政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第18回会合議事録
平成25年4月10日
1 日時 平成25年3月12日(火曜日) 14時00分~14時46分
2 場所 外務省
3 出席者
(有識者)(五十音順)
稲澤 克祐 関西学院大学専門職大学院教授
山田 治徳 早稲田大学大学院教授
(外務省)
細野考査・政策評価官,大貝官房ODA評価室長,中村総合外交政策局政策企画室長,中村考査・政策評価官室首席事務官,藤本総合外交政策局総務課首席事務官,礒官房総務課課長補佐,加藤会計課総務室課長補佐ほか
4 議題
5 会合経過
議題1
【外務省】
ご承知のとおり,昨年度から目標管理型の政策評価制度が導入され,政策評価アドバイザリー・グループのメンバーからご協力,ご示唆も頂きながら,目標管理型での初めての評価書及び事前分析表を取り纏め,公表した。初めてのことでもあり,率直なところ手探りの作業であったし,この方式で外交政策を評価していくことの難しさを改めて感じた。また,更なるご負担をお願いすることになったが,昨年から施策ごとの評価についてメンバーの方々からコメントを頂くことになり,非常に有益なコメントを頂いた。ご指摘等は関係部局にも伝達し,評価書にも掲載させて頂いた。
今後,24年度に実施した政策に関する評価書,及び,25年度の政策に関する目標を設定する事前分析表を作成するに当たっては,こうしたご指摘とともに,前回の作業の経験と反省を踏まえ,内容やフォーマットにおいて改善や工夫に努めていきたいと考えており,本日はこのような点をご説明させていただくので,ご意見等を頂きたい。
まず,政策評価の作業を行う原課に対して,何を詳細に書くべきか,どこを注意すべきか,どういう点を強調すべきか,といった点について,いわばマニュアル的な内容を示しながら作業を依頼する予定である。その中で,特に次のような点につき改善・工夫を図りたいと考えている。
まず,「施策効果のより客観的な把握」という点についてである。これは目標が達成されたか否か,目標に照らして施策の進捗があったかどうかを判断する上で,重要な点である。この観点から評価書の測定指標における年度目標を出来るだけ具体的に記述し検証可能なものにするよう努めたい。
例えば二国間関係を改善するという一般的な目標に留めるのではなく,二国間関係を改善するために具体的にはどうするのか等を出来るだけ書くようにしてもらい,目標が検証可能な内容になるように努めていければと考えている。
勿論,外交政策には,相手というものがあり,様々な外部要因に大きく左右されるほか,事前にすべて公表することも保秘の観点から難しく,目標を詳細に記述するには制約がある。その制約の中で出来る限り具体的かつ明確な目標を設定するよう求めていきたいと考えている。
2点目として,メンバーの方からも,度々ご指摘を頂いているが,数値指標を出来るだけ活用していくよう努めたい。外交政策自体が数値指標に馴染まない面があり,容易ではないが,出来るだけ数値指標を盛り込むよう引き続き求めていきたい。
更に,これもメンバーの方からのご指摘を踏まえ,政策の効果を策定するに当たって,アウトプットだけでなくアウトプット(成果)についても,例えばアンケート結果などを使った形で示すように努めていきたいと考えている。
次に,「評価書における有効性の評価の充実」というものを図っていきたい。御承知のとおり,政策評価法では,3つの観点から評価をすることが求められている。1つ目が必要性,すなわち政策の目的が,国際社会における日本国及び日本国民の利益の増進という観点から妥当か,行政関与の在り方から見て国がその企画立案及び実施の主体となる必要があるかどうかという観点。2つ目が有効性,すなわち,当該政策の実施により,期待される効果が得られるか,又は実際に得られているかどいうかという観点。3つ目が効率性,すなわち,投入された資源量に見合った結果が得られているか,政策効果の発現のためにとられる手段は適切,効率的であるかどうかという観点である。