2月6日,外務省は,大田区民ホールにおいて,大田区及び国際移住機関(IOM)との共催,財団法人自治体国際化協会(クレア)の後援の下,標記ワークショップを開催した(内外の有識者,在京外交団,報道関係者や一般市民を含め約200名が参加)。本ワークショップでは,冒頭,鈴木俊一外務副大臣,松原忠義大田区長が開会の挨拶を行い,スウィング国際移住機関事務局長が基調講演を行ったほか,有識者,外交団をまじえたパネル討論では活発な議論を行ったところ,概要と評価は以下のとおり。
1.ワークショップの概要と評価
- (1)東日本大震災の傷跡が未だ癒えない中で,他の地域で大規模な震災が発生した場合の対策の重要性が指摘されている。
- (2)今回のワークショップでは,(ア)大規模災害時の在留外国人への多言語による情報発信のあり方,(イ)日本に在留する外国人の団体を含む関係機関の連携(パートナーシップ)のあり方,(ウ)東日本大震災やその後の取組が外国人の受入れと社会統合にとって持つ意味合いを中心に討議を行った。
- (3)在留外国人への情報提供において,ソーシャルメディアの活用や多言語による情報発信が重要との報告があった。その上で,やさしい日本語による情報発信や,情報の取捨選択も重要との意見も出された。また,平時から在京大使館,国,地方自治体及び民間団体による具体的な連携の枠組みの構築が進んでいることについても認識を共有できたことは極めて有意義であった。
- (4)大規模災害時における「外国人への支援」のみならず,「外国人による支援」についての経験や教訓を共有することを通じて,外国人は災害対策で単に弱者としてとらえられるべきではなく,外国人は日本社会に貢献しているとの認識が共有された。
2.パネル討論の概要(議長:竹中歩・米国ブリンメア大学社会学部准教授)
- (1)在留外国人への多言語による情報提供については,緊急時の時間的制約や財政的制約を考慮して,やさしい日本語による情報提供も重要である,在留外国人に役立つ情報を取捨選択する必要がある,誤った情報の流布による混乱を避けるために,政府や自治体がソーシャルメディアを積極的に活用することが重要であるとの意見が出された。
- (2)第2に,国と地方自治体とNPO等の民間の機関が,平時から連携体制を構築することの必要性については,クレアより,災害が広域化した場合に備え,全国を6つのブロックにわけ,自治体間の相互支援体制や国と自治体の連絡体制を平時から構築している等の具体的取組が紹介された。
- (3)第3に,東日本大震災後の取組として,在日大使館の緊急時の対応計画づくりに自国民コミュニティが参加したり,東日本大震災時にASEAN地域の在日大使館が連携した事例(フィリピン)や,浜松市などで,外国人住民のイニシアティブによる防災活動が行われており,日本育ちの日系ブラジル人が防災活動を通じて日本人と外国人コミュニティとの橋渡しとなっている事例が報告され,地域レベルでの具体的な防災対策の取組を通じた情報共有やネットワークづくりを評価する意見が出された。
- (4)外務省からは,(ア)社会統合は,外国人と受入れ社会の双方向の努力を前提とするもの,(イ)一つの組織だけで大規模災害時の外国人の支援を実施することはできないと発言した。
- (5)最後に,議長より,東日本大震災は,日本人にとって困難な経験を共有することにより,外国人との共生を考える重要な契機となっており,日本人と外国人の連帯感の高まりを今後どのように生かしていくかが課題であるとの総括があった。