ASEAN(東南アジア諸国連合)
ASEANビジネス投資サミットにおける安倍総理大臣スピーチ
(平成28年9月7日 於:ビエンチャン)
平成28年9月7日

(写真提供:内閣広報室)
(はじめに)
ウデット議長、ご列席の皆様、
本日は、ラオス、そしてアセアンの経済を牽引するビジネス界の皆様にお話しする機会をいただき、大変光栄です。
1965年12月、青年海外協力隊の初代隊員5名が、ラオスに向けて飛び立ちました。 その一人の星野昌子(ほしの・まさこ)さんは、ラオスで日本語教師として活動しました。
志の高い生徒たちから広がる人脈と交流、 男女の別なく平等に支え合うラオス人家庭でのホームステイ生活。星野さんは、「ラオスから日本が学ぶべきこともたくさんある」と痛感したそうです。協力隊の任期終了後も、しばらくの間ラオスに残られました。
以来50年余り、我が国は、世界88か国に約4万人の青年海外協力隊を派遣しています。今も、世界中で、現地の人々に溶け込んで生活し、一緒に考えながら、協力を続けている日本人がいます。
(産業人材育成)
日本は、これまで55年以上にわたり、アセアンを中心とする世界各地で産業人材を育成してきました。累計で約38万人、その半分はアセアンです。
タイでは、日本のものづくり技術の研修を受けた経験者の有志が、その内容をタイの人々に教える学校を設立しました。「泰日 工業大学」というその学校を2013年1月に訪問した時、繁栄の象徴としてジャックフルーツの木を植えました。
植えた木が成長して、繰り返し実をつけるように、日本の協力は、一回で終わりません。そこからどんどん輪が広がっていきます。
去年、クアラルンプールで、私は、アセアンの20程度の大学において、日本企業と連携して、産業人材を育成する講座を新設すると、お約束しました。
ラオスでも、この約束を着実に実行しつつあります。ラオスは、陸の架け橋です。ラオス国家大学やサワンナケート大学にご協力いただき、地元の学生を対象に、日本企業の物流管理を学ぶ講座を来年春に開設します。
きめ細かな物流管理のノウハウ。それを知識として覚えるだけなく、一緒に考えることで、それぞれの現場で「カイゼン」を重ねる力を身につけていただきたい。この講座に込められた願いです。
ここで学んだ人材には、ラオスに物流拠点を持つ日本企業で即戦力として活躍していただき、やがては、現地法人の経営を担っていただきたい。そして、さらには、ラオスの産業発展を牽引するリーダーになっていただきたいと思います。
(アセアン統合の一層の深化)
ラオスは、隣国の物資の往来で発展するだけではなく、ラオスで作ったものを、付加価値を高めて輸出することで、さらに飛躍することができます。
ラオスの古都ルアンパバーン。世界文化遺産を見るために毎年多くの観光客が訪れます。朝のプーシーマーケットには、近くで採れた新鮮な野菜や果物が並んでいます。この野菜や果物を、鮮度を保ったままアセアン6億人のマーケットに届けることはできないか。
これを実現するのは、人材に加え、産地と市場を結ぶ交通インフラ、そして、各種貿易手続きの透明化と円滑化です。
ここで期待されるのがAEC、アセアン経済共同体です。関税の撤廃に加え、通関手続きのシングルウィンドウ化が進められています。
AECの取組を様々な国内規制の改革に広げていくことが、次の課題です。ERIAには、非関税措置の種類ごとの貿易制限効果を定量化し、優先課題を特定していただきたいと思います。
(自由貿易の推進)
杭州で開かれたG20では、世界経済の不透明感が増していく中で、持続的な成長を実現するために、保護主義に陥ることなく、自由で開かれた貿易を推進していくことで、各国首脳が一致しました。
日本は、そうした世界の中で、自由で公正な経済圏を広げていく。そのことを力強くリードしていく決意であります。
特に、TPPは、成長戦略の鍵です。政治的困難を乗り越えて合意したTPPを停滞させてはなりません。できるだけ早く国内で承認を得て、早期の発効に弾みをつける。日本は、全力で取り組みます。
TPPはアセアンを分断するものではありません。用意のできた国から順次参加していただける枠組みです。日本は、TPPに参加を希望するアセアンの国々がそれを果たせるよう、後押ししていきます。
同時に、RCEPについても、質の高いものとなるよう、しっかり進めていきます。
(日アセアン協力の理念)
日本は、アセアンとの協力の歴史の中で多くを学び、今日の形を作り上げてきました。そこには、日本の対外協力のモデルとなる、2つの特長があると思います。
第1に、「開かれた(open and inclusive)協力」です。日本とアセアンのみならず、世界が参加し、恩恵を受けることができる。たとえば、ミャンマーのティラワ経済特区。日本とミャンマーの協力のシンボルとも言うべきプロジェクトですが、日本企業は入居企業の約半数で、アセアン以外の企業も多数立地しています。
第2に、「人を大切にする協力」です。その国の人々に幸せになっていただきたい。そこでは、政府だけでなく、ビジネスの交流に重点があります。なぜなら、日本企業の仕事は、質にこだわり、人を大切にするからです。アセアンの地場企業や消費者の声を聞き、長い目で見て現地に根を張り、共に考え、共に歩みます。
アセアンの皆様の生活が豊かになっていく。そんな協力を目指しています。
アセアンの至るところで、ラオスをはじめ各地の新鮮な野菜や果物が当たり前のように行き来する。
日本、そして世界中から今よりもっと投資が集まり、ますます経済発展していく。
