中華人民共和国

令和元年12月25日
(写真1)李克強国務院総理との日中首脳会談の様子1(写真提供:内閣広報室) 李克強国務院総理との日中首脳会談
(写真提供:内閣広報室)

 日中韓サミットへ出席するため中国・成都を出張中の安倍晋三内閣総理大臣は,現地時間12月25日,午前10時頃(日本時間午前11時頃)から,中国の李克強(り・こくきょう)国務院総理との間で,日中首脳会談(約50分間,同時通訳)及び昼食会(約55分,逐次通訳)を実施したところ,概要以下のとおり。

  • (写真2)李克強国務院総理との日中首脳会談の様子2(写真提供:内閣広報室)
    李克強国務院総理との日中首脳会談
    (写真提供:内閣広報室)
  • (写真3)李克強国務院総理との日中首脳会談の様子3(写真提供:内閣広報室)
    李克強国務院総理との日中首脳会談
    (写真提供:内閣広報室)

1 冒頭

(1)李総理から,概要以下のとおり述べた。
 ア 安倍総理と四川省の都江堰でお会いできてうれしい。昨年,日本を訪問した際に,北海道まで安倍総理に同行いただき,またいくつかの施設を見学し,深い印象が残っている。この会見の後は,都江堰を視察する。これは私としてのおもてなしである。
 イ 昨日一緒に第8回日中韓サミットに出席し,成功裡に開催された。我々日中韓三か国の今後10年に亘る展望を確認することができた。多国間主義と自由貿易を推進し,地域の安定,安全,平和を維持していくことを発信できた。日本に対し,総理本人が,中国における日中韓サミットのために努力され,サポートいただいたことを多とする。
 ウ 現在,日中関係は改善の勢いを維持しており,昨年の首脳の相互訪問を通じて,正常な軌道に戻った。双方は,日中間で4つの政治文書において確立された諸原則に基づき,歴史を鑑とし未来へ向かって,日中関係の正常な軌道に戻ったが,健全な発展,新たな進展を得たい。日中両国は世界の主要な経済大国であり,貿易のパートナーである。両国は世界経済の成長の下振れ圧力の中,貿易額の伸びも大きい。人的往来は,1100万人を超え,投資,イノベーション,第三国の市場協力を強化し,人的文化交流も拡大し,金融,証券,生命保険,医療・介護といったサービス業について,日本と協力し,市場を拡大していきたい。中国としては,市場を開放する試験地区を選定し,成長の原動力としたい。ここ成都は一つの良い選択肢となろう。

(2)これに対し,安倍総理から,概要以下のとおり述べた。
 ア 日中韓サミットの成功に祝意をお伝えしたい。李総理の強いリーダーシップの下,20周年に大きな成果を上げる会議となったと思う。昨年10月の訪中時に約束したとおり,今回,自分も李総理と共に出席できたことを大変嬉しく思う。
 イ 昨日のサミットでは,私は,環境,高齢化社会,人的交流に絞って,日中韓三か国の協力の方向性について話をした。大変有意義な議論ができた。まさに第9回の日中韓サミットにつながる素晴らしい会議であった。改めて,李総理のリーダーシップに敬意を表したい。
 ウ  本日は,青城山(せいじょうさん)という素晴らしい景勝地にお招きいただき,また,この会談後には,李総理自ら都江堰の視察に同行いただき,昼食会に招待いただくなど,温かく行き届いたおもてなしに心からの感謝を申し上げたい。
 エ 現在,日中関係は順調に改善してきているが,来春の習主席の国賓訪日の成功に向けて,この落ち着いた雰囲気の中で,李総理との大局的かつ忌憚のない意見交換を行いたい。

2 日中関係総論

(1)双方は,日中関係が昨年来の首脳間の訪問を経て,「正常な軌道」に戻ったことを改めて振り返りつつ,来春の習主席の訪日に向けて,意思疎通を継続し,「日中新時代」を切り拓いていく決意を共有した。

(2)安倍総理からは,日中両国は,地域や世界の平和,安定,繁栄に共に大きな責任を有しており,この責任を果たすとの意思を内外に明確に示したい,現在の日中関係の改善・発展の流れを一過性のものとせず,ハイレベルの相互往来・対話の強化と定着が必要との観点から,「弛まぬ交流」を継続する決意を示したい,旨述べた。

(3)また安倍総理から,「東シナ海の安定なくして,真の日中関係の改善なし」との考えに基づき,尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海の問題について中国側の対応を強く求めた。

3 経済・実務協力

(1)双方は,双方の関心や方向性が一致している分野について経済・実務協力を一層進めることで一致した。また,安倍総理大臣から,法制度の運用改善,更なる市場開放,日中金融協力の強化等を通じ,ビジネス環境の改善に力強く取り組むことを期待する旨述べた。李総理からは,市場開放の推進を通じ,日中間の経済関係を更に強化していきたい旨発言があった。

(2)日本産食品の輸入規制問題等について,安倍総理大臣から,輸入規制の早期撤廃,さらにコメの輸出拡大及び牛肉の輸出再開の実現にかかる中国側の前向きな対応を強く求めた。牛肉については,安倍総理から,12月19日付で解禁令の公告が発出されたことを前向きな措置として評価するとともに,早期の輸出再開に向け当局間の調整をさらに加速させたい旨伝えた。

(3)第三国市場協力について,双方は,引き続き具体的な案件の形成について議論していくことを確認した。安倍総理からは,開放性,透明性,経済性,債務持続可能性といった国際スタンダードに合致することの重要性を強調しつつ,その観点から,G20大阪サミットにおける「質の高いインフラ投資に関するG20原則」の承認は大きな進展である旨述べた。

(4)双方は,イノベーション協力,知的財産権保護についても意見交換を行った。安倍総理大臣からは,イノベーション促進のためには,データの取扱いを含む知的財産保護などの環境整備が極めて重要である旨述べた。

(5)双方は,RCEPの早期妥結,その上で,日中韓FTAの交渉推進に共に取り組んでいくことを確認した。また,RCEPについては,安倍総理大臣から,インドを含めた16か国での署名の重要性を強調した。

4 人的・文化協力

(1)双方は,日中間の活発な観光交流を歓迎しつつ,両国国民間の往来を更に後押ししていくことで一致した。

(2)双方は,来年を「日中文化・スポーツ推進交流年」とすることで一致しており,来年の東京五輪及び2022年の北京冬季五輪を通じた交流も具体化していくことを確認した。また,引き続き青少年交流を促進していくことで一致した。

5 国際社会の関心事項

 安倍総理大臣から,南シナ海や香港情勢といった国際社会の関心の高い問題について,我が国の立場を説明した。

6 地域・国際社会における協力等

(1)安倍総理から中国が改革開放を更に進めることへの期待を表明した。

(2)貿易・投資分野について,安倍総理から,公平な競争条件の実現や自由で公正な経済圏の拡大に共に取り組んでいきたい旨述べ,RCEP等につき意見交換を行った。

7 北朝鮮情勢

 双方は,最近の情勢を含む北朝鮮情勢について意見交換を行い,安倍総理から北朝鮮が更なる挑発行動を自制することの重要性を指摘した上で,日中両国の共通の目標である朝鮮半島の非核化に向けて連携していくこと,安保理決議の完全な履行の重要性について一致した。

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