ASEAN(東南アジア諸国連合)
第28回 日ASEAN首脳会議
令和7年10月26日
(写真提供:内閣広報室)
(写真提供:内閣広報室)
(写真提供:内閣広報室)
現地時間10月26日午後4時10分(日本時間同日午後5時10分)から約65分間、マレーシアの首都クアラルンプールにて、第28回日ASEAN首脳会議が開催され、高市早苗内閣総理大臣が出席したところ、概要は以下のとおりです。
1 日・ASEAN協力
- 冒頭、議長であるアンワル・イブラヒム・マレーシア首相(Dato' Seri Anwar bin Ibrahim, Prime Minister of Malaysia)の開会発言がありました。高市総理大臣は、冒頭、タイのシリキット王太后陛下の崩御の報を受け、哀悼の意を表しました。それに続き、アンワル首相とマレーシア政府の議長国としての尽力と温かい歓迎、さらにシンガポールのウォン首相の対日調整国としての協力に謝意を表した上で、概要以下のとおり述べました。
- 東ティモールのASEAN正式加盟について、グスマン首相にお祝い申し上げる。
- 総理大臣就任後、初の外国訪問で、ASEAN首脳とお会いでき光栄。日本とASEANは、長きにわたり幅広い分野で協力を積み重ね、「心と心」の繋がる「信頼のパートナー」として関係を構築してきた。
- 日本は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を掲げ、FOIPと本質的な原則を共有する「インド太平洋ASEANアウトルック(AOIP)」を一貫して支持している。本26日、FOIPとAOIPの相乗効果と更なる協力の促進を確認する共同声明をASEAN首脳と採択することは大変喜ばしい。
- 来年は2016年に安倍総理(当時)がFOIPを提唱してからちょうど10年に当たる。この機会を捉え、FOIPを改めて日本外交の柱と位置付け、時代の変化に合わせて進化させていく。その中でAOIPとの連携をより一層強化し、日本とASEANが共に強く、豊かになるための協力を進めていきたい。
- 次に高市総理大臣は、2023年の日本ASEAN友好協力50周年の共同ビジョン声明で打ち出した三本柱に沿った協力の進展を以下のとおりASEAN首脳と共有しました。
<平和と安定のためのパートナー>- 政府開発援助(ODA)を通じてASEANの海洋安全保障の強化を後押ししてきた。
- 政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じた協力を一部の国と始めており、他のASEAN諸国にも拡大し、海洋安全保障に加え、災害対処等の分野の協力も力強く推進する。
- 日ASEANサイバーセキュリティ政策会議や日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センター(AJCCBC)を通じた取組、組織的詐欺を含む越境犯罪対策に関する協力も強化していく。
- AIを含むデジタル、脱炭素化や持続可能な農林水産業含むグリーン、自動車分野含むサプライチェーン強靱化、連結性、地域金融協力をはじめ、幅広い分野で協力を強化していく。
- 日本は新たに「日ASEAN・AI共創イニシアティブ」の立ち上げを提案する。モデル開発、人材育成、ソリューションの共創などを通じ、安全、安心で信頼できるAIエコシステムを共に構築していきたい。
- AI、量子、半導体等の最先端分野で、国際共同研究や研究者の交流を強化していく。
- 頻繁化、激甚化する災害対応や人道支援のため、引き続きASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)の活動や人材育成を支援していく。また、ASEAN感染症対策センター(ACPHEED)の設立と能力強化を支援するため、専門家を派遣している。
<世代を超えた心と心のパートナー>- 約3千名の実績を持つ日本語パートナーズ(日本語補助教員)派遣や、双方向の知的・文化交流事業から成る文化のWA(「文化のWAプロジェクト」とその後継である「次世代共創パートナーシップ -文化のWA2.0-」)を着実かつ効果的に実施する。
- 来年度、50回を迎える東南アジア青年の船やJENESYS等の事業による青年交流、元日本留学生会による留学生交流も活発に行われている。
- 日ASEAN統合基金(JAIF)でASEAN事務局に若手行政官を派遣するアタッチメント・プログラムは、今年、東ティモールからの参加者の受け入れを開始した。また、同プログラム修了生を対象に日本の政策研究大学院大学(GRIPS)への留学を支援する事業も開始している。
- ASEAN各国と緊密に連携し、これまでの日ASEAN協力を一層発展させ、日本とASEANが共に強く、豊かになるための取組を進めていく。そして、ASEANと共に、インド太平洋地域の平和、安定、繁栄を守り抜いていきたい。
- ASEAN各国からは、高市総理大臣の就任への祝意や日ASEAN首脳会議出席への歓迎が相次いで示されました。
