寄稿・インタビュー
茂木外務大臣によるムウェバントゥ紙、Zambia Daily Mail紙(ザンビア)への寄稿
「共に歩み、共に築く未来」
日本の外務大臣の茂木敏充です。このたび、日本と価値観や原則を共有する重要なパートナーであるザンビアを訪問できることを、心からうれしく思います。日本の外務大臣としては42年ぶりの訪問であり、光栄に感じるとともに、厳しさを増す国際情勢の中で、日本とザンビアの協力の重要性が高まる中、その意義を強く感じています。
さて、ザンビアが独立を果たした1964年、この年、東京では、日本の戦後復興の象徴となる東京オリンピックが開かれました。ザンビアの国旗が国際舞台で初めて掲げられたのは、東京オリンピックの閉会式だったことを、皆様はご存じでしょうか。このエピソードは、日本とザンビアの深い縁を象徴しています。2024年に外交関係開設から60周年を迎えた両国は、強い信頼と協力関係で結ばれています。昨年は、2月のヒチレマ大統領の初訪日に始まり、大阪・関西万博や、日本の横浜で行われた第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)の機会に、多くのザンビアの要人が訪日されました。
日本は、冷戦終結直後の1993年、いち早くアフリカの潜在性と国際社会における重要性に着目し、アフリカ諸国と共に、アフリカ開発会議(TICAD)を立ち上げました。以来、日本は、アフリカのオーナーシップと国際社会とのパートナーシップを基本理念として、アフリカと共に未来を切り開く歩みを続けてきています。
2016年、アフリカで初めて開催されたTICAD6(ケニア・ナイロビ)では、故安倍晋三元総理が、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を提唱しました。これは、「自由」、「開放性」、「多様性」、「包摂性」、「法の支配」といった普遍的価値を基盤に、アジアとアフリカ、太平洋とインド洋を結びつけ、地域全体の安定と繁栄を実現するというビジョンです。現在の高市総理は、「自律性」と「強靱性」をキーワードにこのビジョンを進化させていく旨を表明しています。提唱から10年を迎えた今、国際社会が激動する中にあって、FOIPは、日本とアフリカが進むべき方向を示す重要な羅針盤として、その意義を一層高めています。
日本は、こうしたFOIPのビジョンの下、ザンビアとの間でも、ザンビアの経済発展及び人々のより良い生活実現のために様々な取組を進めてきました。日本からの専門家やボランティア派遣数は3,400人以上にのぼります。近年では、ザンビアの長期国家計画「ビジョン2030」や中期開発計画に基づく取組を後押しするべく、鉱物資源の活用及び多角的かつ強靱な経済成長の促進に向けた支援を行っています。
アフリカ大陸の重要鉱物、石油等の天然資源は、日本を含む国際社会の経済安全保障にとっても不可欠な資源であると同時に、アフリカ自身の持続的成長の鍵となります。銅を始めとする重要鉱物を有するザンビアの存在感はますます大きくなっています。ザンビアの鉱業が、ザンビア国民の皆様の生活を豊かにする形で発展していくために、日本としても官民で協力していきます。
例えば、日本は、鉱物資源の活用に関して、2025年に鉱石分析や研究を支援するための機材整備を決定しました。この協力により、ザンビアの鉱石分析能力の向上及び人材育成の推進が図られ、鉱物資源の探査・採掘に係る投資呼び込みが期待されています。また、資源分野の人材育成を目的とした「資源の絆プログラム」という長期研修制度により、2025年度までに11名のザンビア人専門家が日本で研修を受けました。重金属汚染対策に係る協力も重視しており、アフリカにおける責任ある鉱物資源サプライチェーンの強化に取り組んでいます。
また、鉱業以外の分野でもザンビア経済の多角化と強靭化に向けた取組を行っています。中小企業支援、保健・医療サービスの向上に注力しているほか、教育分野では、2024年から、中等学校に対する科学実験機材の供与や実験室の建設等を支援し、理数科教育の質の向上を図ることで、将来のザンビアを支える理数科分野の人材育成に貢献しています。農業分野でも、農業作物の多様化とその高付加価値化は、ザンビア経済の成長を支える重要な柱であると考えており、2022年から、ザンビア農業研究所(ZARI)に対して、改良型米の種子開発や灌漑施設の整備を支援し、米の生産性向上と食料安全保障の強化を後押ししています。
さらに、ザンビアは、南部アフリカ内陸部における交通の要衝でもあります。日本は、昨年のTICAD 9において、ナカラ回廊開発に向けて包括的な協力を進めて行く旨を表明しました。ザンビア、マラウイからモザンビークのナカラ港を経てインド洋とつながるナカラ回廊の周辺地域において、輸送インフラの整備や産業振興を後押しし、グローバル・サプライチェーンを強靱化していく考えです。ザンビアは、こうした文脈でも、日本にとって重要なパートナーです。
現在、日本の国会では、昨年2月に東京において署名された日・ザンビア投資協定の審議が進んでいます。同協定が発効すれば、日本企業のザンビアへの投資が一層促進され、日本とザンビアが貿易や投資の分野で、更なる関係の発展につながると確信しています。
今、世界は、大きな構造的変化の中にあり、国際秩序が大きく揺らいでいます。こうした中、アフリカ諸国と日本が改めて手と手を取り合い、協力を深化させることの重要性は、かつてなく高まっています。南部アフリカ地域の平和維持や紛争解決に積極的に取り組んできたザンビアの知見が、経済分野に止まらない日本とザンビアの協力の礎となることを期待しています。
次回のTICAD 10はアフリカで開催される予定です。日本は、進化したFOIPの下、ザンビア、そしてアフリカと共に、信頼できるパートナーとして更なる発展の歩みを進めてまいります。


