(高島外務報道官) それでは、お待たせいたしました。これから町村外務大臣との議論をお願いしたいと思います。まず、国連改革について御発言をなさりたい方、お手をお挙げください。
(参加者) 三点申し上げたいことがあります。
一つは、国連分担金。二番目は、日本の常任理事国入り。三点目は、外務省改革。こういう三点について述べさせていただきます。
まず、国連分担金は、先ほど大臣がお話しされましたように、日本は191か国の国連加盟国の中で、日本だけで19.5%と、約5分の1も負担していると。そういうふうな状態でありながら、日本の発言権は非常に弱い。こういった点を日本はもっと発言権が強くなるようにやってもらうという、こういうことが一つ。
それから、日本の常任理事国入り。これは、先ほど申し上げた形と関係はしてきますが、もう少し今までやった成果、こういったものをどんどんと各国にも言う。諸外国のような、自分のところの国は金はできるだけ出さない、よそから出させよう。そういうふうな姿勢、こういった点をどんどん追求して、日本というのは非常にまじめに努力はしているわけですが、日本国民は非常にその分犠牲を負っているわけです。金銭的には700兆円の借金が今では770兆円という借金も抱え、そして、これは世界一の借金大国となっている。こういったことも踏まえて、そこまで犠牲をしてやっているのにかかわらず、なぜ国連に対して非常に弱いのか。こういった点を頑張ってほしいということ。そういう意味で、外務省改革を外務省職員が自分たちの給料も全然下がらないから、民間は10%、あるいは50%以上のカットという状況でありながら、非常に我慢して日本の経済の発展に努力しているわけですが、外務省職員のほうは、例えば海外勤務手当てといった点については本給の3倍ほど手当てがつくとかいう話も聞いております。
(参加者) 質問が二つございます。国益を担う日本が常任理事国入りするには、アジア諸国との歴史的な確執を改善する必要があると思いますが、韓国政府も日本の常任理事国入りに難色を示している中で緊急の課題となっているようにも思います。その点、どのような対策をお考えになっているかということと、あと、大臣にとって国益とは何か一言でもし表現できましたら、よろしくお願いいたします。以上です。
(参加者) 私は、日本の国連常任理事国入りには賛成です。今の国連の改革は必要だと思っております。非常に現実的には歪を持った形の組織になっています。ぜひ理事国入りの達成は必要だと思いますし、応援していますが、現実問題、日本だけであれば、私はこの達成の可能性は高いと思いますが、先ほどの先生の御指摘もありますが、他の対象国も含まれますと、それぞれの利害関係があって厳しいという見通しも考えられます。万が一今回実現が難しいとなった場合、国連との付き合い方というのでしょうか、国連が改革されて日本が取り組むべき価値があれば、これまでどおり積極的なかかわりあいも必要かと思いますが、もしこれまでどおり負担を大きく背負って日本としてあまり発言権がないような状態であれば、ある程度の距離感をもった付き合い方も必要ではないかと考えますが、いかがお考えでしょうか。お聞かせください。以上です。
(高島) ありがとうございました。
それでは、今の御発言に対して、まず大臣の方から、よろしくお願いします。
(町村) 国益とは何でしょうかというお尋ねでした。ごく分かりやすく言えば、それは、日本の国民一人一人、あるいはいかなるグループであれ、団体であれ、組織であれ、企業であれ、そして、それらを全部ひっくるめた日本の国全体の平和と安全と発展と利益に役立つこと、それが国益トータルだろうと思います。
よくこういう時代だから、もう国なんかないんだと、世界市民でいいんだと、盛んにそういうことを聞きます。グローバル化された社会なんだから、国なんていうのはもう要らない。それは、国連の場などに行くと、いかに国というものが現実に機能し、存在しているのかということが逆によく分かるんですね。国連という場は、それぞれの国が国益と国益をかけたある種の戦いの場です。そこでは激しいやりとりが行われます。やはり私は、国連も最も重要な一つの大きな場として日本の国益がかなうこと。それは世界が平和であることは間違いなくそうでしょう。日本の国益にかなうことです。世界があちこちで戦争があったら、日本の発展というのは望めない。そういう意味で、世界の平和というものは日本の国益にかなう。例えばそういうことなのだろうと思います。
韓国、先般の3月1日、盧武鉉大統領の発言を見ると、これはとても日本の常任理事国入りに韓国は賛成しそうもないなという印象を多くの日本の国民の方々はお持ちになっただろうと思います。なかなか中国や韓国との関係で、歴史問題、歴史認識について共通の認識に到達するというのは、正直言って難しい問題ではあります。過去の大きな歴史的な事象について、国内ですら意見が分かれるときに、国と国とを越えて、それが同じ共通理解に達する。できればそれはその方がいいですし、お互いに何を考えているのか、率直な意見交換は必要だと思いますが、共通の認識に到達するのは正直言って僕は難しいことだとしみじみ思います。でも、昨年の11月APECの場で、あるいはASEANプラス3の場で、日中の小泉総理と胡錦濤国家主席、小泉総理と温家宝総理との間でかなり激しい言葉で、その歴史認識に関するやりとりがありました。それをもって、もう日中関係は非常に冷めてしまったと言う人がいるけれども、そうではない。そういう難しい問題であればあるほど、むしろ両国首脳が率直に腹蔵なく、自分の言葉で話し合う。いっぺんに了解点に到達しなくてもそれでもいいんです。一生懸命そこで話し合って、お互いが何を考えているのかということをよく理解しあうこと。そのことが大切だろうと思います。
私は、やはり韓国の大統領の御発言、先般の発言が全部よい発言だったとも私は必ずしも思っておりません。思いませんが、私ども日本人が忘れてはならないこと、韓国を植民地支配をしたと。そして、それによって大変な被害を与えたんだと。そのことについて、やはり痛切なるお詫びの気持ちを持たなければいけない。そのうえに立って、本当にお互い理解しあいながら、今年は日韓友情年だから、よい日韓関係を築こうよねという思いで、今この1年が始まっているわけです。でも、私どもはやはり常にそうした過去の歴史の事実というものを、日本は日本なりに一生懸命考えて、そして村山内閣総理大臣談話、あるいは小渕総理と金大中大統領の日韓共同宣言、あるいは小泉総理と盧武鉉大統領の共同声明、その折々に、日本は日本として真剣に過去のことについて向き合って反省すべきことは反省し、その上に立って未来を築こうという努力をしてきている。そのことを盧武鉉大統領をはじめとする韓国の皆様にももう少し理解していただきたいという希望はあります。ただ、なかなかそこはそれぞれの事情というのもあるのかもしれない。しかし、難しい問題であるからといって避けては通れない問題だろうと思います。
