世論調査(内閣支持率)関係:外交では「中長期的な国民の利益」を
大臣記者会見
(平成22年11月9日(火曜日):本省会見室)
【記者】報道各社の世論調査で,菅内閣の内閣支持率が3割台前半にまで下落しました。その支持率の低下の理由として,菅内閣の外交に不安があるという声もたくさん国民からは聞かれたのですけれども,大臣のご就任以来,いろいろな発生的な出来事もたくさんあったとは思うのですが,それも含めて,なぜこのように国民が今,外交や内閣のかじ取りに不安を感じているのか。どのようにご自身は分析していらっしゃるか,お聞かせいただけませんでしょうか。
【大臣】1つは尖閣の問題,そして,その政府の解決の在り方というものに納得をされていない国民が多いのではないかと思っております。また,今回のメドヴェージェフ・ロシア大統領の国後訪問というのも多くの国民が憤りを感じているのも事実だと思っております。
そういった状況の中で,もちろん,さまざまなバックグラウンドがあって,それを対症療法的にではなくて,根本的に解決をしていくというのが我々の役割でございますけれども,現状において聞かれれば,国民の意識というものは世論調査に表れるような状況になっているのではないかと,これは謹んで考えなくてはいけないと思っております。
いずれにいたしましても,私(大臣)が外務大臣になって1か月半でありますし,もちろん,さまざまに起きている問題というものについては,しっかりと対応をしていかなくてはいけないと思っておりますが,根本は日本の国益をどう守り,伸ばしていくのかということで,安全保障,大事な国との二国間関係,何よりも国益を増進させるための経済外交。これをしっかりぶれずにやっていく中で,その結果を国民にご判断をいただくということで,危機管理と併せて,そういったロングタームの問題についてもしっかりと足場を固めて,取り組んでまいりたいと考えております。
・・・(中略)・・・
私(大臣)は過去の歴史を見ても,確かにそれは短期的に強硬に発言をする,あるいは強硬な対応をとる,それは国民の理解と関心と,ひょっとすれば支持も得られるかもしれません。しかし,中長期的なタームの中で,いかに日本の外交をマネージメントしていくかということになれば,短期的には物足りないと言われることについてもしっかりと国民に理解を求めながら,外交というのは言えることと言えないこともあります。そういった中で,しかし,中長期的な国民の利益になるようなことをしっかりやっているのだという信念を持って取り組んでいかないと,日本のみならず過去にナショナリズムというものに乗じた政治家が結果としてどういう方向に国を導いたのかという例はたくさんあるわけでありまして,そういう意味では私(大臣)は短期的にはおしかりをいただいたとしても,この国をしっかりと平和で安定し,誇りと尊厳はともに保ちながら,国民の安定した生活に資するような基盤をつくる外交というものを行っていくことが大事なことなのではないかと思っております。
【記者】ということは,今,ご指摘があったように,支持率が下がっている原因の1 つに外交政策があるということがわかっても,大臣としては日本の今の外交政策のスタンス,国民からは短期的な要求という意味では理解されていないかもしれないけれども,それをこの支持率等の反応を見ても変えていくおつもりはないというお考えということでいいでしょうか。
【大臣】すべて,やはり結果が問われるのだろうと思います。例えば一般論で,短期的に何か強い政策に出る,反発をするということについては国民の支持が得られるかもしれませんが,それによって大きく国民の利益が失われることに仮になれば,それは結果として正しい判断をしていなかったということになるわけであります。
難しいのは,国民の誇り,矜持というものは極めて大事にしながらも,それと同時に国力に合った外交というものをしっかり行っていくということ。そういう意味では,中曽根総理が昔仰っていた中曽根四原則,外交四原則,つまりはギャンブルをしてはいけない,国力以上のものをしてはいけない。あるいは内政の延長線上で物事を考えてはいけない。こういった考え方については,私(大臣)は常に頭の中に入れてやっておかなくてはいけないと考えています。