この中でも外交政策を評価する場合には,必要性や効率性も重要ではあるが,やはり有効性が重要ではないかと考えており,施策の目標に関し,どれ程の進捗が得られたのか,それはどのような効果や意義があったのかという点についての評価を出来るだけ充実させたいと考えている。その観点からは,施策に関する全般的評価に加え,例えば目標実現に向けて効果が高かった具体例を示すこと,また,期待された効果が得られなかった場合は,その要因,例えば施策に関する外部要因であれば,その分析等を行うこと等を通じて,出来るだけ総合的な観点から踏み込んだ分析を行い,有効性の部分の記述を充実させていければと考えている。
3つ目に,「PDCAサイクルの強化」に資するような工夫を考えたい。最近はPDCAサイクルという概念が一般化しており,各府省においてもPDCAサイクルが実効的に機能することが求められている中,評価書でもPDCAサイクルを一掃強化する方途を検討したい。これもメンバーからご示唆を頂いている点であるが,評価が改善に繋がる部分,すなわち,チェック(C)がアクション(A)に繋がる部分が重要で,まず先に述べた有効性の評価に関する記述を充実させた上で,右を踏まえて当該施策の今後の方針を出来る限り示していくよう努めたいと考えている。各課には施策の評価結果を必ず踏まえた形で課題を書いてもらうこととし,課題の欄では,当該施策をより有効に実施していくために取組むべき点や実施上の問題点について,理由・原因等を記入した上で,当該施策の今後の方針を出来るだけ具体的に記述してもらうという形で,目標から実績,そして実績の評価,その評価を踏まえた課題及び今後の方針という形でPDCAサイクルの繋がりを充実させていきたい。
なお,これまで評価書の中で,【課題】と【今後の方針】を別々の欄に分けていたが,できる限り各課題に今後の方針が明確に対応した形となるよう,【課題と今後の方針】と纏めることとした。
それから,事前分析表にある「達成手段」の明確化についても工夫を考えている。達成手段は,かつてで言えば具体的施策レベルの下にある「事務事業」に相当するものであるが,このような手段を実施することが施策の目標の達成にどのように寄与するかについて,一層明確な形で記述し,ここでもロジックが明確に繋がるよう努めていきたい。
以上,内容面で改善に努めたい点である。
次に,専ら評価書を一層参照しやすいものにする観点から考えている書式上の工夫について,説明させて頂く。
まず,昨年の評価書においては施策ごとのページでは,冒頭にのみ達成すべき目標と施策の概要を記していたが,今回からは具体的施策ごとにあらためて目標と概要を記述することとした。こうすることで,具体的施策の項を見れば全体像が分かり易くなると考える。
残りは,技術的な観点での工夫が2点。まず,事前分析表で「施策の進捗」という項目が各年度ごとに横に並んで記載されていたが,見やすくするとの観点から,これを縦に並べる形に改めた。
もう1点。事前分析表は,これまで数値指標を最初に示し,その後に定性的指標を記していたが,最初に数値指標を持ってくると,本来多面的な外交政策のある一面だけをクローズ・アップした形になってしまい,政策の全体像を把握しにくいという問題がある。外交政策の特殊性を考慮し,様々な測定指標のうち,まず定性的指標を書き,ある程度全体像を示した後で,特定の側面を切り取る意味で数値指標を示した方が,全体として分かり易いとの観点から順序を変えている。
以上の今回の評価書及び事前分析表作成の作業において工夫や改善に努める点について,メンバーの方からのご示唆を頂ければ,それも踏まえつつ,3月中にも省内で説明会を行いたいと考える。
ご質問等あれば,お願いする。
【有識者】ただ今の説明された工夫等は,非常に分かり易くて良い。良い試みであると思う。