では、常任理事国入りとの関係でどうだ。今、韓国は決して、「はい、分かりました。大賛成ですよ」ということは言っておりません。しかし、日韓の間ではこの問題は、国連改革という大きなフレームワークの中でお互いによく議論しあわなければならない問題だということについては、それぞれ理解がありますから、今後とも日韓の間でも日中の間でも我々のそうした大きな政策課題が実現できるように、今後とも率直に話し合いをしていこうと思って、理解を得る努力をしていこうと思っております。
確かにこれだけのお金を負担しているんだから、国民の負担のもとにこれだけの国連協力をしているんだから、常任理事国入りは当然だろうと。私もそう言いたい気持ちも山々ですし、現にそういう発言もしております。ただ、それを言うと、さっき言ったPKOの活動で世界の国々の何万人の人々が汗を流しながら、場合によっては血も流しながら頑張っているではないか。では、日本は今何人出ていますかと言われると、さっき言ったように何十人しか出ていないという姿。別に数の比率で言うわけではありませんが、それはそれぞれの国ができること、得意な分野があるということだから、これだけお金を出しているんだから当然だろうと言ったら、ではPKOでも何万人も出してくださいと、そういう痛烈な反撃が、口に出して言うかどうかは別にして、そういう反撃もそれぞれの国から返ってくるということも、また認識したうえで、多くの国の理解を得る努力をしなければいけないのだろうと思います。
外務省改革しっかりやりなさいと。前川口大臣以降、一生懸命外務省は努力しております。お給料は下がらないとおっしゃったけれども、国家公務員も、今やわずかでも下がる時代。現実に外務省職員の在外勤務の際のお給料は、在外勤務手当てについて見るならば半分減っております。そんな形で自らを律する努力というのは、お給料の面だけ見ても、他にも色々ありますが、しっかりやっているんですよということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
我々、だめな時のケースを考えてしまうとむなしくなるから、あまりそういうことは今考えていません。必ずなれるものと思って一生懸命努力する。それは、もし万が一だめな場合は、その時はその時でまた考えますが、今はとにかく可能性のある方にかけて一生懸命やっていこうと思っています。ただ、先ほど横田先生のお話のとおり、なかなか難しいです。周辺国の賛成を得られないケースもあるだろうし、もう一つ、何といっても現在の五つの常任理事国の言わば特権的な地位があるんですよね。この5か国がどこまで前向きになるか。どこまでこの5か国が安保理改革に熱心になってくれるかという、その基本問題だって、実はまだすべての5か国の足並みが十分そろっている状態ではありませんから、正直いってこれは容易ならざる難しい政策課題なのです。しかし、やろうではないかと言って、今一生懸命努力しているところでございます。
(高島) ありがとうございました。
横田先生、最後のところの大臣の御発言に対するコメント。つまり、現在の常任理事国5か国が国連改革をどう見ていると、先生はごらんになっていらっしゃるか。
(横田国際連合大学学長特別顧問) 国連憲章を改正しませんと、日本を含む新たな常任理事国というのは作れないのですね。その意味では、大臣がおっしゃられましたように、現在の五大国が国連改革、安保理改革に前向きに取り組むようにならないと、これはなかなか前へ進まないということは事実なのですが、他方で、それでは五大国は特権を持っているから、今のままでいいだろうといって、このまま何も改革しないでいいと思っているかというと、そうではないのです。今、世界ではアフリカの地域の紛争が日本にも影響してきますし、ヨーロッパの国にも影響します。できれば国連を通してそういう紛争をなるべく予防する。予防できなかったときには、平和維持活動を派遣してでも紛争をなるべく大きくしないで、できれば終焉に持っていく。その上で、発展に結びつけたい。こういうことをやりたいわけですね。それでは、五大国がいつまでも自分たちだけが中心になって動く国連ということで、その国連が期待されている役割を全部果たせるかというと、現実に果たせなくなってきているのです。これは五大国の指導者がみんなそういうふうに認めているのです。ですから、例えば日本には常任理事国になってもらいたいという発言さえする国の指導者が出てきているわけです。アメリカ、フランス、イギリス、これは国の指導者が色々な形で日本には常任理事国になってもらいたいと言っている。これはなぜかというと、日本のような国が入ってくれないと、国連そのものが強くなれない、強化できない。国連が強くなってくれないと、実は自分たちも困るのだという認識があるのです。五大国だけではなくて、そのほかの多数の国連加盟国もみんな感じていることなのです。ですから、もちろん、日本の国益という立場もあるでしょうけれども、私の見ている国連改革の動きということからいいますと、これは世界にとって、先ほど大臣がいろいろ挙げられましたが、テロの問題、内戦の問題、環境破壊の問題、極端な人権侵害の問題、感染症の問題、これはどれをとっても国連を通してきちっと対応しなければいけない地球規模の問題です。けれども、その国連が弱くては、どの問題も解決できず、その結果、すべての国が困ってしまう。それを解決する一つの方法が日本、そして、日本を含む五つないし六つの常任理事国を安保理の中に加えて、安保理が強化されて、安保理の決定に基づいてものごとが解決されていュ国連になる。これがどうしても必要だというのが、今の国際社会の全体の認識なのです。個々には、あの国は嫌だというような発言をされますが、日本が入るのは嫌だと言って反対する国がどこまであるかというと、私は、必ずしもそんなに強いものではないと思います。つまり、日本のためにというのだったら、賛成しないかもしれませんが、世界のために国連のためにこの改革は必要なんだという形で提案が出てきたときには、反対できなくなるのではないかという気がいたします。その意味で、安保理改革は難しいのですが、決して不可能ではない。一番大事なことは、そういう国々が反対できないような国連改革のパッケージを作るということではないかと思います。
