マレーシア

「日本とマレーシアは二国間関係を超えて協力を拡大」

令和4年3月18日

 日本の安倍晋三元総理大臣は、日本とマレーシアの間の協力の裾野が、二国間関係にとどまらず、地域、そして世界の平和と繁栄に向けた協力にまで拡大していると述べた。安倍元総理は、二国間関係の拡大を歓迎しつつ、日本はマレーシアと手と手を携えて、自由で開かれた国際秩序の維持・強化に取り組んでいくと述べた。

 安倍元総理は、岸田文雄総理大臣の特使として昨夜マレーシアに到着した。安倍元総理は、三日間のマレーシア訪問に先立ち、ベルナマ通信との書面インタビューにおいて「日本とマレーシアは、経済・社会分野にとどまらず、民主主義や法の支配といった基本的価値や戦略的利益を共有する戦略的パートナーとして、両国の協力の裾野を拡大し続けている」と述べた。

 安倍元総理は、今後は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」を実現し、地域や国際社会の平和や繁栄を確保するため、海上保安協力や様々な能力構築支援、安全保障協力を一層推進していくことが有意義であると述べた。

 安倍元総理は、日本とマレーシアが位置するインド太平洋地域は、力による一方的な現状変更の試みや経済的威圧など、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が深刻な挑戦を受けているとし、「日本とマレーシアは、共に民主主義国家であり、貿易立国であり、そして海洋国家である。両国の発展を可能にしたのは力による支配ではなく、法の支配に基づく既存の国際秩序にほかならず、これを維持・強化することこそが地域の平和と繁栄をもたらすと確信している」と述べた。

 日本の総理大臣として最長の在職期間となる合計9年間、二度にわたり総理大臣を務めた安倍元総理は、日本はFOIPを推進しており、これと多くの本質的原則を共有するAOIPの実現に向けて、マレーシアの「伴走者」として、マレーシアを始めとするパートナー国との協力を積極的に進めていくと指摘した。

 安倍元総理はこうした例として、日本は、海における法の支配の強化の観点から、マレーシア海上法令執行庁が設立された2005年から、海上保安職員の能力向上支援を行ってきていると述べた。その上で、安倍元総理は、「現在は、日本の支援を受けたマレーシアの海上保安職員が指導役を務め、第三国に対して研修を行っており、日本はこうした分野でも、今後もマレーシアと協力していく」、「日本は、FOIPの実現に向けて、重要なシーレーンであるスールー・セレベス海にも注目している。日本は、「東ASEAN成長地帯(BIMP-EAGA)」とも連携し、海賊、テロ、自然災害等が多発し、経済・社会的に脆弱なスールー・セレベス海とその周辺地域に対する協力も強化していく」と述べた。

 安倍元総理のマレーシア訪問は、日・マレーシア外交関係開設65周年と、マレーシアにおける経済性及び生産性を向上させるべく日本の労働倫理、管理システムを学ぶという日本を中心とした東方政策40周年の機会を捉えたものである。安倍元総理は、「岸田内閣総理大臣の特使としてマレーシアを7年ぶりに訪問している。マレーシアには、総理大臣在任中に三回の訪問をしたが、その度に、その目覚ましい経済発展に圧倒され感嘆の念を覚える」と述べた。

 マレーシアには約1,500社の日系企業が進出しており、両国の経済、戦略的パートナーシップは緊密である。安倍元総理は、日本は新型コロナ対策においてもマレーシア政府の取組を支援しているほか、地域の機能やサービスの効率化・高度化を目指すスマートシティの構築に向け、クアラルンプール、ジョホールバル、クチンでのプロジェクトを支援していると述べた。加えて、日本は、マレーシア社会のデジタル化のための通信インフラ整備や、脱炭素社会に向けたエネルギー・トランジションといった分野でもマレーシアを後押ししている。

 マハティール首相(当時)が提唱した東方政策を、安倍元総理は、良好な二国間関係の基礎をなすと表し、東方政策の下、26,000人以上のマレーシアの若者が日本で勉学や研修に励み、高い技術や知識のみならず、労働倫理、学習・勤労意欲、道徳といった日本的価値を学んだと述べた。安倍元総理は、「日本に縁のある方々が、両国の揺るぎない架け橋として、マレーシアの各界で活躍されていることを誇らしく思う」と述べた。

 日本は、マレーシアにおける学習環境を充実させるため、教育施設の新設を支援するとともに、延べ800名を超える教員や日本語講師を派遣するなど、様々な協力を実施してきた。

 さらに、マレーシアにおいても日本式の教育を受けられるよう、日本政府は、日本の大学の初の海外分校として、筑波大学が目指すマレーシア分校の開設を後押ししている。

 安倍元総理は、「この機会に、若い世代を始めとするマレーシアの皆様には、大きな潜在性を秘めた日・マレーシア関係の担い手となるようお願いしたい」と述べた。

  • マレーシア国営ベルナマ通信社による安倍総理特使書面インタビュー(英語(掲載記事)別ウィンドウで開く
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