寄稿・インタビュー

(令和3年1月11日付)

令和3年1月11日
はじめに

昨年12月のアフリカ訪問に続き、再びアフリカに戻ってきました。日本の外務大臣が2か月のうちに6か国のアフリカ諸国を訪問することは初めてのことです。今般、日本の外務大臣として10年ぶりとなるセネガル訪問を実現でき、大変嬉しく思います。

日本は、アフリカ諸国とも手を携えながら、ポスト・コロナを見据えたルール作り、秩序作りに、主導的な役割を果たしていく考えです。新型コロナの世界的な感染拡大という未曾有の危機にあるからこそ、今回のアフリカ訪問を通じて、特に次の3つの側面から「包容力と力強さを兼ね備えた外交」をアフリカで実践したいと考えています。

アフリカ開発

第1に、アフリカ開発への協力です。日本は、1993年に世界に先駆けて、アフリカ開発フォーラムであるTICADを立ち上げ、アフリカ諸国自身の「オーナーシップ」と国際社会による「パートナーシップ」を重視したアフリカ支援を積極的に行ってきました。日・セネガル友好の象徴たるセネガル日本職業訓練センターは、日本の協力の強みである人材育成と技術移転の代表例です。

保健・医療分野では、誰でも医療を受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を目指し、アフリカの保健医療システムの構築や人材育成に重点的に取り組んできました。そうした取組は、アフリカの新型コロナへの対応においても、真価を発揮しています。日本は、人間の安全保障の理念に立脚し、UHC達成に向け、アフリカ諸国のコロナ対策を支援していきます。

2022年にはチュニジアでTICAD8が開催予定です。医療・保健体制の強化をはじめとして、新型コロナで浮き彫りとなったアフリカ諸国の様々な課題にも取り組むことを通じ、アフリカ諸国自身が主導する発展を力強く後押ししていきます。

ビジネス

第2に、ビジネスです。日本は、新型コロナで影響を受けたアフリカ経済の回復を後押しするとともに、ポスト・コロナを見据え、日・アフリカ間のビジネス関係を強化していきたいと考えています。

アフリカ経済は、今後力強く伸びていくアフリカの若く豊富な人材や恵まれた天然資源に裏付けられ、極めて高い潜在性を有しています。新型コロナはアフリカを含む世界経済に甚大な影響を及ぼしておりますが、同時に、経済の構造転換を促し、新たな商機を生み出す契機ともなりえます。本年1月に運用開始となったアフリカ大陸自由貿易協定はその触媒ともなり得ましょう。

実際、日本企業はアフリカ大陸に熱い視線を注いでいます。ここセネガルでは、昨年2月、日本政府は多くの日本企業の参加を得て貿易投資ミッションを派遣しました。これを受け、既にセネガルに進出済みの約20の日本企業に加え、新たにこの国でビジネスを始めようとする企業も出てきています。今後とも、日本政府としては、ビジネスに焦点を当てたTICAD7の成果を踏まえ、日本企業のアフリカへの貿易・投資を後押ししていきます。

平和と安定

第3に、平和と安定です。アフリカの一部の地域では、未だ、紛争、政治的混乱、テロ・暴力的過激主義が平和と安定を脅かしているのも事実です。セネガルに繋がるサヘル地域においても、近年、テロの脅威が深刻の度を増しています。

このような中、アフリカ自身が、アフリカ連合の下で「STG(Silencing the Guns)(紛争停止)」を目標に据え、アフリカ主導の平和と安定の取組を進めてきています。セネガルが国連及び地域機関の平和維持活動への参加や「アフリカの平和と安全のためのダカール国際フォーラム」の開催等を通じ大きな役割を果たしていることに敬意を表します。

日本としては、TICAD7で表明した「アフリカの平和と安定に向けた新たなアプローチ」の下、アフリカ諸国自身のオーナーシップを尊重しながら、アフリカ主導の予防・調停・仲介努力や平和維持活動への支援、制度構築・ガバナンス強化支援、地域社会の強靱化や若者の過激化防止に向けた支援を実施してきています。

一層の安定と繁栄をアフリカへ

国際社会の安定と繁栄の鍵は、成長著しいアジアと潜在力溢れるアフリカという二つの大陸の交わりにより生まれるダイナミズムが握っています。日本としては、太平洋とインド洋、アジアとアフリカの交わりを、力や威圧とは無縁で、自由、法の支配、市場経済を重んじる場として育て、豊かにしていきたいと考えています。

このような認識の下、日本としては、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を進めています。この理念の重要性は、世界の成長センターの一つであるアフリカの方々にも共有いただけるものと思います。日本としては、アフリカにおける法の支配に基づく海洋秩序、連結性や経済的パートナーシップの強化を通じた経済的繁栄、さらには、テロ・海賊対策を含めた平和と安定の確保に引き続き取り組んでいきます。このような取組は、日・アフリカ双方に利益をもたらすことになると考えています。

終わりに 日・セネガル関係

このような取組を進めるに当たり、安定した民主主義国であるセネガルは、日本にとって極めて重要なパートナーです。折しも、日・セネガル両国は、昨年、外交関係樹立60年を祝賀しました。今回の私のセネガル訪問を通じ、両国の長年の友好関係を礎として、両国間のパートナーシップを一層強固なものとすることを楽しみにしています。

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