寄稿・インタビュー
岸田総理タイ訪問寄稿文(日本語・タイ語)

本日、私は、タイを訪問します。総理大臣としてタイの地を踏み、タイのめざましい発展を目の当たりにすることを楽しみにしてきました。
タイは、8万人以上の在留邦人が居住し、約6千社の日本企業が進出する、我が国にとって東南アジア最大の拠点です。600年に及ぶ両国の交流の歴史の中、緊密な皇室・王室の関係を礎に、コロナ前には両国民の往来が過去最高に達するなど、ますます活発な交流が行われてきています。両国間の戦略的パートナーシップは、あらゆる分野で深化してきました。一方で、両国を取り巻く国際環境は複雑さを増しています。安定した世界の中で日本とタイが共に発展していくため、今回の私の訪問では次の2点を目指します。
第1に、日本の大切なパートナーであるタイとの間で、ウクライナ、ミャンマーを始めとする地域・国際情勢における連携を強化することです。今、国際社会は、国際秩序の根幹を揺るがす事態に直面しています。ロシアによるウクライナ侵略は明確な国際法違反で断じて認めることはできません。いかなる地域においても、武力の行使・威嚇による主権や領土一体性の侵害、力による一方的な現状変更は認められず、国際法に基づき紛争の平和的解決を求める必要があります。歴史上これまで一貫して独立を維持してきたタイとの間では、この考えを共有していると確信しています。平和を愛する国同士、ウクライナへの人道支援についてタイと協力していきたいと考えます。また、ミャンマー情勢についても、同国と長い国境を接し、歴史的にも特別な関係を有するタイの役割は重要です。地域と世界の平和と安定のためにタイと協力していきたいと考えます。
第2に、日本・タイ関係の更なる飛躍です。本年は、日タイ修好135周年です。この節目の年に両国の友好協力関係を更に発展させていきます。
タイでは、日本の支援により整備された道路や都市鉄道が広く利用されているほか、日本食や日本文化も皆さんの生活に溶け込んでいるのではないでしょうか。また、日本は、タイ人の若き技術者を養成するための高専を設立し、日本の高専のノウハウの提供を通じて高度人材育成支援も行っています。新型コロナ対策に関しても、ワクチン供与やコールドチェーン整備支援を行っています。また 、タイからも、タイの在留邦人に対し、日本人専用のワクチン接種プログラムを提供いただくなど、支援いただいたことに感謝しております。このように我が国は、タイの親しき友人として様々な支援を継続しており、両国は切っても切れない関係になっています。
プラユット首相との首脳会談では、このような長きにわたる信頼関係を基に、両国関係を更に発展させるため、ポストコロナを見据えた新型コロナ支援を更に拡大するほか、安全保障や経済関係での協力強化に加え、エネルギー転換・脱炭素化や、サイバーセキュリティや経済安全保障といった新たな協力を含め、幅広い分野について具体的な議論を行います。このような協力が発展しているタイは、私が取り組んでいる「新しい資本主義」の実現に向けたベストパートナーです。
本年のAPEC議長であり、また来年日ASEAN友好協力50周年を迎える中でASEANの対日調整国を務めるタイとの協力はますます重要となっています。タイの皆様、私たちと一緒に日本・タイ協力の新たなページを開きましょう。
日本国総理大臣
岸田 文雄