寄稿・インタビュー
コートジボワール訪問に際しての上川外務大臣のフラテルニテ・マタン紙への寄稿
外務大臣に就任して初めてのサブサハラ・アフリカ訪問として、今回コートジボワールを訪問することができ嬉しく思います。
二国間には長い友好の歴史があり、本年は在コートジボワール日本国大使館開館60周年に当たります。また、日本がアフリカや国連等と共催するアフリカ開発会議(TICAD)は昨年30周年を迎えました。本年8月には私が主宰するTICAD閣僚会合が東京で開催され、来年8月にはアビジャンと協力の共同声明を発表している横浜市でTICAD9が開催されます。日本は、両会合を通じて、アフリカの経済成長、未来の主役の若者の育成などにつながる革新的な課題解決策をアフリカ諸国と共創し、世界に展開する機会とすべく、コートジボワールとも議論を深めていきます。
今回の私のコートジボワール訪問には、三つの目的があります。 第一の目的は、経済面で二国間関係の更なる強化につなげることです。コートジボワールは過去10年間でGDPを倍増させ、アフリカで上位の経済成長率を実現し、西アフリカ経済を牽引しています。この10年間で、二国間の経済関係は大きく進展し、地域の物流のハブであるコートジボワールに関心を持つ日本企業は着実に増加しています。2021年には二国間投資協定が発効し、本年2月にはコートジボワールに多くの日本企業が参加するビジネス・ミッションが派遣されました。日本は、こうした前向きな機運を更に高めるべく、よりよいビジネス環境の整備を通じた投資促進のためにコートジボワール政府と更なる連携を深めていきます。例えば、安倍晋三/日本・コートジボワール友好交差点の立体交差の双方向化やアビジャン港穀物バース整備等の協力案件を通じて、コートジボワールの西部アフリカ地域の物流拠点としての役割強化に引き続き貢献していきます。私の訪問が、より多くの日本企業にコートジボワールの魅力を伝える機会になることを願っています。
第二の目的は、コートジボワールを始めとするギニア湾沿岸諸国の政治的・経済的な安定を後押しすることです。岸田総理大臣が昨年5月のアフリカ訪問中に言及したとおり、日本はサヘル及びギニア湾沿岸諸国の平和と安定を重視しています。また、自由で開かれた海洋を実現するために、ギニア湾における海洋安全保障も重要です。サヘル地域との物流のハブであるコートジボワールの果たしうる役割に期待しています。日本は、海上人材育成の中核拠点であるアビジャン海洋科学技術学校(ARSTM)への機材供与をおこなってきた他、北部地域の脆弱性克服や地域間格差の是正のため、国境管理、防災対策能力強化、給水・教育・保健等のインフラ改善といった幅広い協力を実施しています。西アフリカの平和と安定に向け、コートジボワールと手を取り合って、建国の父であるウフエ=ボワニ初代大統領が遺した「平和は空虚な言葉ではなく、行動である」という言葉を実践していきます。
第三の目的は、信頼できるパートナーであるコートジボワールとアフリカやグローバルな課題での連携強化を確認することです。私は外務大臣就任以来、女性・平和・安全保障(WPS)を主要外交政策の一つとして力強く推進しています。WPSは、紛争下における女性など脆弱な立場の人々の「保護」に取り組みつつ、女性自身が指導的立場で紛争の「予防」や「人道・復興支援」に「参画」することで、より持続可能な平和に近づくことができるとの考え方で、国連安保理決議第1325号において初めてその重要性が認識されました。その視点から、今回の訪問では、北部の難民及び難民受入れ家庭の女性及び少女に対する支援プロジェクトを発表します。WPS関する行動計画をアフリカで最初に策定したコートジボワールとは、この分野での協力を強化できると確信しています。また、日本は長年医療施設整備や人材育成によって母子保健改善に貢献してきました。日本がその建設に協力し2023年に完成したココディ大学病院新母子保健棟はその最近の一例です。世界が分断と対立を深める中、国際協調を重視するコートジボワールとは民主主義、法の支配、WPSを含む平和と安定、保健等の分野でパートナーシップを深め、両国の協力の経験をアフリカ内及びグローバルな課題解決につなげていきたいと思います。
今回の私の訪問が、皆様が日本をより身近に感じる契機になることを期待します。 昨年、フェリックス・ウフエ=ボワニ大学内に、コートジボワール初の日本語教育・日本研究振興センターが開設されましたので、是非足を運んでみて下さい。 最後に、私は日本で「サッカー王国」と呼ばれる静岡県出身ですので、本年コートジボワールがホストしたアフリカ・ネイションズ・カップ(CAN)において、見事優勝されたことに祝意を述べさせてください。この歴史的な大会の運営の一部に、日本は「CAN ZERO WASTE」キャンペーンを通じて、貢献できました。引き続き様々なレベルでの交流や、TICADプロセスを通じて、官民双方の関係が強化され、二国間関係を新たな高みに押し上げられることを期待します。