外務省独立行政法人評価委員会

平成25年9月10日
1.日時
平成25年7月25日 14時30分~17時30分
 
2.場所
外務省666会議室
 
3.出席者
(委員)
白石隆分科会長,上子秋生分科会長代理,井口武雄委員長,門脇英晴委員長代理,青山伸一委員,手納美枝委員,榛木恵子委員,吉田和浩委員
(外務省)
細野真一考査・政策評価官,鈴木量博国際協力局政策課長他
(JICA)
田中明彦理事長、渡邉正人理事,植澤利次総務部長,加用利彦財務部長,山田順一企画部長他
 
4.議題
(1)平成24年度における業務実績評価について
(2)総合評価に盛り込むべきポイントについて
 
5.議事概要
(1)冒頭挨拶
田中JICA理事長より挨拶があった。ポイントは以下のとおり。
  • 昨年4月の理事長就任以降、「世界と日本を元気にする国際協力」を主要なメッセージとして積極的な対外発信に努めるとともに、組織運営においては、プロアクティブな自己改革を推進してきた。
  • フィリピン、アフガニスタン、イラク等平和構築支援を展開している国々、インドネシア、タイなど基幹インフラ整備支援を通じて経済成長に大きく貢献してきた国々、経済成長と貧困削減の両面に貢献してきたアフリカ諸国等、各地に出張し、JICAの事業に対する総じて高い評価を確認した。
  • 統合効果を発揮すべく推進してきたプログラム・アプローチでは、バングラデシュの母子保健、タイの洪水対応、ミャンマーにおける大規模な包括的な支援等、着実に進展していることを確認した。
  • 民間連携については、インドネシアのジャカルタ首都圏投資促進特別地域(MPA)やミャンマーのヤンゴン都市圏のマスタープランの策定・活用における民間企業との連携、ベトナムの環境配慮型工業団地における民間企業提案のPPPインフラ事業計画に対する海外投融資の実現に加え、中小企業の海外展開支援事業を新規に開始するとともに民間連携ボランティア制度を導入した。
  • 世界の国際協力の議論をリードする知的発信力が向上してきていると自認している。多くの国際会議等にJICA全体が一丸となって機動的に対応することで、量的にもかつてない頻度での発信を行うとともに、実際の政策に影響を与える等、質と量の両面でリーダーシップを発揮できた。自らも、ポストMDGの議論をリードする観点から人間の安全保障、包摂的成長、防災・減災を念頭に置いた強靭性等、日本が進める援助アプローチについてIMF・世界銀行総会等重要な国際会議等の場で発信に努めてきた。
  • 今後も引き続き、リーダーシップを発揮しながら内外のパートナーとの連携を強化し、プロアクティブな発想で開発途上国に対してソリューションを提示できる組織となるため、強い人材からなる「強いJICA」を目指す所存。

(2)平成24年度における業務実績評価

細野考査・政策評価官より,「独立行政法人整理合理化計画」を踏まえ,例年同様,7月10日から24日までの間,JICAの「平成24年度業務実績報告書」について,外務省ホームページで意見募集を行い,更にツイッター等での周知を行った結果,次の2件が意見として寄せられた旨報告。

政府からの支出を削減する観点からも、独立行政法人を寄付金控除団体に認定すると良いのではないか。
 
  (イ)部会活動報告(コンプライアンス部会)
  青山委員より,コンプライアンス部会の活動及び部会評価コメントについて,報告・説明が行われた。
 
  (ロ)評定概要
  評定について審議した結果,分科会の第一次案として,平成24年度小項目(34項目)は,「イ」が2項目,「ロ」が9項目,「ハ」が19項目,「対象外」が4項目,平成24年度中項目(19項目)は,「イ」が1項目,「ロ」が4項目,「ハ」が11項目,「対象外」が3項目となった。
 
  (ハ)審議における委員からの主なコメント
  • ミンダナオの和平に係る枠組み合意については、アキノ大統領の腹心から、JICAの支援がなければ難しかったと側聞。田中理事長とアキノ大統領の会談後、和平プロセスのための「枠組み合意」が締結。理事長のイニシアティブによるJICAの支援は政治的にも非常に意味があったと理解。
  • (研究事業の)アウトプットは客観的データで示すことができるが、効果については客観的データを集めることは難しい。開発学や地域研究では自然科学と異なり、サイテーション・インデックスがほとんど信頼できない。また、研究所は、日本国と日本国民のために研究を行うことを目的とする一方、国際的な評価を得るためには英語での発信を行わなければならず、バランスを取ることは非常に難しい。JICA研究所がどのような方針を取るのか、検討してほしい。
  • 前年度と比べてJOCVの派遣実績が減っている。業績報告では東日本大震災の影響が理由として説明されているが、若者の内向き志向は、今後ボランティアの方向性に影響を与えるほどの大きなリスクと考えている。
  • (国際社会におけるリーダーシップの発揮への貢献について、昨年度非常に大きなイベントがあった中、JICAが十分に応えることができたのは、日頃の活動のプレゼンスが上がってきた証左。組織全体の水準が高くなければ、トップ一人だけが頑張っても対応できない。
  • 国際社会におけるリーダーシップの発揮が、「研究」、「広報」、JICAの本業である「事業」とどの程度一貫性をもって実施されているかが重要。事業に繋がらないと、各国関係者などからはリップサービスではないか、と受けとられ、痛いしっぺ返しを受ける。本項目の評価が高ければ高いほど、実際のオペレーションがどうなっているかが注目される。
  • 様々な組織の内部統制においてハラスメントの問題が指摘されることが多いと経験的に承知しており、内部統制に関する報告にも含まれることが多い。ハラスメントの問題は、社会的に大きな波紋を及ぼしかねない重要な問題と一般的に捉えられていることを踏まえ、内部統制の報告において言及しておくべき。

(3)総合評価に盛り込むべきポイント

総合評価に盛り込むべきポイントに関し,叩き台を基に行った議論を踏まえ,第2回分科会までに一案を作成の上,各委員の意見聴取を行うこととした。委員からの主なコメントは以下のとおり。

  • 民間企業との連携を促進し、中小企業も含めた民間企業の有する技術や能力も踏まえつつ、マスタープランの策定から事業運営までを視野に入れた協力の展開を期待する。
  • プログラム・アプローチなどにも対応しうる実践力のある人材の育成については、現場からの知見を政策や制度へのインプットにも繋がるよう、事業の実施を通じて行っていくことが期待される。

(4)最後に,白石分科会長より,長時間にわたる審議への協力に感謝する旨の発言があった。

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