平成24年1月21日
平成24年1月21日(土曜日)函館国際ホテル(函館市)において,外務省中東アフリカ局アフリカ第二課長麻妻信一による国際情勢講演会が開催されました。
今回の東日本大震災は,進みゆくグローバル化のなかで世界経済・地球市民全体の問題として受け止められ,お見舞い表明,支援申し出,人的支援受入,物資・寄付金すべてにおいて,阪神・淡路大震災時と比べはるかに多くの支援が寄せられた。外務省では阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて,海外からの支援受入について,政府間調整のみならず国内機関と連携し迅速な入国処理を行い,外務省職員をリエゾンとして派遣し,現地での支援コーディネートを行った。
29の国・地域・国際機関から支援チームが来日,レスキュー隊は,遺体の発見・瓦礫の撤去などを,現地の地元警察・消防と連携しながら活動,医療チームは,感染症予防・慢性疾患・妊婦の検査業務などに尽力した。その他に多くの物資支援も頂いている。最大の支援をしてくれた米国は,在日米軍を中心に,原発事故も含めて幅広く対応にあたってくれた。今回の米軍による「トモダチ作戦」は,日米同盟関係・友好関係の重要性を示したともいえる。
義援金については, 財政的にも困難を抱える開発途上国も含め93の国・地域・機関から総額175億円以上の寄付金の提供があり,国際協力NGO・企業・個人等からも多くの支援があり,少なくとも16カ国・43団体が来日し避難者への直接の支援がなされた。原発事故に関してもIAEAの専門家チームのほかに,米国・英国・フランス・カナダ・ロシアから専門家チームのみならず,関連物資が多数支援いただいている。
今回の震災に対して海外から多くの支援が寄せられたのは,これまで日本が行ってきたODAを中心とした国際貢献に対する評価や,日本という国のソフトパワーの発信力が幅広く国際社会に受け入れられ,日本が身近な存在として受け止められていることを示しているのではないか。なお,今回の震災で,日本はスーダンを抜き世界最大の被援助国になったとのことである。また世界で高いシェアを占める東北のハイテク機器工場が被害にあったことにより,世界的なサプライチェーンを分断し世界経済に多くの影響を与えた。
我々としては,今回海外から受けた支援への謝意を広く伝えていくのみならず,国際社会の一員として日本が成り立っていることを再認識し,日本を再生していくことが,最大の返礼であり,国際社会への責務であるといえる。正しい情報と日本の復旧&復興を内外に発信し,ODAを軸とした国際支援を継続し,今までの国際社会との連携の継続を再確認する必要がある。この震災は,グローバル化した社会に生きているという事実を実感させるとともに,受けた支援に対して私たち一人一人がしっかりと応えていくことの重要性を認識するきっかけであったと思われる。
質問:ODAの継続について,今後の方向性を予算的な面も含め,おしえてもらいたい。
回答:ODA予算はH24年度予算案は昨年比0.数パーセントではあるが増額している。今後は,官民連携の推進などがODAの柱になる。
質問:今後,日本の支援物資が放射能に汚染されているのではと倦厭されることはないのか?
回答:正しい情報を提供していくことに尽きる。外務省では,現地の放射能量も含めて正しい情報を海外の大使館などを通じて提供している。
質問:日本が海外に救助チームを派遣する時には,どのように対応するのか。
回答:現地の日本大使館・JICAのサポートをうけ行っている。
質問:海外からの救援チームの支援期間はどのくらいか。
回答:レスキュー隊については,通常,災害発生後72時間が生存者救出が可能な期間とされている。他方で,今回72時間を越えて捜索やがれき除去活動に従事してくれた国も多かった。医療チームについては,日本の場合2週間の滞在を目安としている。