一方で,まだ分かりにくいと思う点もある。政策評価法(第三条)では,「行政上の一連の行為がもたらす政策効果」を評価すると書いてある。現行の評価書の中では,「一連の行為」に相当するのが,「施策の進捗状況」の欄,それに対する「総括」の欄で,政策の効果を評価しているが,この形では,一連の行為がもたらした政策効果との繋がりがまだなかなか分かりにくいのではないか。ただ,これは大掛かりな工夫を要するので,今すぐ変えるべきということではない。
もう一つは,「総括」の欄。必要性,有効性,効率性のそれぞれについて述べる中で,特に,有効性については評価の中心を成す重要な項目であり,示唆的である。原課にとっては,並列で書かれているだけでは,どうしても横並びで見てしまうが,有効性が最も重要であることの意味をあらためて指摘することは必要だと思う。政策評価法では「観点」という表現を使っているが,一般国民の視点からは,この観点はむしろ「問題点」に当たる部分。「問題指向型」(problem-oriented)と呼ぶ手法だが,問題点ごとに,つまり,まず必要性という観点で評価を行う,関係する定性的指標また定量的指標もある,必要性という観点で評価を行うと,こういった結果になる,次に,有効性という観点で評価を行う,関係する指標はこれである,評価結果はこうだと。政策評価法の観点で,そういった方が分かり易い。ロジックの繋がり,そして繋がりと纏まりを如何に分かり易いものにするか。外務省が使用している評価書のフォーマットは,定型的なものではあるが,悪く言えば十把一絡げになり,融通が利かなくなりやすい面がある。そうした中で繋がりと纏まりを如何に見せるのかがポイント。今回の工夫等は積極的に評価できるが,さらにそういった視点から見て,評価書の記述の中身をどのくらい合理的にできるか。こうしたことを原課に徹底させることができるかが課題になるのかなと思う。
【外務省】ロジック・モデルやつながりとまとまり等を如何に示せるか,ご示唆も踏まえ,どういった形で出来得るのか検討していきたい。先程御説明したとおり「施策の進捗状況」についての有効性の評価においては,実績についての記述を繰り返し,有効であったとするのではなく,できるだけどういう意義や効果があったのかに関する記述を充実させるように努めたい。
【有識者】有効性について,このように原課向けに説明するための工夫を加えられたとのことであるが,第三者意見を述べる我々メンバーにとっても分かり易く整理されていると思う。
一方で,昨年感じた点だが,有効性はそのまま評価結果としての「目標の達成に向けて進展があった」などの言葉に繋がっていく関係にあるが,その「進展があった」,「やや進展があった」等の言葉の使い方にばらつきがあるように思える。この課にとっては進展があった,別の課にとっては進展に「やや」なり「相当」が付いてくるなど,そのあたりについて,こういう場合はこの表現とすべきというように,もし示せるならば,より優れた記述につながるかもしれない。かなり難しいと思うが,そうした工夫もあるとよいのではとの印象を受けた。
また,有効性は,当該具体的施策の目標の達成だけでなく,その上位の施策にどれだけ貢献しているかにも関係するので,上位の施策の進展や評価結果の記述に,こうしたロジックも反映できるとよい。特に,施策レベルの目標達成への貢献が高い具体的施策については一言示すとよいと思う。これも難しいとは思うが,上位の施策を意識した有効性の評価を行っていることが示せれば有意義と考える。
【外務省】外務省の政策は,極めて多様で,それぞれ前提や条件も異なっていることから,進展の度合を同一のものさしで整理することは容易ではないが,省内の評価組織において実績を見た上で,ある程度の標準化には努めている。更に改善できる方法があるかどうか検討させていただきたい。一方で,外交政策は50%実現,70%実現,90%実現といったように,目標の実現程度を評価するという形には馴染まない面もあることを御理解頂きたい。
本日は有意義なコメントを頂き御礼申し上げる。なかなか難しい点もあるが,メンバーからのご示唆を踏まえ,今後の省内での評価作業において,ロジックの繋がり,纏まり,施策の進捗の評価の平準化,客観化などについても何ができ得るか検討していきたいと考える。
