アフリカ
次回TICADに向けたアフリカ駐在大使による提言
平成27年8月1日
I 冒頭
7月28日から31日に開催された平成27年度中東アフリカ大使会議におけるアフリカ駐在大使による自由討論では,2016年にアフリカで開催が予定される次回TICADに向け,日本の独自性を打ち出すとともに,次回TICADが日本とアフリカとのパートナーシップを一層促進するような成果をもたらすために,日本としていかなる取組を強化していくべきかについて議論した。
上記議論を通じ表明された意見を取りまとめ,以下のとおり次回TICADに向けた取組についてのアフリカ駐在大使からの提言とする。
上記議論を通じ表明された意見を取りまとめ,以下のとおり次回TICADに向けた取組についてのアフリカ駐在大使からの提言とする。
II 次回TICADに向けた提言
1 平和と安定
- アフリカの成長の基盤となる「平和と安定」に対する脅威(テロ,感染症等)を低減するための支援の強化。特に,イスラム過激派の勢力拡大を抑えるため,根本原因を取り除く必要がある。この観点から,若者の雇用促進や教育に対する支援,貧困対策の強化が不可欠。
- ソマリア沖やギニア湾での海賊対策を含むアフリカの海上安全保障に向けた日本からの更なる支援に対する期待は大きく,この分野での貢献の拡大。
- PKO訓練センターに対する支援は,アフリカ全体の平和維持能力向上に貢献しており,その継続・拡大。他方,数多くのセンターが類似の取組を行っているのが現状であり,今後,同一域内のセンターの活動については,差別化を図ることも検討。
- エボラ出血熱等の感染症発生・拡大防止の観点からも,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを理念とした各国の保健システムの強化・再構築が重要である。また,感染症拡大の恐れがある場合は国境管理強化が重要であるが,地域統合を阻害しない形での取組が必要。また,これら保健システムの強化や国境管理のため,現地の事情も勘案しつつ,日本企業の優れた技術・機材のアフリカへの供与を政策として推進することも一案。
- テロ対策の一環としてのコミュニティの治安維持・改善のため,日本の交番制度をアフリカに導入することを検討すべし。既に交番の導入経験のあるアジアの国との三角協力の可能性も検討に値する。
2 質の高いインフラの整備,広域開発,人材育成等
- 日本の高い技術力と優位性を活かした「質の高いインフラ」の整備を強化し,アフリカの成長の基盤とするとともに,日本の民間企業のアフリカ進出を促す。同様の観点から,日本が優位性を有する港湾,地熱,電力,水,橋梁といった分野で,引き続き官民連携を強化する。また,これらを具体化・促進し,かつ膨大なインフラ需要に対応するために,サブ・ソブリン向けの円借款等円借款や無償資金協力の制度改善,及び戦略的な技術協力(特定分野への専門家派遣等)も重要。
- モンバサ・北部回廊,ナカラ回廊,西アフリカ地域の広域開発は次回TICADでも重点的に取り組むべし。同時に,中央回廊や南北回廊等,上記3地域でカバーされない周辺国・地域の開発にも配慮が必要。
- 次回TICADがアフリカ開催であることを念頭に,日本の技術力をアフリカに示すようなサイドイベントを開催すべし。
- 日本企業進出に向け,日本側が十分なアセットを有しない国での他国との協力を促進すべし。
- ABEイニシアティブの対象となる分野及び受入れ人数の拡大,JICA研修の民間関係者向け研修拡充,文科省国費留学生制度の弾力的運用等を通じ,日・アフリカ間の経済交流強化を図るとともに,アフリカ開発の基本条件となる人材育成を一層推進すべし。また,育成された人材を域外に流出させないための各種措置(産業振興による人材の受け皿の拡大等)を講ずべし。更に,日・アフリカ間の知的交流の推進も重要。
- 最近のアフリカにおける地域経済統合の進展に鑑み,インフラ整備,OSBP等を通じて地域統合の推進を支援するとともに,日・アフリカ間の貿易関係を一層促進させるための方策について検討すべし。
- SHEP,フード・バリューチェーン形成支援等を通じた,中小農家の所得向上など,引き続きアフリカの主要産業たる農業分野への支援も継続強化すべし。