(高島) ありがとうございました。
それでは、もう1ラウンド、皆様からの御意見・御質問を受けたいと思います。
(参加者) 大臣と横田さんのお話、私の個人認識では、非常にずれが大きいです。まず、なぜこういうことかというと、アフリカのほうから常任理事国を出すのは、私も賛成ですけれども、大体植民地の宗主国がそのコントロールを間違えて、そのツケが今出ているのにもかかわらず、日本を常任理事国にさせてお金を出させるという、そういうのに乗っかるという、そういう姿勢が私には全然理解できません。
それから、韓国問題は歴史認識ではなくて、あれは条約を結んでいるわけですから、あれはりっぱな国際法違反です。日中条約で相互不干渉を、政治干渉をしないという条約が明文化されているにもかかわらず、靖国問題でなぜ干渉するのかということに対して、外務省は何ら国際法の理念に基づく反論をしていない。こういう体質で国連の常任理事国になることは、私はだめだと思っています。なぜならば、日本自身が安全保障という概念が、昭和20年以来、国をもってしてきたことがないのです。拉致問題にしても、中国の潜水艦にしても。そういうことをしないで、安全保障理事会の理事国になる資格はないと思っています。ですから、まず足元を固めて9条を改正し、きちっとしたもので戦略を練って、もう一度出直しても私はいいと思っています。以上です。
(参加者) 質問なのですが、日本が常任理事国の一員になることによって、今まで実現困難なことが可能となると同時に、自国の存在感をアピールして、より一層国際平和に貢献できると思います。
そこでなのですけれども、常任理事国入りのプロセスにおいて、現在の常任理事国である中国や特にアメリカに対して、どのような方法、姿勢というものを具体的に示していくのでしょうか。お二人の意見を聞きたいと思います。
(参加者) 私は、今、国際法を勉強しているのですが、国連改革というと、ICJも国連の機関の一つだと思うのですが、ICJの判決とか色々出ていることについて、各国がなかなか履行しないという問題もあると思うのですが、それについては何か議題に上がっていたりするのでしょうか。
もう一つは、日本政府としてICJに対してどのような視点というか観点というか、どのような立場で接しているのかということが気になっています。というのも、過去の判例とか、かかわり方を見ていると、日本は国際法に基づいて国際社会にかかわっていくと言っていながら、裁判所を活用するという例がなく、領土問題などについても、ICJに付託するという動きが全く見られないことについて疑問を持っているので、その点二つよろしくお願いいたします。
(高島) はい、分かりました。ありがとうございました。
皆様御承知と思いますが、ICJというのは、国際司法裁判所、オランダのハーグに本部があります、インターナショナル・コート・オブ・ジャスティスで、今日本からは小和田恒元外務次官が、もしくは国連大使が判事として勤務されております。
(町村) はい。これはむしろ戦後の日本の社会のあり方というものがこれでよかったのかという、ある種のお問い合わせ、御疑問だろうと思います。
私は、結論的にいって、さっき申し上げたように、日本が安保理の常任理事国になる資格は十分あるし、また、積極的にその役割を果たしていくことが日本の国益にもかなうし、また、世界のニーズにも合致することだと、そう考えております。
その理由は、また重複になるから申し上げません。ただ、その前提として、日本の戦後の社会が本当にこれでよかったのかという色々な角度からの御疑問が、それは色々な事象を通じて言われております。戦後敗戦の状態から、当初全く軍備のない状態。そして、次第に警察隊、防犯予備隊、そして自衛隊となってきています。自衛隊も、言うならば日の当たらない存在であったものが、次第に国民の認知を様々な活動をするにしたがって得るようになってきて、今や国際的な活動にまで特別立法等を通じて活動できるようになってきた。自衛隊の存在一つとってみても、やっぱり急にこれが理想的な姿だ、日本の防衛・軍備のあり方だといっても、それは急にはそうならない。やはり、歴史と時間とともに少しずつ進化を遂げていくというプロセスが必要だったのだろうと、私は思っております。したがって、我が国の自衛という問題一つとっても、今でこそ「自衛隊は憲法違反」という議論だってありますし、あるいは、防衛予算をなくしてしまえばいいということが平気でまだ日本の国会でも議論されている、そんな姿だってあるんです。でありますから、私は、そういう意味で、自分たちの日本の国家としての足元をしっかり固めようという作業は、これはもちろん政治家が一生懸命やらなければならない仕事ですし、私はそういうことを一生懸命やってきたつもりでありますし、これからもまたやらなければいけないテーマだとは思っていますが、そのことはそのこととして、これは安全保障理事会の常任理事国に入る入らない以前の問題として、国家としてどういう国家を目指すのか、どういう国家の姿を描いて、それに向けて努力をしていくのかと。その際の日本人の言わば一人一人の国民の気持ちのありようはいかにあるべきかということは、それはそれで大変重要な問題としてしっかり取り組まなければならない問題です。しかし、今の日本の現状で、まだその資格あらずとおっしゃったが、私はそんなことはないと。私は、今の日本でも十分に常任理事国入りする資格があるし、また、なることが日本の国益に合致すると考えております。
中国、アメリカにどうアプローチをしていくのかというお問い合わせです。現在の常任理事国が、横田先生のお話のとおり、確かにこのまま今のP5のままではうまく機能してこなくなっているということも、中国もアメリカも認識している。そういう意味で、大きな流れからしての国連改革に彼らも基本的な賛同はあると思います。ただ、他方、現在の常任理事国という特権的な立場にいささかでも揺らぎがあるということについての抵抗感はあるし、特にアメリカの場合は、アメリカ国民が国連というものをどこまで必要なものとしているか。どこまで国連の機能に色々な事柄を委ねたらいいかということについて、必ずしもそこははっきりしない部分があります。むしろ、国連に対するやや冷たい感じというものが米国国民に、あるいは米議会の中にあるということも、これは率直に認めなければならない。それだけに、これは政府対政府、私とライス国務長官だけの話ではなくて、もとよりこれはブッシュさんと小泉さんの話もすでに行われておりますが、議員同士のレベル、あるいは、横田先生にもお力添えをいただいて、学者さん同士のお話、あるいは市民レベルの話、色んなレベルでアメリカなり中国なりに働きかけをしていかないと、なかなか越えるのが難しい問題もあろうかと思います。今一生懸命そういう努力をやっていこうと思っております。そのことは、アメリカのみならず、世界中の国々がもうすでに数十か国、日本の常任理事国入りに賛成を公式に表明してくれていますが、さらに一層努力をしていかなければいけないと思っております。
