日本も米仏両政府の要請もあり、インドと原子力協定の交渉中である。

 オバマ大統領のイニシアティヴで核テロ防止の狙いもあり、核セキュリティ・サミットが行われ、NPT再検討会議も核兵器国に活動報告が義務づけられるなど結果を出し、その一環として、対中国戦略もあり、ロシアと2010年4月に戦略兵器削減のための新条約を結んだ。

 テロリストが核兵器を入手して核施設、原発への攻撃を行うことへの日本の対策は万全とは言えない。例えば原発に従事する作業員の身元確認など徹底すべきである。

 福島第一原発事故について、M9は想定外で東電は国の指導にきちんと従っていたと東電社長は述べたが、一種の責任逃れであり、原子力ビジネスに確率論を用いるべきではない。非常用発電機の設置における危機管理の想定の甘さが今回の主たる事故原因である。今後はもっと万全を。

 日本のエネルギー事情は他国に比べ脆弱であり、火力発電依存度は震災前62%が、震災後87%に上昇している現状は異常であり、是正の要あり。しかも日本は石油の約9割を中東に依存しているが、イランのホルムス海峡封鎖宣言もあり、対策を速やかに立てるべきである。

 日本の再生エネルギー依存率は1%で、30%を占める原発の代替えにすぐにはならない。原発の長所短所を冷静に見つめ、安全対策、安定供給、コスト、環境負荷などを考慮しつつ、ベストミックスなエネルギーを短期的、中期的、長期的に分けて、議論し、考えるべきである。

 今回の事故は世界に衝撃を与えた。しかし、ドイツ、スイス、イタリアを除き、主要各国は原発推進の動き。新興国でも原発に着手。IAEAによれば2030年までに90~350基増設の見込み。

【質疑応答要旨】
質問:
 脱原発の選択肢しかない。福島の処理も含めこれ以上原発が進めばコストがかかりすぎる。
原発開発に膨大な経費を使い、太陽光などの自然エネルギーの開発が阻害されている。
石油がなくとも原発があれば大丈夫ということではない。石油が重要であることの本質を見えなくさせる。日本が先進的立場をとるのに脱原発は今必要なことだ。
回答:
 はじめに結論ありきではなく、今どうするべきか、10年後は、20年後はどうかなど、きめ細かい議論をするべきである。将来可能なものは採用し、ベストミックスな発電を考えればよいが、脱原発は今の時点では言えない。可能性のあるものについては、我々国民レベルでも検討し国に発言したらよい。
参加者の感想(抜粋):
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