山口壯外務副大臣は9月9日から10日にかけてニュージーランド(オークランド及びクライストチャーチ)を訪問するとともに,太平洋諸島フォーラム(PIF)域外国対話(参考1)に出席したところ,概要は以下のとおりです。
1.狙い
太平洋島嶼地域における日米協力の強化
太平洋島嶼地域における戦略的環境の変化に対応するため,米国がこの地域に対する関与を強化していることを踏まえ,この地域における日米協力の強化に向けハイレベルで意見交換する。
第6回太平洋・島サミットに向けた準備
来年5月に沖縄県で開催する第6回太平洋・島サミット(参考2)に向けた我が国の基本的な考え方を説明するとともに,太平洋島嶼国首脳の関心事項を直接聴取し,サミットに向けた準備を進める。
ニュージーランドとの関係強化
本年はPIF設立40周年にあたり,また9月9日にはラグビーワールドカップ開幕式がオークランドで開催。そのため,本年のPIF関連会合には,潘基文国連事務総長,バローゾEC委員長等,例年よりもハイレベルが参加。この機会に,ニュージーランドを訪問し,ニュージーランドとの関係強化を図る。また,本年2月のニュージーランド南島地震で多くの邦人が犠牲になったことを踏まえ,クライストチャーチで献花を行う。
上記の問題意識から,山口副大臣は現地でナイズ米国務副長官,キャンベル米国務次官補,太平洋島嶼各国首脳,マカリー・ニュージーランド外相,崔天凱中国外交部副部長等とバイ会談等を実施。詳細は以下のとおり。
2 米国(ナイズ米国務副長官,キャンベル米国務次官補それぞれ)との会談
(1)山口副大臣の発言概要
東日本大震災に際する米国の支援に改めて感謝。自分(山口副大臣)は野田総理及び玄葉外務大臣の下,日米関係を更に発展させるために力を尽くす考えであり,緊密に連携していきたい。米国が関与を強化している太平洋島嶼国地域での日米協力も強化していきたい。
(2)米側の発言概要
野田新政権の発足を歓迎するとともに,貴副大臣の就任に祝意。貴副大臣と協力しながら,強固な日米関係を構築していきたい。日本復興のために引き続き協力していきたい。就任直後であるにもかかわらず,貴副大臣がPIF域外国対話に参加されたことを歓迎。太平洋島嶼地域での日米協力も強化したい。
(PIF域外国対話に米国務副長官が参加するのは初めてであり,米国の太平洋島嶼国との関係強化の姿勢が伺われた。)
3 PIF域外国対話
(1)総論
キー・ニュージーランド首相(PIF議長)から,域外国対話に先立って開催されたPIF総会及び首脳リトリートにおける総括として,特に(1)エネルギー効率及び再生可能エネルギー,(2)観光,(3)教育の分野について重点的に取り組んで行きたい旨発言。これに続いて,各国政府代表から,各国の大洋州島嶼国に対する援助実績・計画を中心に発言が行われた。
(2)山口副大臣による発言(英文及び和文仮訳)
- ア 東日本大震災に際して,各国から心温まる支援(参考3)を頂いたことに感謝。東京電力福島第一原発事故の収束に向け,除染措置を含め引き続き様々な措置を講じるとともに,迅速かつ正確な情報共有に努めていく。事故の教訓を共有することで,国際的な原子力安全が向上することを期待。
- イ 我が国は海洋国家として太平洋島嶼国と太平洋を共有。来年5月には沖縄県名護市で第6回太平洋・島サミットを開催。太平洋島嶼国住民の生活向上に向けた節目となるサミットとしたい。次回サミットの共同議長は,クック諸島(我が国が6月に外交関係開設)のプナ首相にお願いしている。太平洋島嶼国との人的交流の強化が重要であり,本年からJETプログラムを太平洋島嶼国に拡大。青年交流促進のため,サミットの前日には高校生サミットの開催を予定。
- ウ 気候変動は太平洋島嶼国にとっては安全保障上の脅威ともいえる深刻な問題。COP17の成功に向けて協力していきたい。第5回太平洋・島サミットでPIFに拠出した68億円規模の太平洋環境共同体(Pacific Environment Community: PEC)基金が着実に実施されていることは喜ばしい。
- エ この地域の平和と繁栄のため,我が国にとしても,フィジーの早期民主化を促していきたい。
4 ニュージーランド訪問
(1)二国間会談(キー首相及びマカリー外相)
山口副大臣は9日にキー首相と短時間懇談するとともに,10日にはマカリー外務大臣とのワーキングランチを実施。二国間関係の強化に向けた意見交換を行うとともに,太平洋島嶼国及びアフガニスタンにおける援助協力を進めていくことで一致。TPP,中東情勢,東アジアの地域構想についても意見交換。また,山口副大臣からシー・シェパード取り締まりのための協力を要請。
(2)クライストチャーチ訪問
10日,山口副大臣は本年2月に発生した大地震の被災地であるクライストチャーチ市を訪問。地元出身のカーター農業大臣とともに,28名の邦人が犠牲になったCTVビルで献花を行った。マカリー外相との会談ではCTVビルの倒壊原因の徹底究明を求めた。
5 その他二国間会談
- (1)プナ・クック首相(次期PIF議長国,第6回太平洋・島サミット共同議長国)
山口副大臣から第6回太平洋・島サミット議長国を要請し,先方はこれを快諾。双方は,次回サミットの成功に向けて協力していくことで一致(なお,我が国は本年6月にクック諸島と外交関係を開設)。
- (2)上記の他に,山口副大臣は崔天凱中国外交部副部長,モリ・ミクロネシア大統領,フィリップ・ソロモン首相と会談するとともに,マルティ・インドネシア外相,閔東石韓国外交通商第2次官,ブラウン外務閣外相等と立ち話を行った。
(参考1)
- 太平洋諸島フォーラムは(PIF: Pacific Islands Forum),政治・経済・安全保障等幅広い分野における共通の関心事項について討議を行う太平洋島嶼国の地域機関。現在,15か国1地域が加盟。
- PIFは,太平洋島嶼地域における地域協力を目的とする対話の場として発展してきており,毎年9月頃にメンバー国首脳による年次総会を開催。
- 1989年以来,PIFは,年次総会後に援助国を中心とする域外国を招き,閣僚級のPIF域外国対話(Post-Forum Dialogue: PFD)を開催。
(参考2)太平洋・島サミット
1997年以降,すべての太平洋島嶼国・地域(13カ国・1地域)の首脳を招き,日本で開催。来年5月25~26日には沖縄県名護市で第6回サミットを開催予定。
(参考3)東日本大震災における太平洋島嶼国からの支援
- 義援金
- (1)パプアニューギニア:1,000万キナ(約3億2,000万円)
- (2)トンガ:20万パアンガ(約900万円)
- (3)サモア:10万米ドル(約800万円)
- (4)ミクロネシア:10万米ドル(約800万円)
- (4)キリバス:5万豪ドル(約430万円)
- (5)ツバル:1万8千豪ドル(約150万円)
- その他支援
- (1)フィジー:被災学生の受け入れ(フィジー国立大学:10名,現地の高校:10名)
- (2)マーシャル:被災地漁民に対し,EEZへの入漁許可証を無償で発給