そんなこともあって、全世界に散っている大使を時折日本に呼んで大使会議というのをやっているのですが、今まではアフリカ大使会議とか中近東大使会議、中南米大使会議と地域ごとに集めていたのですが、今年は5月ごろに、できれば全世界の大使をいっぺんに東京に呼び集めて、そして常任理事国入りに向けて、それぞれの任国において最大限の外交活動をやってくださいというようなことを大号令をかけようかなと思って今計画をしたりもしているところです。まさに日本の外交力が問われる1年だと思っております。
国際司法裁判所のことについては、むしろ横田先生から色々お話しをいただいた方がいいかもしれません。一つの制約と言いますのは、日本が一方的に例えばこれこれの問題について提訴するといっても、今の仕組みでは、相手国もそれに分かったと応じなければ、これは提訴しても効果がないのです。要するに受け付けてくれないという基本的な問題があるものですから、大変深刻な問題になってくると、なかなか両方の当事国が、ではこれはICJにお任せしようということにはなかなかなりづらい面があるということもあって、存在しているのに十分な機能が発揮できているかというと、どうしてもそこには一定の制約がかかっているのかなあという感じはしております。むしろこの辺は、お詳しい横田先生からのコメントをいただければと思っております。
(高島) 横田先生いかがでしょうか。国際司法裁判所の有効性を高める、また、日本はどう使っていくべきかという点で。
(横田) はい。大変鋭いよい質問だと思います。今大臣が答えられましたように、今の国際司法裁判所というのは、紛争の当事国両方が国際司法裁判所へ持っていって、問題を解決しましょうという合意ができない限りは、裁判所は取り上げることができないのです。今の仕組みの中では、あらかじめ紛争が起きたときには、国際司法裁判所で解決しましょうということを約束しておいて、あとになって紛争が起こったときに訴えると、それは取り上げられるという仕組みになっている場合もあります。ところが、日本の例えば領土問題のような問題に関わっている相手国、ロシアとか中国、韓国というのは、日本との関係でそういう約束をしている国ではありませんので、一方的に日本が付託しようと思っても国際司法裁判所は取り上げることができないのです。これは、そういう仕組みだということなのですが、別の観点からいいますと、まさに国際司法裁判所の限界でもあるわけです。こういうところを何とか克服する方法を国際法学者は色々考えています。一つの方法は、国際司法裁判所には勧告的意見を出すという権限があって、この勧告的意見は、当事者が合意していなくても出せるのです。ただし、これは拘束力がありません。拘束力はないのですけれども、やはり権威のある裁判所が法的にこうであるという判断を下すと、それはやはり両当事国に対して重みを持つということは十分にあります。
では、この勧告的意見を出すにはどうしたらいいかということなのですが、紛争が安全保障理事会とか総会に持ち込まれた時に、安全保障理事会や総会が国際司法裁判所に勧告的意見を求める時に初めて国際司法裁判所はそれを取り上げられると、こういうことなのです。
今のところ、日本の領土問題については、国連総会や安全保障理事会に持っていくような状況ではなくて、時間はかかるでしょうが、それぞれの当事国が何とか話し合いで解決しようという努力を続けていますので、その限りにおいては、時間をかけてじっくりとお互いの考え方、立場というものを理解しあいながら解決への道を探るというのがよいのだろうと思いますし、完全ではありませんけれども、何も国際司法裁判所だけではなくて、解決の道を探れるのではないかというのが、私の考えです。
ただし、世界には実際に武力紛争が発生して、たくさんの人が亡くなったり、けがをしたり、建物が破壊されたりという状況があります。こういう問題については、両当事国が国際司法裁判所に訴えるという姿勢を見せなくても、場合によっては、国連総会や安全保障理事会が裁判所へ持っていって法的な論点を明らかにさせるということをすることが解決に大きく貢献するということがあります。
実際皆さんも御存知のとおり、イスラエルとパレスチナは1947年からずっと紛争が続いているわけです。イスラエルは違法に占拠していると言われている地域に入植者が入って、その入植者たちを守るという名目で大きな分離壁を作って、その壁があるために、これまでパレスチナ人が自由に通れたところが通れなくなって生活上非常に不便を感じているという状況が今あります。この問題については、勧告的意見を求めることが行われまして、この分離壁は国際法違反であるという判断が出ました。それによって、イスラエルはすぐにそれを実施したわけではありません。法的拘束力はありませんから。しかし、何とか国際司法裁判所の意見に正面からぶつからないような努力をしようという姿勢は見せていますので、そういう形での役割は果たしているのではないかと思います。
国際社会は、一つの国の中と違いまして、しっかりとした政府があって、そこで裁判が機能しているというのとちょっと違いますので、確かに物足りない点があるかもしれませんけれども、紛争とか戦争とかそういう形ではなくて問題が解決できれば、それが国際社会においてはいちばんよい道だというふうにわたしたちは考えているということです。
(高島) ありがとうございました。
それでは、ここからは、国連改革にとどまらず、日本外交、国際関係、一般的な御質問、御意見を受けたいと思います。
(参加者) 昨日、国会の論争で大臣のお話をだいぶん聞いたのですが、もう1回聞きなおしたいと思います。いわゆる安保の問題ですが、よく敵国条項というのは、国連憲章の中にあると、昨日大臣も発言しておられましたが、その辺がどうも私ははっきり納得できないのです。国連発足が1945年6月ということは、まだ戦争真っ只中ですから、敵国というのは分かるのですが、それが終わって今平和の60年過ぎて、まだ敵国条項というのが世界の憲章の中にあるというのは、どうしても私ども納得ができません。そこでもう一度、安保理に日本がもし加入可能となったときには、その敵国条項というのは当然なくなって加入できるのか。その条項がそのまま置いたままで国連理事国に加盟できるのか。そういう問題がありますので、その辺を分かりやすく、大臣でも横田先生もけっこうですので、御説明をいただきたいと思います。
