公邸料理人
公邸料理人の活動紹介「カタールで人気の公邸料理人は努力の人」
(在カタール大使館・天野明幸公邸料理人)
平成25年4月8日
中東のカタールに来て3年目に入りました。初めての外国,それも馴染みのないアラブの国での仕事です。外国で和食を供することは日本でとは全く別物だと聞いてはいたのですが,実際に来てみると戸惑うことばかりでした。辻調理師学校で和食を学び,大阪で10年修業したという自信もなくしてしまいそうな時期もありました。
3年目の今,創意工夫こそが公邸料理人にとって一番肝心なことだと思っています。アラブで豚肉を出せないことは知っていましたが,人々がよく火の通った料理しか食べないことは誰も教えてくれませんでした。新鮮な魚も上等の肉も完全に火を通すのですから,日本のレシピーどおりではうまくいきません。かと言って洋食かというとそこは譲りたくない。学んだ技術を活かして,この地で手に入る食材で,アラブ人も喜ぶ和の料理を作り出すこと,これが苦労するところであり,また面白いところです。
試作段階で没になった料理も多くありますが,ラム肉の朴葉味噌風味・牛肉や魚の塩麹焼き・サーモンや地魚の土鍋ご飯などは成功例です。アラブ人のみならずいろんな国のお客様に喜んでいただいています。
今や世界食となったSUSHIはカタールでも人気があります。但しアラブの人は生ものは駄目というのが大半です。一方で生のお寿司大好きという熱烈ファンもいて,お客様によって具材を使い分けします。日本では決して作らなかった裏巻もバラエティーとして抵抗感なく出せるようになりました。
お客様は国籍も多様で,宗教やアレルギーの他,好き嫌いも事前にお聞きして対応します。最近もっとも苦労したのが,完全ベジタリアンのお客様への夕食会でした。鰹だしも使えないので,昆布としいたけと大豆を使い基本のだしを作ることから始まり,八寸からデザートまでの品数を揃えたコース料理を組むのは大変でした。中でも赤パプリカの昆布〆の握り寿司は,まるでマグロの赤身のようだと人気でした。バリバリのベジタリアンのお客様が喜んでくださったのは嬉しいことでした。
カタールで有難いことは,公邸から車で10分程の海岸に漁師達がずらり舟をつけて魚を売っていることです。暑過ぎる夏場を除けば,取れ立ての活きた魚を入手できるので,漁から戻る早朝や夜の時間に足しげく通っています。苦手だった漁師達との厳しい値段交渉も最近は互角以上の勝負です。
いろんな行事で和食を紹介する機会もあります。日本語学校で魚さばきやお寿司の実演をした時は,みなさん食い入るように見ていました。チャリティーイベントに協力してお寿司パックを販売することもあります。公邸レセプションで庭の屋台でお寿司や天ぷらをお出しする機会も結構あります。外国のお客様と直接話をするのは大変楽しく参考になることも多いです。
料理人として何よりも嬉しいのは,お客様から美味しかった,楽しかったという言葉をいただく時です。食材探しや買い出しの大変さも忘れます。和食は日本外交の武器だと大使がよく話されますが,自分がその役に立っているのだと思えるのは公邸料理人の一番の励みです。
実を言うと,アラブの国はテロの印象が強いせいで,来る前は怖い人達ばかりだと思っていました。実際にはカタールは穏やかで親切な人が多く,特に日本はこの国で好かれています。今や世界一の裕福な国ですが,豊かさの基であるLNG産業を立ち上げる時に日本だけが協力したので,カタールは日本を恩人だと思っているそうです。それで東日本大震災の後,カタールは世界でも最大級の1億ドルもの復興支援を日本に提供してくれました。そういう親日的な有難い国に,微力ながらも和食文化を伝える仕事をしているのだと思うと一層気合も入ります。
