ミャンマー連邦共和国
ミャンマー総選挙日本政府選挙監視団の活動結果について
1 我が国政府の選挙監視団は,2015年11月6日(金曜日)から9日(月曜日)まで,ミャンマーにおける選挙プロセスを監視した。我が国の政府監視団は,笹川陽平ミャンマー国民和解担当日本政府代表を団長とし,外務本省より3名,在ミャンマー大使館館員9名,在ホーチミン総領事館館員1名,有識者5名の総計19名で構成され,5チームに分かれて,ヤンゴン地域,ネーピードー,シャン州ラショー地区,エーヤワディ地域ヒンダダ地区において監視活動を実施した。
2 今般の選挙は,1990年の総選挙以来初めて,アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)や少数民族政党を含む主要政党全てが揃う総選挙となった。有権者数は3,200万人(人口5,141万人),参加政党は91(地方選挙を含む)であり,選挙監視団が監視した投票所の中には,午前6時の開所時点で約200名の有権者が列をなすことが観察されるなど,ミャンマー国民の熱意が強く感じられる選挙だった。
3 我が国政府監視団は,上記4都市の合計13地区,47投票所において,選挙プロセスを監視した。監視団の活動は,時間的にも地域的にも限られたものではあったが,当監視団が得た情報,また,活動中に情報交換した他国の選挙監視団の評価の範囲においては,今次選挙活動,投開票のいずれについても,現時点において,全体として大きな衝突,混乱はなく,概ね平和裡に行われたといえる。選挙結果についての正式な結果発表はまだだが,民主化進展に向けた重要な一歩として投票が概ね平穏裡に実施されたことを歓迎する。
4 選挙活動のプロセスにおいては,有権者名簿の不備,選挙区外における事前投票及び国軍施設内における監視団によるアクセスの拒否,民族・出自等を理由とする立候補資格の否定などの問題が指摘されている。また,8日(日曜日)の投票時においては,有権者名簿との照合に時間を要し,特に午前6時の開始直後には各投票所で長蛇の列が観察されたほか,事前投票された投票箱が開始時間にやや遅れて到着するという事例も観察された。
5 他方,政府監視団が監視した範囲では,8日(日曜日)の投票時においては,有権者名簿の不備により投票ができなかった有権者がいたとの情報は殆ど聞かれず,各投票所においては平穏裡に投票が行われていた。列に並ぶ有権者から強い不満が表明されることもなく,また,我が国監視団に対しては,投票所の責任者より丁寧な説明を受けることができた。ある投票所では,2010年の選挙時に比べ,有権者名簿がより整備され,二重投票防止の特殊インクの導入など,改善が見られたとの評価も聞かれた。そして,今次選挙には国内外より合計12,000名以上の選挙監視要員が登録され,ミャンマー各地での選挙監視に従事した。各投票所には,各政党からも監視要員が派遣されており,幅広い関係者により透明性が確保された選挙であったことについては,十分に評価することができる。
6 我が国政府は,今次選挙に際し,非電化地域の投票所にて行われる夜間の開票活動に必要な太陽光ランプ及び二重投票防止のための特殊インクの供与をUNDPと連携して実施(総額1億1,100万円)した。投票所においては,我が国よりのこれら支援に対し,訪問した監視団に感謝の言葉が伝えられる場面もあった。
7 我が国政府監視団としては,今次選挙の結果が公平且つ適切な手続きに従い確定され,全ての関係者により受け入れられ,ミャンマーの民主化と諸改革がさらに進展することを期待する。我が国政府としては,ミャンマーにおける改革に向けた取り組みを引き続き支援し,伝統的友好・協力関係を更に発展させていくべきであると考える。