(参加者) 多少国連に関する質問になってしまうのですが、私は二点ほど質問があります。
テロに関することや、国際情勢とか様々な問題に関する問題で、各国の国内法制定の規準設定という点において、国連というのはすごく重要な役割を果たせるものだと思うのですが、国連と日本外交の役割について、大臣はどのようなことを描かれていますでしょうか。
それともう一点のほうは、日本は常任理事国を目指すにあたって、拒否権の有無というのはあまり重要視されなかったのかどうかということと、大臣は拒否権がないということをどのようにお考えなのか、教えていただきたいと思います。
(参加者) 国連改革について、ちょっとお尋ねしたいのですが、今回の中であまり言われていませんけれども、本来国連改革で最も重要なのは、アメリカの単独行動主義をどうするかという問題であると私は考えています。ですから、憲法改正だとか、経済制裁だとか何とか常任理事国入りなどというものは瑣末な問題だと私は考えますが、では、どのような形で国連改革とアメリカの単独行動主義をやめさせることが、例えば常任理事国入りすればできるのかどうか。それが説明できないと、国際的な理解を得られないと思いますが、どのようにお考えか。
それからもう一点は、横田先生にお尋ねしたいのですが、例えば日本が常任理事国入りをしたとする。そうすると、日米安保との整合性で果たして両立しうるものなのかどうか。両立しなかった場合は、では、どちらを優先させるのかという問題が当然生ずるわけですが、そうした場合、法律的な観点から、どういうふうな対応をすればいいのか。その点、二点について、お尋ねしたいと思います。
(高島) ありがとうございました。それでは、まず、大臣の方から。
(町村) 敵国条項の御質問がありました。現在の国連憲章には、敵、あるいは敵国という言葉が三つの条文にそれぞれ出ております。それは、なぜそうなったかというと、先ほど御指摘のとおり、1945年6月、ドイツとは終戦に至ったけれども、日本はまだ戦っていたという状態なものですから、戦勝国が作っている文章でありますから、当然日本やドイツ、イタリア等々の扱いは、やはり別なのだという発想で、国連憲章の中にはそういうことが書いてある。
例えばどういうことかというと、国連が武力行使をする際に、普通であれば安保理の承認が要りますと。しかし、旧敵国に対してはそれは要りませんと。それはなぜかというと、まだこれらの国と戦っているんですから。これらの国と戦うときに、別に一々国連の承認なんか要らないと。という違いを残した。まさにこれは戦時中に作った国連憲章だからです。さあ、日本は、それから十何年たって入りました。それはすでにあるものとして、「あそこの条項が気に食わないから俺は入らんぞ」というようなことを言えるような日本国ではなかったわけです、国際社会の一員に復帰にするにあたって。そして、1995年だったと思いますが、そこに至って初めて、これはどう見てもおかしいということになったので、この「敵国」という条項は死文化したものとみなおそうという国連の決議までは出たんです。したがって、今国連の加盟国が敵国、すなわち今でも日本は敵国だと思っている国はないと思います。ただ、現実に国連憲章改正の手続きがとられるかというと、そのところだけをもって国連憲章改正手続きというのは、これは日本国憲法の改正手続きが非常に大変であるのと同様に、あるいはもっと国連憲章の改正には大変膨大なエネルギーがいるわけです。したがって、いまだに事実上、死文化されたものですよという宣言は出されているものの、現実の憲章改正は今日に至るまで60年間なされていない。したがって、今回、日本が常任理事国入りすることをはじめとしていくつもの国連憲章が具体的に文章的に書き変えられなければならないわけですが、その際には、当然のこととして、「敵」「敵国」というような文言は当然削除されることになるということであります。そういう意味で、今回の国連改革が最終的に国連憲章改正という具体的な手順に入っていくこと、そして実際に改正するということが大変に重要なことだというふうに考えているわけです。
それから、国連と日本外交。日本は日本外交の中で国連をどう位置づけているのかという、御質問でした。
日本は、大きな柱があります。一つの大きな柱は、国連外交。実際に国連がどれだけの機能を果たしているかどうかは別にして、半ば日本が国際社会に復帰ということは国連に加盟することというような意味で、ややもすると、ナイーブなほど日本人の国連に対するある種のあこがれみたいなものが、今はどうか知りませんが昔はありました。私は初めてアメリカへ留学でニューヨーク市に行ったときに、まず真っ先にどこへ行ったかというと、やっぱり国連ビルです。側に行って、「ああ、これが国連か」。中の見学ツアーみたいなの入りまして、「ああ、ここが国連総会をやる場所なんだ。できれば、そのうちにこんなところで演説してみたいな」と思ったかどうかは別ですが、やはりある種のあこがれを私は国連に対して持っておりました。それは、よく実態は分からないけれども、これが国際社会というものなのだというような印象を国連が与えてくれた。しかし、現実、さっき申し上げたように、国連というものの機能が当初描いたほど十二分に発揮されていたかというと、冷戦時代はそうでもなかったが、しかし、今や本当に国連が機能しなければならない時代がきている。また、国連なしには、先ほどのエイズの問題等々がいちばん分かりやすい例ですけれども、国連が機能を発揮しないと解決できない問題が本当に数多く出てきた。ですから、私は日本外交の中でも、これから国連というものは、ある意味では今まで以上に重要な地位、役割というものを占め、国連というものを重視し、また、国連を、日本の立場からするともっとうまく活用するといったような視点も持ちながらやっていきたいと思っております。
それから拒否権の話です。私は個人的には、現在拒否権を持っている五つの国々と新たに常任理事国入りする国とに拒否権の差があるというのは、個人的にはいかがなものかと思っておりますが、昨年11月に出されましたハイレベル委員会の報告書の中には、新たに加盟する、新たに常任理事国になる国の拒否権は認めないという意味で、常任理事国にも若干の差をつけている。これがハイレベル委員会の報告書提言の中身です。ある意味では、これはとても現実的な提言なのかなと思っております。いずれにしても、拒否権の有無というのは、そこだけを取り上げて論じるのではなくて、トータルの国連改革、トータルの安保理改革の中の一つの要素としての拒否権という位置付けでこれを考えていったらどうなのかなと思います。