議題2
【外務省】政策評価法の定めに従い,基本計画と毎年度の実施計画を定めることになっている。今回は,20年度から24年度までの5年間の基本計画が終了したので,新たに基本計画を策定する。基本計画は基礎的な枠組みを記述するものであるため,大きな変更点はなく,基本的には前回の基本計画を踏襲している。
実施計画については,目標管理型の新しい制度になったことを踏まえて昨年策定したものを基本的に踏襲している。一部変更点を申せば,実施計画の別紙として対象となる政策体系の図において,基本目標の国際の平和と安定に対する取組に関する施策の中で具体的施策II-1-5に「宇宙に関する取組の強化」を新しく独立して設けている。これは,最近宇宙に関する取組が活発化しており,省内にも宇宙室が立ち上がっていることなどが背景にある。もう一つ,基本目標のところで,これまで広報文化と報道対策は別な施策に分かれていたが,一つの戦略に基づいて実施すべく,外務省の機構改革も行ったところ,これを反映している。
議題3
【外務省】ご参考までに政策評価に関連する最近の動きを簡単にご説明させていただきたい。一点目が行政事業レビューについて,これは前政権の下で行われていたものを今後も続けるとのことだが,現状及び今後見込まれる動きなどを簡単に紹介する。
【外務省】民主党政権下において,所謂「仕分け」として内閣府が中心となって行うものとは別に各府省は自律的に自らの政策のレビューを「行政事業レビュー」として行ってきた。この行政事業レビューは継続していくと国会で総理が発言されている。どういった形で進めていくかは行革推進会議でまさに検討されている状況。3月末に大体の方向性というものが出され,6月頃始まると見込まれる再来年度予算編成の前に,新しい行政事業レビューの進め方についての指針が出ると概ね予想される。
事務事業レベルの評価の廃止など,政策評価のまとめ方についても,行政事業レビューの方法と関係している部分がある。3月末までは,どういったものになるかは見えてこないが,ある程度前政権下で実施していたものを踏襲するのではないか。議論の公開の方法等,様々な論点があり,ある程度指針が固まったところで,改めてご報告したい。政策評価とは関係が深いので,引き続き情報提供に努めていきたい。
【外務省】もう一点,最近の経済財政諮問会議において政策評価が取り上げられるという動きについてご説明させていただく。
【外務省】新政権下の最初の経済財政諮問会議が1月半ばにスタート。もちろん当初は日銀との連携など経済の再生が議題の中心であったが,先週金曜日の会合についての報道を見ると別な話題も登場している。財政の質(歳出の見直し,重点化,効率化)の向上や行政の無駄をなくすといった観点から,政策評価がうまく成果を上げているのかといった指摘,政策評価の制度自体約10年を経過した中で,特に社会保障や公共投資など今後経済の再生に資する政策について, PDCAサイクルを実効性あるものとして機能させていくことが重要であるといった意見,さらに,成果をあげていない事業については中止して有効性のあるものに切り替えていくべきであるといった指摘が民間議員から出されている模様。ただし,成果を客観的に判定するための指標については整備が不十分で今後も議論ということになっている。今後政策評価についても,新政権下で新たな光が当たるとも感じられるので,よく注意を払い,要すればメンバーの方々にもご報告したい。
【外務省】今後,政策評価や,行政事業レビューについて,進展があればご報告させて頂きたい。
今後の日程としては,本日頂いたコメントも踏まえながら,評価書作成作業を進め,出来れば6月中に評価書の第一稿を取り纏め,メンバーの皆様にお送りするので,昨年同様所見を頂ければ幸いである。その後,7月後半を目途に再度,アドバイザリー・グループ会合を開催した上で,8月中には評価書及び事前分析表を公表したいと考えている。作業のお願いなどを今後させて頂くので,何卒よろしくお願い申し上げる。