そんな未来に向けて、共に歩んでまいりましょう。ありがとうございました。
ウデット議長、ご列席の皆様、
本日は、ラオス、そしてアセアンの経済を牽引するビジネス界の皆様にお話しする機会をいただき、大変光栄です。
1965年12月、青年海外協力隊の初代隊員5名が、ラオスに向けて飛び立ちました。 その一人の星野昌子(ほしの・まさこ)さんは、ラオスで日本語教師として活動しました。
志の高い生徒たちから広がる人脈と交流、 男女の別なく平等に支え合うラオス人家庭でのホームステイ生活。星野さんは、「ラオスから日本が学ぶべきこともたくさんある」と痛感したそうです。協力隊の任期終了後も、しばらくの間ラオスに残られました。
以来50年余り、我が国は、世界88か国に約4万人の青年海外協力隊を派遣しています。今も、世界中で、現地の人々に溶け込んで生活し、一緒に考えながら、協力を続けている日本人がいます。
(産業人材育成)
日本は、これまで55年以上にわたり、アセアンを中心とする世界各地で産業人材を育成してきました。累計で約38万人、その半分はアセアンです。
タイでは、日本のものづくり技術の研修を受けた経験者の有志が、その内容をタイの人々に教える学校を設立しました。「泰日 工業大学」というその学校を2013年1月に訪問した時、繁栄の象徴としてジャックフルーツの木を植えました。
植えた木が成長して、繰り返し実をつけるように、日本の協力は、一回で終わりません。そこからどんどん輪が広がっていきます。
去年、クアラルンプールで、私は、アセアンの20程度の大学において、日本企業と連携して、産業人材を育成する講座を新設すると、お約束しました。
ラオスでも、この約束を着実に実行しつつあります。ラオスは、陸の架け橋です。ラオス国家大学やサワンナケート大学にご協力いただき、地元の学生を対象に、日本企業の物流管理を学ぶ講座を来年春に開設します。
きめ細かな物流管理のノウハウ。それを知識として覚えるだけなく、一緒に考えることで、それぞれの現場で「カイゼン」を重ねる力を身につけていただきたい。この講座に込められた願いです。
ここで学んだ人材には、ラオスに物流拠点を持つ日本企業で即戦力として活躍していただき、やがては、現地法人の経営を担っていただきたい。そして、さらには、ラオスの産業発展を牽引するリーダーになっていただきたいと思います。
(アセアン統合の一層の深化)
ラオスは、隣国の物資の往来で発展するだけではなく、ラオスで作ったものを、付加価値を高めて輸出することで、さらに飛躍することができます。
ラオスの古都ルアンパバーン。世界文化遺産を見るために毎年多くの観光客が訪れます。朝のプーシーマーケットには、近くで採れた新鮮な野菜や果物が並んでいます。この野菜や果物を、鮮度を保ったままアセアン6億人のマーケットに届けることはできないか。
これを実現するのは、人材に加え、産地と市場を結ぶ交通インフラ、そして、各種貿易手続きの透明化と円滑化です。
ここで期待されるのがAEC、アセアン経済共同体です。関税の撤廃に加え、通関手続きのシングルウィンドウ化が進められています。
AECの取組を様々な国内規制の改革に広げていくことが、次の課題です。ERIAには、非関税措置の種類ごとの貿易制限効果を定量化し、優先課題を特定していただきたいと思います。
(自由貿易の推進)
杭州で開かれたG20では、世界経済の不透明感が増していく中で、持続的な成長を実現するために、保護主義に陥ることなく、自由で開かれた貿易を推進していくことで、各国首脳が一致しました。
日本は、そうした世界の中で、自由で公正な経済圏を広げていく。そのことを力強くリードしていく決意であります。
特に、TPPは、成長戦略の鍵です。政治的困難を乗り越えて合意したTPPを停滞させてはなりません。できるだけ早く国内で承認を得て、早期の発効に弾みをつける。日本は、全力で取り組みます。
TPPはアセアンを分断するものではありません。用意のできた国から順次参加していただける枠組みです。日本は、TPPに参加を希望するアセアンの国々がそれを果たせるよう、後押ししていきます。
同時に、RCEPについても、質の高いものとなるよう、しっかり進めていきます。
(日アセアン協力の理念)
日本は、アセアンとの協力の歴史の中で多くを学び、今日の形を作り上げてきました。そこには、日本の対外協力のモデルとなる、2つの特長があると思います。
第1に、「開かれた(open and inclusive)協力」です。日本とアセアンのみならず、世界が参加し、恩恵を受けることができる。たとえば、ミャンマーのティラワ経済特区。日本とミャンマーの協力のシンボルとも言うべきプロジェクトですが、日本企業は入居企業の約半数で、アセアン以外の企業も多数立地しています。
第2に、「人を大切にする協力」です。その国の人々に幸せになっていただきたい。そこでは、政府だけでなく、ビジネスの交流に重点があります。なぜなら、日本企業の仕事は、質にこだわり、人を大切にするからです。アセアンの地場企業や消費者の声を聞き、長い目で見て現地に根を張り、共に考え、共に歩みます。
アセアンの皆様の生活が豊かになっていく。そんな協力を目指しています。
アセアンの至るところで、ラオスをはじめ各地の新鮮な野菜や果物が当たり前のように行き来する。
日本、そして世界中から今よりもっと投資が集まり、ますます経済発展していく。
そんな未来に向けて、共に歩んでまいりましょう。ありがとうございました。