3年目の今,創意工夫こそが公邸料理人にとって一番肝心なことだと思っています。アラブで豚肉を出せないことは知っていましたが,人々がよく火の通った料理しか食べないことは誰も教えてくれませんでした。新鮮な魚も上等の肉も完全に火を通すのですから,日本のレシピーどおりではうまくいきません。かと言って洋食かというとそこは譲りたくない。学んだ技術を活かして,この地で手に入る食材で,アラブ人も喜ぶ和の料理を作り出すこと,これが苦労するところであり,また面白いところです。
試作段階で没になった料理も多くありますが,ラム肉の朴葉味噌風味・牛肉や魚の塩麹焼き・サーモンや地魚の土鍋ご飯などは成功例です。アラブ人のみならずいろんな国のお客様に喜んでいただいています。
今や世界食となったSUSHIはカタールでも人気があります。但しアラブの人は生ものは駄目というのが大半です。一方で生のお寿司大好きという熱烈ファンもいて,お客様によって具材を使い分けします。日本では決して作らなかった裏巻もバラエティーとして抵抗感なく出せるようになりました。
お客様は国籍も多様で,宗教やアレルギーの他,好き嫌いも事前にお聞きして対応します。最近もっとも苦労したのが,完全ベジタリアンのお客様への夕食会でした。鰹だしも使えないので,昆布としいたけと大豆を使い基本のだしを作ることから始まり,八寸からデザートまでの品数を揃えたコース料理を組むのは大変でした。中でも赤パプリカの昆布〆の握り寿司は,まるでマグロの赤身のようだと人気でした。バリバリのベジタリアンのお客様が喜んでくださったのは嬉しいことでした。
カタールで有難いことは,公邸から車で10分程の海岸に漁師達がずらり舟をつけて魚を売っていることです。暑過ぎる夏場を除けば,取れ立ての活きた魚を入手できるので,漁から戻る早朝や夜の時間に足しげく通っています。苦手だった漁師達との厳しい値段交渉も最近は互角以上の勝負です。
いろんな行事で和食を紹介する機会もあります。日本語学校で魚さばきやお寿司の実演をした時は,みなさん食い入るように見ていました。チャリティーイベントに協力してお寿司パックを販売することもあります。公邸レセプションで庭の屋台でお寿司や天ぷらをお出しする機会も結構あります。外国のお客様と直接話をするのは大変楽しく参考になることも多いです。
料理人として何よりも嬉しいのは,お客様から美味しかった,楽しかったという言葉をいただく時です。食材探しや買い出しの大変さも忘れます。和食は日本外交の武器だと大使がよく話されますが,自分がその役に立っているのだと思えるのは公邸料理人の一番の励みです。
実を言うと,アラブの国はテロの印象が強いせいで,来る前は怖い人達ばかりだと思っていました。実際にはカタールは穏やかで親切な人が多く,特に日本はこの国で好かれています。今や世界一の裕福な国ですが,豊かさの基であるLNG産業を立ち上げる時に日本だけが協力したので,カタールは日本を恩人だと思っているそうです。それで東日本大震災の後,カタールは世界でも最大級の1億ドルもの復興支援を日本に提供してくれました。そういう親日的な有難い国に,微力ながらも和食文化を伝える仕事をしているのだと思うと一層気合も入ります。
(門司健次郎駐カタール大使より)
天野君は料理の腕前はもちろんのこと,笑顔のいい料理人としてもカタールで有名です。持ち前の笑顔で食事会の最後に挨拶に現れて,いつもお客様から拍手をもらっています。その笑顔の裏の努力ははかりしれません。真面目に頑張ってくれている天野君は私達の設宴の大きな力です。
天野君は料理の腕前はもちろんのこと,笑顔のいい料理人としてもカタールで有名です。持ち前の笑顔で食事会の最後に挨拶に現れて,いつもお客様から拍手をもらっています。その笑顔の裏の努力ははかりしれません。真面目に頑張ってくれている天野君は私達の設宴の大きな力です。