2 場所 外務省
3 出席者
(有識者)(五十音順)
稲澤 克祐 関西学院大学専門職大学院教授
山田 治徳 早稲田大学大学院教授
(外務省)
細野考査・政策評価官,大貝官房ODA評価室長,中村総合外交政策局政策企画室長,中村考査・政策評価官室首席事務官,藤本総合外交政策局総務課首席事務官,礒官房総務課課長補佐,加藤会計課総務室課長補佐ほか
4 議題
- 平成25年度政策評価の実施
- 政策評価基本計画(平成25年度~平成29年度の5年間)
及び平成26年度政策評価実施計画 - その他
5 会合経過
議題1
【外務省】
ご承知のとおり,昨年度から目標管理型の政策評価制度が導入され,政策評価アドバイザリー・グループのメンバーからご協力,ご示唆も頂きながら,目標管理型での初めての評価書及び事前分析表を取り纏め,公表した。初めてのことでもあり,率直なところ手探りの作業であったし,この方式で外交政策を評価していくことの難しさを改めて感じた。また,更なるご負担をお願いすることになったが,昨年から施策ごとの評価についてメンバーの方々からコメントを頂くことになり,非常に有益なコメントを頂いた。ご指摘等は関係部局にも伝達し,評価書にも掲載させて頂いた。
今後,24年度に実施した政策に関する評価書,及び,25年度の政策に関する目標を設定する事前分析表を作成するに当たっては,こうしたご指摘とともに,前回の作業の経験と反省を踏まえ,内容やフォーマットにおいて改善や工夫に努めていきたいと考えており,本日はこのような点をご説明させていただくので,ご意見等を頂きたい。
まず,政策評価の作業を行う原課に対して,何を詳細に書くべきか,どこを注意すべきか,どういう点を強調すべきか,といった点について,いわばマニュアル的な内容を示しながら作業を依頼する予定である。その中で,特に次のような点につき改善・工夫を図りたいと考えている。
まず,「施策効果のより客観的な把握」という点についてである。これは目標が達成されたか否か,目標に照らして施策の進捗があったかどうかを判断する上で,重要な点である。この観点から評価書の測定指標における年度目標を出来るだけ具体的に記述し検証可能なものにするよう努めたい。
例えば二国間関係を改善するという一般的な目標に留めるのではなく,二国間関係を改善するために具体的にはどうするのか等を出来るだけ書くようにしてもらい,目標が検証可能な内容になるように努めていければと考えている。
勿論,外交政策には,相手というものがあり,様々な外部要因に大きく左右されるほか,事前にすべて公表することも保秘の観点から難しく,目標を詳細に記述するには制約がある。その制約の中で出来る限り具体的かつ明確な目標を設定するよう求めていきたいと考えている。
2点目として,メンバーの方からも,度々ご指摘を頂いているが,数値指標を出来るだけ活用していくよう努めたい。外交政策自体が数値指標に馴染まない面があり,容易ではないが,出来るだけ数値指標を盛り込むよう引き続き求めていきたい。
更に,これもメンバーの方からのご指摘を踏まえ,政策の効果を策定するに当たって,アウトプットだけでなくアウトプット(成果)についても,例えばアンケート結果などを使った形で示すように努めていきたいと考えている。
次に,「評価書における有効性の評価の充実」というものを図っていきたい。御承知のとおり,政策評価法では,3つの観点から評価をすることが求められている。1つ目が必要性,すなわち政策の目的が,国際社会における日本国及び日本国民の利益の増進という観点から妥当か,行政関与の在り方から見て国がその企画立案及び実施の主体となる必要があるかどうかという観点。2つ目が有効性,すなわち,当該政策の実施により,期待される効果が得られるか,又は実際に得られているかどいうかという観点。3つ目が効率性,すなわち,投入された資源量に見合った結果が得られているか,政策効果の発現のためにとられる手段は適切,効率的であるかどうかという観点である。