よくアメリカの単独行動主義と言います。確かにアメリカは図抜けた世界一の大国であるということは、間違いありません。しかし、そのアメリカも、国連というものが時として目障りな存在のときもあるのかもしれません。しかし、だからといって、ではアメリカが国連を一切無視してすべて単独行動主義でやっているでしょうか。そんなことはありません。実際にアメリカの行動を正当化する国際会議での議論等々の中では、必ず国連決議1441に基づいて、あるいは、それから遡る国連決議に基づいて現在のイラクに対する武力行使を行っています。あるいは、武力行使が終わったあと、現在のイラクの復興というものも、また、これも国連決議に基づいて諸外国がみんな国際社会が協力して、みんなでイラクの復興に手を貸そうではないかということが根拠になってやっています。ことほどさように、やはりアメリカと言えども国連の存在というものを全く無視して、「そんなもの俺と関係はない。俺は好きなように全部一人でやる」、それほど世の中は単純ではありませんし、それほどアメリカがすべてのことを仕切れるものでもありません。もしアメリカが一人で仕切れるのであれば、イラクに対する武力行使のとき、これに対して消極的であった、むしろ反対であったフランス、ドイツ等に対して、あれだけぎりぎりの外交、説得活動をやったでしょうか。やっぱりそれをやったという意味は、国連というものの重要性というもの、国連の持つ権威というものをアメリカだって、それは十二分に認識をしているから、国連安保理の決議というものを重要視しているんだということの表れだと、私はそう考えております。
(高島) 横田先生、日米安保との整合性の部分について。
(横田) これも大変重要な問題ですし、難しい問題なのですが、まず国際法の観点からいいますと、こういうふうな関係になっています。現在の日米安保条約は、第一条で「国際連合憲章に定めるところに従い・・・武力による脅威又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する」としています。したがって、日本は日米安保条約上国連憲章にも縛られ、また、日米安保条約にも縛られるとなっています。ですから、両者が矛盾した場合には、当然国連憲章の方を優先するということになります。
さらに、国連憲章の方にも、「国連憲章とその他の国際条約とが矛盾したときは、国連憲章の規定を優先する」という規定(第103条)が入っています。したがって、日米安全保障条約は、あくまでも国連憲章の枠の中でのみ、その役割・存在が認められると、こういう位置付けになります。
非常に難しい問題は、自衛権の問題なのです。国連憲章51条で、「自衛権の行使の場合には、国連憲章は、それについては例外として認める」としています。したがって、日米安保条約のもとで自衛権を行使した時には、国連憲章のどの条文ともぶつからないという、そういう状況が出てきます。ただし、実は国連憲章の51条は、自衛権について厳しい制限をつけています。それは何かと言いますと、まず第一に、実際に攻撃されたときにしか自衛権を行使してはいけませんよと、こういうことになっています。つまり、相手が攻撃しそうだからというので、あらかじめ予防的に攻撃することは、今の国連憲章のもとでは許されません。したがって、国連憲章のもとで許されませんから、日米安保条約のもとでも許されないという仕組みになります。
それから、仮に攻撃されたので自衛権を行使して反撃したという場合には、それはただちに安全保障理事会に報告することになっています。そして、安全保障理事会がその問題を取り上げたときには、もう自衛権の行使はやめなければいけない、こういうことになっています。
そういう枠を考えますと、自衛権のときにだけは日米安保条約は国連憲章の監視から外れるように見えますが、実はやはり安全保障理事会の監視のもとに置かれるという仕組みになっていますので、国連と日米安保条約との関係は、それほど決定的に両者が対立するという状況になることは想定できないというのが、私の理解です。
(高島) ありがとうございました。
まだもう少し質問をお受けする時間がございますので、国連に限らず、あらゆる問題でお考えをお聞かせいただけたらと思います。
(参加者) 極めて現実的な質問をさせていただきます。
今日の新聞に、ライス国務長官が来日されるということになっていましたが、拉致問題とか牛肉の輸入問題、それについてどういうお考えか、お聞かせください。
(参加者) 二点ほどお伺いしたいのですが、まず、最初の大臣のお話で、常任理事国になると国際貢献がしやすくなるということをお伺いしたのですが、具体的にどのように貢献しやすくなるのかということがよく分かりませんでしたので、御説明いただきたいと思います。
あと二点目なのですが、以前、岩波のブックレットで、60年代から80年代にかけて日本が国連の総会において核軍縮に対する態度を後退させたという一文を読みまして、実際78年に核兵器が現在存在しない国々の領域への核兵器の不配備ということを反対していますし、80年、82年、83年、84年にも次々に反対票を投じていると読みました。平和主義を標榜する日本にとって、このような反対票をなぜ投じたのかということが、どうしても理解できませんので、その点についても御説明いただければと思います。
以上、二点、よろしくお願いいたします。
(参加者) ODAについて伺いたいのですが、開発のところで、0.7%のODAというお話がありました。確かに報告書の中では、常任理事国を目指す先進国は特にそのリーダーの資格として、2015年までに対GNP比0.7%のODAを達成することを目指すべきだという文章があったと思います。それに対して、2000年以降、ODAは減ってきていて、さらに、今経済は悪化しているという報告があります。内閣府が2月16日に発表した中で、2004年の10月から12月のGDP比の実質成長率が低下しているという報告もあります。
大臣は先ほど、その額と率を両方考えて対処していくべきだということをおっしゃっていましたが、具体的にODAを増額していくべきか、減らしていくべきか、どのようにお考えかということを伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
(高島) はい、ありがとうございました。大臣、よろしくお願いします。
(町村) 色々貴重な御意見ありがとうございました。