また、幅広い分野での日本の協力を高く評価する発言がありました。特に「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」に対する日本の支持と協力を高く評価し、今次首脳会議での「AOIPの更なる推進と実施に関する日ASEAN首脳共同声明」の採択を歓迎する発言がありました。
さらに、デジタル、グリーンといった新たな分野を含む日本との協力強化や日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)等を通じた経済連携の推進への高い期待が表明されました。高市総理大臣が提案した「日ASEAN・AI共創イニシアチブ」の立ち上げについても歓迎の意が示されました。
加えて、文化のWA、JENESYS、東南アジア青年の船など、文化交流、青年交流、教育、科学技術に関する日本の協力への高い評価や期待が示されました。 - ASEAN首脳からの発言を受けて、高市総理大臣から、ASEANのデジタルやグリーン等への関心を考慮しつつ、日ASEAN経済関係強化のためのワーキンググループを立ち上げ、幅広い方策について議論することを提案しました。
2 地域・国際情勢
- 南シナ海情勢への懸念、国連海洋法条約に基づく紛争の平和的解決の重要性、また、国連安保理決議に従った北朝鮮の非核化や拉致問題の解決の重要性、日本のミャンマーへの人道支援に対する評価について言及がありました。
- これに対し、高市総理大臣からは、概要以下のとおり述べました。
- 総論
- 現在、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が挑戦にさらされ、インド太平洋地域においても、安全保障環境は益々厳しくなっている。
- 世界のどこであれ、力又は威圧による一方的な現状変更の試みを許容してはならない。
- 東シナ海、南シナ海、台湾
- 東シナ海では、日本の主権を侵害する活動や挑発的な軍事活動が継続・強化されている。南シナ海でも軍事化や威圧的な活動が継続・強化されており、深刻に懸念している。
- 国連海洋法条約に基づかない不当な海洋権益の主張や海洋活動は認められない。日本は一貫して海洋における法の支配を支持しており、国際法に基づく紛争の平和的解決の重要性を改めて強調する。
- 台湾海峡の平和と安定も、地域の安全保障に直結する重要な問題である。
- 北朝鮮
- 北朝鮮は、10月22日にも弾道ミサイルを発射したが、暗号資産窃取も資金源に核・ミサイル能力を着実に向上させ、露朝軍事協力を通じ実戦経験を積んでいる。地域の緊張を高める行為を深刻に懸念している。
- 国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化が重要である。決議の完全な履行を始め、連携して対応していくことを改めて呼びかける。
- また、北朝鮮による拉致問題の即時解決は急務である。引き続き各国の理解と協力をお願いする。
- ミャンマー
- 日本はミャンマー情勢を深刻に懸念している。ミャンマー国軍に対し、暴力の即時停止や政治的対話の進展を強く求める。
- 中東情勢
- 中東地域の平和と安定は、日本にとっても極めて重要である。ガザの停戦・人質解放合意の誠実かつ着実な履行を、全ての当事者に強く求める。日本として、パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)の枠組みを活用してASEANとも連携しながら、人道状況改善や早期復旧・復興、そして二国家解決の実現に向け、積極的な役割を果たしていく。
- ロシアによるウクライナ侵略
- ロシアによるウクライナ侵略は、重大な国際法違反である。各国の外交努力が国際社会の結束の下、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現に繋がることが重要である。
- 総論
3 閉会発言
閉会にあたり、高市総理大臣は、ASEAN首脳の温かい歓迎に改めて謝意を表した上で、概要以下のとおり述べました。
- ASEAN各国から日本との協力強化に対する熱意ある発言を伺い、関係強化に向けた決意を新たにした。
- 日本はASEAN共同体ビジョン2045に基づく統合を後押しすると共に、AOIPを主流化するというASEANの努力を今後も後押ししていく。
- また、今月閉幕した大阪・関西万博には、ASEANからも多くの方々に訪問いただき、万博を通じ、各国との友好が深まり、大きな成功を収めたことにつき、改めてASEAN各国と事務局の積極的な参画に感謝申し上げる。
- 今後とも、各国首脳と緊密に協力し、二国間関係と日ASEAN関係の双方を強化していく。そして、「信頼のパートナー」として、「自由で開かれたインド太平洋」と、平和で安定し、繁栄した未来を次世代に繋いでいきたい。


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