この中でも外交政策を評価する場合には,必要性や効率性も重要ではあるが,やはり有効性が重要ではないかと考えており,施策の目標に関し,どれ程の進捗が得られたのか,それはどのような効果や意義があったのかという点についての評価を出来るだけ充実させたいと考えている。その観点からは,施策に関する全般的評価に加え,例えば目標実現に向けて効果が高かった具体例を示すこと,また,期待された効果が得られなかった場合は,その要因,例えば施策に関する外部要因であれば,その分析等を行うこと等を通じて,出来るだけ総合的な観点から踏み込んだ分析を行い,有効性の部分の記述を充実させていければと考えている。
3つ目に,「PDCAサイクルの強化」に資するような工夫を考えたい。最近はPDCAサイクルという概念が一般化しており,各府省においてもPDCAサイクルが実効的に機能することが求められている中,評価書でもPDCAサイクルを一掃強化する方途を検討したい。これもメンバーからご示唆を頂いている点であるが,評価が改善に繋がる部分,すなわち,チェック(C)がアクション(A)に繋がる部分が重要で,まず先に述べた有効性の評価に関する記述を充実させた上で,右を踏まえて当該施策の今後の方針を出来る限り示していくよう努めたいと考えている。各課には施策の評価結果を必ず踏まえた形で課題を書いてもらうこととし,課題の欄では,当該施策をより有効に実施していくために取組むべき点や実施上の問題点について,理由・原因等を記入した上で,当該施策の今後の方針を出来るだけ具体的に記述してもらうという形で,目標から実績,そして実績の評価,その評価を踏まえた課題及び今後の方針という形でPDCAサイクルの繋がりを充実させていきたい。
なお,これまで評価書の中で,【課題】と【今後の方針】を別々の欄に分けていたが,できる限り各課題に今後の方針が明確に対応した形となるよう,【課題と今後の方針】と纏めることとした。
それから,事前分析表にある「達成手段」の明確化についても工夫を考えている。達成手段は,かつてで言えば具体的施策レベルの下にある「事務事業」に相当するものであるが,このような手段を実施することが施策の目標の達成にどのように寄与するかについて,一層明確な形で記述し,ここでもロジックが明確に繋がるよう努めていきたい。
以上,内容面で改善に努めたい点である。
次に,専ら評価書を一層参照しやすいものにする観点から考えている書式上の工夫について,説明させて頂く。
まず,昨年の評価書においては施策ごとのページでは,冒頭にのみ達成すべき目標と施策の概要を記していたが,今回からは具体的施策ごとにあらためて目標と概要を記述することとした。こうすることで,具体的施策の項を見れば全体像が分かり易くなると考える。
残りは,技術的な観点での工夫が2点。まず,事前分析表で「施策の進捗」という項目が各年度ごとに横に並んで記載されていたが,見やすくするとの観点から,これを縦に並べる形に改めた。
もう1点。事前分析表は,これまで数値指標を最初に示し,その後に定性的指標を記していたが,最初に数値指標を持ってくると,本来多面的な外交政策のある一面だけをクローズ・アップした形になってしまい,政策の全体像を把握しにくいという問題がある。外交政策の特殊性を考慮し,様々な測定指標のうち,まず定性的指標を書き,ある程度全体像を示した後で,特定の側面を切り取る意味で数値指標を示した方が,全体として分かり易いとの観点から順序を変えている。
以上の今回の評価書及び事前分析表作成の作業において工夫や改善に努める点について,メンバーの方からのご示唆を頂ければ,それも踏まえつつ,3月中にも省内で説明会を行いたいと考える。
ご質問等あれば,お願いする。
【有識者】ただ今の説明された工夫等は,非常に分かり易くて良い。良い試みであると思う。
