カンボジア王国
日・カンボジア共同記者発表
外務大臣として訪問した2014年8月以来のカンボジア再訪を大変嬉しく思います。フン・セン首相とカンボジア国民の皆様の温かい歓迎に感謝します。
プノンペンを訪れる時、私は和平の尊さに思いを致します。内戦後の廃墟から立ち上がり、国を再建したカンボジア国民の不屈の精神に改めて敬意を表します。人々の平和な生活がむきだしの力によって脅かされる今こそ学ぶべき精神が、この国には息づいています。
本日の首脳会談では、フン・セン首相と国際社会の喫緊の課題であるウクライナ情勢について率直な意見交換をしました。両国は国連総会の緊急特別会合で採択された「ウクライナに対する侵略」決議の共同提案国であり、世界中のどの場所においても、力による一方的現状変更を認めないとの立場を共有しています。今後行われる国際会議の場でも、国際秩序の根幹を守るべく、ASEAN議長国であるカンボジアと緊密に連携することを確認することができました。
本年は日本にとって初めてのPKO派遣から30周年です。日本は、この30年、カンボジアが苦しい時にこそ助けになりたいと考え、行動してきました。長年にわたる地雷除去や道路や橋、上下水道の整備、最近ではコロナ対策支援を通じて、カンボジアと共に歩んできました。日本とカンボジアの関係は史上最良レベルにあると考えます。
国民に若い世代の多いカンボジアは、可能性に溢れた国です。本日は、日・カンボジア関係の更なる発展の可能性について、フン・セン首相とじっくりと話し合いました。
日本が支援してきたシハヌークビル港は、カンボジアだけでなく、地域の中核として機能する重要な港です。日本はその実現のための支援を惜しみません。フン・セン首相からも力強い支持を頂きました。
安全保障分野にも大きな潜在性があります。日本は、今後、海自艦艇による寄港を含めたリアム海軍基地への継続的な訪問などを通じて、自由で開かれた海洋秩序の強化に向けカンボジアとの間で防衛交流を強化していきます。二国間訓練の充実や人道支援・災害救援分野の協力は、自衛隊とカンボジア国軍の絆を一層深めるでしょう。
カンボジアの経済には大きな期待をしています。サプライチェーン強靭化の取組や、王立プノンペン大学と協力し、優秀なカンボジアの人材を高度産業人材へと育成する取組を通じて、両国の未来に向けた投資を促進していきます。
日本はこれまで、民主主義と人権の分野でも対話と協力を基調に率直な議論をし、様々な支援を行ってきました。カンボジアが国民の多様な声を反映した選挙を実施できるよう、後押ししていきます。
エネルギー・トランジション、経済安全保障、デジタル、サイバーといった分野では、新たな協力を開始します。例えば、中央銀行デジタル決済システム「バコン」は日本企業が協力して開発したデジタル分野の有望な取組であり、こうした取組を後押しします。
地域・国際情勢についても両国の緊密な連携を再確認しました。ASEAN議長国のカンボジアがミャンマーの事態打開に積極的に取り組んでいることに敬意を表します。南シナ海問題や北朝鮮への対応における緊密な連携でも一致しました。拉致問題に対するフン・セン首相の日本に対する力強い支持に感謝します。
来年は日カンボジア外交関係樹立70周年であり、日ASEAN友好協力50周年でもある節目の年です。日ASEAN特別首脳会議でフン・セン首相を日本にお迎えしたいと考えています。フン・セン首相と共に両国間の「戦略的パートナーシップ」を新たな段階に引き上げていく決意です。