先般2月19日ワシントンにまいりまして、ライス長官と日米外相会談をやってまいりました。そのときに、拉致の問題も、牛肉の問題も議論いたしております。
拉致については非常に明快でありまして、日米外相共同声明というものを出しまして、もちろん、これは北朝鮮全体の核、あるいはミサイルの問題に関して6者協議に北朝鮮が無条件かつ速やかに復帰すべきであるということを日米共同の意思として先方に伝えると。併せて、拉致の問題についてアメリカ政府は、日本の考え方を十二分に理解をし、日本政府の対応を支持するというようなことでございまして、この拉致問題が国家による犯罪行為であると、人権を侵すという意味でまことに許しがたい行為であるということについて、日米間の認識は完全に共通をしているところでございます。
米国産輸入牛肉再開の問題です。この問題につきましては、今日米間で大変大きな問題となってきているわけです。そもそも日本国内産牛肉のことについて、今食品安全委員会が慎重審議をやっております。慎重審議をやることはいいのですが、ちょっと私にはどうもよく分からないのは、食品安全委員会のプリオン専門調査会というのでしょうか、これが3~4週間に1回しか会議を開いてくれないというところに私は大変不満を持っておりまして、慎重審議はやってくださって結構だし、結論をどうこうしろと言っているわけではない。ただ、これだけ皆さんが多くの関心を持っている問題、難しい問題であるかもしれないけれども、このスピーディに時代がどんどん変わっていくときに、月に一度しか会合をやらないというのは、これはいかがなものかということで、もっとスピーディに審議をしてもらいたいというのがあります。
それと日米の専門家でずっと議論して、去年の10月、21か月未満の若い牛であれば問題ないという専門家どうしの認識の一致ができたのにもかかわらず、日本には別の類の専門家がいて慎重審議をしなければならない。これはなかなかアメリカ人にとってみるとよく分かりにくいのですね。そんなに何種類も専門家がいるのですかと言いたくなるのかもしれません。したがいまして私は、結論をどうこうするつもりはありません。科学的な知見に基づいて議論をし、結論を出すべき性格だと思いますが、スピーディに分かりやすくやってもらいたいということをお願いをしているところであります。
アメリカ側も、見てくださいと、皆さんが危険かもしれないという牛肉をこれだけバリバリ毎日たくさんの、ほぼすべてのアメリカ人が食べて、だれ一人患者さんが出ていないでしょうと。これ以上の安全性の証明はないではないですかということを日本を去られたベーカー大使が私と会うたびに言っておられたのが大変印象的でした。
それから、具体的にどうして国際貢献しやすくなるのか。それはやはりまず第一に、安保理の常任理事国になるということ。今日本は、この1月から非常任理事国に選ばれて2年間活動しているわけですが、やはりまず第一に、そこの議論をされている議論の中身、今まで常任理事国ではないものですから、会議室の外にいてじっと待っていて、会議が終わったところで、関係国のところに行って、「今日はどんな議論でしたか」と一々言わば取材をしないといけない。そうすると、本当に必要な情報が全部それで流れてきているのかよく分からないところがありまして、常任理事国になれば自動的に必要な情報が全部手に入るわけです。議論にも参加できるわけです。そういう中から、日本として、なるほどこういう部分に日本の役割があるんだなぁと、日本はこういうことを期待されているんだなぁ、日本はこういうことをやったほうがいいんだなあ、というより主体的な判断がしやすくなる。今も実はスーダンのPKOという話がありまして、今月中に国連の安保理の決定が下されると思います。これも、今日本は安保の非常任理事国になっているから、色々なスーダンの状況などというものがより詳しく情報として入るようになります。そのスタートの時点からきちんとした情報が入っているということは、色々な政策判断をする際に、まず出発点から非常に重要なポイントではないかと考えているところです。
確かに2015年、0.7%を主要国は目指すべきであるという文章がありました。私も、日本国の財政がこれほど厳しくなければ、明日にでも直ちに0.7%を目指して頑張ると胸を張って大見栄をきりたいところですが、今予算がこれだけ全体厳しい。先ほどお話しがあったように、これだけ国の借金も増えている時に、ODAは例外ですと、本当は私は担当大臣としては言いたい気持ちは山々なのですが、さすがに日本国政府の一員として、そこまで日本国の財政のことを全く無視して言うこともなかなかできないなあという思いもあります。したがって、絶対額はここ何年間か減少しているのですが、たいした話ではないようにお思いになるかもしれませんが、今年は減少率が3%台と一番削減率を小さくしたのです。補正予算や円高の進行と合わせると大体トントンになりましたから、できれば私は来年以降の平成18年度以降、ODA予算は増加をさせていきたいと思っておりまして、それが一気に0.7の目標に具体的な道筋を描けるかどうかは別にして、日本政府全体としては厳しい財政だけれども、何とかこれを増加の方向にもっていくということが、何らかの表現で言えないだろうかということを考えております。イギリスでこの7月に開かれるサミットにおいても、この開発問題が大変大きなテーマになりますし、また、さっき言った9月の国連におけるサミットにおいても、これが大きな議題になります。その時に、日本国政府のきちんとした態度、まじめにODAを一生懸命今までもやってきたし、これからもやっていくんだという姿勢が国際的にも明確なメッセージとして伝えられるように、今政府部内で予算が成立したら、直ちにその議論を始めたいと思っているところでございます。
(高島) 横田先生、コメントおありになりますか。