一方で,まだ分かりにくいと思う点もある。政策評価法(第三条)では,「行政上の一連の行為がもたらす政策効果」を評価すると書いてある。現行の評価書の中では,「一連の行為」に相当するのが,「施策の進捗状況」の欄,それに対する「総括」の欄で,政策の効果を評価しているが,この形では,一連の行為がもたらした政策効果との繋がりがまだなかなか分かりにくいのではないか。ただ,これは大掛かりな工夫を要するので,今すぐ変えるべきということではない。
もう一つは,「総括」の欄。必要性,有効性,効率性のそれぞれについて述べる中で,特に,有効性については評価の中心を成す重要な項目であり,示唆的である。原課にとっては,並列で書かれているだけでは,どうしても横並びで見てしまうが,有効性が最も重要であることの意味をあらためて指摘することは必要だと思う。政策評価法では「観点」という表現を使っているが,一般国民の視点からは,この観点はむしろ「問題点」に当たる部分。「問題指向型」(problem-oriented)と呼ぶ手法だが,問題点ごとに,つまり,まず必要性という観点で評価を行う,関係する定性的指標また定量的指標もある,必要性という観点で評価を行うと,こういった結果になる,次に,有効性という観点で評価を行う,関係する指標はこれである,評価結果はこうだと。政策評価法の観点で,そういった方が分かり易い。ロジックの繋がり,そして繋がりと纏まりを如何に分かり易いものにするか。外務省が使用している評価書のフォーマットは,定型的なものではあるが,悪く言えば十把一絡げになり,融通が利かなくなりやすい面がある。そうした中で繋がりと纏まりを如何に見せるのかがポイント。今回の工夫等は積極的に評価できるが,さらにそういった視点から見て,評価書の記述の中身をどのくらい合理的にできるか。こうしたことを原課に徹底させることができるかが課題になるのかなと思う。
【外務省】ロジック・モデルやつながりとまとまり等を如何に示せるか,ご示唆も踏まえ,どういった形で出来得るのか検討していきたい。先程御説明したとおり「施策の進捗状況」についての有効性の評価においては,実績についての記述を繰り返し,有効であったとするのではなく,できるだけどういう意義や効果があったのかに関する記述を充実させるように努めたい。
【有識者】有効性について,このように原課向けに説明するための工夫を加えられたとのことであるが,第三者意見を述べる我々メンバーにとっても分かり易く整理されていると思う。
一方で,昨年感じた点だが,有効性はそのまま評価結果としての「目標の達成に向けて進展があった」などの言葉に繋がっていく関係にあるが,その「進展があった」,「やや進展があった」等の言葉の使い方にばらつきがあるように思える。この課にとっては進展があった,別の課にとっては進展に「やや」なり「相当」が付いてくるなど,そのあたりについて,こういう場合はこの表現とすべきというように,もし示せるならば,より優れた記述につながるかもしれない。かなり難しいと思うが,そうした工夫もあるとよいのではとの印象を受けた。
また,有効性は,当該具体的施策の目標の達成だけでなく,その上位の施策にどれだけ貢献しているかにも関係するので,上位の施策の進展や評価結果の記述に,こうしたロジックも反映できるとよい。特に,施策レベルの目標達成への貢献が高い具体的施策については一言示すとよいと思う。これも難しいとは思うが,上位の施策を意識した有効性の評価を行っていることが示せれば有意義と考える。
【外務省】外務省の政策は,極めて多様で,それぞれ前提や条件も異なっていることから,進展の度合を同一のものさしで整理することは容易ではないが,省内の評価組織において実績を見た上で,ある程度の標準化には努めている。更に改善できる方法があるかどうか検討させていただきたい。一方で,外交政策は50%実現,70%実現,90%実現といったように,目標の実現程度を評価するという形には馴染まない面もあることを御理解頂きたい。
本日は有意義なコメントを頂き御礼申し上げる。なかなか難しい点もあるが,メンバーからのご示唆を踏まえ,今後の省内での評価作業において,ロジックの繋がり,纏まり,施策の進捗の評価の平準化,客観化などについても何ができ得るか検討していきたいと考える。
