寄稿・インタビュー
茂木外務大臣による現地紙寄稿(ケニア)
親愛なるケニア国民のみなさん、Jambo!
日本の外務大臣の茂木敏充です。5年ぶりにケニアを訪問するにあたり、私のケニア、そしてアフリカとの友好関係発展への思いをお伝えしたいと思います。
日本とケニアは、1963年のケニアの独立直後に外交関係を樹立しました。そして現在に至るまで、両国の心のこもった交流は様々な分野で素晴らしい花を咲かせています。例えば、ケニア中央医学研究所(KEMRI)と長崎大学による感染症研究、そして、農業や工業に関する教育・研究活動を通じてケニア経済及び地域に貢献するジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)と京都大学及び岡山大学の協力は、その好例です。また、これまでケニアに派遣された日本の専門家はおよそ4,900人となり、日本で研修を受けたケニア人は16,000人を超えています。日本の花屋で人気のバラ生花の多くがケニアから輸入されたものであることを思い、ケニアの人々の勤勉さと日本の協力とが結びつき、その成果が世界中で大きな花を咲かせていることを、とても嬉しく、誇らしく思います。
日本とケニアの貿易・経済関係も大きく進展しています。既に120社を超える日系企業がアフリカでの事業拠点をケニアに置いています。今、更に多くの日系企業がケニアに注目しています。また、モンバサをはじめ、ケニアは輸出入拠点としても重要です。日本は、今後も、モンバサ港やドンゴクンドゥ経済特区、モンバサ・ゲートブリッジの建設をはじめとするモンバサ地域の開発を通じて、ケニア経済の発展を支援していく考えです。
スポーツの世界でも、日本とケニアの交流は着実に進んでいます。昨年は東京で世界陸上が開催され、ケニア人選手が大活躍して、日本中を沸かせました。本年2月には、日本オリンピック委員会(JOC)とケニアオリンピック委員会(NOCK)の間でMOUが署名され、双方の長所を生かし合い、スポーツ交流を発展させるための土台ができました。日本では以前から、ケニアの陸上選手が活躍してきました。今後は、陸上に加えて球技や武道でも二国間のスポーツ交流がますます盛んになることが多いに期待されます。
また、昨年日本で開催された大阪・関西万博には、日本のみならず世界各地から延べ2,900万人を越える人が来場しました。その中で、ケニア館は大変な人気を博し、ケニアの文化や産品の多様な魅力を知る好機となりました。そしてケニアでは、特に若者の間で、音楽、マンガ、映画などの日本のコンテンツが人気と聞きます。日本とケニアが、様々な機会を活用して、心を通わせ、友好関係を深めていくことを期待しています。
世界に目を向ければ、ウクライナ情勢や不安定な中東情勢、日本周辺における力または威圧による一方的な現状変更の試み、北朝鮮による核・ミサイル開発、そして露朝の軍事協力等、国際情勢は一層厳しくなっています。アフリカでも、 依然としてアフリカの角地域、サヘル地域及び大湖地域等において不安定な情勢が続いています。こういった喫緊の課題に対して、我々の「友好関係」はこれまで以上に重要な意味を帯びています。
こうした時代において、日本とアフリカが、改めて手を取り合い、歩みを進める上で、欠かすことのできないビジョンが、2016年にアフリカで初めてアフリカ開発会議(TICAD)が開催されたナイロビで、安倍晋三総理が打ち出した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」です。安倍総理は、「両大陸をつなぐ海を、平和な、ルールの支配する海とするため、アフリカの皆様と一緒に働きたい。それが日本の願いです。」と訴えました。FOIPは、アジアとアフリカ、太平洋とインド洋という「二つの大陸」と「二つの大洋」を、未来の国際社会の平和と繁栄の鍵として位置付け、この地域において自由で開かれた国際秩序を構築していくとの日本の覚悟を示したものです。
FOIPを提唱してから10年が経ち、私たちは、地政学的な競争の激化、経済安全保障の重要性の増加、AI・デジタルなどの加速度的な技術革新とその覇権争いといった、新たな時代の現実に直面しています。「自由」、「開放性」、「多様性」、「包摂性」、「法の支配」といったFOIPが掲げる中核的理念の重要性は揺らがない一方で、同時に、こうした厳しい国際情勢のもとでFOIPを実現していくためには、各国が経済、社会、安全保障等の分野で「自律した、強靱な」存在となることが必要です。日本が、信頼できる対等なパートナーとして、そのための尽力をしていきたいと思います。
これまで日本はケニアのモンバサ港開発等の多様な取組を通じて、FOIPの実現に取り組んできました。こうした考えに基づき、日本は2023年に政府安全保障能力強化支援(OSA)を創設しました。OSAは、アフリカでは既にジブチとの協力を実施しており、今後、ここケニアにも拡大すべく調整を進めています。日本は、FOIPを「進化」させ、ケニアを始め、アフリカとの連携を一層強化していきます。
また、日本は、ナイロビにおける国際機関の役割を重視しています。当地に所在する国連ナイロビ事務所(UNON)は、国連環境計画(UNEP)や国連人間居住計画(UN-Habitat)など多くの国際機関が集積する、グローバル・サウスにおける国際連合の重要な拠点です。日本は昨年設置した在ナイロビ国際機関政府代表部を通じてこれら国際機関と緊密に連携することで、環境保全や都市開発、平和構築といったグローバル課題への対応力を高め、未来志向の国際協力を共に推進していきたいと考えています。
記念すべき10回目を数えるTICADは、再びアフリカで開催される予定です。今回の私の訪問が、TICAD10に向けて、我々の協力を一層深化させる契機となることを期待します。日本とケニア、そして世界のより良い未来のために、二国間の関係に留まらず、TICADの枠組や国際場裏においても、更に連携を深めていきたいと思っています。

