外交史料館

概説と主な展示史料

平成25年7月22日
 1871(明治4年)、日本政府は、岩倉具視(いわくら・ともみ)右大臣を全権大使とする使節団を欧米に派遣しました。目的は、日本が条約を結んだ各国への国書の捧呈と条約改正交渉、そして各国の制度・文物の視察・調査でした。岩倉使節団は当初、スペインへの訪問も予定していましたが、スペインでは、革命が起こり、女王イサベル2世(IsabellII)がフランスに亡命するなど、混乱が続いていたため、訪問を見送りました。
 その後、革命が収束し、1874年12月にアルフォンソ12世(AlfonsoⅫ)が新国王として即位すると、在日スペイン公使からスペインへの使節派遣の申し入れがあり、日本側もこれに応じて、1876年、上野景範(うえの・かげのり)在英国公使を特使として派遣することになりました。
 上野公使は書記官2名、通訳1名、従者1名の総勢5名でスペインに向かいました。後に上野が作成した報告書には、特使としてロンドンを出発し、再び帰着した1876年3月13日から5月16日までのことが日記風に記録されています。スペインの内乱終結から間もない時期であったため、鉄道や橋梁が破壊されており、マドリードに至るまでに大変苦労したことや、マドリードで国王アルフォンソ12世に歓待を受けたことなどが記されています。
 上野公使は、1876年4月1日にアルフォンソ12世に国書を捧呈しました。国王は、明治天皇からの国書を受領すると、スペイン語で応答し、公式儀礼が終わると、玉座をおりて、上野の手を取り、英語で親しく話しかけられました。上野は、国王は年齢は若いが、容貌には威徳が備わり、温和である。また、英仏に遊学していたため、両国語を自在に操り、英明な君主と言われていると記録しています。
 その後、上野公使訪問への謝辞として、アルフォンソ12世より明治天皇に国書が送られました。
 

展示史料3
上野景範公使作成のスペイン訪問に関する報告書

(写真)上野景範公使作成のスペイン訪問に関する報告書

展示箇所はアルフォンソ12世に国書を捧呈した場面。


展示史料4
スペイン国王アルフォンソ12世より明治天皇宛国書
(上野景範在英国公使来訪に対する謝辞)

(写真)スペイン国王アルフォンソ12世より明治天皇宛国書(上野景範在英国公使来訪に対する謝辞)

日本とスペイン両国の関係がますます発展すること、また、天皇や日本人民の幸福を願っていることなどが記されている。

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