議題2
【外務省】政策評価法の定めに従い,基本計画と毎年度の実施計画を定めることになっている。今回は,20年度から24年度までの5年間の基本計画が終了したので,新たに基本計画を策定する。基本計画は基礎的な枠組みを記述するものであるため,大きな変更点はなく,基本的には前回の基本計画を踏襲している。
実施計画については,目標管理型の新しい制度になったことを踏まえて昨年策定したものを基本的に踏襲している。一部変更点を申せば,実施計画の別紙として対象となる政策体系の図において,基本目標の国際の平和と安定に対する取組に関する施策の中で具体的施策II-1-5に「宇宙に関する取組の強化」を新しく独立して設けている。これは,最近宇宙に関する取組が活発化しており,省内にも宇宙室が立ち上がっていることなどが背景にある。もう一つ,基本目標のところで,これまで広報文化と報道対策は別な施策に分かれていたが,一つの戦略に基づいて実施すべく,外務省の機構改革も行ったところ,これを反映している。
議題3
【外務省】ご参考までに政策評価に関連する最近の動きを簡単にご説明させていただきたい。一点目が行政事業レビューについて,これは前政権の下で行われていたものを今後も続けるとのことだが,現状及び今後見込まれる動きなどを簡単に紹介する。
【外務省】民主党政権下において,所謂「仕分け」として内閣府が中心となって行うものとは別に各府省は自律的に自らの政策のレビューを「行政事業レビュー」として行ってきた。この行政事業レビューは継続していくと国会で総理が発言されている。どういった形で進めていくかは行革推進会議でまさに検討されている状況。3月末に大体の方向性というものが出され,6月頃始まると見込まれる再来年度予算編成の前に,新しい行政事業レビューの進め方についての指針が出ると概ね予想される。
事務事業レベルの評価の廃止など,政策評価のまとめ方についても,行政事業レビューの方法と関係している部分がある。3月末までは,どういったものになるかは見えてこないが,ある程度前政権下で実施していたものを踏襲するのではないか。議論の公開の方法等,様々な論点があり,ある程度指針が固まったところで,改めてご報告したい。政策評価とは関係が深いので,引き続き情報提供に努めていきたい。
【外務省】もう一点,最近の経済財政諮問会議において政策評価が取り上げられるという動きについてご説明させていただく。
【外務省】新政権下の最初の経済財政諮問会議が1月半ばにスタート。もちろん当初は日銀との連携など経済の再生が議題の中心であったが,先週金曜日の会合についての報道を見ると別な話題も登場している。財政の質(歳出の見直し,重点化,効率化)の向上や行政の無駄をなくすといった観点から,政策評価がうまく成果を上げているのかといった指摘,政策評価の制度自体約10年を経過した中で,特に社会保障や公共投資など今後経済の再生に資する政策について, PDCAサイクルを実効性あるものとして機能させていくことが重要であるといった意見,さらに,成果をあげていない事業については中止して有効性のあるものに切り替えていくべきであるといった指摘が民間議員から出されている模様。ただし,成果を客観的に判定するための指標については整備が不十分で今後も議論ということになっている。今後政策評価についても,新政権下で新たな光が当たるとも感じられるので,よく注意を払い,要すればメンバーの方々にもご報告したい。
【外務省】今後,政策評価や,行政事業レビューについて,進展があればご報告させて頂きたい。
今後の日程としては,本日頂いたコメントも踏まえながら,評価書作成作業を進め,出来れば6月中に評価書の第一稿を取り纏め,メンバーの皆様にお送りするので,昨年同様所見を頂ければ幸いである。その後,7月後半を目途に再度,アドバイザリー・グループ会合を開催した上で,8月中には評価書及び事前分析表を公表したいと考えている。作業のお願いなどを今後させて頂くので,何卒よろしくお願い申し上げる。