アジア

平成27年6月23日
アジアの平和構築と国民和解,民主化に関する
ハイレベル・セミナーでの岸田外務大臣の基調演説
アジアの平和構築と国民和解,民主化に関する
ハイレベル・セミナーでの岸田外務大臣の基調演説

 6月20日(土曜日),東京・青山の国連大学において,「アジアの平和構築と国民和解,民主化に関するハイレベル・セミナー」が開催された(外務省が主催。NHK及び読売新聞社が後援。)。
 このセミナーは,昨年11月の東アジア・サミットの際に安倍総理から開催の意向を表明していたものであり,明石康スリランカ平和構築及び復旧・復興担当日本政府代表が全体議長を務め,岸田外務大臣が基調講演を行い,ラモス=ホルタ東ティモール前大統領,サマラウィーラ・スリランカ外相,ムラド・モロ・イスラム解放戦線議長等,アジア諸国の平和構築,国民和解,民主化にこれまで携わってきた国内外のリーダー,政府関係者,国際機関関係者,有識者,専門家等が幅広く参加して行われた。各セッションの概要は以下のとおり(プログラム:日本語(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)別ウィンドウで開く)。

1 スピーチ・セッション

  • (1)岸田大臣が「アジアと共に歩む平和国家」と題する基調講演(日本語英語)を行った。講演の中で,岸田大臣は,日本が戦後,平和国家として,3つの理念(ア 「現場」と「人」の重視,イ 経済開発の重視,ウ 多様性に対する寛容)に基づきアジア各地で平和構築を支援してきたことを説明した。その上で,今後とも平和構築に一層積極的に取り組んでいくために,アジアの平和構築,国民和解,民主化への貢献を「岸田外交」の新たな柱に据えることを表明した。
  • (2)ラモス=ホルタ前東ティモール大統領が講演を行い,国連平和活動に関する事務総長ハイレベル・パネルの報告書について紹介するとともに,東ティモールにおける経験を踏まえ,国家指導者の和平達成へのコミットメントの重要性を指摘した。
  • (3)サマラウィーラ・スリランカ外務大臣が講演し,スリランカにおける近年の変化及び現在の改革について説明するとともに,最も困難な時期を含め日本が支援を継続してきたことに対する謝意及び国民和解促進等のための日本とのパートナーシップ強化への期待を表明した。
  • (4)ムラド・モロ・イスラム解放戦線(MILF)議長が講演し,ミンダナオ和平及びバンサモロ開発に対する日本の支援への感謝を表明し,また,開発や投資を通じた雇用の創出によりバンサモロの人々の生活を改善することが,和平にとって不可欠である旨述べた。
  • (5)笹川陽平ミャンマー国民和解担当日本政府代表が講演を行い,日本財団が1980年代からミャンマーに対する人道支援を行ってきていることを紹介するとともに,第三者には紛争当事者を交渉のテーブルに着くよう説得する役割があること,国民和解の過程において無辜の人々が無視されてはならないこと,日本はミャンマー支援を継続していくことを述べた。

2 対話セッション

 マローン国連大学学長が議長を務め,スリン前ASEAN事務総長,田中明彦JICA理事長,ヘイザー元東ティモール担当国連事務総長特別顧問,白石隆政策研究大学院大学学長及び山中燁子平和構築対外発信特別大使の参加を得て,紛争解決や紛争後の復興開発を含む平和構築の様々な側面について活発な議論が行われた。議論の中で,すべての紛争が異なる背景を持つため,それぞれの紛争ごとに解決策が異なること,人々が将来に対して前向きな期待を持つことが重要であること,治安や生活手段等,人々のニーズを満たすことのできる正当な政府の存在が不可欠であること,紛争当事者間の信頼構築のため,選挙制度等の政治制度を慎重に設計することの必要性,紛争当事者を紛争後の復興開発を担う人材として訓練する必要があること,平和構築人材育成の重要性等について指摘があった。

3 パネル・ディスカッション

(1)パネル・ディスカッション1:「平和の定着と経済社会開発(政治・経済的側面)」

 星野俊也大阪大学副学長がモデレーターを務め,平和構築において,少数派を排除せず,多様性を尊重して全ての当事者の関与を得て政治プロセスを進めることの重要性,政治指導者のコミットメントや妥協の重要性,政治プロセスをより包摂的なものにするための経済開発や人材開発の重要性,地域及び国連を含む国際社会が果たすべき役割などについて議論が行われた。

(2)パネル・ディスカッション2:「多様性の中の調和・穏健主義(社会・文化的側面)

 フォン・アインジーデル国連大学政策研究センター所長がモデレーターを務め,各国の様々な事例を踏まえつつ,平和構築の過程における多様性の擁護や穏健主義の重要性,またそれらを実現するための諸課題,メディアの果たすべき役割等について議論が行われた。

(3)パネル・ディスカッション3:「平和構築と女性・子供」

 弓削昭子法政大学教授がモデレーターを務め議論を行い,この中でパネリストから,紛争中及び紛争後における女性や子供の権利が不釣り合いに侵害される傾向にあること,女性や子供は平和構築プロセスにおいて脆弱な存在ではなく重要な貢献者となり得る等の認識が示されたほか,紛争後の,子供や若者の教育の重要性,女性・子供の問題への男性の関与の必要性等が強調された。

4 閉会セッション

 パネル・ディスカッションのモデレーターから,各パネルにおける議論についての報告が行われた。これを受けて明石議長がセミナ-における議論を総括する締めくくり発言を行った後,最終文書(日本語英語)が承認され閉幕した。



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