アジア

平成26年3月17日
3月13日,インドの首都デリーにおいて,第7回日・SAARCエネルギーシンポジウムがインド商工会議所連盟(FICCI)を実施機関として開催されたところ,概要は以下のとおり。会合には,SAARC6カ国(都合によりパキスタン及びブータンからは参加できず)に加え,日本及びJICA,JBICが参加した。

I.経緯

2005年11月の第13回SAARC首脳会議においてSAARCへのオブザーバー参加が認められたことを機に,我が国は2006年に第1回,2008年に第2回,2010年に第3回,2011年に第4回,2012年に第5回,2013年に第6回シンポジウムを開催した。第7回シンポジウムでは,これまでのシンポジウムを踏まえて,各国の電源構成をレビューすると共に,SAARC域内における送配電網計画や近隣諸国からの電力融通等,送配電網構築のための戦略案について議論が行われ,提言がまとめられた。

II.講演の内容

1.開会セッション

(1) 塚田在インド日本大使館公使から,日SAARC協力の経緯,エネルギーを通じた地域協力の重要性,日本企業の参入の可能性等について,実施機関よりシャルマFICCI副事務局長から今回のシンポジウムに対する期待等について,それぞれ挨拶を行った。

(2) 基調講演として,チョードリー・インド電力省次官補より,(1)インドの発電状況及び今後の計画,(2)SAARC各国と域外協力相手として潜在性の高いミャンマーにおける発電事情及び電力網構築のための具体案,(3)SAARC域内での電力関連規制・法制度の調和や送配電のためのインフラ整備等を含む電力融通戦略の必要性,(4)電力網構築における日印協力の意義・可能性について述べた。
 

2.各セッション

(1) 事前セッション:
須藤帝京平成大学教授より,前回のシンポジウムでまとめられた提言の内容をレビューすると共に,今回のシンポジウムは同内容を踏まえた「SAARC域内におけるエネルギー網の構築に向けた具体的戦略」のテーマの下,戦略案の構築に向けた会合として位置付けられると述べた。

(2) セッション1:「各国の電源構成(基本的構造のレビュー及び各国における問題と機会の確認)」
SAARC各国は,水力,石炭,天然ガス等エネルギー資源を有しており,潜在的発電能力があるにも拘らず,各国の発電能力不足及び急増する電力需要に合った設備が整っていないため,慢性的な電力不足・停電に直面。これを受けて,SAARC域内での電力融通の可能性及び問題点,中央アジア諸国やイラン等SAARC域外からのパイプラインを介した天然ガス供給等,国境を越えた二国間及び多国間における電力融通,及びエネルギー供給の重要性が確認された。

(3) セッション2:「電力規制の問題点」 
政府が所有する独占的な電力事業の監理,料金設定,電力特性・配電方法・料金形態に関するデータ不足,投資誘致,投資の効率化(ピーク時・オフピーク時供給等),電力供給システムの整備,SAARC域内における電力政策(送配電ロスの削減等),電力関連法の調和等が課題として挙げられた。

(4) セッション3:「SAARC域内外からのエネルギー供給・電力融通の可能性」 
SAARC域内における潜在的プロジェクトとして,インドへの電力供給のためのネパールの貯水池式水力発電開発,ネパール及びブータンの水力発電開発及び両国からバングラデシュへの送電網の整備,インド-スリランカ間の送電網開発,域外からのエネルギー供給の可能性として,バングラデシュ及びインド-ミャンマー間での水力発電を利用した電力融通,インド-バングラデシュ-ミャンマー三国間でのガス・パイプライン構築,キルギスタン-タジキスタン-アフガニスタン-パキスタン間(CASA)及びトルクメニスタン-アフガニスタン-パキスタン-インド間における天然ガスパイプライン計画(TAPI)等について議論がなされた。

(5) セッション4:「SAARC域内外におけるエネルギー網構築のための戦略」 
SAARCエネルギーセンター内にSAARC加盟国及びその他の国のエネルギー分野の専門家からなるSAARCエネルギー専門技術グループの設置,二国間協力からSAARC地域協力への発展・統合,域内水力発電事業の共同投資,域内におけるエネルギー政策及び法制度の調和,民間企業の参入促進,SAARCエネルギー市場の開発,SAARCエネルギー安全保障の確保等が戦略案として提案された。
 

3.提言

以上の議論を踏まえ,シンポジウム参加者の全会一致により,以下を主要点とした提言が採択された。

(1) 各国の国内包蔵エネルギー資源開発における日SAARC協力
(2) SAARC域内における送配電網の構築・強化及びエネルギーの豊富な近隣諸国からの電力融通の促進
(3) 南アジアで重要なエネルギー調査案件におけるJICAやJBICを通じた日本の協力
(4) SAARCエネルギーデータベースの整備のための日SAARC協力

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