(横田) この問題は、中身としてはこういうことですね。核保有国でない国、日本もそうですが、そういうところには核保有国は核兵器を配置しない、置かない、ということを国連総会で原則として決めるという決議に対して、日本は本来だったら全面核軍縮を目指す国だから、それに大賛成するはずだったのに、むしろ逆に反対したという、そのことを言っているのだろうと思います。確かに日本が最初に国連に加盟したころの日本の核兵器に対する認識は、どんな国も持ってはいけないということであったと思います。それが、その後、いくら日本が持ってはいけないとはいっても、まずアメリカが核保有し、そしてやがてソ連が核実験に成功して核保有し、そして、イギリス、フランス、やがて中国も核保有国になりました。こういうふうになっていきますと、日本1国で核兵器は持ってはいけないと言っていても、現実にソ連が核兵器を開発し持つこと、あるいは中国が持つこと、イギリス、フランスが持つことを日本がそこへ行って止めるわけにはいかないわけです。そういう現実の中で、しかも60年代から80年代という時代は、ちょうど冷戦の真っ只中であったのです。ここで何が難しいかというと、核兵器をみんなが持たなければ、これはいいのです。しかし一国でも持っていて、しかもその国が脅威になると、今度はその国に核兵器を使わせないようにするためにはこちらも持っておかないと相手が使うだろうという、そういう不信感が出てくるわけですね。したがって、こちらも持つようになります。これが核抑止力という考え方なのですね。60年代から80年代にかけては、結局、核兵器を止めることができない以上、こちらもそれに対抗するために核兵器を開発して持ちますよという国がでてきて、それに対して、それはいけませんとは言えないと、こういう考え方が出てきたということなのです。日本の場合も、アメリカ、ソ連、それだけの時代ですと、まだ核兵器を持っている国がはっきりしていましたし、どことどこが対立しているかもはっきりしていたのですが、その後、イギリス、フランス、中国が核兵器を開発し持つようになってくると、日本だけが全面核軍縮と言っていても、実際は持っている国があって、その持っている国が何らかの意味で日本を対象国にしたとすると、日本でも持っていないと不安ではないかとなります。実は日本の場合は持つのではなくて、アメリカが配備することになるのでしょう。これは、それを認めるというわけではないのですが、ものの考え方として、自分の国の安全を守るためによそからの核攻撃に対抗するためには、こちらも核装備しないといけないという考え方、この考え方に対して反対できないというふうに日本が考えるようになったということは、これは言えると思います。これは核兵器に対する考え方の後退というふうに表現する人たちもいますし、あるいは、状況の変化によって、そういう考え方をとらざるを得なかったんだという言い方もできると思います。
90年代に入って、この問題は、国連の先ほど出ました国際司法裁判所に国連総会が勧告的意見を求めたのです。核兵器の使用は国際法上、合法か違法かということについての意見を求めたのです。これは90年代に入ってからのことですが、国際司法裁判所は、色々な議論を重ねた結果、核兵器を使うと必ず一般市民を巻き添えにしますから、その意味では、一般市民を巻き添えにした攻撃は国際法上許されていませんので、そういう意味で、国際法上許された使い方はできませんということは言ったのですが、しかし、自衛のために核兵器を持っている、あるいは使うということについてまで国際法が禁止しているといえるかというと、国際司法裁判所は、それは分からないという答えを出したのです。つまり、この問題は、国際司法裁判所でも、明快に核兵器を持ってはいけないんだ、使ってはいけないんだ、ということまでは言えなかったという、そういう非常に難しい問題だったということです。
これが、先ほどの質問に対する私の説明であり、答えなのですが、私の個人の意見は、もっとはっきりと核兵器の保有使用は国際法上禁止されているという考えを持っていますので、私は政府の当事者ではありませんから、立場は違いますけれども、私は、核兵器の使用は国際法上禁止されているという考え方を前から持っているということです。
(高島) ありがとうございました。
日本は1994年から毎年国連総会に対して核軍縮を求める決議案を提案して、大多数の国々の賛成を得て、この決議を通しています。日本の核軍縮に対するそうした立場、考え方というのは、国際社会の中でもきちんと認められていますし、実は核を持たない日本が安全保障理事会の常任理事国になるということの意味の大きさというのを認める国も多数あるということを付け加えさせてください。
それでは、時間になりました。大臣から、皆様にお礼を兼ねて一言御挨拶をいただけますでしょうか。
(町村) はい。最後に一点だけ。今、高島さんがよいことを付け加えていただきました。核軍縮についての日本国の姿勢というものは非常に明快であります。常任理事国入りすると、さっき横田先生が冒頭に言われたように、日本はどんどん世界中の色々な武力紛争に自衛隊を出していかなければならなくなるのではないかといったような一部意図的な誤解を含めてそういうことを言う方もいらっしゃいますが、そういうことではない。日本も憲法改正ということがこれから議論されていくわけですが、現在の憲法を前提にしても十二分に日本国は安全保障理事会の常任理事国としての十二分の機能を発揮することができるんだということもはっきりしているということを念のために一つだけ付け加えさせていただきたいと思います。
今日は、大変お忙しいところ、こうやって大勢の皆さんがたにお集まりをいただきまして、ありがとうございます。いつも言われておりますように、外交というものは国民の皆さん方の幅広い理解と御支持がないと、十二分にその機能を発揮することができないわけでありまして、こうやって国連という、あるいは常任理事国入りという、どちらかというと日々の生活には直接関係のないようなテーマでありながら、こうやって大勢の皆さんがたが熱心に御参加をいただきましたこと大変にありがたく心強く、心から感謝しております。ほとんどすべての方がと言っていいのかもしれませんが、日本の常任理事国入りに御賛同いただけたのかなと思っております。ただ、容易なことで実現できる政策課題ではないということも改めて認識を深くいたしているところでありまして、これから大変厳しい道のりだと思いますが、政府全体を挙げて外務省がその先頭になって安保理改革、そして常任理事国入り、さらには開発問題ということについて、これから熱心に力いっぱい取り組んでいこうということでございます。どうぞ、今後とも政府に対し、また外務省に対し、皆様方の御支援と、また、今日手を挙げた方々で発言することができないで、大分御不満の方々もいらっしゃるかもしれませんので、どうぞメールでもお手紙でもファックスでも何でも結構でございますから、御意見、お考えをお寄せください。私も時間があれば、皆さん方からいただいた色んな御意見を、大臣室でしばしば目を通すようにしております。一々全部こまめにお返事をしたいところでありますが、現実時間の制約でそこまでもできないわけですが、皆さん方の御意見を常に私は体しながら、できるだけ皆さんのお気持ちに沿ったような方向でこれからも一生懸命努力してまいることをお約束申し上げます。
今日は、皆さん、ありがとうございました。横田先生、どうもありがとうございました。心から感謝を申し上げます。