外務本省

第10回国際エネルギー・フォーラム
(概要と評価)

平成18年4月

1.概要

(1)4月23~24日、カタールのドーハにて、59ヶ国のエネルギー担当の閣僚級および6国際機関の代表が参加し、第10回国際エネルギー・フォーラム(IEF:International Energy Forum)が行われた。なお、主催国はカタール、共催国はイタリア及び中国が務めた。

:本フォーラムは、91年仏での第1回開催以降、石油市場の安定等について産油国および消費国間の対話促進を図るため、原則、隔年で開催されており、前々回(8回)は2002年9月に大阪で、前回は2004年5月に蘭アムステルダムで開催)。

(2)我が国からは、二階経済産業大臣及び遠山外務大臣政務官が参加し、二階大臣は、初日第1セッション(テーマ:未来への燃料供給)にパネリストとして参加し、石油市場の不安定な状況は産消双方にとって望ましいものではないとし、1)消費国のみならず、生産国におけるも省エネルギーの推進、2)上流から下流のすべてにおける投資、3)「石油データ共同イニシァテイブ」(JODI)の推進等による透明性の向上を提案しつつ、産消対話を通じて、世界全体での経済発展に努力したいとのスピーチを行った。

(他の主な参加者は、米ボドマン・エネルギー省長官、露フリステンコ産業エネルギー大臣、仏ロース産業担当大臣、英ウィクス貿易産業省閣外大臣、サウジアラビア・ナイミ石油鉱物資源大臣、中国張国宝国家発展改革委副主任、マンディルIEA事務局長、ダウコルOPEC総会議長等)。

(3)同フォーラムの主要テーマは、「未来への燃料供給-エネルギー安全保障と責任」。石油価格の高騰が続く中、生産国と消費国との対話の重要性が益々高まっており、国際社会が直面するエネルギー安全保障問題について長期的解決法に向けて進むべきことを追及することを目的とするもの。会議の直前にはWTI原油価格が75ドル/バレルを突破したが、主催国及び共催国による結語の中で、「閣僚は高油価が世界経済、特に発展途上国に与える影響の可能性について懸念を表明した」との一文が盛り込まれた。

 原油価格高騰の原因については、生産国側は主に精製能力の不足、地政学上の不安定要因、投機資金の動きを指摘し、消費国側は主に生産国における余剰生産能力の不足を指摘した。

(4)参加者のコンセンサスとしては、今後の増え続けるエネルギー需要に対して、(イ)省エネルギー・エネルギー効率の向上が重要、(ロ)技術者の育成等も含めたサプライ・チェーン全体を通じての投資が必要、(ハ)JODIを強化して、石油関連データの一層の共有を図るべきことが必要との認識が共有された。そのため、会議後の記者会見で発出された主催国及び共催国による結語においても、「サプライ・チェーン全体を通じて、産油国と消費国、国営石油企業と国際石油企業のエネルギー部門における共同投資、相互依存を確立することによるエネルギー安全保障の拡大につながり、市場、資源、技術、公平で透明性のある経済、財政、法的な枠組に支えられた資金へのアクセスの改善が産油国、消費国両方にとってのエネルギー安全保障のために重要である」と表現されている。

2.評価

(1)今次会合は、会議の直前にWTI原油価格が75ドル/バレルを突破する中、原油価格の安定に向けた取り組みについての何らかの対策が打ち出されるかについて注目された。また、生産国、消費国のみならず、参加するIEAやOPEC等の国際機関の動向が大いに注目を集めた。実際の議論では、原油価格高騰の原因については、生産国側が主に精製能力の不足を指摘したのに対し、消費国側は主に生産国における余剰生産能力の不足を指摘した。今後の増え続ける需要に対して、省エネルギーや技術者の育成等も含めたサプライ・チェーン全体を通じての投資が必要であるという認識は共有されたことは評価に値する。

(2)他方、本来のテーマ「エネルギー安全保障」については、ロシアを始め、生産国は需要の安全保障(Security of demand)の確保を要求し、消費国からは供給の安全保障を求める声が多く聞かれた。双方の要求に対し、我が国からは、需要見通しを既に発表している旨例示し、また、サウジアラビアからは原油生産能力拡大に向けたロードマップが示される等、産消双方がそれぞれの責任を果たす動きが見られたことは望ましい。今後とも、こうした相互の対話と情報の共有を通じて進めることが重要。

(3)その意味で、JODIに関しては、参加国の多くが支持を表明し、さらにガスについてもデータを共有化し、透明性向上に向けた取組みを行おうとする姿勢が示されたことは大いに評価できる。

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