寄稿・インタビュー

令和7年11月21日

 アフリカ大陸初となる南アフリカでのG20サミットの開催を心からお祝い申し上げます。総理大臣就任後、私の初めてのアフリカ訪問が意義深いものとなることを楽しみにしています。

 日本とアフリカは長年にわたり、友好的なパートナーとして密接な関係を築いてきました。冷戦終結後の 1993 年、日本は世界に先駆けてアフリカの重要性に着目し、アフリカの発展、未来についてアフリカと共に議論し実現していく枠組みとして、Tokyo International Conference on African Development(TICAD)を立ち上げました。以来、日アフリカ関係のプラットフォームとして成長してきたTICADは、本年8月についに9回目を迎えるに至りました。横浜で開催したTICAD 9には、アフリカ各国から数多くの首脳をお迎えし、南アフリカからはラマポーザ大統領に訪日いただきました。

 TICADに通底するテーマは、アフリカ開発におけるアフリカ諸国の「オーナーシップ」と、国際社会による「パートナーシップ」であり、これこそがTICADの独自性を象徴するものと言えます。さらに、アフリカ発の技術やアイディアが、国際社会の課題解決に繋がる事例も出てきています。TICAD 9では、こうしたコンセプトをもう一段階推し進め、「革新的課題解決策の共創(co-creation)」をテーマに掲げました。会議では、信頼できるパートナーである日本とアフリカの互いの経験と知恵を活かして、アフリカの課題、ひいてはグローバルな課題への解決策を共に創るべく幅広い議論が行われ、DXの活用など、多くの革新的アイディアが共有されました。

 こうしたTICAD 9での議論や成果を一過性のものとせず、継続的で、よりグローバルな議論や取り組みにつなげていくことが大事です。日本は、南アフリカが議長を務める今回のG20ヨハネスブルグ・サミットでも、南アフリカと緊密に連携し、アフリカが直面する課題解決に向けて共に取り組んでいく考えです。今回のG20サミットでは、国際経済に加え、議長国南アフリカが優先課題として掲げる防災、債務持続可能性、エネルギー移行、重要鉱物といった課題について首脳間で議論する予定です。これら優先課題のうち、例えば防災については、自然災害が多く世界一の防災大国を目指す日本は、知見や経験を活かして「仙台防災枠組」の実施などの国際協力を主導してきました。とりわけ、アフリカでは、干ばつ対策や災害強靱化のための支援など、ハードとソフトの両面で協力を行ってきました。G20の場でも、日本と南アフリカの長年に亘る協力やTICAD 9の成果も踏まえ、日本として積極的に議論に貢献し、更なる具体的な協力へと結び付けていきたいと考えています。

 今、我々の慣れ親しんだ国際秩序が、世界の様々な場所でかつてない挑戦にさらされています。こうした中、我が国は「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンに則り、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を目指しています。日本にとって南アフリカは、アフリカにおけるとても重要なパートナーです。責任あるプレイヤーとして国際社会に参画するアフリカと共に、責任あるグローバル・ガバナンスの構築を目指したいと考えています。

 両国間の経済関係に目を向けると、日本は南アにとって世界第6位の貿易パートナーであり、今日、約250もの日系企業拠点が南アフリカに置かれています。また、南アフリカはアフリカ大陸と世界との連結性の要となるゲートウェイでもあります。日本の企業は南アフリカと、製造業やエネルギー、重要鉱物や食料・農業等の分野において強い関係を有しており、貿易、投資や雇用を通じて南アフリカの技術革新と経済発展を後押しできるよう、政府としてもJETROの活動などを含め、南アフリカ政府とともにビジネス環境の整備に努めていきたいと考えています。また、南アフリカのエネルギー部門の改革、エネルギー移行を支援していく方針です。先般のTICAD 9で打ち出した「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」の実現に向けても緊密に連携していきたいと思います。

 活発な人的交流も両国の友好関係の基礎となってきました。これまで多くの南アフリカ人が教育・エネルギ-・農業等幅広い分野のJICAの訓練プログラムやJETプログラムに参加しており、学術交流も盛んです。
 また、両国の交流は文化・スポーツ面を通じても輝きを見せています。現在、日本では50人以上の南アフリカ出身のラグビー選手・コーチが活躍してます。先日、日本と南アフリカ間でラグビーの国際親善試合が行われ、在南アフリカ日本大使館主催の試合観戦イベントには多くの政府関係者・スポーツ関係者が参加し、素敵な交流の場になったと聞いています。

 このような国民相互の理解は、二国間の持続的な発展に欠かせないものです。日本では、古くから思いやりや調和という伝統的精神が大切にされてきました。これは、南アフリカの、相互尊重の価値観である Ubuntu の精神とも通じるところがあります。私は、これからも、アフリカそして世界全体に思いやりが溢れ、調和がもたらされるよう、皆様と共に取り組んでいきます。


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